ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント!   作:AUOジョンソン

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「神様ー?」「はいはい、なんでしょ?」「……これ、なーんだ」「……あーっと、そのですね? 目の前に魔法のカードがありまして」「うん」「ま、魔法のカードだから、きっと無尽蔵なんだろうなって……」「ほほう?」「そ、それでいっぱい石を買っちゃって……」「で、出たの?」「……☆3と概念礼装だけでした」「運ひっく。そのステータス値で生命つかさどってて大丈夫なの?」「……だいじょぶです」「……ほんとにぃ?」「……だいじょぶだもん」「……まぁいいや。とりあえず、使った分のお金は身体で返してね」「ふぇ!? か、身体……!?」「そうそう。ほら、まずはこの『感度が三千倍になる』っていうお薬から行こうか。大丈夫! 神様には指一本触れないし、天の鎖で神様縛っておくから、怪我することもないよ! 安心してね!」「……お、怒ってる?」「うん!」「すっごいいい笑顔!? ちょ、助けてー! 殺されないけど壊されるー!」

その日以降、神様の姿を見たものはいなかったのである……。


それでは、どうぞ。


第五話 ご利用は計画的に。

「英霊、ねぇ」

 

「まぁ、信じられないと思うけど……」

 

「いいえっ! ダーリンのことだもん、信じるわ!」

 

「だ、だぁりん!?」

 

 メロン娘は俺の身の上話のあと、情熱的にそんなことを言いながらぎゅむ、と腕に抱き着いてきた。

 ……あー、あれか。きよひータイプかこいつ。でもヤンがないからまだ平和かなー。

 

「ちょ、離れなさいよー!」

 

 で、このマスターは迦具夜タイプか。余計なこと抱え込んでストレスためそうなところとかそっくりである。

 んで、目の前でこちらへの対応を決めかねてるこの無口クールロリメガネ青髪貧乳魔女っ娘はアタランテタイプかな。胸とか。

 

「改めて自己紹介するわ。私の名前はキュルケ。フルネームはキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。よろしくね、ダーリン!」

 

「……タバサ」

 

「よろしく、二人とも。俺はギル。……家名とか二つ名とか長ったらしいのあったけどただのギルでいいから」

 

「なんでこの状況で自己紹介できるの!? 私だけなの!? まともなの私だけなの!?」

 

 マスターがそろそろ胃に穴開けそうだし、いったん切るかー。

 

「よし、それじゃあメロ……キュルケ、タバサ。俺とマスターはこれで。疑問も解けたし、謝罪もできたし。あとは用件ないだろ?」

 

「ダーリンはこれからどこに?」

 

「特に予定はないかな。ふらっと歩き回ろうかなーと」

 

 俺がそういうと、キュルケは顔をぱぁ、と明るくさせる。

 

「なら私が案内するわっ。ヴァリエールじゃ書店くらいしかわからないでしょうし?」

 

 そう言って、キュルケはマスターに意味ありげなウィンクを飛ばす。それに反応しないマスターじゃない。

 予想通りすぐに顔を赤くし、キュルケに食って掛かる。……因縁があるというのはあながち大げさに言っているわけじゃなさそうだ。

 

「わっ、私だって色々知ってるわ! 馬鹿にしないで!」

 

「あら、じゃあ流行りの服を扱っているお店とか、女の子たちの間で噂のお菓子のお店とか知ってるわけ?」

 

「う、ぐぅ……」

 

「……ま、そんなもんよね。で、どうかしら、ダーリン。よければ案内しますわ」

 

 マスターからこちらに視線を戻したキュルケは、綺麗な一礼で俺を誘う。

 ……うーん、どうしようかなー。特に目的あるわけじゃないし、それでもいいんだが……。

 

「がるる……」

 

 ……この猛犬注意マスターをどうするか。

 あ、そうか。俺が行きたいところを示せばいいのか。

 

「マスター、この近くに武器屋はないか?」

 

「がる……武器屋? そんなところに何の用なわけ?」

 

「いやほら、この世界特有の武器とかないかなーって。俺、意外と蒐集家(コレクター)だからさ」

 

「……ないことないけど」

 

 心当たりのありそうなマスターのつぶやきに、全力で乗っかる。

 

「流石はマスターだ。キュルケの案内してくれそうなところも魅力的だが、やっぱり俺も趣味はあるしさ。そういうところを知ってるなんて、さすがはマスター!」

 

「……ふ、ふんっ。まぁ、そりゃツェルプストーじゃ武器屋なんて案内できないでしょうし?」

 

 胸を張って得意げにそういうマスターに、次はキュルケがムッとする番だった。いや、わかるよ? 君も武器屋くらいわかるって言いたいんだろ? でもほら、たきつけたのは君からだし、ちょっとくらい我慢してな?

 そういう思いを込めながら、何か言いたげに口を開くキュルケの口に、しぃ、と人差し指をあてる。

 

「……っ!?」

 

「まぁまぁ。な?」

 

 ついでにニッコリと笑顔を浮かべておく。申し訳ないけど、ここはマスターのご機嫌取りに付き合ってもらおう。なんだかんだで、キュルケはいい子だし。

 そんな俺の思いが伝わったのか、キュルケはまるで仕方ないなぁとでも言いたげに頷いて一歩後ろに下がった。ちょっと引いてあげる、という意思表示なのだろう。

 

「じゃあ、ほら、行きましょっ」

 

 長いピンクブロンドの髪を靡かせながら前を向いたマスターが、すたすたと歩き始めるのを見て、慌てて後ろを追う。

 後ろの二人にも手招きをすると、喜色を浮かべてついてくるキュルケと眠そうな瞳のタバサ。

 

「これは、久しぶりに騒がしい一日になりそうだ」

 

 今日一日、楽しくなりそうな予感がした。

 

・・・

 

「ここね」

 

「ほほう。人気のない裏通り、しかも隠れ家的にひっそりと経営しているとなると……なかなかの穴場だな!」

 

 もしくは繁盛していないともいう。まぁ、その辺は中に入ってみればわかるな。

 ルイズを先頭に、店の中へ足を踏み入れる。……ふむ、よくもなく悪くもなく。いたって普通の品ぞろえ……ん?

 店内を見回す俺をしり目に、店主は入ってきた客である俺たちに胡乱な目を向けて……驚愕の表情を浮かべる。

 

「へいらっしゃい! って、お貴族様!? へへっ、うちは全うな商売をしてまさぁ……」

 

「客よ」

 

 いつも通りの「ふんっ」とでも言いたげな態度のマスターに、店主はさらに驚く。

 

「お貴族様が剣を!? こりゃおどろいた!」

 

「使うのは私じゃないわ。……それに、買うかどうかもわからないしね」

 

「は、はぁ。まぁ、お客様ということであればどうぞごゆっくりご覧になってください」

 

 そういわれるまでもなく、俺はすでにきょろきょろと見回しているのだが、まぁ、特にめぼしいものはないな。

 『剣と魔法のファンタジー』というのだから、魔術礼装とか伝説の剣とかもあると思ったのだが……予想が外れたなぁ。

 

「ん?」

 

 まただ。さっきもこの辺の『特価コーナー』を通りがかった時に感じた視線というか、妙な感覚。何度見てもつくりの粗雑な剣やら槍やらしかないし、んー? この剣、他の粗雑品と違って妙に頑丈そうだな。これならあっちの壁にかけてあるちゃんとした剣のところに並んでてもよさそうなもんだけど。

 そう思って手を伸ばしてみると、かたん、とその剣が動いたように見えた。

 

「……んん?」

 

 いや、『動いたように見えた』どころじゃない。今もなんかカタカタ動いてる。ふるえてる。なにこれ。

 意を決して、その動きまくっている剣を掴んでみる。

 

「ヒャアアアアアアアーッ!?」

 

「う、うおっ!?」

 

 鎺の部分が大きく開き、そこから絶叫が聞こえてきた。な、何だこの剣! 喋るぞ!

 

「あら、インテリジェンスソードじゃない」

 

「知ってるのか、らいで……マスター」

 

 知ってそうな口ぶりでつぶやくマスターに聞き返すと、マスターは知らないの? と説明をしてくれる。なんでも、意思を持つ剣らしく、喋ったりできる変わった剣だそうだ。

 それ以外に特に変わったところはないので、普通はうるさくない普通の剣を買うんだそうだ。

 

「いや、にしても喋る剣か……店主、これはいくらだ?」

 

「えっ。か、買うの?」

 

 その剣を持ちながら店主に値段を問うと、俺の服の裾を引きながらマスターが不安そうに聞いてきた。

 いや、これは掘り出し物だよ。喋る剣なんて初めて見たしな。

 

「で、店主。いくらだい?」

 

「はぁ、そいつは厄介者ですので、買っていただけるというなら新金貨100で結構でさ」

 

「ふむ……ちょっと待っててくれ」

 

「? ちょっと、どこ行くのよギル」

 

「ちょっとな。すぐ戻るからここで待っててくれ」

 

 そういって、俺はすたすたと武器屋を出て城下町へと向かった。

 

・・・

 

「……どこ行ったのかしら」

 

「さぁ? あ、そうだ。今の人に贈り物をしたいんだけど……」

 

 武器屋を出て行ったギルに首をかしげながらつぶやいてみると、ツェルプストーが店主に早速交渉を始めている。

 どうやら、ギルがコレクターだと聞いて、珍しい武器を買って送ろうという魂胆らしい。……むぅ。お財布の中身に不安のある身としては、そういうのを軽々しくできないのが難点である。

 ……武器って高いのね。

 

「はぁ。……まぁ、贈り物というのであれば、最近ではこういったレイピアが人気ですが……」

 

「へぇ……でも、なんていうかダーリンにはもっとこう、金色で絢爛なのが似合うと思うのよ!」

 

「そうなりますと……少しお待ちください」

 

 店主が店の奥に引っ込むと、ツェルプストーはふふん、とこちらを見下ろしながらその無駄な脂肪の塊を揺らして微笑んだ。

 ……ちっ。これだから栄養が全部胸に行くような野蛮なゲルマニア人は……。

 

「……これでいくらくらいなのかしら」

 

 そういってカウンターに乗っているレイピアを持ってみる。……とと。意外と重いのね。

 

「確かどんなに安くても新金貨で200が相場だって言ってたわね」

 

「にひゃっ……ふ、ふーん……?」

 

 そっとレイピアをカウンターに戻して、さっきの喋る剣の元へ。

 

「で、あんたはなんでそんなにふるえてるわけ?」

 

「あ、あんたっ。嬢ちゃん! さっきのあんちゃんの知り合いだよな!?」

 

「知り合いっていうか使い魔だけど……」

 

「ひっ、や、やっぱり……! た、頼みがあるんだよ! あのあんちゃんに俺を買わないように説得してくれねーか!?」

 

 どうみてもおびえてるみたいだけど……なにしたのかしら、あいつ。私から見ても、ただこの剣を取っただけに見えるけど……。

 

「あ、あんなの『使い手』にしても恐ろしすぎらぁっ! どんな使い方されるかわかったもんじゃねー……」

 

「……あいつは優しいやつよ」

 

 喋る剣のあんまりな言葉に、ついムッとして言い返してしまう。……わかりにくいけど、あいつは優しいんだから。王様のくせに。

 

「別にいいんじゃない? あいつの蔵、武器とかには暮らしやすそうよ」

 

 前一瞬だけ見せてもらったけど、なかなか暮らしやすそうだったし。……人間が見るにはあんまりおすすめしないけど。あの一瞬でもかなり負担だったもん。

 そんなことを言っていると、再び武器屋の入り口が開く。そちらに視線を向けると、予想通りギルが立っていた。こちらに「やぁ」と手を挙げると、きょろきょろと視線を移す。

 

「あれ? 店主は?」

 

「今奥に引っ込んだわ。もうちょっとで出てくるんじゃないかしら」

 

「そっか。……よっと」

 

 私の言葉にうなずいたギルは、そのままインテリジェンスソードを掴む。

 ……予想通り、このインテリジェンスソードはギルが怖いらしく、叫び声をあげる。……王様って言ってたし、なんかそういうカリスマ的なものを感じ取っているんだろうか。

 

「ヒャアアアアアアアーッ!?」

 

「こいつ俺が握るたびに叫ぶんだけど、これ買った後にどう黙らせようか」

 

「そいつでしたら、この鞘に納めていただければ黙りまさぁ」

 

「お、店主」

 

 ギルの疑問に答えたのは、先ほどツェルプストーに逸品を求められて奥に引っ込んでいた店主であった。その手には、かなり高そうな装飾のされた大剣が握られていた。店主はその大剣をカウンターに置くと、そのままカウンターの下からなんの装飾もない、武骨な鞘を取り出した。

 これに納めれば、黙るのだという。……確かに、このインテリジェンスソードの造り的に、鞘に納めれば喋れなくなるだろう。

 言われたとおりにギルが鞘に納めると、確かに一切喋らなくなった。

 

「なるほどね。……で、新金貨で百だったか。ほら、受け取ってくれ」

 

 そういって、ギルは手に持った袋をカウンターの上でさかさまにし、金貨を出す。……っていうか、あれどこから持ってきたんだろう。

 確かあいつ、「俺無一文なんだよなぁ」って言ってた気がするんだけど……あ、まさか!

 

「あんたっ、盗んできたんじゃないでしょうね!?」

 

「……人聞きの悪い。俺のスキル見たならわかると思うけどなぁ。……まぁ、あとで説明してやるよ」

 

 盗んだものじゃないから、と軽く笑いながら言うギルに、まぁこいつならそんなことしなくてもお金ぐらい持ってくるか、と妙な納得をしてしまった。そのままギルはお金を数え終わった店主から剣を受け取り、そのまま腰に止める。

 結構刀身が長いけど、こいつのスタイルなら問題なく腰に佩けるようだ。

 

「よし、じゃあ、行こうか」

 

 そういって店を出ていくギル。慌てて追いかけて店を出ると、ツェルプストーがついてきてないことに気づく。……ああ、そういえばなんかプレゼント買うとか言ってたなぁ、と思い出し、ついてこないならいっか、とそのままギルについていく。

 私の足音を聞いてなのか、振り返ったギルがおや、とつぶやく。

 

「あの二人は?」

 

「……なんかまだ買ってる」

 

「そうか。……ふむ、まぁ、おいていくのもかわいそうだし、待ってやろうか」

 

 ギルのその言葉に、内心「えー」と思ったが、意外とこいつは頑固なのだ。一度言ったら聞かない以上、ここで待つしかあるまい。

 しばらくして、ツェルプストーがタバサを連れて店から出てくる。……手には持っていないが、たぶん学園に送らせたのだろう。こちらを……いや、『ギルを』見つけると、うれしそうに無駄な脂肪を揺らしながら走ってくる。

 

「ダーリンっ。待っててくれたのね!」

 

「ん、まぁ、おいていくのもかわいそうだしな」

 

 さっきの借りもあるし、とギルはつぶやく。そのつぶやきはツェルプストーにも聞こえたらしく、その『借り』に思い至ったのか、これまた嬉しそうに笑ってギルの腕に抱き着く。あ、ちょ、こらっ! 流石にそこまでは許さないわよツェルプストー!

 

「ちょっとギルっ。ツェルプストーなんかとくっつかないで!」

 

「あら、どうしたのヴァリエール。……ああ、小さいから腕が組めなくて悔しいのね?」

 

「はぁ!? 別にそんなんじゃないわよ! なんでギルと腕が組めなくて悔しがらなきゃいけないわけ!?」

 

 カチンときた! 別にギルと腕が組めないのは悔しくないし、そもそも私の使い魔なのになんでツェルプストーなんかと腕を組んでるわけ!? 拒否しなさいよ、拒否を! そう思ってギルをにらみつけてみるけど、困ったように笑うだけだ。

 そりゃそうだ。こいつはもともと王様だったと聞く。私くらいの威圧なんか、なんでもないに違いない。

 そんな風に、城下町での散策は騒がしく過ぎていくのだった――。

 

・・・

 

 

 ――そういえば、と帰りの飛行船の上でギルに問いかけてみる。

 今は城下町からの帰り道。隣には青い風龍が飛び、そこにはタバサとツェルプストーが乗っている。こちらに乗りたいとさんざんわめいていたのだが、ギルの「ごめんな、これ二人用なんだ」の一言に撃沈していた。……いたずらっぽい笑みを浮かべていたので、たぶん嘘なのだろうけど……私の気持ちをちょっと汲んでくれたのかな、とうれしく思うと同時に少し気恥ずかしさも感じてしまった。

 その気恥ずかしさをごまかす意味も含め、私はギルに問いかけたのだ。そういえば、あのお金はどうやって手に入れたの? と。

 ああ、とギルは一言つぶやいて、教師が生徒にものを教えるときのように指を一本立てて説明を始める。

 

「英霊には、生前の偉業やら性質やらに応じて、『スキル』っていうのが付与されるんだ」

 

「ああ、なんか見たわね。『カリスマ』とか『千里眼』とかってやつでしょ?」

 

「そうそう。それの中に『黄金律』っていうのがあってな?」

 

 そこから始まった『黄金律』スキルの説明は、どんな魔法もたどり着けないであろう、驚きのものだった。

 なんだ、『特技がお金持ちといえるほどにお金に困らなくなる』って。なんだ、『道を歩いてるだけで望んだだけのお金が手に入る』って。

 

「だから、マスターも何か困れば相談してくれていいぞ。うん、マスター特権でトイチで貸そう」

 

「といち? ……なにそれ。っていうか、貴族たる私が、使い魔のあんたにお金なんて借りるわけないでしょ!」

 

「いうと思ったよ。ま、そういうわけで、街に出てちょろっとな。あんなところでイカサマ賭博なんてやってるから悪いんだよ。……あれ、俺のスキルに『賭博狩り』とかついてないよね?」

 

 唐突に首を傾げたギルがなにやらぶつぶつ言っているけど、それを無視して次の疑問を口にする。

 

「そういえば、スキルとか宝具の欄が黒塗りになってたりわけわかんない文字になってたりしてるんだけど、これどうやったら見れるの?」

 

「ああ、それはまだマスターが見れる位階に達してないってだけだよ。ま、その辺は後々、だなー」

 

「むぅ……まぁ、今見れないならいいわ。……とりあえず、お金を稼げた理由がわかってよかったわ」

 

 欄が四つあって、そのうちの一つが『王の財宝』ということは、他に三つ、全部で四つ宝具があるわけだけど……これは多いほうなんだろうか。それを聞いてみると、ギルはうなずいた。普通の英霊でも一つか二つ。多くて三つだという。それを考えると、ギルの四つは破格で、効果としても最高のものだといわれた。

 『説明してもたぶん理解できないから』という理由で教えてはくれなかったけど、『王の財宝』と同じかそれ以上のものが後三つも……そう考えると、やっぱりこいつは生前すごい王様だったのだといやでも理解できた。

 

「……あんたがどれだけえらい王様でも、すごい英霊でも、今は私の使い魔なんだからねっ。勝手な事したら、許さないんだからっ」

 

「うん? ……ああ、安心してくれ。俺は一度居着いたらあんまり動かないんだ。勝手にどこかに行くことはないから安心してほしい」

 

 そういって、ギルはその大きく美しい手で私の頭をなでる。……いつもなら気軽に触らないで、と振り払うところだが……なんだか安心感がこみあげてきて、そんなことをする気にはならなかった。ただ、見られているのは恥ずかしいので、あと少ししたら止めてもらおう。――久方ぶりに感じた優しい手の感触を楽しみながら、ギルの操作する飛行船は学園への帰路を飛んでいく。

 

・・・

 

 帰ってきてから、キュルケに誘いを受けた。

 なんでも、『町では少ししかお話しできなかったから、ゆっくりと学園でお話ししたいと思って』とのことで、まぁマスターを優先させてもらった恩もあるしなぁ、とそのお誘いを受けることにした。マスターがいるとうるさくなるから、と二人っきりでの歓談をご希望の用である。

 

「ふむ、ならあのテラス席は避けたほうがいいだろうな」

 

 さて会場はどうしようか、と悩んでいると、宝物庫がひとりでに開いていく。……このパターンは、完全に侍女のものである。予想通り、波紋を通って自動人形がティーセット一式――テーブル、椅子を含む――を持って出てきた。なるほど、ないならば作ればよい、と。

 

「よし、なら君はキュルケを呼びに行ってくれるか」

 

 自動人形の一人に頼むと、首肯を一つ返して行動に移る。この子たちは本当によく働いてくれている。今度何かで報いなければな、と感慨深く思っていると、背後から肩を叩かれる。――なんだろうか? 振り向くと、そこには毛糸玉と編み針を持った自動人形が。

 ――え? 報いるなら手作りのマフラー作ってくれ? いいよ、確か前は百人分作ったからあと五十一人分……え? 全員で二百五十一人になった? だ、第二世代に突入してるじゃないか! これ、さっさと作り終えないと最終的に膨大な数を作ることに……!?

 そんな恐ろしい想像をしながら、自動人形から道具を受け取る。……むむむ、だがこんなことで喜んでくれるのであれば、全力で取り掛かる所存である。百三十五人増える前にやり切らないとなぁ……。

 

・・・

 

 キュルケは自室にて身だしなみを整えていた。『微熱』の二つ名の通り恋多き乙女であるキュルケは、当然のごとくギルにアプローチをかけている。主人であるヴァリエールには一歩リードを許しているようだが、その程度なら自身の魅力でいくらでも追いつける。彼女はそう確信していた。

 城下町へのお出かけも偶然とはいえ追いかけることができたし、そこでプレゼントを用意することもできた。そしていま、ルイズには内緒で二人っきちのお茶会の誘いもできた。今のところ順調も順調である。

 

「ふふ……」

 

 主人であるヴァリエールの悔しそうな顔を思いうかべつつ用意をしていると、扉からノックの音。

 

「はーい。開いてるわよー」

 

 きっとギルだろう、そう思って声をかけると、扉を開いたのは『あの』メイドであった。美しい髪、整った顔、バランスの良いスタイル。どこをとっても欠点なんてない、彼の『宝物庫』から出てくるメイドだ。いつも通り無表情で瞳を閉じた状態で、こちらに一礼。

 おそらく、私を迎えに来たのだろう。聞いてみると、その通り、と言わんばかりに首肯。

 案内されている最中、喋らないのだろうか、と色々試したのだが、すべて無駄に終わった。ただ、すべすべな肌と、もちもちの感触だけはわかったけれども。……少し嫉妬してしまったのは内緒だ。

 

「お、きたかー」

 

 案内された先には、用意されているテーブルに座り、こちらに笑いかけてくるギルの姿。日の光に照らされた彼の姿は、神聖な絵画のように美しい。――出会ったらとりあえず抱き着いて主導権を握ろう、なんて考えを木っ端みじんに砕かれたキュルケは、少しの間呆然とその場に立ち尽くす。

 

「ん? どうした、キュルケ。何か変だったか?」

 

 そう声をかけられて、ようやく我に返る。――危ない。もう少しで飲まれるところだった。なんとか立ち直ったキュルケは、メイドに案内されるままに席に着く。さすがは『王』のメイドである。手慣れている。エスコートされたキュルケが初めに思ったのは、そんなことであった。

 そして、目の前にカップがおかれ、紅茶が注がれていく。香りだけで、素晴らしいものであることが確信できる一杯だった。

 

「一応お菓子は色々用意したけど……口に合わなかったらごめんな」

 

 そういわれて勧められたお茶菓子を口にしてみると……なにこれ。おいしい! 

 

「――はっ!?」

 

 あ、危ない。なぜか知らないけど、今服が脱げたイメージが頭をよぎっていった。……イメージ、よね? 脱げてないわよね?

 簡単に身だしなみの確認をした後、とりあえず落ち着くために紅茶を一口。ほっとする、優しい味だ。あのメイドが入れたのだろうか。とても落ち着く香りである。

 成り上がりとはいえ私の家も貴族。いいものはいいと分かる舌と目くらい持っているのだ。

 

「そういえば、色々と聞きたいことがあったんだよ」

 

 話を切り出したのは、向こうからだった。……本当は夜にでもフレイムを使って部屋に誘い込もうと思ったのだが、流石にそれは性急すぎるかとこうしてまずはお互いを知るためのお茶会、と提案したのだ。人智を超える『宝具』のおかげでこんなにも立派なお茶会になってしまったのは予想外だが。

 しかし、向こうから話しかけてくれるなら望むところだ。相手を知れば、おのずとどのような女が好みなのかもわかっていく。……ふふ、この私と彼を二人きりにした自分を恨むのね、ヴァリエール!

 

・・・

 

 キュルケとのお茶会はかなりの成功を収めたといっても過言ではない。マスターでは怒ってしまうようなことでも、彼女は微笑みながら教えてくれるし、話も上手で相手である俺を飽きさせない技量を持っている。……これだけの技量を持つ子は、久しぶりに見た。母性マックス状態になったティーちゃんレベルの聞き上手である。外見だけで人を判断してはダメということだな。

 そして現在はお茶会も終わり、少し惚けていたキュルケをメイドに送らせた後である。今の俺は情報をまとめ、精査し、これからのマスターを守るための計画をどうするか、と考察する。

 ……といっても、今の状況にマスターを害するような要素は見当たらないので、当分は静観である。現在地であるこのトリステインという国のほかにいくつか国もあるようだがそことも戦争状態なんてことはないようだし。しばらくは俺一人で大丈夫そうだ。

 もしもの時は、そうだな。守りに長けてるか、機動力がある……んー、今のところアストかケンちゃんか……あ、ジャンヌもいたか。うん、その三人のうち誰かだなー。

 

「しかし……帰るときに少し残念そうだったのは何だったんだろうか」

 

 ……考えても仕方がないか。とりあえず、マスターの元へ帰るとしよう。あんまり離れてると癇癪起こしそうだからな。

 

「でもま、彼女たち『貴族』にも通じるってのは、流石『黄金』の侍女だよなぁ」

 

 少し後ろに侍る彼女たちに視線だけを向けて、俺はひとりごちる。

 

・・・




「ふーん……マスターからはこう見えてるんだなー」



クラス:■■■■・■■■■■■

真名:ギル 性別:男性 属性:混沌・善

クラススキル

■■王:EX

終■■■■叙事詩:EX


保有スキル

軍略:A
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの持つ対軍宝具や対城宝具の行使や、逆に相手の対軍、対城宝具に対処する際、有利な補正が与えられる。

カリスマ:EX
大軍団を指揮、統率する才能。ここまで来ると人望だけではなく魔力、呪いの類である。
判定次第では敵すらも指揮下に置くことが可能。

黄金律:A++
身体の黄金比ではなく、人生においてどれだけ金銭がついて回るかの宿命。
大富豪でもやっていける金ぴかぶり。一生金には困らないどころか、子孫代々が生活に困ることは生涯においてない。

■■■■:B+

千里眼:B
視力のよさ。遠方の標的の補足、動体視力の向上。また、透視を可能とする。
更に高いランクでは、未来視さえ可能とする。
「これよりいい『眼』も持ってるんだけどね」とは本人の談。

■■の■■:EX

能力値

 筋力:A++ 魔力:A+ 耐久:B++ 幸運:EX 敏捷:C+++ 宝具:EX

宝具

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

ランク:E~A+++ 種別:対国宝具 レンジ:―― 最大補足:――

黄金の都へ繋がる鍵剣。元々は剣として存在していたものだが、現在は能力の鍵として体内に取り込まれた。
空間を繋げ、宝物庫の中にある道具を自由に取り出せるようになる。中身はなんでも入っており、生前の修練により種別が変わっている。

全■■■■全■■■(■■・■■■・■■■)

ランク:■X 種別:■人■具 レンジ:―― 最大補足:――

詳細不明。

■海■・ナ■■■■■■■■波(■■■・■日■)

ランク:A■■ 種別:■■宝具 レンジ:―― 最大補足:――

詳細不明。

■■■■■■■■■(■■■・■■■■)

ランク:―― 種別:―― レンジ:―― 最大補足:――

詳細不明――?

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