ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント! 作:AUOジョンソン
それでは、どうぞ。
今日は少し特別な行動をせねばなるまい。オルレアン家の所有する屋敷の書斎で、俺は小難しい顔をしながらそう決意した。書類的にはすでに問題は解決しており、あとは本人のところに行って意思の確認……いや、少し勧誘もせねばならないな。あそこにいるだけで、彼女の危険は増してしまう。彼女のためにも、俺のためにもここに来てくれなければ困る。
要するに、ナンパである。それなら基本的に俺がしてるのはそれなので、いつもとやることは変わらないということだ。うん、少し行く気が起きてきた。……しかもあれだけの美少女だし、なんといっても俺のマスターにはないあの驚異の胸囲! バーストバストと言う奴だ。あのレベルのでかさは生前でもあまり見かけなかったぞ……やはり母性とは胸に宿るものなのか……い、いかんな。昔あまりの巨乳具合に膝枕されただけで窒息死しそうになったことを思い出した。だがあれで死んでしまうとしたらそれはそれで幸せな死に方なのかもしれないな。
……ダメだな、変なことを考えていると一生動かない気がする。よし、行くとしよう。
「カルキ、来てくれ」
「→ギル。呼んだ? いつでも準備はオッケー」
ヴィマーナだと死ぬほど目立つので、俺とカルキだけならカルキの『渡星船』で二人乗りができるというのでお邪魔することにしたのだ。これなら早いし隠密性もそれなりにあるし移動だけならうってつけだというものだ。
「ちなみになんで二人で乗れるようになってるんだ?」
「→ギル。私の設計思想的にはギルの『英霊召喚宝具』を基盤にしている所があるので、私とギルの相性はグンバツ。それに、長距離の恒星間移動においてギルと私でくんずほぐれつして暇をつぶすのは合理的」
「……あ、じゃあカルキと誰かが二人乗りできるんじゃなくて……」
「→ギル。『ギルと私』の二人乗りしかできない。あなたの情報をくみ取って、私の体内及び外見はあなた用に最適化されている。……好きでしょ?」
そりゃまぁ、彼女の容姿は特に好みと言うか惹かれるものがあるが……。
「→ギル。あなたが契約することになるマスターを過去、現在、未来まで読み取って、その中にある共通点を取り入れている。どや」
え、俺のマスターって俺の好みの女の子になる確率高いのか……? でも確かに生前のマスターも今のマスターも好ましいというかなんというか……いやまて、『未来』? こいつ俺が今後召喚されるときのマスターまで知ってるのか……!?
「→ギル。それはそう。私は人類の終末を解決するべく生み出されたAI。英霊の座に紛れた時点で時空からは隔離され、そこからあなたをのぞき込んだ。……私は厳密にいえば『英霊』ではないから、その時の情報を持ってここに来ることができている」
確かに、英霊は召喚されたときのことを記憶ではなく記録として英霊の座に持っていくという。……俺はそこからすら隔離されたあの神様謹製の『黄金領域』にいるため、一つ一つの召喚が時間軸に沿ったものになってしまうため未来はわからないのだが……。
しかし、俺の好みに合わせてくれたとは……そういういじらしい所を見せられると……なんというか……。
「→ギル。……抱きたくなった? いつでもバッチ来い。この体は『したい』と思えば準備を完了する便利な機体。出会って2秒で即合体が可能。股間部の装甲も一瞬でパージが可能」
「確かに下半身周りの装甲ちょっと薄めだなとは思ったけどそんなことのために薄くしてたのか……」
史上最低のキャストオフである。だけどこのままおっぱじめると到着までの時間もないので確実にスッキリするまではできない。ここは心を鬼にして我慢する必要がある。くっそ、移動中の時間とか最高にやることなくなるのに……。
狭いという理由で俺に滅茶苦茶体を密着させてくるカルキをなだめすかしつつ地獄の時間を耐えていると、テファのいる森へとたどり着いた。あとの細かい場所についてはエルキドゥの気配を感じ取ればいい。俺とエルキドゥはどんなに離れていてもお互いを感じ取れるらしく、近くなればなるほどその詳細な位置がわかるようになっているのだ。ここまで来ればあとは……。
「あった、あそこに行ってくれるか?」
音もなく俺の指したところに渡星船を停めてくれたカルキに礼を言って降りる。降り立つ俺たちに真っ先に駆けよってきたのは、手にハープを持つテファだった。その後ろからはゆっくりとエルキドゥが歩いてくるのが見える。
片手を上げてあいさつしながら、俺も近づいていく。急な訪問だったのに、テファは笑顔で受け入れてくれた。
「よう、テファ、エルキドゥ。いきなりきてすまないな」
「いえ! ここは僻地ですし、お手紙を送るのも難しいでしょうから……それで、今日は何の御用で?」
「以前話していた移住の話だよ。受け入れる準備も出来たから、呼びに来たんだ」
テファにこれまでの話を伝えておく。全て聞き終わったテファは、みんなも一緒なら、と頷いてくれた。
エルキドゥにも後押ししてもらったので、これからみんなを連れていくとしよう。
「開け、宝物庫」
宝物庫から人員輸送用の少し大きめのヴィマーナを取り出す。荷物をまとめた子供たちは、黄金の船に興奮しっぱなしだ。わいわいと騒ぐ子供たちを落ちないように案内して、空へと飛び立つ。孤児院として使っていた家もそのまま宝物庫に納めたので、向こうに行ったあと屋敷の敷地内に出すとしよう。流石の宝物庫だ。引っ越しサービスとかしたら人気でそうだな。
「さて、戻るか。カルキ、すまないが護衛頼むな」
「→ギル。了解。一人寂しく渡星船の中で周囲の警戒をする」
「……そういうなよ」
なんかすごい罪悪感持っちゃうだろ……。
全員を乗せたヴィマーナは音も振動もなく浮かび上がり、トリステインの俺の屋敷へ向けて飛び始める。アルビオンにある屋敷では他の国の貴族もたまに出入りするので、そこで見られてしまうと騒ぎになってしまう。向こうに行ってからはテファにはこの首飾りを渡そうと思っている。これは耳に限定してだが幻影を出すもので、並大抵のことでは見破ることはできないだろう。耳と言う人体のいち部位に限定することによって幻影の強度を増し、世界を騙す一歩手前くらいまで行ったというなかなか会心の出来のネックレスである。
「テファ」
移動している間に渡しておくのが一番だろうとテファを呼ぶ。結界を張っているので安全だと説明はしたが、子供たちが落ちないかとハラハラ見守っていたテファは、俺が呼ぶと子供たちを心配しながらもこちらに来てくれた。
「なぁに? どうかした?」
キョトンと可愛らしい顔を傾げたテファに、取り出したネックレスを渡す。
「これを受け取ってほしいんだ」
「ふぇ……わ、私に?」
「ああ。ほら、付けてあげるからおいで」
俺がそう言うと、テファは顔を赤くしながらこちらに一歩近づいてくる。あんまり俺のような男と近づくということがないからか、恥じらっているようだ。……って、すっげえな。一歩離れてるはずなのにお互いの間に隙間がないぞ……。流石バーストバスト……これは胸の革命だな……。
「よ……っと。よし、似合ってるぞ」
「ほ、ほわぁ……お、男の人から、贈り物……け、結婚……?」
首にかけたネックレスを触ってなにやら呟いているが、テファが俯いているため細かくは聞けなかった。……あ、そういえばこのネックレスの性能と言うか機能を説明しておかないと。一応空気中や本人の魔力を吸って機能を維持するので特に何かすることはないが、人前に出るときはつけておいて欲しいしな。そう思って声を掛けようとすると、テファの後ろ……俺の目の前でエルキドゥが声を掛けてくる。
「やぁ、そろそろ着くようだよ」
「む? ……そうか、それならば説明は後にすることにしよう。着陸したらとりあえずみんなを休めるところに連れていくよ。それからご飯でも食べて今日の所はゆっくりしててくれ」
「そうか。君がそう言うなら、お言葉に甘えるとしよう」
今日のこれからの予定を伝えると、エルキドゥは子供たちを連れてヴィマーナから降りていく。俺もテファを呼び、一緒に降りることにした。
「ほらテファ、いこうか」
「は、ふぁい! だ、旦那様!」
「ははは、おいおい、まだ早いよ」
確かにウチの屋敷でメイドとして働いてもらうとはいったけど、その呼び方は気が早い気がするな。その辺の説明も明日しないといけないかな。
「よし、ウチの屋敷を存分に楽しむといい。メシに風呂に寝床に、素晴らしいものがそろってるぞ!」
オルレアン屋敷はホワイト貴族を目指しているからな! 無理無茶無謀な働き方はさせないぜ。福利厚生給与もばっちりの優良貴族だ。ふっふっふ、子供だろうが関係ないね! この屋敷は老若男女全員平等に幸せにしてやるのさ!
「お、お風呂! 寝床! い、いただきます……!?」
「どうしたいきなり。お腹へってるのか?」
再び顔を真っ赤にしたテファが妙に頓珍漢なことを言い始めた。風呂も寝床も食べるものじゃないぞ。……エルフは食べるのか……?
あとで確認しようと決めつつ、テファ達を屋敷へと案内したのだった。
・・・
これでテファ達の件については解決したようなものだ。俺の目の前で自動人形に感動している女の子たちを見ながら、書類に目を落とす。行儀見習いと言うか、メイドのお手伝いとして彼女たちは今日からこの屋敷で学びながら働くことになる。見習いなので給料は少し低めだが、それでもみんな喜んで仕事に学業にと励んでくれている。
ちなみに女の子たちはみんなメイドとして働くことになったが、男子はと言うと……。
「……元気だねー」
同じように、外で自動人形相手に感動している男の子たちがいるのが見える。あっちにいるのは通常の自動人形ではなくセイバー、アーチャー、ランサーのそれぞれのモードになった自動人形たちだ。
男の子は騎士にあこがれるものなのか、学業よりも楽しそうに剣を振ったり槍を振ったり矢を撃ったりしている。こんな感じで孤児院から連れてきた子たちは育てている。エルキドゥとテファについては……。
「……テファはわかるけどなんでエルキドゥまで」
「うん? ダメかな。テファは似合うと言ってくれたけれど」
髪をかなり上げたポニーテールにしてクラシックなメイド服に身を包んだエルキドゥが、そう言いながら俺に笑いかけてきた。テファも同じ服を着ているのだが、まぁこっちは偽装の意味合いが強いため気にはしていなかったが、エルキドゥは霊体化していれば身を隠せるはずだ。一緒に着る必要はなかったと思うんだが……。
結構ノリノリで自分の分も要求してきたし、似合ってるから全然かまわないんだが……エルキドゥってもうちょっと人間離れした考え方してる感じあったんだけど……。
「それに、こうして一緒に動ければ何かあった時にテファをすぐに守れるからね。必要な措置と言う奴だよ。この服も性能が良いから戦闘に支障もないし」
……もしかして、気に入ったのかな。
そんなことを思ったが、口には出さないことにしておく。俺の能力の元になったギルガメッシュと対等に渡り合った神の鎖だ。変なことを言って地雷は踏まない方が良い。
本人が納得しているならいいだろう。それよりもアルビオンの復興に関してだ。戦乱に巻き込んでおいてこんなことを言うのもあれだが、人も金も物も足りていない。金に関しては俺の黄金律と宝物庫の中にある宝石でも売れば何とかなるだろうし、物資も宝物庫の中のものを『オルレアン家』としての物として送って来ればなんとかなるが、人だけはなんともならん。トリステインから連れてくるわけにもいかないし……その辺で捕まえてくるのは山賊とか悪徳貴族になってしまう。む、悪徳貴族か……。
「よし、枢機卿に連絡だな」
前のアンリ襲撃事件の時のように、腐敗した貴族はトリステインに多い。ふっふっふ、貴族警察だ! 待ってろよー。
そうと決まれば書類作成だな。がりがりとペンを走らせ、枢機卿用、アンリ用の物を作成して、あとはまずそうな貴族がいた場合に告発できるような書類もそろえておいて、あとは証拠だけと言う状態にしておく。
よしよし、これでとりあえず準備は良いか。話を付けて実際に動くまでは、こっちもできることをやっておかねばな。そういえばちょうど投降した兵士たちがいたはずだ。アルビオンの復興ならアルビオンの人たちを使うのが良いだろう。慣れた土地だし。その働きに応じて金を払って、トリステインから店を出してもらえば経済も回り始めるだろう。そうすれば、外部からも働き手が来てくれるかもしれないしな。貨幣がエキューとして共通してるのは大きいな。あとは復興が始まってこちらでそれなりの給金を出すことを伝えて、船をこちらで出すことを伝えればトリステインから移ってくれる人もいるだろうしな。あとでシエスタやマルトーあたりにどのくらいなら人が来てくれそうか聞いてみるとするか。
「よし、これで事務処理はひと段落か」
しばらく書類と格闘していると、最後の一枚まで終わったらしい。今日の分は終わりかと背伸びをすると、ことりとカップが置かれた。中にはこの世界での紅茶のようなものが。……というかまんま紅茶なんだけどな。聞いたことない茶葉なだけで。誰が淹れてくれたのかと視線を移すと、お盆を胸元に抱きしめるようにあてたテファがはにかみながら立っていた。家庭的な彼女だから、お茶を淹れるのも上手いのだろう。あと、お盆でつぶされた胸が凄いことになっている。思わずそこに視線が行ってしまうが、微笑みながらこちらを見ているエルキドゥに気づいて慌てて視線を反らす。うん、お茶が美味い。
「おいしいな。流石テファ。手慣れてるんだな」
「っ! うんっ。お茶淹れたりとか、お料理とか! 結構得意だよ!」
俺の言葉に嬉しそうに反応するテファ。明るくていい子だなぁ。こういう子が不幸になったりっていうのはやっぱり見過ごせないよな。それにこうして仕事もできるなら最高だ。そういえば学校に編入される準備もしないとな。まぁテファの性格ならどこででもやっていけるだろう。
「さて、そろそろ一旦トリステインに戻るとするよ。エルキドゥ、テファや子供たちのこと頼んだよ」
「うん、任された。そういうことなら僕の得意分野だ」
「テファ、君が今度から通うことになる学院には俺のマスターもいるんだ。仲良くしてくれると嬉しいな」
「うんっ! 同じ境遇のマスターさんがいるならとっても心強いかも! ちょっと不安なことはあるけど……楽しみだよ!」
そう言って笑うテファは確かに不安と期待を抱えているのが見えた。こういうのは実際に行かないとどうなるかわからないからな。俺に出来るのは基盤を整えてあげることだけだ。
……さて、久しぶりにマスターに会えることだし、俺も早めに戻ってマスターとの時間を過ごすかなー。
・・・
またカルキの渡星船にお世話になり、俺たちはトリステインへと戻ってきた。
「ただいまー」
カルキは鯖小屋に向かったので、マスターの部屋には俺だけで戻ることとした。いつも通り霊体化して壁をすり抜け、部屋の中で魔力を固め実体化すると……。
「あ」
「……」
かなり際どい黒猫のような衣装に、丁寧に猫耳までつけ姿見の前でポーズを取っていたマスターが、顔を真っ赤にしながら古びたロボットのようなぎこちなさでこちらに顔を向けてきた。……うん、恥ずかしいのはわかるぞ。でもやっぱりマスターってこういう際どい格好似合うよな。今度マイクロビキニでも送ろうか。
「っ! っ! -ッ!」
「おーけーおーけー、落ち着けマスター。帰ってきたタイミングが悪いのは認めるし見られたくないところ見たっていうのは確かに負い目を感じるよ。……でも一つだけ言わせてほしいんだけど……」
「……?」
「めっちゃ可愛いよ。似合ってる」
そこまで言って、顔を真っ赤にしたマスターの振った杖による爆発で俺は部屋から吹っ飛んだ。うーむ、褒めてもダメだったか。もう見た時点でこの未来は確定していたような気もするな。取りあえずマスターはこれから急いで着替えるだろうから、その時間をつぶすために鯖小屋に行くとするかな。何もなければシエスタはそこで働いているはずだし。
吹っ飛んでから着弾するまでの間にそこまで思考を巡らせると、俺は魔力放出で煤やらを吹き飛ばして身だしなみを整えつつ、鯖小屋へと向かった。
「シエスタ、いるかー?」
ガチャリ、と扉を開ける。外からつながるこの扉を開けるといつも会議やら何やらをしているリビングに出て、そこから寝室や厨房、風呂や地下室に通じる扉や階段があったりする。地下室への階段は隠されているけど。
入ってすぐのリビングにはシエスタの姿があった。……あったんだけど……。
「なにやってるんだ?」
「……えっと」
いつものメイド服ではなく、丈の短いミニスカートのメイド服に身を包み、手と足には犬の足を模した履物や手袋をつけ、頭には垂れた犬耳のカチューシャを付けたシエスタが、前屈をしていた。顔はこちらを向いているものの、背中側には大きい鏡があるため、スカートの中身は鏡越しに丸見えだ。あまりの驚きに固まってしまったのか、顔を赤くしたまま気まずそうなシエスタはこちらに顔だけを向けて固まっている。なるほど、今日はピンクか。
「でも似合ってるし可愛いぞ。シエスタは確かにイヌっぽいかわいらしさがあるからな」
「えっ、あっ、そ、そうですか? えへへ……」
俺の言葉に照れくさそうに笑ったシエスタはようやく姿勢を戻した。聞いてみると、ミニスカ犬メイドで俺のことを悩殺するポーズを研究していたらしい。なんてけなげで可愛らしいんだ。よーしよしと頭を抱きしめるようにくしゃくしゃ撫でてあげると、くぅんくぅんと甘い声を出すシエスタ。シエスタも抱き着いてきてくれたので、しばらく彼女の柔らかさと子犬さを堪能して、ちょっとだけメイドのご奉仕もしてもらい、またあとでなとお預けをして、部屋へと戻る。
「マスター?」
次はちゃんとノックをすると、どたんばたんと部屋の中で何かをする音がしてから、少しの間をあけてから「どうぞ」と聞こえてきた。色々と後片付けをしてたのかな? と思いながら開けてみると、少し頬を赤らめたマスターが気まずそうにベッドに腰掛けていた。いつも通りの制服姿だったが、ベッドがこんもりしているのでその辺に色々と隠してるらしい。片付けの下手なマスターらしい誤魔化し方だな。
「こ、こほん。よく帰ってきたわね。向こうは落ち着いたの?」
そのまま咳払いをして、何事もなかったかのように話を始めるマスター。これはさっきの格好を見たことを蒸し返すのもやらない方がよさそうだな……。取りあえずアルビオンはなんとかなったことを説明して、今日の夜あるというパーティーの話を聞く。
なんでも、『スレイプニィルの舞踏会』と言うものらしく、マジックアイテムの鏡を使うことによって、『理想の人物』になることができ、そこで外見や身分等にとらわれずきちんと礼節を持って接すること、その理想の人物に近づけるように、次の学年で頑張ってほしい、と言うものらしい。
なるほどなー。……それ対魔力で弾いちゃうんだろうか。その辺怖いよなぁ……。俺も理想の姿とやらになってみたいし、ちょっと頑張ってみるか。
「そ、その舞踏会で、私を見つけなさい! いい!?」
おー、そうきたか。でもマスターの『理想の人物』ってだいたい想像つくからな……。まぁいいか。こういうので満足してくれるなら、俺としてもうれしいというものだ。
「わかったよマスター。その舞踏会で出会った生徒一人一人に魔術解除の宝具ぶち込みまくって絶対にマスターを見つけるさ!」
「あんた私の意図わかっててそういうこと言ってるわよね!?」
うがー、と勢いよく俺にまくし立てるマスター。はっはっは、冗談冗談。取りあえずマスターを落ち着かせて、夜の舞踏会までの時間をつぶすことにするのだった。
・・・
「私の理想の姿ですか……卑弥呼さまですかねー」「わらわ? わらわはわらわ以外にないわね。一番理想とするのは自分よ」「私ですか? んー、憧れるのはナイスバディな私ですかねー」「私は……そうだな、一人だけ、理想と言っていい人物がいるから、その人かな」「儂か。儂は……わっはっは、常に最強の自分が理想じゃの! ……む? パクリ? おいおい、なんだこの侍女共は。儂をどこに連れて……おーい……」
誤字脱字のご報告、ご感想お待ちしております。