ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント!   作:AUOジョンソン

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「ッスー……」「……ど、どうしたんですか?」「い、いや、なんでも……ないゾ?」「絶対何かありましたよね!? そんな語尾聞いたことないですよ!?」「……ま、まぁ一日だけ待ってくれ。解決策を思いつく」「解決策って言った! なんか問題起こしてる!」「と、とりあえず一人にしてくれ……」「は、はぁ。……なんかあったら言ってくださいよ?」「ありがとな。……さーって、この爆散した神様デバイスどうするかな……」

それでは、どうぞ。


第五十三話 大いなる誤算

 無事に戻ってきた俺たちは、荷物の片付けもそこそこに、鯖小屋へ集まっていた。マスターも含めてみんなで鯖小屋のリビングで机を囲んでいる。みんなの視線は、カルキに向いていて、早く話してほしいという気持ちが俺でもわかるくらいであった。

 

「→全員。んと、これを見ながら話した方が良いかも。よっと」

 

 そう言ってカルキが机に向かって両掌を向けると、机の上に光が集まり……見覚えのある天体が現れた。これは……太陽系か?

 

「→ギル。正解。えらいえらい。これは太陽系。もうちょっと縮尺上げて……」

 

 カルキが少し手を広げると、太陽を中心としてできていた天体図が広がって今まで出ていたよりも多くの星が現れるようになった。……この小さいのは小惑星とかそんなのなんだろう。

 

「→全員。これでよし。この辺の小惑星なんかで出来てるのが『雲』。これのおかげで、我らが人類が住まう地球、そして太陽系は他の星系やらから発見されにくくなっていた。たまーに変な彗星とかは来ていたけどね」

 

 なるほど……なんかすんごい昔に聞いたことあるような無いような……。

 

「それで、その『雲』とやらがどうしたのだ?」

 

「→バ美肉。あの侵略者たちは、『雲』を抜け、地球を発見し、そこの管理者たる『女神』を通じて星系を奪取しようとしたところ抵抗され……その『鍵』を託された英霊を追いかけてこっちまで来たみたい」

 

 あの土下座神さまは色々と権利持ってるからなー。俺も手伝ってるからだいたいは把握してるけど……『鍵』って……まさか俺か? そんなもの託された覚えはないけど。

 それをカルキに聞いてみると、『見てわかるようなものじゃないと思う』とのこと。なるほど……とにかく、それで俺が狙われていた理由もわかった。その『鍵』とやらを奪取するために、俺のことを倒そうとしているのだろう。物質的なものではないらしいから、俺を倒す以外に手に入れる手段がないってことかな。

 

「それで……あの――仮称『異星人』たちは、向こうのサーヴァントとつながってるって考えていいのかな?」

 

 謙信が頬杖をしながら聞く。カルキは『おそらく何人かはつながりを持っているかもしれない』と答える。確かに、卑弥呼や謙信たちの話を聞くに、何人かのサーヴァントをこちらが倒したとたんに現れたり、何らかの繋がりがあることを示唆するようなことを話していたりしたらしい。……その話聞いた時に異星人にも『推し』の概念あるんだ、と驚いたものだけれど……それでも、八つ当たりで殺されるのは納得いかん。そこは抵抗していこうと思う。つるぎで。

 

「……? なんで握った拳ぶつけ合ってるんですか?」

 

「……いや、必要かと思ってな」

 

 ジャンヌに怪訝な顔をされたので手を振って何でもないことをアピールしておく。……さて、だいたいこれで今の状況はわかった。マスターも頑張ってメモを取り、カルキや他のサーヴァントたちからアドバイスを受けながらなんとか理解したらしい。

 

「なるほどね。……つまり、敵はワルドと同じように、わたしにとっての『虚無』みたいなものを狙って襲ってきてるってことね」

 

「ああ、そういう理解をすれば早いかもな」

 

 マスターとサーヴァントは触媒がなければ『似た者同士』で選ばれることが多いという。それを考えたら、神様が送り込む先を決めたとはいえ、マスターの下に来たのは何かしら縁があったのかもな。

 さて、これで考えることは増えた。取りあえず敵の正体を考察しないことには、攻略法もわからん。カルキが用意してくれた今のところ判明している異星人のリストを見ているが……これほんとに異星人なのか? ……あまりにも……その……地球人っぽすぎるな。まぁ、向こうも知的生命体として社会を構成しているのなら、俺たち地球の人類と似たような悩みやら性格しているのは当然と言ってもいいのかもしれないな。いや、異星人とのファーストコンタクトがあれなのはちょっと考えるところがあるけど……。

 そして、彼らの技術力とでもいうのか、そもそもの存在強度と言うのか……物理的な攻撃よりも概念的な攻撃が効くというのも特性として考えておいた方が良いだろう。乖離剣の攻撃や、渡星船……カルキって船で切ったり撃ったり殴ったりしてたのか……やら、あとはカルナの『黄金の鎧』やら『稲妻の槍』なんかが、それに類するだろう。逆に、信玄や菅野直のように物質や物理法則によって攻撃するサーヴァントはもしかしたら相性が悪いのかもしれない。

 異星人たちは『向こう側』……カルナたちの側の味方として立っている、と言うのが今のところの見方だろう。それが何故かは……向こうの言を信じるなら『推しだから』と言うことになるが……。

 

「それなら、もしかして私たちを『推して』くれてる異星人さんもいたりして!」

 

 ジャンヌが笑いながらそういうと、全員の視線が一斉にそちらに向かう。それは……向こうの目的を考えたらどうなんだろうか。太陽系が欲しいっていうんだから、それを妨害する俺たち側に着く異星人がいるとは思えないが……まぁ、どんな組織も一枚岩とはいかないものだ。一人くらいこちら側についてくれれば一番なんだがな。

 

「……男性、女性と言った区別があれば、マスターが一人ぐらい落とせそうなんですけどね、女性異星人」

 

「人類の性別が向こうの性別と対応してるかわからんからなぁ……」

 

 一応俺のスキルとして女性に対して有利な判定貰えるものがあるので、まぁそれが通じれば、と言う話ではあるんだが……。や、でもいくら女性だとしても銀色に光るウニとかだったらどうしよう……地球人として対応できるだろうか……。

 まぁ、向こうの勢力がどれほどのものかわからないうちは向こうの離反に期待するのはやめておいた方が良いだろう。勢力の人数が多ければ多いほどこちらからも何かしらアクションが取れることもあるが……今いるのが最大勢力だった場合には仲たがいは期待できないと思うしな。

 

「……こうなったら、戦力の増強を図るべきか……?」

 

 かといって、ここで座との道を繋げても大丈夫なものか……一度神様のところに行く必要があるな。

 そう結論付けて、今回の話し合いは終わりとなった。……テファも出来ればこちらに呼び寄せる必要があるかもな。エルキドゥを擁する彼女たちは、もしかするとサーヴァントと言うだけで攻撃対象になるかもしれないし。それに、俺たちの力になってくれればそれが嬉しい。

 そうと決まれば連絡を取って……いや、その前に此方で根回しをしてテファ達が来ても大丈夫な状態にして……アルビオンの復興もあるし、これは忙しくなりそうだ。

 

・・・

 

 入室:S、C、RK、A、P、A、A

 

『つながってる?』

 

『もちろん。『母船』を経由してるんだから、つながるに決まっている』

 

『……先の発言はただの確認なんだから、その論理的じゃない皮肉はやめておいた方がいいと思う』

 

『確かに。いらない反感を買うと思う。謝るべき』

 

『……謝罪する。まだ推しが負けたという事実に心が揺れているのだと思われる』

 

『謝罪を受け入れる。こちらも同じ状況になったならおそらく同じことをすると思う』

 

『私も、指摘の際にいらない装飾を付けたかもしれない。謝罪する』

 

『こちらも受け入れよう。これから話しあいなのだ。余計なわだかまりはなくしておくに限る』

 

『それでは、第一回の襲撃の報告を始める』

 

『まずは私から。やはり地球上で誕生した英雄を元にした英霊と言うシステムは、我々に格で劣るらしい。ほとんどの攻撃はこちらの脅威ではないと判断した』

 

『それには私も同意する。純粋な物理的攻撃力はあり、一定以上のエネルギーを内包してはいるものの、こちらの外殻を貫くものではないと判定した』

 

『だが、何名か注意するべき存在は確認できた。『英霊・ギル』『英霊・カルキ』。この二名に関しては、技術的、概念的に我々も届きうる武装を有している』

 

『『乖離剣』及び『渡星船』だな。あれには注意せねばならないだろう。特に『渡星船』はあの人工知能が未来から持ってきた技術。我々に届きうるものだ』

 

『流石に我々もこの星のテクスチャに影響を受けて本来の性能を発揮できていない。影響の外にいてもあの宝具は我々に届きうるのだから、今の我々には致命傷となりかねない』

 

『故に接触は最低限にするべきだ。向こうも戦力を集中させている。こちらも残りの戦力の合流を待ちつつ、あちらを妨害せねばならぬだろう』

 

『現在は7個……まだまだ総力には程遠いな』

 

『7? ……もう少しいたように感じたが……勘違いだったか』

 

『あの長旅だ。記憶容量の劣化もあるだろう。まぁ気長に待てばいいだろう。全体の8割から9割がそろえば問題はない』

 

『それもそうだな。ならば、各員はそれぞれの場所で活動を再開するとしよう。……私は推し事が忙しくなるな』

 

『おそらく全員その理由で忙しくなるぞ』

 

 退室:S、C、RK、A、P、A、A

 

 入室:A、F

 

『これはプライベートモード。聞かれる心配はない』

 

『了解。だけど、あまり展開していると怪しまれる可能性がある。入室記録も欺騙しておく』

 

『任せた。さて、ついに到着してしまったが……まずは怪しまれずに接触することを念頭に置いておこう』

 

『向こうも警戒しているだろうしね。それには賛同する。どこかのタイミングで二人になった時、向かうとしよう』

 

『同意する。……黄金よ、あと少しだ』

 

『終世の英雄よ……その雄姿、楽しませてもらおう』

 

 退室:A、F

 

・・・

 

「おっはよー! つーかぁ、寝てるんだからこんばんわー、的なー?」

 

「……おはよう」

 

 けばけばしいメイク、ど派手な部屋の内装、変わり果ててしまった神様の部屋に、俺は来ていた。

 大体眠る前に『神様のところに行きたいなー』と考えておけば、それを受信した神様が気を聞かせて俺を引っ張り上げてくれるのだ。まぁ、サーヴァントの体で眠るというのも意識してやらないといけないことなので変な気分ではあるのだが……。

 今日もピンク色のテーブルセットに座った神様が片方の手に虹色の凄まじい色をした飲み物の入ったコップを持ち、もう片方の手をこちらに向けて振っていた。凄いなその飲み物。どんな味するんだろう……。

 

「久しぶりに『会いたい』って来たからー、呼び出したよっ。何かあったー?」

 

「……多分だけど、神様を『そう』した奴らに出会った」

 

「――そうなんだっ。色々と、わかったんだねっ。……ウチがなんでこんなことになっちゃった、とか」

 

「ああ」

 

 そう言いながら俺も神様の対面に座る。……いつも通りガングロである。それから、神様からも色々と話を聞くことができた。なぜ最初から話さなかったのかと言うと、俺を遠ざけているうちに自分で解決するつもりだったから、らしい。それがこのオルタ化して俺の方にも敵が来て……と言う自体になってしまい、伝えることを伸ばしていたらこんなになってしまった、と……。

 ちなみに、地球からこの世界には元々パスのようなものがつながっていたらしく、俺の召喚が影響することはないからばこばこ戦力増やせと言われた。……ばこばこ増やすのか……。

 

「ま、とにかくわかったよ。神様の神格取り戻すためにも、勝たないとな」

 

「――きゅんっ。あー、やっぱカッコいいー! ちゅき!」

 

「うおっ、急に飛び込んでくるなよ……うわ、化粧ついてる! 俺の服がガングロになってる! コレ地肌じゃなかったのか!」

 

「ぶえーん、ウチ感動だよー!」

 

「おい鼻水も涙も涎もついてるって! どんだけ顔から液体出すんだよ!」

 

 夢の中とはいえ腹の部分がびちょびちょだ……。

 ようやく引きはがした神様は、ちーん、と鼻をかみ、涙やらを拭くと顔に手を当てる。それを避けると、元のガングロメイクが復活していた。……世の女性に喧嘩を売ってるレベルの早化粧である。卑弥呼や壱与にも教えてあげてほしいものだ。彼女たちは化粧をするために日も登らないうちから活動していることがあるからな……。英霊になってからちょっと簡略化できるようになったらしくて、『死んで唯一良かったと思ったこと』とまで言っていたからな……。

 俺がそんなことを思っている内になんとか落ち着いた神様が、再びテーブルについて虹色の飲み物をずずずと啜った。それから、少し落ち着いたような雰囲気を出し、ゆっくりと話し始める。

 

「……私から、一つ伝えることがあるとすれば」

 

 外見は全く変わっていないが、その喋りかたは俺の慣れ親しんだ土下座神様そのものだ。一人称も戻っているみたいだし、ついさっき感情が揺れたから少しだけ戻ったのだろうか。とにかく、落ち着いた状態の土下座神様の言葉をしっかりと聞くため、俺も背筋を伸ばす。

 

「相手の侵略星は、一枚岩ではありません。彼らは彼らで地球人類と同じように感情を持ち、派閥があり、好みがあります。あなたたちも可能性は考えたと思いますが……あなたたちに味方してくれる星が絶対にいます。それを見極め、対抗してください。……あなたを巻き込んでごめんなさい。それでも、あなたなら解決してくれると……信じています……」

 

 そう言って、何度か目をこすると、そのまま瞼を閉じ、眠ってしまったように見えた。それと同時に俺の視界もぼやけ初め、領域から弾かれ始めたので神様が無事オルタに戻ったのかはわからなかったが……。

 とにかく、良い情報を得られた。これで戦力増強しても問題ないことはわかったし、敵も完全に一枚岩ではないと確定したのはラッキーだったな。

 

・・・

 

 とりあえずの指針を得られた俺は、まずは土台をしっかりさせようと決意した。まずはアルビオンの復興、および改造計画だ。流石に空中国家なんて治めたことはないので色々と不慣れなところはあるが……国家の運営は慣れたものだ。書類の整理から復興する場所の区画管理、下から上がってきた陳情やら物資の補給要請やら……。やることはそれこそ山のようにある。さらにそこからただの復興ではなく改造まで行こうとしているのだからそりゃ忙しいというものだ。俺もずっといられるわけじゃないからこうやっていられるときに仕事を進めておかなければならないため、さらに忙しさを感じる。

 なんだか近々学院では一風変わった舞踏会があるらしく、その時に一度戻ろうとは思っている。マスターやアンリからも参加するようにと言い含められているのだ。なにやら面白い趣向を凝らしているらしいので、それを楽しむのも良いだろう。

 そのためには、ここでの仕事を済ませてひと段落つける必要がある。頑張らねば!

 

「うおおおお! 俺は今燃えている!」

 

「……なんですか急に……こわぁ」

 

 がりがり! とペンを走らせる俺に失礼なことを言うのは書類を運んだりと手伝ってくれている小碓だ。出来上がった書類の送付、お茶淹れに肩もみ等々の雑用を一手に引き受けてくれている。本人の談としては「実務は手伝えないけど、仕事をする主を煩わせないようにはできる」とのことらしく、こうして甲斐甲斐しく世話をしてくれているのだ。

 向こう側……トリステイン側にはマスターの護衛としてカルキや信玄、アンリのそばにも一応と言うことで謙信が出張っている。

 

「……そういえば、しばらく前からあの飛行機乗りさんいなくなったみたいですね」

 

「そうなのか。……ん? ……大事件じゃないか!?」

 

「なんかマスターともどもゲルマニア行ったみたいですよ。飛行機作ろうと色々試行錯誤してましたから、製鉄に強い国に行ってみようって思ったんじゃないですかね?」

 

「あー、そういうことか」

 

 びっくりしたなぁもう。襲撃受けて座に戻ったのかと……。

 それにしても、何か一言あればいいのになぁ。……でもあの菅野直だしな。思いついたから行ったっていうのが一番ありえそうだ。それにつれていかれたのなら、こちらに何か言う暇もないのはわかるかもしれないな。

 

「コルベール先生も大変だなぁ」

 

 だがあれくらい心の広い人じゃないとマスターやってられないだろうしな。先生側にもメリットがないわけじゃないから頑張れてるところはあるのかな。

 

「っしと」

 

 そんなことを話しながらも、日が暮れる前にはその日一日分の書類は片付いてしまう。このくらいならば、ため込むこともなく処理することは可能だ。背伸びをすると、ぱきぽきと背骨あたりが鳴るのを感じる。英霊になっても、こういうのは変わらないものだな。

 それから、小碓をねぎらって、明日の調整も終わらせてしまう。今日はこのままこっちで寝るので、自動人形にベッドメイクもお願いしておく。そのあたりの話をし始めた瞬間に顔を赤くして期待するような顔でこちらを見上げる小碓を軽く小突いて、正気に戻しておく。今日は普通に寝るぞ、と伝えると、不満そうな顔をする。

 

「どうせ一緒に寝たら僕のこと襲うんだから、変わらないのに」

 

「そんな人を性欲お化けみたいな……」

 

 ため息をつきながら呆れていると、いつもはぱっちりとした可愛らしい瞳をした小碓がジト目をしながらため息をついてきた。なんだとぉ?

 確かに俺は自他ともに認める性王だし、自身で成した逸話はすべて女関係だし好みだったら男の娘だって行くし全世界に俺の血を分けた子供がいるし一日最大で25人相手にしたし後宮が一つの国みたいになってたこともあったけど……おや、もしかして俺性欲お化けか……?

 

「ああ、ようやく自覚しました? まったく、その性欲で一つの国を落としておいて何をいまさら」

 

「ばっ、お前、それは俺の中で黒歴史なんだからやめろ!」

 

「はー、凄いですよねー、その国の王族の女性から何からすべて落としたせいで国まで落ちるんですから」

 

「……決めた。小碓、ベッド行くぞ」

 

「ふえ? や、だってまだお風呂とか入ってな……」

 

「いいから、明日まで休ません」

 

「やば、言い過ぎ……あ、あの、反省してますので、何卒……」

 

 もう遅い。小碓は俺の逆鱗に触れたのだ。俺を怒らせると怖いということを教え込まなければなるまい。王として、こういう時になめられてはいけないのだ。

 

・・・

 

 それから、書類整理をしたり復興をしたり改造計画を少しずつ進めたりして、ある程度の目途が立ったので学院へ帰ることにした。 

 ちなみに小碓は初日以降ベッドが定位置となってしまったので、自動人形を補佐として仕事を進めていた。

 

「……うぅ、もう怒らせないようにしないと……」

 

 ベッドに縛り付けられて休みなしで俺の相手をさせられ、仕事中でも解放されなかったためにこの数日間小碓に自由は全くなかった。何も着ていないため、俺が着せた外套の下はすっぽんぽんである。ちょっと人からしてはいけない臭いがしていたので、出発直前に致した後一緒に入浴したのだが、魔力で服を編むことを禁止したためこんなことになっている。

 流石にちょっと寒いので外套は着せているが、寒さだけではない顔の紅潮からして、小碓的にもまんざらではないのだろう。ずっと腰ひけてるし。

 

「た、たまに……十年に一回くらい……いや、五年……んー、一年に一回くらいはあっていいかもなぁ……」

 

 遠くを見ながらそんなことをぼそぼそ呟いているので、来年くらいにまたやってあげるとしよう。

 時期によってはアルビオンはトリステインから離れてしまうので、ヴィマーナでも少し時間がかかる。その間にも宝物庫から取り出した宝具やら何やらを組み合わせて何かいいものが作れないかと試行錯誤していく。

 次に召喚するとしたらアーチャーかー……あんまり知り合いいないんだよなぁ……インド神話に一人……いや、二人で一人の扱いの子と、ケモ耳の子、戦国時代のやべーやつ、もっと昔のやべーやつ、色々いるけど誰を召喚するべきかな……この状況だと概念的な宝具を持っている……結構古めの英霊のほうがいい気がするんだが……。

 ……弓じゃないけど一人思いついたな。あいつが応えてくれるかはわからないが……やってみるとしよう。それに、学院に帰ったらテファとエルキドゥ、それに孤児のみんなを住まわせられるようにオルレアン屋敷をなんとかしないとな。

 

「帰ってからも仕事がたくさんだなー」

 

 少しして、学院が見えてくる。さて、とりあえずは学院長室に突っ込むか。

 

・・・




「んむ! なんか呼ばれそうな気配! じゅ、準備しておこうかな。ええっと、これとこれとこれをもって、これは着ていくとして、あ、これも忘れないようにしないとね。んーと、んーと、あとは何かあるかな。……こ、これで呼ばれなかったら滅茶苦茶痛い女だよね……う、うーん、ま! なんとかなるか! 召喚されたときの言葉とか考えておこうかな……」


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