ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント! 作:AUOジョンソン
それでは、どうぞ。
「はぁぁっ!」
俺のエアが、カルナの槍とぶつかり、火花と雷鳴が轟く。神秘の強度がお互い高いので、エアも槍も傷つくことなく姿を保っている。戦いが始まってから何度もこうして刃を交えたが、未だに膠着状態が続いている。
「→太陽。左から失礼」
「いや、謝らずとも良い。俺には通じん」
その隙をついたであろうカルキの一撃も、カルナは防いでしまった。……鎧が無くなっているというのに、その代わりの槍とカルナ自身の技量が高すぎる所為でカルキと言う高性能サーヴァントと共に戦っているというのにずっとこうして状況が動かないままずっと打ち合っている。
何度か魔力を引き出されたのを感じたので、おそらく向こうでは何人かが宝具を使っているのだろう。もう、決着がついているのかもしれない。……俺がドン引きするくらいの魔力が引っ張られたので、たぶんジャンヌは第三宝具を使ったのだろう。あれは本当に魔力消費半端じゃないからな。
決着がついたなら、こちらに来てほしいが……カルナと打ち合えるようなサーヴァントはジャンヌくらいか……? 小碓は少し出力的に問題がありそうだし、謙信と信玄はあまり相性が良くないのだ。謙信の刀八毘沙門天は元々インド神話から来たものだし、信玄はそもそもアニエスを依代にしているだけのデミ・サーヴァントのようなものなので、カルナのような強敵とぶつかり合った際に、アニエスの体が先にダメになってしまう可能性が高い。
卑弥呼や壱与やマリーはそもそも直接戦闘に向いていないし、ぺトルスは……いまだに実力が不明瞭すぎる。
「ノーモーションでレーザーを撃つなよランチャー!」
「俺はランサーだ。……だが、その呼び名でも構わんな」
その強すぎる眼力が視覚的に見えるようになっているという宝具の一つ、『
……今度エア神の祭壇を作るとしよう。しっかり祀らないとそろそろ罰が当たりそうな気がする。
「そのためにも、生き残らねばな……」
・・・
「止まって、ジャンヌ」
「……だれ、ですかね?」
小碓の静止に、ジャンヌも怪訝そうな顔をして立ち止まる。
「……サーヴァント、かな? 英霊っていうか、人間に見えないけど……」
二人の前に立つのは、かろうじて人の形をしているというだけの銀色の物体。
「私も」
「喋った……!?」
「……私も、流石に推しを殺されては怒る」
「推し……?」
「お前たちも、大切なものを殺されれば同じように怒るだろう。私は、感情と言うものを理解している。故に、お前たちには八つ当たりをしに来た」
そういうと、銀色の物体は腕のようなものを二人に伸ばした。瞬間。
「――っ! 避けて!」
「え、きゃ!」
敏捷の高い小碓が、それでもぎりぎりで対応できたレベルの速さ。
それでも少し間に合わなかったようで、庇われていたもののジャンヌは腕に傷を負ってしまった。
「……! これって……!」
「考察は後! とりあえずこの場をなんとかするよ!」
「りょ、了解っ!」
二人はそれぞれ獲物を構える。それを見て、銀色の物体も両手のような部位を前に出す。
「嬲るために出力は落とす。が、死ぬ気で避けろ。蔓の射手の名は伊達ではないのでな」
・・・
「……妙な気配だね」
「うむ、感じるか」
謙信と信玄は、駆けたまま短くやり取りをした。
うっすらと近づく『何か』を感じ取ったのだ。
「よく気付く」
「っ! 信玄!」
「うむ」
急ブレーキをかけて止まる二人。背中を合わせあたりを見回すも、茂みから反響する声は李徴のようにどこから聞こえてくるかわからないように反響している。
「私の使途を倒しおって。あれを用意するのにも少なくないリソースを使っているのだぞ。……回収して再利用するにも限度がある。……つまり、リソース不足なのだ」
「……なんかお金ない会社の役員みたいなこと言ってるね」
「故に。お前たち二人を破壊し、その霊的リソースを回収して再使用する」
「やれるもんなら」
「やってみるがよい!」
・・・
「少し、静かになったわね……」
「……ええ、不気味なくらいにね」
ルイズが不安そうにつぶやいた言葉に、卑弥呼が含みのある返答を返す。
「卑弥呼さまッ!」
「わかってるわよ壱与。戦う準備をしなさい。ぺとの字、あんたは小ピンクを守ってなさい」
「いや……このような時に先頭に立つ者こそ聖なる騎士! 自分に任せたまえ! 聖なる自分に!」
「ばっ、あなたねぇ、卑弥呼さまに指示されたんなら従いなさいよっ!」
「……や、良いわ。前衛が必要なのはその通りだし……こういうのは自分の思い通りに動かそうとすると予想外の動きをされて腹立つもんなのよ」
ぺトルスの言葉にかみつく壱与であったが、それに対してさらに卑弥呼があきらめたように言葉をかける。そんな卑弥呼の言葉に、壱与は感心したような声を上げた。いつもは暴走気味な壱与を大人しくさせるとは、とルイズも感心したように息をついた。
「ほへぇ、そんなもんなんですかねぇ。……それにしても、なんだか実感籠ってる言葉ですね」
壱与からそう言われて、卑弥呼はカッとなりかけた頭を無理やり落ち着かせた。全力を尽くして、『お前のことだよ』と言う言葉を飲み込んだのだ。実感も何も、実体験からの言葉であるから、そりゃ説得力も実感も出るというものだ。
なんとか感情を落ち着かせた卑弥呼は、苦手な鬼道を使って空間に働きかけ、魔力の流れを探知……つまり、『気配察知』を行った。相手が存在しているのならどこにいるのかを調べようと行ったそれには、しっかりと反応が一つあった。
「……壱与」
「はい、壱与も見つけました」
卑弥呼よりも鬼道に長けている壱与は、さらにその気配がどれだけの魔力を内包しているかまで察知できていた。それと同時に、いつも働きかけている霊的存在が、『近づきたくない』と感じていることも感じ取っていた。
「……変なの。どんなものにも興味を持つ精霊が近づきたがらないなんて」
「ふむ、聖なる精霊が近づきたがらない……つまり、相手は邪なる存在! 自分が戦うべき相手と言うことだ!」
そう言って、ぺトルスは槍を回し、構えた。その姿は堂に入る様子で、彼女の自信を表しているようであった。
「……こういう時脳筋は助かるわね。さて、と言うわけでそこのお姫様たちは任せたわよ」
「ええ、お任せあれ! 時間稼ぎくらいはさせてもらうわ!」
マリーが元気にそう応えるのを見て、卑弥呼はニヒルに笑う。それから気配の近づくほうを見て……。
「なにアレぇ……」
思わず出た、と言うような壱与の言葉に、内心で同意したのだった。
なぜなら、姿を現したその『気配』と言うものが……。
「……ウニ?」
宙に浮く、球体に長い棘を生やしたような、銀色に輝く物体だったからだ。
・・・
「……カルキ!」
「→英霊王。こちらでも感知した。これは……英霊ではないもの」
「……ふむ」
すでに周りの森林は吹き飛んでしまっているこの戦場で、俺たちは三人とも動きを止め、不思議な静寂が周りに広がった。
……全員が周りに視線を走らせているが、お互い警戒だけは怠っていない。だから、この瞬間に『隙あり』と飛び込むようなことはしないのだ。実は隙が無い、と言うことに三人とも気づいているからだ。
「……カルナ、ここは一時休戦と行かないか」
「→英霊王。このまま続ければ勝てる」
「けど、カルナのあの反応は、向こうにとっても不測事態ってことだ。……お互い、マスターが気になるんじゃないのか?」
俺がそう言うと、カルキは納得したようで一歩下がった。俺とカルナに任せるということだろう。カルナも顎に手を当て、少し考える仕草をする。一秒が何分にも感じるような沈黙の後、カルナは軽く槍を振った。
「お前の言、もっともだ。ここは一度退くとしよう。……お互い、次に会った時は決着をつけるときだと喜ばしい」
「ああ、俺も、お前みたいな強者とは早めに決着をつけておきたいからな」
俺がそう言うと、軽く笑ったカルナはその場から消えた。霊体化と言うよりは、その俊敏性で瞬間移動もかくやと言う速度で動いたからそう見えたのだろう。俺もカルキに声を掛け、マスターの所に急いで戻ることにした。
マスターのいる方向へ駆けだすと、カルキが隣で並走しはじめる。
「→英霊王。この感覚は、英霊じゃない。……私に、とても近しい者」
「……なるほどな。土下座神さまの『アレ』も、関係してるのかもな」
久しぶりに聞きに行かねばならないかもしれないな。そういえばしばらくあの空間に行ってない気もするし……まぁ、あのテンションの土下座神様とあんまり話したくなかったっていうのはあるけど……。
「→独り言。星の力を感じた。……結構、大きな話になるかもね」
「……かもな」
そのまま全速力でマスターの下へ駆けつけ、見たものは……。
「→誰か。なにあれ?」
「や、俺もなにアレって感じだ。……光るウニか?」
「あ、ギル!」
ウニを挟んで向こう側に、マスターたちの姿が見えた。どうやら、戦闘にはなっていないようだが……。
「→! 危ない!」
一瞬反応が遅れた俺を助けたのはカルキだった。どごん、と武器の腹の部分で俺を殴るように突き飛ばし、致命傷を避けてくれた。視界の端に移るのは銀色の棘。どうやら、あのウニから伸びてきたものらしい。
「どうやら、俺を目の敵にしているようだな」
今まで膠着状態だったのに、俺が来た瞬間にこうして攻撃的になった……しかも俺を狙ってきたということは、そういうことだろう。どこでこんな不思議なウニから恨みを買ったかはわからないが、攻撃してくるというのならこちらも反撃するしかあるまい。
「行くぞ、カルキ!」
「→戦友。気を付けて」
そう言ってお互いに走り出す。あのウニは棘を伸縮させることができるらしく、しかも集中していなければ俺では見逃すほどの速度で伸縮が可能らしい。単純だけど、かなりの脅威だな。一度エアで弾いてみたが、お互いに傷つかずに終わった。なんて硬さしてるんだこのウニ!
「愚かなりし黄金よ。この星が、お前の墓標となる」
「喋れるのかこいつ!」
「→英霊王? 何を言っている?」
「は?」
……え、俺だけに聞こえてるのかコレ!
あれか、こいつ、脳内に直接! ってやつか! 神様以外にやられたの初めてだぞ……!
そもそも俺にそんなことができるってのは相当な上位存在じゃないか……!? 勝てるのか、こいつに……?
「って言ってても始まらんか。できるだけの事をやるしかないな!」
空中に浮かんだまま動かないこのウニは、棘を伸ばすだけで俺たちの接近を拒んでおり、カルキや俺のように接近戦のできるサーヴァントでなくては接近も出来ないだろう。こういう時に謙信とかがいると良かったんだが……ないものねだりをしてても仕方がないな。
「……ふっ!」
短く息を吐き、光るウニに駆けていく。俺を近づけまいとするからか、ウニは回転しながら棘を伸ばすという回避難易度を上げる動きをしてくる。
……アクションゲームじゃないんだぞ……! なんて心の中で悪態をつきながら、時に避け、時に弾きながら、その短い距離を全力で疾走する。俺の正面以外をカバーするようにカルキが動いてくれているおかげで、俺自体はそんなに厳しいとは感じないが……それでも伸び縮みにかかるスピードがほとんど視認できない所為で、たまに勘で弾いてるときもある。……なんて存在なんだこのウニは……! 英霊でも神霊でも精霊でもないこの雰囲気……まさに別次元の存在と言うのが正しいような神秘の密度……果たして、エアが通るかどうか……だがまぁ、ここまで一緒に戦ってきた相棒と言っても過言ではないこの乖離剣を信じるしかないな!
「愚かなりし黄金よ。お前の格では届かぬ」
「そう言われて諦めてたら、王なんてやってないさ!」
乖離剣の射程圏内に入り、その棘ではなく本体の球体に突きをいれる。刀身の回転も混みなので、相当な威力のはずだが……。
「無駄なり」
ぎゃりぎゃりとぶつかる音はするものの、それ以上はどうしても動かないと感じ取ってしまった。
「→英霊王! 離れて!」
カルキの声に、後ろに飛びのく。直後、カルキの武器がウニの棘を弾いて防いでくれていた。……危なかった。あと一瞬遅れていれば、致命傷とまではいかなくても何かしらの傷を負っていただろう。
「助かったカルキ」
「→英霊王。礼は後。今はこの春の季語をなんとかするのが先」
ウニをそう表現するのはカルキくらいだろうな、と少しだけ笑い、心が軽くなるのを感じた。彼女なりのジョークなのかもしれない。
「→春の季語。お前の目的がわからない。こちらを壊滅させるだけならば全力を出せばいいはず。なぜしない?」
「……愚かなりし黄金と共に歯向かう機神姫よ。このような原始生物どもに我々が本来の力を発揮することはない。我々の格が落ちる」
「→春の季語。……なるほど。お前の存在……ある程度は想像がついた。どうやって雲を抜けてきたのかはわからないけど……お前だけじゃないってことか」
「ふむ。お前ほど進歩した知能ならばたどり着くということか」
カルキがなにやら何かしらの結論に至ったようだが……流石に知識が不足しているからか俺は全く分からない。だが、『カルキが気づいた』というのが大きなヒントになるのだろう。取りあえず、ここを乗り切った時にカルキと答え合わせをするとしよう。
なんとか仕切り直そうと乖離剣を構えなおすと……。
「……ここで退こう。命拾いしたな、愚かなりし黄金よ」
「なに?」
「こちらにも事情がある。……『ストレス解消』も出来たことだし、大人しく引く」
一方的にそういうと、棘を伸ばすのと同じ速度で上空へ飛んでいくウニ。それを見届けてしばらく警戒はしてみるが、十分に時間がたっても何事も起こらないことを確認すると、構えを解いて乖離剣を宝物庫へ戻す。そんな俺の下に、カルキが駆け寄ってきた。
「→英霊王。無事? けがはない? 痛い所とかない?」
「おかんかお前は。大丈夫だよ。……まったく太刀打ちできなかったから心は少し傷ついたけどな」
「→英霊王。なら大丈夫。英霊王の心は強いから」
ふん、と何故かカルキが誇らしそうにそう言って胸を張る。……まったく、この子は。真顔でそういうこと言うから冗談かそうじゃないかすらわからんな。
「……ところで、あのウニについて何かわかったのか?」
「→英霊王。それは全員がそろってから。……おそらくそろそろ、他の者たちの『襲撃』も終わる」
「なに?」
『襲撃』だと? と言うことは、他のサーヴァントたちの元にも……?
俺がパスを通じてみんなのことを確認しようとすると、すぐ近くにその反応が。がさがさと茂みをかき分けて、謙信と信玄が現れる。具足が少し汚れ、ボロボロになっているのは、おそらくサーヴァントの戦いだけではなく……あのウニの仲間に『襲撃』されたからだろう。鎧を主に武装とする信玄はともかく、謙信は『そもそも攻撃に当たらなければ防御力ゼロでも大丈夫』みたいな頭おかしい理論を持っているので、こうしてぼろぼろになっているのは珍しいことだ。
「やー、ただいまー……死なずに済んだよー」
「かっかっか! あのような存在がおるとは、世界は広いのぉ!」
頭に乗ったはっぱを払いながらため息をつく謙信とは正反対に、木の枝やらなにやら引っかけたまま呵々大笑する信玄(アニエスのすがた)。こっちは人の姿を借りてるんだし、しかも女の子の身体なんだから、もっと気を付けて動いてほしいものだ。お嫁さんに行けなくなったらどうするんだ、全く。
信玄たちに声を掛けようとすると、別の茂みからジャンヌ達も出てくる。こちらもボロボロになっていて、信玄よりも木の枝や葉っぱ、泥やらに塗れて帰ってきた。
「うあ゛ー……ひどい目にあいましたー……」
「ああ、見た目でわかるよ。大きいけがはしてないか?」
俺の言葉に、ジャンヌはにっこりと笑って、むん、と力こぶを作って「だいじょぶです!」と答えた。
「そっちにも変なのが出たのか?」
「あ、はい。なんか銀色に光る人型みたいなのが……生物っぽくはなかったんですけど……」
「腕が伸びて攻撃してきましたし、『蔓の射手』って言ってました」
腕が伸びる? 『蔓の射手』? ……そんな逸話を持っていて、銀色に光る人間……? あ、いやいやちょっとまて、俺たちが相手してたのは光るウニだし、英霊であるとは限らないのか……? カルキが何か気づいていたみたいだし、話を聞いてみよう。……なんか無言で胸張って待ってるし。
「……とりあえず、ここは危険かもしれないから港へ向かおう。その間に話を聞かせてくれるか、カルキ」
「→全員。了解。まず前提として、我々の前に現れた『アレ』は……いや、『アレら』は英霊ではない。かといってこちらの世界の何者かってわけでもない。……あれは、我々人類が住まう星の『外』から来た、異邦者」
「星の外……『地球外』の存在ってことか」
「→英霊王。その通り。かといって『地球外生物』とか『宇宙人』ってわけじゃない。……いや、向こうの見方からすれば向こうが『生物』とか『人類』であってこっちが『星外存在』なのかもしれないけど……」
「あー……その辺の『見方』の話は後に回そう」
それから、俺たちは港へ向かうために新たに馬車を出したりと準備をして、再び帰路につく。その間にも、カルキからの説明を聞いて、それぞれが気になることを質問していく。俺たちですら付いていけてない話しなので、アンリやマスターなんかはキョトンとした顔をしている。
……この子らになんて話せばいいんだろうかな。無関係ってわけじゃないからあとで説明しないといけないんだけど……。
「それで? あれの細かい正体まではわからんかったのか?」
信玄がどっこいしょ、とおっさん臭い声を上げながら荷物を馬車に乗せながら、カルキにそう聞いた。カルキは散らばった荷物を拾って手に持ったまま、顎に手を当てて考え込む仕草を見せた。それから、少し眉間にしわを寄せた顔をして、カルキは口を開く。
「→バ美肉。そこは難しい。人種が違うことまではわかっても、個人の名前までは初対面でわからないでしょ?」
「んむ、それはたしかに」
「あんな顔もよくわからない銀色の人型、初見じゃわからないですよねぇ」
「人型? 銀色のウニじゃなかったか?」
ジャンヌの一言に、俺は先ほどであった謎の存在を思い出しながら返す。あれは……人型には見えなかったよなぁ。俺の言葉に、ジャンヌも俺と同じように首を傾げ、それから小碓に視線を移す。ジャンヌは小碓と一緒に遭遇したらしいから、それで意見を貰おうと目をやったのだろう。
小碓はそんなジャンヌの視線を受けて、一つ頷いてから『ヒト型だったよ』と答えた。ふむ、二人して人型だったというなら、俺が出会ったウニとその人型は別の姿かたちをしていて、もしかして別種族の可能性が……?
「→英霊王。それは彼らに『一定の姿』がないだけ。単一の能力だけの姿だけではなく、様々な環境、行動に適した姿を取れるというだけ。あとは、この星のテクスチャに影響されているのもあるとおもう」
カルキによると、この星系外からくるようなものの中には、形態を変えてそれぞれの環境に適応したりする存在がいるとのこと。カルキも一応形態変化ができるらしいが、それを武装及び乗機に代行させているらしい。なので、今カルキは人型以外の形態変化はできないとのこと。……それでも宇宙空間で普通に生存できるらしいが。化け物かよ。
それに、星には星の『テクスチャ』と言うものがあり、それに影響されて一部性能が変わることもあると言うが……。
「→英霊王。人にもそういうのがある。地球と言うテクスチャから脱し、無重力の星の海で暮らすことによって、能力的な変化が行われることがある。……つまり『ニュータイp」
「おっとそこまでだ。まだ現代の人類には早い概念だろそれ」
ぴしぃ、と頭に電流が流れるようなエフェクトと共に、俺はカルキの言葉を遮った。なんというか、ここでそれを言うのはまずいと思ったのだ。これも星の強制力と言うものか……!
「何考えてるかわからないけど、たぶん違うと思うよ」
「えっ」
そのあと荷物を積みながら話した内容としては、『おそらく太陽系外から来た存在』『ほとんど光と同じ速度で来た』『有機的な生命体ではない可能性が高い』くらいのものだ。それに、たぶんではあるが、『この星のテクスチャに上書きされ、一部性能が劣化している』と言うこともカルキは可能性として挙げていた。
いくら環境適応能力があるとはいっても、宇宙にあるもののほとんどが重力の影響を受けているように、どうしても星からの影響を完全には防げないというものがある。そのため、やってきたあの存在達は、このマスターのいる星の影響を受け、多少性能的には劣化した状態で現界しているとのことだった。
「なるほどな。……俺たちで、勝てるか?」
「→英霊王。勝てる。彼らは物理的にはほぼ影響を受けないが、概念的な影響には多少脆弱性がある。あなたの乖離剣や、私の渡星船、セイバーがその身に宿す神聖概念なんかも、彼らには通用すると思う」
「そういうことか。……刀で切れるならば、私が恐れることはないね。この刀と、磨いた技で、あの星の海から来た敵だろうと切って見せよう」
「ふぅむ、ワシにはちと難しいかもしれぬなぁ。……じゃが、それでも奴らを張っ倒せば、それは我が力の証明! 面白くなってきたのう!」
もし機会があれば、神様にもいろいろと聞く必要があるかもな。……彼女が変わってしまった理由も、そこにあったのかもしれないし。これからのことを考えて少し憂鬱になりながらも、俺たちは港へ向かい、無事船に乗ることが出来たのだった。
・・・
→みんなへ。超高性能美少女型AI搭載人類救済用英霊の、カルキちゃんだよー。今日は、いろいろ出てきた『へんないきもの』を紹介するよー。
・銀色のウニ:たぶんだけど一番存在強度が強かった。私とギルが二人がかりでようやく傷をつけられる程度かもしれない。攻略するのは骨が折れそう。
・銀色のヒト:『蔓の射手』を自称する変なヒト型。たぶんだけど13キロ以上伸びると思う。推し事が忙しいらしい。
・森に潜むモノ:バ美肉たちが出会った森に潜んで攻撃してきた何者か。今のところ一番情報が少ない。中間管理職みたいな夢のないことを言っていた。
今日は以上! また次回をお楽しみにねー。
→独り言。……ふぃ。これでいいかな? 肩が凝る……。さて、雲を乗り越えてきたと言うことは、九つ目もたぶん動き始めてるのかな……英霊王、一緒に頑張ろうね。
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