ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント!   作:AUOジョンソン

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「……私たちの将来、とか?」「何ってるんだマスター。マスターの将来なんて俺のお嫁さんに決まってるだろ」「ふぁっ!? あ、あんたの、お、奥さん……!?」「いやだったのか?」「い、いや、じゃないもん。とっても、嬉しい、もん」「流石はツンデレの鑑だなぁ。マスター。くぎゅうううう!」「ひえっ! きゅ、急に何叫んでるのよ!」


それでは、どうぞ。


第四十九話 よくよく考えないといけないこと。

「おほん。それで、本日はどんな用で?」

 

 会議室の上座に着いたアンリが、神妙な顔を作ってわざとらしく咳払いをする。隣には枢機卿もいるので、内々の話をするにはもってこいの状況だ。

 

「今回の戦争でのことで口裏を合わせておこうと思ってな。俺が『伯爵』としてやったことを報告しておこうと思って」

 

「おお!確かにそれはありがたい! お主に任せた『オルレアン伯爵』の話を聞けば、こちらも判断がしやすくなるというもの」

 

 嬉しそうに声をあげる枢機卿のことをアンリがちらりと見てから、一度短く息を吐く。それから、こちらに視線を戻して、頷きを一つ。『話してほしい』のサインだろう。

 

「なら節目になった『反乱』の話からしようか」

 

 そこから、俺はアルビオンでの出来事を報告し始める。あの『反乱』の兵は俺たちがロンディヌウムの城を制圧したくらいから気を失い、再び目を覚ました時には混乱はしているものの、どうも反乱のことはすっかり忘れていたようなのだ。壱与達の調べたところによると、すでに彼らを書き換えた『何か』はさっぱりと消えていたらしい。

 この感じだと、後遺症もなさそうだとのことだが、壱与の話だと『水の力』を感じるとのことなので、今度ラグドリアンの湖に行って精霊に指輪の力のことを聞きにいかなければならないだろう。とにかく今はアンリ達にアルビオンであったことを説明するのが先だろう。

 そのあとに俺が『戦時特別任命書』を使用したことも報告しておく。それで兵士たちを動かしたので、トリステインの兵士や貴族たちには責任を取らせるようなことをしないでほしいと根回ししておく。彼らはあの『反乱』が起きてから一日で体勢を立て直してよくもまぁ首都まで突っ走ってくれたものだ。もちろん俺が召喚したサーヴァントたちの力もあるが、トリステインの兵士たちみんなが頑張ってくれたから、あんなにも早く侵攻出来たのだ。

 

「なるほど……もちろん、あなたの指揮もあなたの指揮に従った者たちも処分するつもりはありませぬ。それに、ガリアの艦隊が動いていたという報告もあります。それに先んじて、ほぼトリステイン一国でアルビオンを手に入れられたのは大きい!」

 

 興奮したように声を荒げる枢機卿。

 

「確かに……マザリーニの言う通りアルビオンをあの裏切り者たちから取り返せたのは大きい。……彼への褒賞は決めているの?」

 

「ええもちろん。あの状況をひっくり返し首都を落としたというだけで新たな勲章を作らねばならぬほどの功績ですが、それだけでは足りませぬな」

 

「そう。それなら、アルビオンを任せましょう」

 

「え?」

 

「は?」

 

「アルビオンをトリステインの領地として、アルビオン辺境伯領として、その土地を修める辺境伯としてオルレアン辺境伯とするのが良いと思うのです」

 

 得意げな顔をしてそんなことを言ったアンリは、どうですか、と我ら二人に聞いてくる。それはどうだろうか、と声を上げようとしたが、それよりも早く枢機卿が声を上げた。

 

「それは良い! ギル殿の手腕ならば、アルビオンをお任せしても問題ないでしょう!」

 

「そうでしょう? 私もとても良い案だと思ったのです!」

 

「その方向で話を進めることにしましょう!」

 

 そう言って慌ただしく出ていってしまう枢機卿。……口を挟む暇もなかった……。

 だがまぁ、戦場となったばかりで疲弊したアルビオンを立て直すには、俺の黄金律が役に立つだろうし、王の経験も役に立つだろう。その辺は納得せざるを得ないな。しかし、辺境伯か……結構高い地位になったんじゃないか……? 聞くところによると公爵に近いだとか……うーん、また仕事が増えそうだ……。

 

「よしよし……これで私との結婚に近づきましたわね……これだけの功績を上げて辺境伯となったのなら、私と結婚しトリステイン王となってもらう日も近いわね……」

 

「……アンリ? 何か言ったか?」

 

 これから増えるであろう仕事の量にげんなりしていると、アンリが何か呟いているのが聞こえた。二人きりの静かな部屋だから何かを言っているのはわかったが、ぼうっとしていたからか何を言っているかまではわからなかった。

 

「いえ、個人的なことですので、お気になさらず。……それにしても、王さまにお願いして正解でしたね。マリーの進言には助けられました」

 

「そうでしょうそうでしょう!」

 

 アンリがマリーの名前を出したとたん、マリーが現界し、俺の腰あたりに抱き着いてくる。おっとっと。

 

「ああっ、マリー、あなたズルいわよ!」

 

「王さまはみんなのものなのだから、好きな時に好きなように抱き着けばいいのに。アンリは変なところで恥ずかしがるのね。好きなものは好きでいいじゃない」

 

「……えいっ」

 

 マリーに煽られて決心したのか、アンリがマリーとは反対側に抱き着いてくる。両手に花だなぁ、なんて呑気に考えながら、二人の頭を撫でる。うんうん、アンリはさらさらとしていて指どおりが良いし、マリーはしっとりしていて手触りが良い。要するに、二人とも撫でていて楽しいということだ。

 

「これから辺境伯か。そのあたりの打ち合わせとかしないとな。まぁマスターがしばらく学院にいるだろうから、俺は自由に動けるし、とりあえずはしばらくアルビオンにとどまるかなー」

 

「それが良いと思いますわ。これから統治する人間がすぐに居なくなるのは向こうの領民の感情も良くないでしょうし……」

 

「補佐で卑弥呼か壱与と、あとは謙信もほしいかもな……」

 

 あ、あと情報収集で小碓もほしいし、機動力ある信玄もほしいな。何かあった時のためにカルキもついてきてほしいし……しまったな、マスターの護衛がいなくなる。……新たな英霊を召喚するしかないか。戦争も終わったし、一度学院に戻ったタイミングでその辺考えてみるか。

 

「戻りましたぞ! ……おや?」

 

「はっ……! は、早いですね、マザリーニ」

 

 再び勢いよくドアを開けたマザリーニに現状を見られたアンリは、慌てて離れて取り繕うものの、ばっちり目撃されてしまったようだ。だが、マザリーニはその辺のことを察していたのか、やれやれ、と首を振るだけで話を続ける。

 

「時と場合を考えるようにお願いしますぞ、陛下。このマザリーニだったから良かったものの……」

 

「わ、わかっているわ。それより、話を続けましょうか」

 

 そんな風に取り繕うアンリを、マザリーニは優しい笑顔を浮かべてスルーする。

 それから、俺たちはその日太陽が沈むまで、今後のことについて話しあうのだった。

 

・・・

 

「やっと終わったな……」

 

 マザリーニとアンリと共に今後のことについて話しあってだいたいを決めてきた。今度俺が辺境伯へと昇進……陞爵というんだったか、それを正式に認めるための典礼やら儀式やらの日程の調整もしてきたので、後日王城にまた行かないといけないが、今日で調整することはすべて終わらせてマスターの部屋へ帰ってきた。あとは戦後の処理をして、マスターと一緒に学院で過ごすだけ……。

 

「あ」

 

 そう言えば、ランサーの召喚もしようとしていたんだったか……今日マスターが寝た後にでも鯖小屋に集まるかー。今のところ狙って召喚できた例が半分くらいしかないからなぁ……本当にランサーが召喚されるかも、みんなで狙ったのが出るのかもわからないが……。やらないよりはいいだろう。

 狙うとしたらどんなサーヴァントがいいかなー。今いるのは守りとバフに特化したジャンヌ、もう一人守りに特化した謙信、敏捷と気配遮断に長ける小碓、鬼道と第二魔法で後方支援で活躍する卑弥呼と壱与、個人での機動力と突破力に優れる信玄……。そうか。

 

「攻撃力だな。対単体でも対集団でもいい、何か決め手になれるようなサーヴァントが良いだろうな」

 

 それだと……うーん、エルキドゥがすでにいるからなぁ。一番いいランサーだと思ったんだけど……あ、そもそも俺と縁結んでくれてないから召喚できねーや。他は……誰になるかなぁ。獅子王とかはもうちょっと危機にならないと応えてくれないしなぁ……ブラダマンテとかはかなり俺が想定してる『決め手』を持っているからいいかもしれないな。

 うん、あとは……え、タマモときよひーってランサー霊基あんの? ……水着? どういうこと? んん? 水着になるとランサー霊基になるの……? 何の関連が……?

 

「ま、まぁ、それで水着の子が出てきたときは……まぁ、その時か」

 

 それはそれで可愛いだろうしな。可愛くて強いとかもしかして英霊ってすごいのでは……?

 

「よし、あとは今日の夜だな」

 

 それまではやることもないし、久しぶりにマルトーの所で食事でもするか。そう決めて、俺はマスターの部屋を出るのだった。そういえばシエスタもそろそろ仕事を再開しているころだろう。時間が出来たらまたタルブ村にもいきたいな。あそこの草原も戻っているだろうか。仕事が落ち着けば、あそこでゆっくりと休養を取りたいものだ。あっちにも鯖小屋みたいなものを作るか。

 

「それにしても、アルビオンを任せられるとはな……空飛ぶ島か……改造し甲斐がありそうだ」

 

・・・

 

 マスターの部屋でしばらく暇をつぶしていると、授業を終えたらしいマスターが帰ってきた。

 

「あ、帰ってたのね」

 

 部屋に入るなり視界に入った俺に反応するマスター。いつもは釣り目がちだが、こうして目を丸くしているとその小柄な体に見合う幼さを感じる。うんうん、いっつも眉間に力が入ってたら癖になっちゃうからな。

 

「うん、ただいま」

 

「おかえんなさい。それで? 姫様とのお話はどうなったの?」

 

「今回の件でオルレアン伯爵が辺境伯になることになったよ」

 

「は!? 陞爵したの!? あんたが!?」

 

「ああ。今回はトリステインが一国でアルビオンを落とすことができたからな。まるまるこっちの好きに出来るってわけだ。そこで、アンリが一番任せても問題ないのは、俺が扮するオルレアン伯爵だからな。それで俺に白羽の矢が立ったわけだ」

 

「はー……まぁ確かに、姫さまも周りの貴族を信じられなくなってるしね」

 

 アンリは貴族の裏切りを多く体験しすぎたせいで、今貴族不審に近くなっているのだ。彼女が信頼できるのは、古くからの親友であるルイズや、その家族としてヴァリエール家、あとは俺が偽装として預かっているオルレアン家くらいのものだ。……『家』っていっても俺一人しかいないけどな、オルレアン家。

 

「だろ? 流石に学生のマスターをむりくりつけるわけにもいかないし、マスターには女官としての秘密任務があるからな」

 

「『ゼロ機関』ね」

 

 腕を組んで、ふん、と鼻を鳴らすマスター。

 

「まぁ、戦争も落ち着いたし、これから『ゼロ機関』が役に立つようなことはないだろうけど……」

 

「……いや、まだワルドの率いるカルナや、その他にも怪しいサーヴァントが何人も確認されている。今のところ表立ってはいないが、ガリアやロマリアなんて国もあるだろう?」

 

 ……それに、あの時ガリアの艦隊はアルビオン近くまで来ていた。もう少し遅ければ、俺たちよりも先にアルビオンを取っていただろう。あそこの動きはかなり不審だ。注意を払う必要があるだろう。あとは、ワルドが所属している『レコン・キスタ』もどう動くかわからん。その辺を気にしつつ、今日のサーヴァント召喚を迎えるとしよう。

 

・・・

 

「よし」

 

 マスターも寝静まった深夜。俺は鯖小屋の地下に来ていた。周りには俺が召喚したすべてのサーヴァントと、カルキも部屋の隅に立っている。

 

「それじゃあやるか」

 

「……狙ってくればいいけどね、ランサー」

 

「大丈夫です! 星三つくらいまでならまぁまぁ確率あると思いますよ! ……まぁたぶん数的にはアサシンとかキャスターのほうが母数多くてランサーってあんまり見ないですけどね」

 

「? なにいってんのよ、だいたいおんなじくらいだし、そんなランダムにはならないでしょ」

 

「なるんですよー、卑弥呼さまも後々天文台には気を付けた方が良いですよ。麻婆豆腐やらお面やらお弁当と一緒に召喚されたくはないでしょう?」

 

「っていうかギル以外に召喚されるつもりないけど?」

 

「それはそう」

 

 後ろできゃいきゃいとチームヤマタイが姦しく騒いでいる。天文台? 何の話をしているんだろうか……?

 

「ランサー……槍兵ですよね? ……私が来て、信玄が来て……真田でも来ますかね? 戦国武将で槍……うーん」

 

「……確かに日本人滅茶苦茶召喚されてるけど、別にそれを狙ってるわけじゃないからな?」

 

「……伊弉諾命来ますかね?」

 

「来たら世界終わるぞ」

 

 っていうか女性じゃないし。完全なる男神だろ。かといって伊弉冉が来ても終わるけどなこの世界。

 

「ここは私と一緒のフランスとかどうでしょう! マリーさんもいることですし!」

 

「フランスで槍? ……誰かいたっけ?」

 

「兵科としてはたくさん利用されてただろうけど……個人だとあんまり聞かないわよね……」

 

「その辺は召喚したらわかるだろ」

 

「……女人解釈されたカルナとか?」

 

「……おんなじ存在の英霊召喚されたらどうなるんだろうな」

 

「多分問題はないと思う。サーヴァントはそもそも英霊と言う大元の一側面を現界させているに過ぎないから。どんなにたくさんあっても、影が自分に拳を振るわないでしょう?」

 

「私にもセイバーの私とランサーの私がいるわけだしね」

 

 謙信がふふん、と胸を張りながら自慢げに言い放つ。……確かに、そういうこともあるかもな。気を付けねば。……いや、そもそも『女性解釈されたカルナ』なんてTSもののヒロインみたいなカルナとは絆を結んでいないので、俺の宝具では召喚不可能だ。

 

「……とりあえず、インド系はカルキだけで十分かな」

 

「→ギル。プロポーズ? ……嬉しい。あなたの遺伝子情報を貰えれば、私の遺伝子と組み合わせて製造工場から優秀な英雄をひり出せる」

 

「女の子がひり出すとかいうんじゃありません!」

 

「えぇ……壱与がそれ言うの……?」

 

 顔を俯かせて下腹部を撫でるカルキに、壱与の鋭いツッコミと、さらにその壱与に対する謙信の引き気味のツッコミが入る。

 ……カルキがそういうこと言うと怖いからやめてほしい。っていうかその辺のこと『製造工場』っていうのやめた方が良いぞ……?

 

「ま、まぁ、気を取り直して! 行くぞ! 宝具解放!」

 

 右手を前に出して、身体の魔力を練り上げる。

 

「我が名、我が魂、我が声に応えてくれ! 『全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)』!」

 

 右手を差し出した先、地下室の床に、ゆっくりと魔法陣が刻まれ、魔力が吹き荒れ、黄金の粒子が人を形どっていく。

 俺の側からは特に問題は無いように思える。指輪の反応的にも、クラスはランサーが召喚されたと思う。銀色の鎧、黒色のインナーが見えてきて、その手の先には長い槍が見えるからだ。

 

「……ふぅ。この私を召喚するとはお目が高いな聖王。ふっふっふ、やはりこの私、聖なる槍を扱う聖なる英霊! この聖なる力が必要な時が来たということか!」

 

「……あー」

 

「なによギル。わらわこいつ見たことないんだけど、そんなドン引くほどやべーやつなの?」

 

「見たことないのはそうだと思うよ。この子、永久に俺の座からつながる宝物庫の中延々と歩いてるからさ」

 

「……は? あの宝具飛び交い侍女も飛び交うあの宝物庫を?」

 

「ああ、あの空間ねじれ常識ねじれる宝物庫の中で自我を保って楽しみながら宝具を探索して遊ぶ子なんだ」

 

 口癖は『聖なる』。好きな言葉は『聖』。好きなアイドルは『聖子ちゃん』。好きな行事は『セント』と付くものすべて。と言う『聖なる』オタクの女の子だ。

 そして俺のことを『英霊王』ではなく『聖王』と呼ぶ唯一の子でもある。……『性王』は滅茶苦茶言われるんだけどね。

 

「聖なる我が名を聞くがよい! 聖なる槍を使い、聖なる力で悪を貫く! 聖なる英霊の座から降臨した最も聖なる英霊! ぺトルス・バルトロメオとは自分のことだぁっ」

 

「……良かったなジャンヌ。お前よりも前の時代のフランスの英霊だぞ」

 

「やっ、やだやだやだやだ! こんなガンギマってる女の子は同じ国だとおもいたくないよぉ!」

 

「むむっ!?」

 

「あ、見つかったわね」

 

「見つかったな。最も聖人と触れ合った女が、『聖なる』モノ好きと出会ったぞ。この子『聖なる』モノは箱推しするタイプだからな」

 

 エピソードが『聖なる』のならばすべて琴線に触れるのがぺトルスと言う女の子なのだ。ほら、はぁはぁ言ってるし。

 

「はぁ、はぁ……! そ、その剣はぁっ、もしかして、三人の聖なる声と共に得たという剣ぃ……! じ、自分は槍が専門ですけどォ、ちょ、ちょっと刃先舐めてもいいですかぁ……?」

 

「駄目に決まってますよね!? ベロ斬れちゃいますよ!」

 

 血走った目で腰に抱き着いてくるランサーを、なんとか引きはがそうとするジャンヌ。……ふふ、愉快愉快。

 確か前に教えてくれた彼女のスキルにステータス、宝具は大軍を相手にするにふさわしい突破力を持っていたはずだ。彼女を上手く扱えれば、かなりいい戦果をたたき出すだろう。

 

「そのためにも……」

 

 目の前で引っ付いたり引きはがしたりしている二人を見ながら、俺はつぶやく。

 

「この二人は、申し訳ないけどバディになりそうなんだけどなぁ……」

 

・・・

 

 ランサー、ぺトルス・バルトロメオが新たに加わり、俺たちの戦力はより一層厚くなった。

 ちなみにぺトルスの外見はすらりとした長身に、首から下をすべて覆う黒いインナー、そして要所要所を守る銀色の鎧を付けている。そもそも騎士ではないからか、その鎧と言うのも最低限のもので、ブーツは革のものだし、手甲と胸当て、スカート状の金属鎧以外はインナーが見えている。顔だちは凛としており、釣り目がちな瞳が冷たい雰囲気を醸し出しているが、ブロンドの髪をボブヘアほどにそろえていて、前髪はぱっつんというか姫カットともいうべき髪型をしている。

 ……見てるだけなら、できる秘書、って感じの外見をしていて、細めの眼鏡でもかけてほしいくらいなんだが……。

 

「んあー! んあー! 見せて! その鏡見せてぇ! すっげ、すっげえ聖なるオーラ出てるぅっ!」

 

「い、いやですっ。な、なんか気持ち悪いよぉ、卑弥呼さまぁ……」

 

「……ギルに対するあんた見てる気分ね」

 

「壱与こんなキモくならないもんっ! ですよね、ギル様っ! あ、だめ、イクっ」

 

「え、なんで今脈絡なく絶頂したの? キモ」

 

「んあああああっ! 卑弥呼さまの罵倒キクぅ……! まだガンには効かないけどいずれ効くぅ……!」

 

「効かないわよ」

 

「んぅー! すっごい! この聖なる感じはガンに効きますよぉ!?」

 

「効かないわよ」

 

「え、第二魔法ってガンに効くんですか!?」

 

「効かないわよ」

 

「それが邪馬台国の秘術ってわけか……」

 

「効かねえっつってんだろ全員頭ぺトルスなの?」

 

 戦力も増えたが、姦しさも増えた。

 いつの間にかぺトルスに壱与にジャンヌに謙信にと囲まれて青筋浮かべまくっている卑弥呼が暴れ出す前に俺も話に割り込む。

 

「とにかく! これからのことを話しあいたいと思う!」

 

「ギル……わらわ今あんたに惚れ直したわ。この状況に乗らないってだけでわらわの絆レベル11上がったわ」

 

「現界突破してるじゃないか……。ま、まぁ、話を戻すぞ。攻撃の要になりうるランサーが召喚された以上、二手に分かれてもいいんじゃないかと思い始めたんだよ」

 

 俺やランサー、カルキくらいはどちらかと言うと攻撃よりと言ってもいいだろう。ジャンヌ、謙信は守り寄り、小碓と卑弥呼と壱与は後方支援組だ。

 これをある程度分けて交代していけば、アルビオンとトリステインの二つに勢力を分けてもある程度対処は可能だろう。

 

「と言うわけで、ランサーと謙信、あと卑弥呼と壱与は最初トリステインにわたってもらおうと思う。残りはこっちでマスターや学院を守っていてほしい。トリステインに何かあれば、その時も動いてほしいな」

 

「ギルはどうするのよ?」

 

「俺にはヴィマーナがあるからな。それぞれの国を往復出来るから、遊撃扱いだな」

 

「あんたがアルビオンでは主役なんだけどねぇ。ま、だからこそ国を運営できるようなのを割り当てたんだろうけど……」

 

「え……? この頭が聖なることになってるのも国を運営できるんですか?」

 

「そいつはたぶんアタッカー以外のことは期待されてないわよ。謙信とわらわがギルの補佐をするってイメージかしらね」

 

「そのイメージであってるぞ」

 

 俺が召喚したサーヴァントたちはなんとかの『騎士』とか呼ばれるようになってかなりみんなから認識されているようだから、トリステインの貴族たちもあんまり言ってこないだろうし。……まぁ、その辺を黙らせるのは俺やアンリの仕事だ。

 そして、その仕事がすぐそこに迫っている。

 アルビオンの取り分を話し合う会議、『諸国会議』である。

 

・・・




――ステータスが更新されました。

クラス:ランサー

真名:ぺトルス・バルトロメオ 性別:女性 属性:秩序・善

クラススキル

対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化はできず、ダメージ数値を多少削減する。

保有スキル

自己暗示:A+
自らにかける暗示。精神攻撃への耐性を上げ、高ランクであれば肉体にも影響を及ぼす。
このランクになると、彼女はすべてにおいて自分のことを勘違いすることとなる。
ちなみに、彼女はこのスキルを認識していない。

直感:B
戦闘時、常に自身にとって最適な展開を感じ取る能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
『自己暗示』スキルとの組み合わせの所為で、彼女にとっては『啓示』のスキルだと思われている。

扇動者:B+
アジデーター。人々を煽り、導き、大衆を動かす技術。
彼女はこれを自覚せずに使用し、人々を動かしてきた。
信仰を持っているもの、精神状態が大幅に振れているものにはさらに高い効果を発揮する。
彼女はこのスキルを『カリスマ』だと思っている。まぁ間違ってはいない。

聖人の加護(偽):C
彼女は何度も聖人から啓示を受けている幻視を見ている。
更に宝具の効果と自身のスキル『自己暗示』のおかげで(せいで?)彼女は自分が聖人から加護を受けていると深く思い込んでいる。
そのため、彼女には聖人の加護があり(ない)、幸運を呼び寄せている(いない)と信じている。
実際に聖人からの加護はないが、宝具由来のスキル、そして自身の幸運値によって、彼女は加護を受けていると信じている。
その信仰による自己の精神の絶対性及び、『彼女が』悪だと思う霊的存在への攻撃数値を上昇させる。

能力値

 筋力:C 魔力:B 耐久:C+ 幸運:A 敏捷:B 宝具:A+

宝具

色褪せる幻の聖槍(フラグメント・デ・ファー)

ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大補足:100人

ぺトルスが持つ聖槍(だと思っている槍)の力を開放したランスチャージ。乗馬はしていないので、自身の敏捷による疾走及び槍の魔力を後方に噴射しての突撃となる。
彼女が発掘した聖槍の欠片を組み込んだ長槍は、その思い込みの強さ、そして彼女の周りにいた狂信者たちの想いによって疑似的な聖槍として起動する。
その槍が聖槍として起動しなくなるのは、彼女が炎に包まれたときか、彼女自身が手に持つ槍を信じられなくなったときのどちらかだ。


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