ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント! 作:AUOジョンソン
それでは、どうぞ。
ロンディヌウムに近づいてきて、小碓がピクリと反応する。
「主、気付いていますか?」
「ああ。サーヴァントの気配……そして、それに似た反応が数千」
「冗談のような数ですね。ここから先には、あのフードのサーヴァントと、その配下がいるのでしょう」
小碓の言葉に、頷くことで答えを返す。何度か遭遇したというフード姿のサーヴァント……。わかっていることと言えば、人間をサーヴァントのように従え、軍隊を作っていること。元は神秘を纏わない人間なのに、どういう理屈か半分サーヴァントのようになり、俺たちに通じる攻撃を繰り出してくることぐらいか。
「ですが、こちらも戦力としては問題ないでしょう。サーヴァント本人はともかく、その眷属と言ってもいい兵隊たちは、こちらの世界の魔法や剣で物理的に倒せる、頑丈な人間といったくらいのものですし」
その通り、彼らは『半』サーヴァントのようなもので、実際に英霊と融合していたりするわけではなく、おそらくは宝具かスキルで神秘を分け与えられただけのように思える。
「初手で第二宝具を発動します。そのあとは、主さまにお任せしますね」
「ああ、了解だ。信玄とジャンヌには迂回浸透しての攻撃をするように伝えているから、そのあとのことは判断してくれるだろ。卑弥呼に壱与も、小碓の一撃を見れば停止して遊撃隊となってくれる手はずになっている」
首都ロンディヌウム。その城壁が見えてきて、その前に布陣している部隊も見えてきた。……やはり、砲撃隊がいるか……!
「小碓、宝具の発動準備に入れ! 俺の合図で撃ってもらうぞ!」
「わかりました! 草薙太刀に魔力を充填します!」
俺の千里眼で見えた相手の砲台からして、射程距離はまだだろう。付近にいた兵士たちに敵発見の報を伝え、戦闘準備に入ってもらう。騎兵と歩兵については、このままの勢いで突撃する予定だ。相手の腹を食い破り、城壁の内へと入らなければなるまい。
「ッ! ――小碓、放て!」
「はい! ――魔力充填、属性変換、水を火へ。火よ、大蛇となりて我が眼前の敵を薙ぎ払え! 『
瞬間、小碓が込めた魔力が炎へと返還され、剣に宿った大蛇を顕現させる。現在の小碓では本来よりも弱体化して一体しか大蛇を出せないが、それでも巨大な炎の蛇だ。相手の方からも爆音が響いた後に砲弾が降り注いで来る。
「止まるな! 駆け抜けろ! 相手の内に入れば入るほど当たりづらくなるぞ!」
味方を鼓舞しながら、俺も馬を走らせて砲弾をかいくぐる。俺のいまの立場は『オルレアン伯爵』なので、手に持った杖で風っぽい魔術を使って逸らしたりすることくらいしかできないが、先頭の俺や小碓がこうして砲弾を迎撃していれば、後ろに続く兵士たちもある程度生き残れる確率が上がるだろう。
「……もう少しだな。小碓、まだいけるな!?」
「は、はいっ! 草薙太刀はまだ制御できます!」
小碓はこういっているが、あまり長時間使い過ぎると小碓も消耗してしまうので、使うのは最低限にしておきたいな。しかし、向こうはわざわざ城壁の外で待っていたのか……何か狙いがあるとみるべきだろうか……。
だが、こちらももう接触寸前だ。ぶつかって戦いながら考えるしかあるまい。
「小碓、俺が敵と接触して近接戦闘が始まる前に宝具を止めるんだ! そのあとは敵陣で司令官っぽいのを探して片っ端から片付けろ! ……サーヴァント以外には短刀を使うなよ!」
「了解です! ……宝具、停止します!」
小碓の炎が消えた後、俺はそのままの勢いで軍勢に突っ込んでいく。
さて、こっちの風の魔法はあんまりわからないが……それっぽいので暴れるとするか!
「謙信! 撹乱は任せた!」
「任されよう!」
馬上から飛び出した謙信が、着地と同時に三人の首を落として駆け出す。流石戦国時代の武将……迷いと容赦がないな。
「風よ!」
杖を振るい、魔力を風に変換して暴風として前に打ち出す。それで空間を生み出して、馬を走らせる。足を止めたらそれだけ後ろに被害が出てしまう。前の俺が破城槌であり、みんなの盾でもあるのだ。
「……見えた! このまま城門を突き破って突入するぞ!」
謙信と小碓が城壁までに障害となりそうな敵を排除してくれたので、俺は杖に魔力を込めて城門を破壊する。流石に一撃ではあまり大きな穴をあけることはできなかったが、三度ほど攻撃を加えると、それなりの大きさにはなった。身を屈めて城門にあけた穴をくぐると、城下町とでもいうべき場所は閑散としており、おそらく住民たちは避難したか隠れているのだろうと思う。
俺のカリスマのおかげか、町の人間を襲うような人間はこちらにはいないので、もし住民がいたとしても隠れてくれていれば巻き込まずに済むだろう。
「……懐かしいな、あの純白の城も」
あの時はまだ小碓とジャンヌくらいしか召喚もしていなかったと思えば、かなり昔のことのように感じてしまう。……あの城を、もしかすると血で汚してしまうかもしれないと思うと……少し申し訳ない気持ちにもなる。
……だが、ここでこのアルビオンを止めなくては、これからもアンリは心を痛めるだろう。……マスターはまた戦いに駆り出されるだろう。シエスタたちもこうして振り回されてしまうこともあるかもしれない。
「許せよアルビオン。俺は俺の都合だけでお前をもう一度滅ぼす」
これが終われば、一度ラグドリアンの湖に行くとしよう。自己満足でも、あの誇り高きプリンスにこのアルビオンのことを報告するべきだと思ったからだ。それに……水の精霊にも途中経過を伝えないとな。
「……! 主!」
「ああ、この先だ!」
城内の広場に、今までよりも密度の高い反応を感じ取り、そこに向かう。
「一度止まれ。……謙信、俺と小碓で先行する。いつ俺に加勢に来るかは任せる」
「うん、わかったよ。君の手助けになれるような時機に加勢すると約束しよう。……みんな、体勢を整えるよ」
謙信の指揮する声をしり目に、俺は小碓とアイコンタクトをとる。小碓が頷き返してくれるのを確認してから、中庭へと足を踏み入れる。
「――!」
「危ない!」
瞬間、爆音が響く。小碓に押し倒されるように物陰に逃げ込んでいなければ、直撃は食らわずともそれなりのダメージは負っていただろう。
「……ありがとう小碓」
「いえ、主のためならなんてことは」
頭を撫でるといつも通りはにかむ小碓に笑いかけながら、宝物庫からペンダントを取り出す。これは『人間の手以外のもので飛ばされたもの』に対しての加護を発揮するものだ。手で投げられたものには発動しないが、弓やら銃やらから放たれたものに対して、回避に有利な判定を得られるというものだ。魔力の消費もないので、付けているだけで小碓なら回避余裕になるレベルの物だろう。
「……躱したか」
不思議と、通る声だと思った。爆音の響いた後なのに、硝煙の匂いがする城の中庭で、ざわめきすら超えて聞こえてくる、不思議な魅力を感じる声だ。
物陰から出ると、大砲は大半が装填中。そして、銃を構えた兵と、弓や剣で武装している兵が、こちらに向けて構えているのが見えた。
「……この軍団を生み出したサーヴァントが、お前か」
「いかにも。……此度の戦争において、『キャスター』のクラスで現界している」
キャスター……確かに、この準備の良さやら裏で動いている感じを見るに、キャスターが相応しいとはいえるだろう。……だが、軍団の装備に神秘性が少なすぎる。昔の魔術師的な『キャスター』であれば、兵士たちは神秘の籠った鎧やら剣やらで武装され、魔力で身体能力を強化されたりするだろう。自分の身を守る盾のようなものだ。そこには力を籠めるはず。
だが、相手はどちらかと言うと近代兵器よりに武装している。こちらでは魔法の発展とともにないがしろにされがちな火薬兵器を大量にそろえているところから、そんなに神代やらの昔の英霊ではないことはわかるが……。
「私の真名を考察しているな? ……ふふふ、そんなに隠すような名でもないが……君が不快な思いをするのなら隠しておくとしよう。……さぁ、ここを突破したいのだろう?」
そこまで言うと、キャスターは両手を広げて、フードから見える口元を歪ませる。
「かかってきなさい」
「……行くぞ、小碓!」
「はい!」
相手の銃撃の音とともに、俺たちは駆け出すのだった。
・・・
「……ふむ」
戦況は不利だ。押されてきているし、何より向こうの戦力は量も質も上だ。サーヴァントが何体もいるような軍団に、こちらが勝るはずもない。どのみち私の宝具では兵士たちの鎧や武器に神秘を込めるのが関の山と言うもの。体そのものを神秘の塊たるサーヴァントのようにするのは不可能だ。だからまぁ、こうして押されて城内まで入られるのは予想通りってやつだ。
「……さて、一応つながっているラインからは……ふむ、逃げおおせてはいるか」
仮のマスターとはいえ、なんだか他人とは思えず、こんなことをしてしまっているが……。これが終わって逃げきれれば……まずは兵隊を集めるところから始めねばな。
「よし、ここくらいまで時間を稼げばいいだろう。……それではな英霊の王よ。此度の勝利を私も祝うとしよう」
そう言って、私は霊体化する。あとはラインを辿れば……。いた、あそこか。森の中で少数の兵士とともに逃げているクロムウェルの下に実体化し、声を掛ける。
「逃げおおせたじゃないか」
「きゃ、キャスター! ど、どうなったのだ城は!」
「落ちたよ。流石にあそこまで攻め立てられてしまっては私一人では耐えられまい。あのインドの大英雄でもいれば話は別だったがね」
そうか、と安堵と後悔の混ざったような表情でつぶやくクロムウェル。まぁ、あそこにいればかの英霊王が来なくても命はなかったわけだから、こうして落ち延びて正解だったと思うがね。
「それで、ミスシェフィールドとは連絡が取れたか!?」
とれるはずはないだろう、と思う。もう彼女……いや、彼女『たち』にとって、この男は用済みだろう。……かといって正直に言ってもここで絶望するだけなので、『生き延び』させるためにはここははぐらかしておくのが正解か。
「まだだ。彼女も彼女で別の任務に就いているからな。それが落ち着くまでは連絡も取れぬだろう」
「そ、そうか。……な、ならば、指輪も預けている今、ガリアへ向かうのがよかろう。そこでガリア王と謁見すれば、どこかで隠居することを許されるかもしれん……!」
そう言って、希望を瞳に浮かべるクロムウェル。彼が持っていた『水の精霊の指輪』もあのフードの女に渡している以上、この男には魔法の力すらないのだが……まぁ、こうして俺を仮にも使役できている以上、最低限の魔力と魔力回路くらいはあるのだろうが……。まぁ、それは今は関係のない事か。それよりも、この国から地上に降り、ガリアまで行く方法のほうが大切だ。
「そういえば、どこに向かっているのだ? 軍港なら反対方向のはずだが……」
「ああ、こちらに我らのみが知っている隠し港があるのだ」
だいぶん我が軍団も大きくなったので、その隠れ家兼何かあった時の脱出場所として作っておいたのだ。やはり、こういうのも生前の経験から必要だと思って作っておいてよかったな。しかもこちらには空飛ぶ船すらある。まったく、便利な世界に呼ばれたものだ。
「そ、そうか! キャスターは何とも用意が良いな! ありとあらゆる事態を想定しているということか! さぞ名のある英雄だったに違いないな!」
「うん? ……ああ、そうだとも。中々に名のある英雄だったと思っているぞ。どちらの意味でもな」
そう言って、俺はクロムウェルに皮肉気に笑ってみる。何事も経験だと、今なら思えるな。
・・・
「……急に抵抗が弱くなったな」
城内の兵士たちを探し出しているのだが、どうも反撃が散発的になってきている気がする。……と言うよりは、そもそもの数が減っている……?
「主!」
「小碓。どうだった?」
小碓達には城内の敵の捜索を任せていたのだが……その結果がわかったのだろうか。
「城内の敵兵に関しては掃討完了しました。……おそらくなのですが、兵士の内キャスターの直接の配下は半分ほど逃げたかと……」
「……やはりか」
この戦いで出てきた敵兵は、大きく分けて『キャスターの配下』か『心を操られたトリステインの反乱軍』がいたわけなのだが、どうも城内に入ってから後者の勢力ばかり見るようになったようなのだ。……と言うことは、おそらくキャスターたちは撤退したのだろう。と言うことは、この戦争は終結した……と思っていいのだろう。
これからこちらの兵士たちに街を見てもらい、俺たちサーヴァントは城内を確認すれば、アンリに連絡を取ってもいいだろう。
「……主、兵たちが確認を終えて城下に集っております。……勝鬨を」
「ああ、必要だな」
兵士たちに戦いが終わったことを伝えて、これからのことを考えねば。
「こちらに」
そう言われてテラスに出ると、眼下には兵士たちの姿が。他にも動いている兵士たちはいるので、全員ではないだろうが……これだけいれば十分だろう。
「諸君! 我らの勝利だ!」
そう叫び、杖を掲げる。すると、数舜おいて兵士たちから雄たけびが上がる。……さて、次の手を考えねばな。例えば……このアルビオンの今後どうするか、とか。
「……ま、その辺はアンリと枢機卿と話さねばわからんか。今はただ……戦いが終わったことを喜ぼうか」
「ギル!」
「マスターか」
「……終わったのね。ようやく」
マスターの言う『ようやく』とは、おそらく初めてこのアルビオンに来てからの一連の騒動を行っているのだろう。手紙を受け取りに行くというアンリからの秘密の『お願い』から、こうしてようやく、決着がついたのだから。
「ありがとう、ギル。……あんたと一緒じゃなければ、こんな事できなかったと思う」
「はは、そんな殊勝な態度をとるなんて、らしくないぞマスター」
笑いながら、マスターを抱え上げる。短く可愛らしい悲鳴を上げるものの、しっかりと俺の体に手を回してくれるマスターは、本当にかわいいなぁ。
「でもまぁ、そう言ってもらえれば、ここまで頑張った甲斐もあるってもんだよ」
「主ー! 大主ばっかりずるいですよっ。ボクもっ。ボクも頑張りましたよーっ」
「ああ、そうだな。ほら、おいで」
そう言って、開いているもう片方の手で小碓を抱き上げる。これが両手に花ってやつだな。とにかく、これでアルビオン動乱は終わりだ。
……大量の命が失われたが……それだけの価値があった戦いだと思いたいな。
・・・
そこからはまぁ、戦後の処理と言うか……内政のターンになった。アンリに指示を仰ぐとはいえ、こちらでもやれることはやらなければならない。死んでしまった兵士たちを弔ったり、町の人間達への説明やらもせねばならないし、ここも食料がないのなら配給をしたりしないといけない。
ここまで強行軍だったこともあって、時間もそれほど立っていないし、食料もあまり減っていないから、アルビオンの民に配っても問題はないだろう。
「……あー、こんな面倒な仕事を英霊になってからもやるとはな……」
「主、こちらの処理は……」
「ああ、輜重隊の兵士たちが少し手余りになってるだろ。それを回してくれ」
「はっ、直ちに!」
「ちょっと君、城と城壁の修復のための材料って出せたりするかな?」
「それはすでに部隊の荷物に偽装して持ってきてるから、そこから運び出してくれるか?」
「わかったよ、ありがとね」
「おうお前さんや! 悪いんだけど飛んでたときに着地失敗して壁ぶっ壊しちまった!」
「……けんしーん! 戻ってきてくれー! ここに馬鹿がいる!」
「了解! オン・ベイシラ・マンダラ・ソワカ……!」
「なんだと!? おい馬鹿もの! 直すのを手伝うから止めんか!」
魔力を高めながら戻ってきた謙信に切りかかられそうになって慌てて訂正しながら鎧を纏う信玄。まったく、あんまり悪びれないからそうなるんだぞ。
「……あんた、よくそんな量の仕事処理できるわね」
「うん? ……ははは、生前の経験が活きたな。王の経験があるって言ったろ?」
「そ、そう言ってたし疑ってはなかったけど……」
「心配してくれてありがとな。……でもまだ余裕はあるから、大丈夫だよ」
そう言って、俺の隣で心配そうにこちらを見上げるマスターの頬を撫でる。なにやら唸りながらも、素直に俺の手に頬を擦りつけてくるマスターに微笑みながら、語り掛ける。
「それに俺は息抜きもしっかりしてるんだよ。だから過労死なんて言葉とは無縁なんだ」
笑いかけるも、マスターは何やら微妙な顔をしている。……? どうしたんだろうか。
「……あんた、たぶん戦いで死ぬより働き過ぎで死ぬと思うわよ。……なんか、そんな顔してるもの」
「え、顔? ……顔かぁ……」
それはもう、仕方ないな。……ギルガメッシュに過労死の逸話とかあったかなぁ……。
そんなことを考えながらも、トリステインからの答えを待つ日々は忙しく過ぎていくのだった。
・・・
「……まさか! まさかだ! なぁキャスター!」
「……やかましい。今日は珍しく書く気が沸いてきているというのに……今のお前の大声でそれも無くなったぞ! 今日は寝るか」
そう言ってテーブルの上に広げた白紙の本へ羽ペンを叩きつける。まったく、やってられないな。それにしても、今日は何やらあのマスターに落ち着きと言うものがない。まぁいつも落ち着いてるかと言われたら否定するが……。それでもいつもよりはしゃいでいる様な気がする。
「ふははは! なるほどなるほど、これは私にも想像できなかった。まさか、私が艦隊をよこすまでの間にロンディヌウムまで落とすとは! そんな傑物がトリステインに残っていたのか!」
とんでもなく嬉しそうだが……こいつが嬉しそうにはしゃぐ時と言うのはたいてい面倒なことを思いつくことでもある。にしても……俺が調べた中でもトリステインと言うのはかなり旧態依然とした国家だったはずだ。それに、かなりいっぱいいっぱいの国だとも記憶している。金も人材も無い無い尽くしだったはずだ。そう考えると不思議だな……なにやら裏工作もしていたようだし、普通に戦って勝てる状況ではなかったはずだ。それに、こいつの盤面を見ていると、どうやら相手の内部からも崩せるような策を打っていたようだが、それすらねじ伏せられたということか。
「これは……私に匹敵する指し手が現れたということかな? ……今まで出てこなかったことが不思議でしょうがないな! どう思うキャスター!」
「お前の声がやかましいと思っているよ」
やれやれと首を振りながら、いい年して子供の用にはしゃぐ一国の王に適当な言葉を返す。……それにしても、これはかなり興味をそそられるな。まさかこいつの策を上回るようなやつがいたとは。
……いや、いるにはいるんだろうが、それが今出てきた理由がわからん。
「……少し調べてみるか」
確かあいつが放ってる密偵が何人かいるはず。それを数人借りて、情報を集めるとしよう。何かあれば、物語を書くためのネタになるかもしれん。こういう時、主人公が一人だけの作品よりも、ライバルになる人物を出したりした方が食いつきがよかったりするからな。それに俺が書くモチベーションも上がる。これが一番大事だな。
「少しは世話になってる恩を返すとするか」
ま、途中で嫌になって投げ出しそうだがな。
・・・
「……帰ってきたなー」
「帰ってきたわね……」
ぼふ、とマスターがベッドに飛び込む。……まぁ、無理もない。つい先日までアルビオンにいたのだ。ようやく帰ってこれたところで、肩の荷も下りたのだろう。
あの後、トリステインから後詰の人員が来たりして、ようやく俺たちはお役御免となったのだ。……まぁ、こうして先に帰らせてくれたのは学生組たちだけだろうし、他の兵士たちはまだアルビオンにいるのだが、まぁ学生の本文は勉強だ。ようやく日常が帰ってくると言ったところだろう。
「よっと。……マスター、少し留守にするよ」
「んぇ? またなんかあるの?」
「や、今回の顛末の報告をしに城に行ってくるよ。その間は謙信とか小碓を護衛に置いていくから、何かあれば二人を頼ってくれよ」
「え、じゃあ私も行くわよ。『ゼロ機関』とかその辺の作り話の口裏合わせたいし」
「んー、今日は『伯爵』としての登城なんだよな。マスターがいるとちょっとややこしくなるかもしれないから、今日は一人で行ってくるよ。たぶん今日中には帰ってくるからさ」
そう言って、俺は久しぶりに霊体化し、城まで向かう。アンリの部屋でいいかな。霊体化すると視界が切り替わるから厄介なんだよなぁ。
「――っと」
実体化すると、見慣れたアンリの部屋が目に入る。さて、アンリは部屋にいなさそうだな……。なんて思っていると、扉が開く音。帰ってきたか、と振り返ると……。
「……おっと」
「……ふぇ?」
薄着のアンリとばったり出会ってしまった。
「……あー、これから寝るところだったか?」
まだ昼過ぎだが……今まで戦争が起きていたのだ。身体を休める暇がようやく出来たのかもしれない。そう思って聞いて見ると、慌てた様子でアンリが話し出す。
「い、いえ! その、今起きて……」
「そうだったのか。まぁ疲れてるだろうしな。一応隠れてこっちに来ようと思ってここに来たんだが、逆効果だったか」
すまんすまんと言いつつもう一度霊体化しようとすると、アンリに腕を掴まれる。振り返ると、顔を赤くしたアンリの姿が。
「そ、その……着替えてからここを出るまで、いつも時間をかけているのです。だから、その……一度くらいなら、時間があると言いますか……」
「あー……なるほどね。アンリは本当に可愛いなぁ」
そう言いながら、アンリの部屋のベッドへと向かう。しばらくぶりだな、なんて考えながらも、アンリが寝間着のネグリジェを脱ぎ捨てるのを見るのだった。
・・・
――ステータスが更新されました。
クラス:キャスター
真名:■■■■■・■■■■■ 性別:男 属性:混沌・善
クラススキル
陣地作成:A-
道具作成:C
保有スキル
カリスマ:A-
騎乗:C
軍略:B
■■■■:C
能力値
筋力:D 魔力:E 耐久:B 幸運:A+ 敏捷:C 宝具:A+
宝具
『
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:20~80 最大補足:100~500
『
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:自身 最大補足:1人
誤字脱字のご報告、ご感想お待ちしております。