ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント!   作:AUOジョンソン

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「んえ? なにこれ」「あ、それ新しいシステムになったらしいから、更新しておいたぞ。なんかデバイスも変わったらしくて、結構操作感変わるらしいから慣れておいて」「あ、は、はい。……えー、凄いなー、これ。あれ? これどうやって……」「あ、その書類ちょっと書式変わったらしいんだよね。デバイスでの決裁ができるようになったらしいから、このガイド見ておいて」「わ、わかりました。……ちょっとお仕事お任せしてただけなのになんにもわからなくなってる……久しぶりの仕事で『出来ない女神』扱いは嫌……! なんとか頑張らないと……フンス!」「……変に頑張る神様も可愛いものだなぁ」


それでは、どうぞ。


第四十五話 久しぶりのお仕事。

「――と、言うことなんだ」

 

「……なるほど」

 

 エルフのテファ……テファニアと言うエルキドゥのマスターと合流した後。俺たちを見て後ずさりして逃げようとする彼女をエルキドゥが引き止め、説明と説得を兼ねて4人で話し合っていたのだが……。

 なんと、このエルフっ娘、このサウスゴーダと言う土地にある山脈。その中の森で暮らしているらしい。エルキドゥを召喚した方法を聞いてみたが、使い魔のゲートを出す『サモン・サーヴァント』を行ったのではなく、ある日魔法陣のようなものから光が集まって召喚されたんだとか。……俺と同じか。じゃあ、彼女も……?

 

「……と言うか、なんでさっきからテファニアは怯えてるんだ?」

 

 先ほどの話もほとんどエルキドゥが喋っていたし、何だったら今もエルキドゥの後ろでこちらの様子をうかがっているっぽい感じがする。目があったら逸らされるし、ここはひとつ、コミュニケーションを取って仲良くなるしかないな。

 

「あーっと、さっきも自己紹介したけど、俺の名前はギル。君のサーヴァント……使い魔やってるエルキドゥと同じく英霊って存在で、こっちのカルキも同じ」

 

「→胸革命。よろしく」

 

「あ、えと、テファニア……です。呼びづらかったりしたら、エルと同じようにテファって呼んでください」

 

「そうするよ。それで、テファは……エルフってやつなんだろ?」

 

 俺のその指摘に、テファは身体をびくりと震わせた。……? 何か気に障っただろうか……?

 エルキドゥを手招きして呼び、小声で尋ねる。

 

「あーっと……エルキドゥ? こっちの世界ってエルフって言うの悪口?」

 

「うん? いや、違うとも。この世界ではその『エルフ』と言う種族に対して……と言うか、人間種以外の亜人種に対しての偏見があるみたいだからね」

 

 さらに言うと、その中でも『メイジ』の使う魔法とは違う、強力な魔法を扱うというエルフは、畏怖や恐怖の対象となっているらしいのだ。……なるほど、別系統の魔法を扱って、長命で、と人間が恐れるに足る条件がそろってしまっているのか。それを知っているから、彼女は人間からの迫害を恐れているのか……。

 

「そんなに怖がらないでほしい……って言っても信じてもらえないかもしれないけど、敵意はないんだ。まぁ、ゆっくり仲良くなっていこう」

 

 そう言って、右手を差し出す。握手の習慣はこの世界でもあると思うけど……と不安に思いながらも笑顔で待つと、テファはエルキドゥの後ろから出てきて、おずおずと俺の手を握ってくれた。細いけど、軟らかい手だ。

 

「ありがとう。……それで、これからの話なんだけど……」

 

 そう言って、俺はこの世界であったことをかいつまんで話した。カルキから聞いた話も込みで話すと、テファ達も協力してくれることとなった。

 

「そんなことが……」

 

「……そういえば、テファはここに何をしに?」

 

「え? あ、エルのラインから変な感じがしたから探しに来たのよ。……って、そういえばお家放っといたまま!」

 

 焦ったように森へ踵を返したテファ。どういうことだ、とエルキドゥにきくと、なんでも孤児を拾って世話しているらしく、その子たちを放ってきたのだろう、と苦笑していた。……そうか。孤児を……子供たちだけなのだったら、そりゃ心配にもなるか。

 

「エルキドゥ達が住んでいるところに行ってもいいか?」

 

「ああ、もちろん。たぶんこれからの話をするためにも落ち着いて話せるところが必要だと思うしね」

 

「よし。カルキも行くぞ」

 

「→ギル。了解」

 

 こくりと小さく頷いたカルキを連れて、俺たちはテファ達の住んでいるという家へ向かっていくのだった。

 

・・・

 

「エルー! おかえりー!」

 

「なんか他の人もいるー?」

 

「金色の鎧だー!」

 

「真っ白なお洋服だー!」

 

 エルキドゥのあとをついていくと、わらわらと子供たちに囲まれてしまった。カルキも囲まれてワイワイされていて、困惑しているようだ。

 

「→ギル。マズい。取り囲まれた。私は出力調整が下手……上手くないから、除けようとすると子供たちの首をもいでしまうかもしれない。助けて」

 

「怖いこと言うんじゃないよ。まったく……」

 

 「下手」じゃなくて「上手くない」に言い換えたところに微妙なプライドが見え隠れするが……っていうかAIなのに人間臭いな……。とりあえず周りの子供たちを適当に避けていく。それから、みんなに先導されつつみんなの住んでいるという場所へと向かう。

 

「あ、来たのね! 入って入って」

 

 エルと一緒に居るテファが、俺たちを家へと招いてくれた。

 

「ようこそ、私の家へ!」

 

「ああ、お邪魔するよ」

 

 広いリビングのようなところに通された俺たちは、四人掛けのテーブルに案内された。俺とカルキがそこに座ると、エルキドゥが俺の対面に座り、お茶を持ってきたテファがお茶を置いた後、カルキの対面に座った。

 

「……それで、さっきの話の続きなんだけど……私も……私たちの力でよければ協力するわ。私だってこの世界に生きているんだもの。それに、あの子たちも……」

 

 そう言って、テファは外へ視線を向ける。外からは、きゃいきゃいと子供たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。ここは個人で運営している孤児院のようなものらしく、あの子たちにとっては、テファが母替わりなのだという。

 

「でも……あまりここからは離れられないの。子供たちのこともあるし……もう一人、私にとってお姉ちゃんみたいな人がいて……」

 

「お姉ちゃん?」

 

「そうなの。出稼ぎに出て行ってて、ここにお金を入れてくれてるのよ」

 

「優しいお姉さんなんだな。お姉さんもエルフなのか?」

 

「ううん。人間よ」

 

 ……何とはなしに複雑な事情が見えたのでこれ以上突っ込むのはやめておこう。

 

「それにしてもそうか……うーん、とにかくそのお姉さんと話してもらって……子供たちや君を受け入れられる場所はあるから」

 

 そう言って、俺は宝物庫から一つの水晶を取り出す。これは通信様の魔術具だ。一時期こういう「いかにも」な外見をした魔術道具を作りまくったので、配り歩いても余るくらいには在庫があるのだ。そのうちの一つをテファの目の前に置き、もう一つを俺が持つ。

 

「魔力を通してくれれば、この水晶が光る。それで話しかければ、俺につながるぞ」

 

「へえ……凄いマジックアイテムね!」

 

 少し興奮した様子で、俺の渡した水晶を持ち上げて矯めつ眇めつ眺めている。こういうものには触れたことがなかったのだろうか。

 

「ま、なんか困ったことでもあればそれで連絡してくれてもいいぞ。多分いつでも応えられるから」

 

「うん! ありがとう!」

 

 それから、彼女の家で話をして、俺とカルキはお暇することに。マスターもおいてきっぱなしだし、説明してあげないとな。

 

「それじゃあまたな、テファ、エルキドゥ」

 

「うんっ! またね!」

 

「いつでも来ると良い。歓迎するよ」

 

 二人を筆頭に、孤児の子供たちがわーわーと見送ってくれる。

 笑顔でそれに手を振りながら、俺たちはヴィマーナに乗って飛び上がる。

 

「カルキ、これからマスターの下に戻って色々と説明する。一緒に説明に参加してくれ」

 

「→ギル。了承した。高性能AI英霊たるこのカルキに任せてほしい」

 

 ……自分で高性能と言うロボっ娘はポンコツ説を俺は持っているんだが……その辺この子はどうなんだろうか。

 と言うか、この子ロボ系なのか? アンドロイドとか……うーん、そういう区分には詳しくないからなぁ……。そんなことを考えながらもヴィマーナは目的地へ向けて前進していく。帰った時のマスター、たぶんわちゃわちゃうるさいんだろうなぁ……。

 

・・・

 

 トリステインの首都、トリスタニア。

 執務室に立つ私の前では、真っ黒なドレスに身を包んだアンリの姿が。像の前に跪いて、ずっと祈りをささげている。

 

「アンリ」

 

 こうして声を掛けるのは、何度目だろうか。そして、声を掛けたのと同じ数だけ、彼女に無視をされるのも。この戦争が起きてからと言うもの、ずっとこの調子だ。一日の大半をここで過ごし、必要なこと以外はこの部屋で過ごしている。

 

「マリー殿」

 

 部屋の外から、控えめな声が聞こえてくる。マザリーニ枢機卿の声だ。アンリに直接話しかけるとろくに取り合ってもらえないということで、私を通して用件を伝えるようになったのだ。

 

「何かしら、枢機卿」

 

「……アンリエッタ女王の様子は」

 

「いつも通りよ。お祈りしてるわ」

 

「そうですか……」

 

 扉の向こうに見える枢機卿は、前にもましてやせ細っていっている気がする。気苦労が絶えないのね。アンリのことを娘か孫かのようにかわいがっているから、なおさら。

 

「心の支えは一つだけあるから、あなたは心配しないで。……その書類も、あとで見せておくわ」

 

「……マリー殿には心労をかけますな……」

 

「あなたこそ。しっかり休むのよ」

 

 にこりと笑った枢機卿が、私にいくつかの書類を渡して去っていく。……これは……戦死者のリストに、兵糧の補給要求書に、休戦の申し込み……!?

 ……そう、相手は遅滞を望んでいるのね。この世界にも新しい年を祝う行事がある。その間は戦争をしない、と言う慣例も。こちらは長期戦に持ち込まれるだけで敗北だ。だが、相手が休戦を望むというのなら……それが本当に守られるかを除けば、こちらにとっても得である。物資を送る時間は、必要なのだから。

 

「……でも、こちらには王さまがいるのよ」

 

「……マリー? 今王さまのお話を?」

 

「……そういうところだけ耳ざといんだから。ちょうどいいわ。これを一緒に見ましょう?」

 

 そういうと、アンリは素直に私の手元をのぞき込んでくる。シティオブサウスゴーダを占拠したらしいこと、休戦の申し込みと補給の申請などなど……少し顔を赤らめたアンリが、年が明ける

 

前に決戦を……と小声でつぶやいた。

 

「……でも、無理ね。取りあえずは補給物資を送らなきゃ……相手もひどいことをするわ」

 

 シティオブサウスゴーダの食糧庫は空になっていたそうだ。おそらく、相手はこちらの糧食や補給品を消耗させることを狙っている。制空権を奪い、王さまのマスターのおかげで人的な消耗はほとんどないというのが今のところは良い知らせだ。

 ……そして、あちらに王さまが行っているというのが大きい。

 

「……マリー、王さまに念話をつなぐわ」

 

「え?」

 

「相手が非戦闘員を利用してこちらを苦しめるのなら……こちらも奥の手を使いましょう」

 

 そう言って、王さまに念話を繋げながら、アンリに向けて微笑む。

 

「……食料がないのなら、パンを食べればいいのだわ」

 

 こんなこと言うなんて、皮肉ね。

 

・・・

 

 テファの住処から戻ってきた俺たちは、シティオブサウスゴーダを攻略したことをマスターから聞いた。

 そして、そこの食糧庫に何も残っていなかったことも。ふぅむ、むごいことをする。一応マリー経由で聞いてみるか……? なんて思っていると、パスが通る感覚。

 

「聞こえてるかしら、王さま」

 

「マリー?」

 

 久しぶりに、マリーの声を(念話とはいえ)聞いた気がする。挨拶を挟んだ後に、頼みがあると切り出された。

 

「……食料の補給の手伝い?」

 

「ええ。あちらはアルビオンの国民から食料を取り上げてこちらに糧食を吐き出させることで遅滞をのぞんでいるのよ。……なら、こちらもそれなりの手段をとるだけよ」

 

「……なるほどね。俺の宝物庫に距離なんてほとんど関係ないからな」

 

 向こうにマリーがいるなら、パスを通じて荷物の位置はわかる。それで回収した補給物資をそのままこちらで出せばいい。四次元なんたらとスペアなんたらの話みたいなものだ。

 

「仕方ないなぁ。運搬料金は後でたっぷりと請求するとするか」

 

「うふふ。なんでも言って? あなたの言うことなら、なんでも用意するわ」

 

 念話だとしてもマリーが笑いながら言っているのが容易に想像できる。ま、マスターと共にこちら側に付くと決めたんだから、これくらいの協力は惜しまないけどね。

 

「言い訳はこちらで用意しておくって言ってたわ。アンリの書状も一緒に持って行ってもらうらしいから、よろしくね」

 

 なるほどな、とパスを通じて示された場所から物資を受け取る。あとはこれを届けるだけなんだが……お、これが書状か。……ふむふむ、なるほどね。マスターの力を借りるとするか。

 

・・・

 

「ふぅん……姫様がねぇ……」

 

 俺が渡した『書状』を見て、マスターが問いかけに似た独り言をつぶやいた。アンリが用意した書状には、身分を証明するサイン、そして「こんなこともあろうかと、現在いる場所の近くに物資を隠しておいた。という文章が、装飾過多に並べられていた。偉い人特有のもったいぶった言い回しと言う奴だ。俺も苦労したことがある。「あそこに行ってきて」と言う命令を出すだけでも五枚くらいの書状を書いた覚えがあるからな。面倒過ぎて自動人形たちにブン投げた記憶がある。

 ちなみにこの食料を用意するための資金やらは半分俺が出した。俺が、と言うか『オルレアン伯爵』が、だが。便利なもので、この伯爵の立場でこの糧食を準備し、裏で隠してはこんできたことにしているのだ。うむ、まぁ実際に運んでるの俺だしな。間違いではない。

 

「仕方ないわね。『ゼロ機関』を出すときかしら」

 

「……なんだそのカッコいい組織」

 

「姫さまからもしもの時はそう言ってごまかすように言われてたのよ。虚無のこと誤魔化すのに、マジックアイテムを極秘で開発している『ゼロ機関』って組織を隠れ蓑にしなさいって」

 

 それは良いアイディアかもしれないな。マスターの使う『爆発(エクスプロージョン)』や今回使えるようになった『幻影(イリュージョン)』などの虚無魔法を内密に使用するには、『ゼロ機関』がそういう効果のマジックアイテムを開発したことにして、マスターがそれを使用する極秘の女官と言うことにした方が騒ぎは少ないし、納得もできるだろう。

 『虚無』を今広めるわけにもいかないので、その機転は流石だと言えよう。アンリだけではなく、あの宰相あたりも何か噛んでいそうだ。後方で暗躍するならそういうカバー組織みたいなのも必要だろう。

 

「俺も何か立ち上げるかな。……うーん、俺は資金で殴る派だから、財団でも立ち上げて……『サーヴァント』『クリエイティブ』『パラダイス』とかの略で『SCP財だ……あだっ」

 

「……たぶんですけど、ここで止めておいた方が良いと思って……」

 

 小碓に頭を小突かれて発言が止まったが、それはそれでよかったのかもしれないな。俺も少し熱くなってしまって、ちょっと自分で何を言ってるのかわからなくなりかけてたからな。

 それに、この財団を立ち上げるとまず俺から封印されそうな予感がしたりする。うむ、俺もマスターを見習って『ゼロ財団』……財団なのに『ゼロ』ってなんか縁起悪いな。いいや、ここは俺の代名詞の『黄金財団』でいいや。なんか金ぴかりんって感じだしな。

 

「うん、伯爵が作ったことにしておこう」

 

 その辺の面倒な書類はマザリーニに任せておけばいいだろう。向こうとしても俺が資金面で支えてくれると分かればそのくらいの面倒は被ってくれるだろ。

 

「さてさて、そしたらオルレアン伯爵として変装でもしてくるかな」

 

 宝物庫にあるものを使えばそういうスキルがなければわからない程度の動きはできるだろう。髪型変えて、モノクルつけといて、服装変えて認識阻害の宝具身につけたら完璧だ。

 それからは早いものだった。糧食の少なくなったということを聞いた、と言う体でマスターが司令官の下へ向かい、そこで話を付け、サウスゴーダの外れにある倉庫(さっき建てた)に女王からの指令で糧食をこっそりため込んでいた……と言う体で後続の補給部隊が追いつくまでのつなぎとする……と言うことらしい。

 ここでサウスゴーダの民に配る食料は問題ないだろう。状況的に、このままなら進軍用の糧食が足りなくなることはないだろう。町に出て年越しに沸く民たちを見ていると、後ろからぽふ、と抱き着かれる。……む?

 

「お久しぶりです、ギルさん!」

 

「シエスタ?」

 

 抱き着きを解かれたので振り返ると、次は正面から抱き着かれる。そんなシエスタを抱きしめ返して頭を撫でてやると、ぞろぞろと『魅惑の妖精亭』の面々が歩いてくるのが見えた。スカロンに、ジェシカもいる。スカロンはくねくねしながら「あらあらまぁまぁ!」とか言ってるし、ジェシカはニヤニヤしながらこちらに手を振ってくる。

 当然のように「なぜここに?」と言う疑問が生まれる。一応ここは戦地だ。占領しているとはいえ、危険がないとは言えない所だ。俺の疑問に、スカロンが簡単に説明してくれた。

 

「なるほどな。『慰問隊』か。年越しもあるし、兵士たちも故郷の酒が懐かしい時もあるってことか」

 

 あんまり俺は気にしない……と言うか、手持ちの食材があるので気にしたことはなかったが、アルビオンの料理はまずく、酒も麦酒ばかり。さらには女性の態度もキツイと言うので有名らしい。ほう、ウチのマスターとどっちがキツイか今度確かめる必要があるな。

 そんな理由もあり、何件か居酒屋が出張することになり、スカロンの店も選ばれたということなんだとか。ふむ、それはわかるが……なんでシエスタが?

 

「あ、私親戚なんです」

 

「……ジェシカと?」

 

「もちろんこのミ・マドモワゼルともよ!」

 

「……母方の、ですね」

 

 確かに、二人とも綺麗に黒髪だし、身体つきも血のつながりを感じる……。っと、これはセクハラか。シエスタはともかく、ジェシカはきちんとそういう関係になってからにしないとな。

 ……この二人を見ていると、なんだか少し懐かしさも感じるから不思議だよなぁ。これは俺の大元の魂が感じているノスタルジーなんだろう。

 

「と言うか、その居酒屋慰問隊になんでシエスタが?」

 

「ええと、ギルさんたちがいなくなった後、学院が襲われまして……」

 

 ああ、あの件か。あの時は信玄にアニエスを助けてもらったり、色んな事があったな。

 

「私たちは皆さんと一緒に避難してて、イヨさんとかに助けてもらっていたんですけど……その件でしばらく学院もお休みってことになりまして……」

 

 一時的な暇を貰ったのだが、その間どうしようかと悩んでいたら、スカロンがお店をやったこと思い出し、手伝いに行こうと向かったところ、みんなが荷物をまとめていたんだとか。それで細かい話を聞いたところ、アルビオンに向かって慰問隊に参加することを聞き、ついてきたらしい。

 

「こ、ここに来たら、ギルさんに会えるかなって思って……」

 

「なるほど、それでまさに俺がいたというわけか」

 

「はいっ」

 

 先ほどまで少しうつむきがちだったシエスタだが、その返事だけは輝くような笑顔だった。

そこまで喜んでくれるのは俺もうれしくなってくるな。

 

「いい子だなぁ、シエスタは」

 

 もう一度シエスタを抱きしめて頭をなでてやると、はわはわ言いながらも俺の背中に手を伸ばしてくるシエスタ。うーん可愛い可愛い。

 

「はー、もうあっついなー。……幸せそうな顔しちゃって……」

 

「そういえば、ルイズちゃんもいるのね。あいさつしないと」

 

 すでに興味が移っているのか、爪を弄りながらスカロンは言った。

 

「ヴァリエールさまもいらっしゃってるんですね。……ごあいさつしないと」

 

 こちらは何故かメラメラと目に闘志を燃やしながらつぶやく。……なんで敵意出してるんだろ。

 

「そういえばシエスタ、鯖小屋は大丈夫か?」

 

 閉鎖されていられなくなったとはいえ、鯖小屋を放置するのは……と思ったのだが、卑弥呼と壱与が鬼道で結界を張ってくれたらしい。何かあれば、鯖小屋ごと爆破するようなものなので、中にあるものは盗られないだろうとお墨付きをもらったらしい。

 

「っていうか、あいつらだったらついてきそうなもんだけど……」

 

「あ、ヒミコさまとイヨさまは年が明けてから合流すると……」

 

 ……なんで念話で伝えないんだろうか。

 取りあえず卑弥呼、壱与のチームヤマタイは年明けに合流、信玄と謙信のチームセンゴクは一旦アンリの所へ寄ってからくるらしい。ジャンヌはと言うと……。

 

「……むー、シエスタちゃんばっかりぃ……」

 

 なんと、このチーム妖精亭の護衛として、一緒に来たらしいのだ。先ほどまではジェシカの後ろでぐぬぬしていたが、マスターの所へ向かう今はこちらに出てきて俺を見上げながら頬を膨らませている。カルキが近未来の服装に顔も未来形の美人なのに対して、このジャンヌは中世スーパー芋娘なので、その対比も可愛らしい。

 歩きながら頬を突くと、自分で「ぷしゅう」と言いながら口から空気を漏らした。こうやって自然にあざとい感じを出せるのはウチのジャンヌの長所だろう。あざとさが腹黒さやうざさとは無縁な感じが可愛らしく感じるのだろう。

 

「今日は帰ったら一緒に寝ような」

 

「ふぇっ!? ……あ、あうー……よ、ょろしくおねがいしまふ……」

 

 顔を真っ赤にさせて俯かせながら、こくこくと小刻みに頷くジャンヌ。ぴゅあっぴゅあ乙女だなー、全く。

 

「わ、私もっ。私も一緒でいいでしょうか!」

 

「もちろん。ジャンヌ、シエスタの仕事が終わったら護衛ついでに俺の所に連れてきてくれるか?」

 

「はいっ。もちろんです」

 

 今日の夜はチーム芋煮会とになりそうだ。やっぱり心落ち着くんだよなぁ。……ちなみにこのチーム芋煮会の一員である小碓は、先ほどから俺の背中をちくちく小刀で刺激してくるので、今日は三人を相手にすることになりそうだ。

 カルキは……あれかな、エルキドゥと一緒でチーム神秘みたいなのになるんじゃないかな。

 

「さて、それじゃあマスターも待ってるだろうし、ぱぱっといこうか!」

 

・・・

 

 降臨祭……わかりやすく言ってしまえばクリスマスみたいなものと言えるのじゃないだろうか。雪も降っているし、此方の世界の人からしてもロマンチックな感じはするのだろう。

 

「いいわねぇ、ロマンチックだわぁ……」

 

 マスターに挨拶に来たスカロンが窓の外を見ながら腰をくねらせてなければ、の話だけれども。

 前にいた天幕はエルキドゥの襲撃で吹き飛んでしまったので、今は新しくこちらで出した小屋の中で暖を取りつつ食事をとっている。

 

「……戦場でこんなにいいもの食べられるなんてね。あんたの宝物庫様様だわ」

 

 フォークとナイフで上品に食事をとっているマスターが、ワインを一口飲んでからそうつぶやく。

 材料は俺提供、調理はシエスタとジェシカの安心ディナーなので、みんな笑顔で食事をとっているようだ。今日のメニューはビーフシチューにバゲット、サラダにあと数品と言うメニュー内容で、さらには食後にケーキまで出てくる完璧っぷり。……ちなみにケーキは俺が頼んだ。ばっちり現代風に仕上げ、フルーツもクリームもしっかり使った最高級の物である。

 

「んー、甘くておいしーいっ」

 

 ハートマークすら浮かんできそうな程に浮かれた言葉を発する小碓が、きゃぴきゃぴとはしゃぐ。……このメンバーの中で一番女子っぽい反応してるぞ、この男の娘……。片手にフォークを持ち、もう片方の手で自身の頬を押さえるようなポーズは、本当にかわいらしい女子のような印象を与えてくる。……そのままこちらに流し目して舌をぺろりとしなければ素直にほっこりできたんだけどなぁ……。

 

「んむー、小碓ちゃんの国っていろんなもの取り込んで魔改造するよねー……クリスマスってもっと敬虔なものだったはずなんですけど……家族で過ごすっていうか……バレンタインもハロウィンも全部そう……あの国なんでイベントに全力投球するんだろ……しかもリア充ほど楽しめるような内容になって……やっぱり家族でゆっくり食事でもするのが一番だと思うんですけどそこんとこどう思います小碓ちゃん?」

 

「ふぇ? ……別に今はジャンヌちゃんもリア充だしどっちも楽しめばいいんじゃないんですか?」

 

「――ハッ!? そ、そうか、今は私もたくさんのお友達とマスターと言う恋人もいるしリア充と言っても過言ではないのでは……? つまり私はどちらのクリスマスも楽しめるという最強の存在……!?」

 

「……ちょろいなー」

 

 はぐ、とケーキを一口食べながらつぶやく小碓。

 ……マスターもケーキに舌鼓を打ちながら、苦笑しているようだ。

 

「さて、もう少しで年越しだ。……次はそばでも食べるか。打てる人いるかなー……」

 

 流石にそばの作り方まではわからんからな。そば粉と小麦粉がどーたらっていうのを知ってるくらいだからな……。謙信とか信玄だったら知ってるかなー。でもあいつら俺と同じで作ってもらう側だからなー……。

 

「こういう時だと、雪も悪くないな……」

 

 そんな俺の独り言は、喧噪の中に溶けていったのだった。

 

・・・




――ステータスが更新されました。

クラス:■■■■■■■・■■■■

真名:エルキドゥ 性別:不明 属性:混沌・善

クラススキル

対魔力:A
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法などをもってしても、傷つけるのは難しい。

保有スキル

気配察知:A+
敵の気配を察知する野生の超感覚。
周囲に存在する生命体の位置を補足可能。
このランクならば、数キロメートルの範囲を容易にカバーする。
気配遮断も判定次第で看破する事も可能である。
……ある、一人の英霊に対しては、どれだけ離れていてもその気配を察知することが可能である。

怪力:A
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性
使用することで筋力をワンランク向上させる。持続時間は『怪力』のランクによる。

勇猛:A
威圧、混乱、幻惑と言った精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

動物言語:B
人間以外の動物の言葉を理解することが出来る。

能力値

 筋力:A 魔力:B 耐久:A 幸運:D 敏捷:B 宝具:EX

宝具

神の粘土(ベーレト・イリー)

ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:0 最大補足:自身

神に作成された身体そのもの。
獣から人になったり、元々は神の投げ落とした粘土だったり、固定された肉体を持たない故の自在な身体の変化。
鋭い爪で襲い掛かったり、器用に道具を扱ったり、さらには自身の体を武器に変化させて戦ったり出来る。
その体は肉ではなく粘土なので、損傷しても大地からの祝福により容易に修復できるようになっている。
フンババ、天の牡牛などの神に連なる存在を打ち倒したことによる、対神性宝具とも言える。

■■■■■■■■■(■■・■■■・■■■■)

ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:0~99 最大補足:――

――宝具未使用につき、詳細不明。

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