ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント!   作:AUOジョンソン

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「さーて、私は今なにを考えてるでしょーか!」「……『なにかんがえてるの』っと」「え、なんですそれ。スキルですか? ……って、え!? なにそのメッセージウィンドウ!?」「なになに? 『おマメクリクリしてくれたら、じょわ~』……? お前……」「い、いや、違います! 違いますよ!? そのドン引きした顔をやめてくだ……え、ちょっと、なんで私の腕を取って……?」「ここじゃなんだし、あっちでもう一度『なにかんがえてるの』か聞かせてくれよ。な?」「え? ひ、一思いに気絶するまでで許してください……」「NO! NO! NO!」「……ま、まさか腰がイかれるまで……?」「NO! NO! NO!」「りょ、りょうほーですか……!?」「YES! YES! YES!」「もしかして、朝までコースですかぁーッ!?」「YES! YES! YES!」「ひゃあぁぁぁぁぁぁー……ぐやさん、たーすーけーてー……」


「……おー、まい、ごっしゅ」


それでは、どうぞ。


第四十三話 読み切れない心と未来。

 マスターの魔法をあの軍人たちに伝えると、すぐにその魔法を利用した計画を立てると言って慌ただしくなった旗艦の中で、少しだけ空いた時間を俺たちは部屋で過ごしていた。

 そこで、少し事件もあったわけだが……なんて思っていると、マスターがまさにそのことについて聞いてきた。

 

「……さっきの何だったわけ? あんたが宝具使ったのはわかったけど……どこにもサーヴァントいないじゃない」

 

「ん? ああ、いや、緊急のことだったからな。俺が行くのは間に合わなさそうだったから、ちょっと特殊なサーヴァントを呼んだんだ」

 

 マスターが俺を見上げながら首をかしげるので、今召喚した英霊に付いて説明することにした。

 元々男の英霊である武田信玄だが、今回は俺との『契約』の内容にちょうどよく、今のアニエスをすくうのは彼しかいないと思ったのだ。彼との契約の内容は、『現世に依代になりえる女がいたときに召喚に応じる』ことである。なぜなら彼は生前織田信長や上杉謙信が自分と戦い、互角以上の実力があったことをずっと考えていて、『ならワシも女になればもっと強くなれるのでは?』と思ったのである。……考えぶっ飛んでるなぁ。

 

「え? ……ば、馬鹿なのその人……?」

 

「いやー、戦国時代の日本なんてどっかネジぶっ飛んでる人しかいないから」

 

 そして、武田信玄の宝具の一つは他人を乗っ取るものである。だから『ライダー』なのだ! ……え? 武田騎馬軍団? いやだなー、違いますよー。彼がライダーたる所以は、人を『乗っ取る』ところなんですよねぇ。だから彼は俺の宝具の召喚条件に触れてないって扱いになったんだよねぇ……『女性しか乗っ取る気がない』と言うのと、今の彼の本体は召喚されたときの兜であるところが、俺の『女性、雌、あるいはそれに準ずるもの』に入っているのだ。これをアウトにしてしまってはダヴィンチちゃんとか出てこれなくなっちゃうからな。

 

「でも大丈夫なんですか? あっちにはライバルの謙信さんいますけど……」

 

「まぁ上手くやるだろ。なんだかんだ言って良いライバル関係だったらしいし」

 

 謙信は微妙に突っかかるんだけど、武田信玄の方は歳のこともあってそれを笑って受け流す、みたいな。

 

「これでアニエスの件もなんとかなったし……この作戦が終わった後にでもアニエスの様子を見に行ってみるよ。アンリが信用してる、数少ない子だしね」

 

「それがいいわね。姫様の近衛になってる今の銃士隊から、彼女が抜けるのは避けたいしね」

 

 腕を組みながら、マスターはうなずいてそう言った。今のアンリは貴族恐怖症みたいなものだ。信頼できないし、信用できてない。だからこそ平民を貴族として取り立てて、自身の周りに置いてるんだろうし。

 例外はマスターくらいのもんだ。それ以外だと……枢機卿とか? 信頼しきれてはないけど、何かあったら話は聞くくらいのスタンスなんだろうか。

 

「それにしても……あっちも激戦だったみたいだな」

 

 ジャンヌやら謙信、卑弥呼や壱与から来た念話を総合すると、向こうの戦力はメイジが十数人。英霊はカルナと虎になる男……李徴、更には謎のフードの男とその軍勢と、確実に学院を落としに来ている布陣であった。

 こっちに戦力を連れてきてたらやられてたな……まさか、カルナを向こうに送るとは思わなかった。うぬぼれるわけじゃないけど、俺と対抗できるのはカルナだろうし、こっちにマスターが来てるって情報は行ってるだろうから、俺も来てると読んでこちらに送ってくるものだと思ってたけど……向こうには軍師的な存在がいるのだろうか。

 カルナはセイバーがなんとか怪我を負わせたし、新たに召喚され、アニエスの体を乗っ取った信玄が李徴を撃退。それが原因かは不明だが、そこからは全員が撤退。誰も倒せなかったのは残念だが、防衛は成功したと言っていいだろう。

 唯一卑弥呼が重傷を負って意識を失っているとのことだが、霊核は無事だし今は安静にしているとのことなので、安心した。

 

「……それにしても、向こうは相当な強さを誇るな。もう一人くらい召喚しておくべきか……?」

 

「過剰な気もしますけどね。今回は防衛線で周りに被害も出せないから手こずったんでしょうけど……。あとはあの優男ですかね」

 

 小碓はやはりカルナを恨んでいるようだ。カルナのことを話すときには手の小刀がきらりと光って怖い。

 まぁ、小碓の言うことも正しい。今回のライダーの召喚は予想外だったが、一応防衛はできていたし、今回は俺の采配ミスだろう。卑弥呼か壱与のどちらかをこちらに連れてきて、小碓を向こうに配置しておけば、もう少し打てる手も増えていたかもしれない。……小碓は意外と火力あるしな。それか、今度からマスターが遠出する際には俺だけ付き添うようにするか……。

 それで困ったときに英霊召喚するとか……。ダメだな。場当たり的にそんなことしてたら、いつか詰みそうだ。

 

「さて、明日は作戦の日だろう? 寝ておいた方が良い。時間が来たら起こすから」

 

 そう言って、俺はマスターをベッドに寝かせる。マスターは少し緊張しているのか、布団に入りながらもこちらを見上げて目を閉じない。

 

「どうした、マスター。緊張しているのか?」

 

「……そりゃあね。初めて使う呪文だし……」

 

「でもさっき試したときはしっかりできてたじゃないか」

 

 頭を撫でてやると、マスターはむぅ、と唸りながら少しだけ顔を布団に沈めた。それから、少し部屋の中を見回してから、深くため息をついて目を閉じた。

 

「……寝るわ。灯りは消しておいてちょうだい」

 

「はいはい」

 

 貴族とはいえ、ここは資源の限られた船の上。しかも軍船とあれば、勝手に明かりをつけておくわけにもいかない。けど暗いと不便と言うことで、宝物庫からよさげな照明を出して使っていたのだ。こういうところは俺をサーヴァントにした利点だな。要所要所で便利な道具を出せるので、日常生活にも便利なのである。

 出していた照明をしまうと、部屋は暗闇に包まれる。まだ日も暮れて少ししかたっていないが、明日は朝早くから動く必要がある。だからこうして早めに寝かせているのだ。

 

「……んふー」

 

「いや、場所ないから」

 

 俺の服の袖を引きながら、胸元をチラチラと露出させる小碓の頭をぐいっと押して拒否する。司令部があるほど広い船内とはいえ、俺たちが乗り込んで一時間ちょっと占有できる場所なんてないのである。

 何をしたいのか悟った俺がそう断るが、小碓は不思議そうに首をかしげる。

 

「え、ここでいいじゃないですか」

 

「は? ……馬鹿なのかお前……?」

 

「ばっ、馬鹿じゃないですよ!? だって宝物庫の物使えば遮音結界くらい張れますよね? それで大主にもうちょっと深い淫夢見て貰えば、実質さんぴーですよ?」

 

「……ごめんな。馬鹿かどうか疑って……間違いなく馬鹿だわお前」

 

「ふええっ!? どっ、どうしてボクが馬鹿なんですかっ! そういうのは壱与ちゃんとか迦具夜ちゃんとかに言ってほしいものですね!」

 

 なんでキレてんだこいつ……? 今俺間違いなく正しい評価叩きつけた自信あるわ……。

 

「今日の所は我慢しろって。いつ敵が来るかもわからないんだから」

 

「うっ……それもそうですね……。我慢します……」

 

「いい子だ」

 

 俺がそう言って撫でると、小さな声をあげながらはにかむ小碓。

 ……さて、一応動き出すのは明日の8時頃と聞いてるけど……。やれることはやっておかないとな。

 

「そういえば明日は何で行くんですか? 『黄金と宝石の飛行船(ヴィマーナ)』は核を撃ち抜かれて修理中ですよね?」

 

「ああ、だから明日は『天翔る王の御座(ヴィマーナ)』で行こうかなって。俺とマスターと小碓が乗るだけなら余裕だし、他の奴より小回りきくからな」

 

 あの老人のアーチャーが撃ち抜いてくれやがった俺のいつも愛用している方のヴィマーナは現在自動人形たち100人態勢で修理中なのである。まぁそれでもまだ600人近く余ってるから、宝物庫の中から俺に悪戯をしてくる自動人形もかなりの数いるんだけどね。ここらでだれが主人かを分からせた方が良いか?

 

「いや……止めといた方が良いと思うよ。主が数百人の自動人形相手に休む間もなく搾り取られてネズミ算式に自動人形増える未来しか見えないもん」

 

「なんだその恐ろしい未来予想図……あいつ黙示録の騎士かなんかなの……?」

 

「大丈夫ですよ。食い散らかすの主だけなんで。何が恐ろしいって座に戻っても逃げられないってところですね。……獣かなにかですかね?」

 

 こわ。そんなんゾンビパニック物の映画だけで十分なんだよ。……まったく。変に話が逸れたな。

 とりあえず、明日の作戦であるロサイス港への空図は貰ったし、マスターもこうして休ませている。最悪魔力の籠った宝石ならあるので、それを使ってもいいしな。あとは明日使う『天翔る王の御座(ヴィマーナ)』の用意と……。

 

「ほら、主。お茶を淹れましたよ。……色々と大主のこと気にしちゃうのもわかりますけど、それで考えすぎてもつかれちゃいますよ」

 

 俺が明日のことで不安になって色々と用意に奔走していると、いつの間にか小碓がお茶を淹れてくれていたらしい。声を掛けられて、確かにそれもそうかと思い直した俺は、椅子に座って一息つくことにした。

 ソファのようになっているので、小碓もお茶を持って横に並んで座る。

 

「……ふふ、こうしてそっと寄り添うだけでも、良いものですね」

 

「そうだな。……両隣挟まれると命の危険感じるけどな」

 

「ほんと女の人に好かれる天才ですよね。……えへ、ボクも女の子にしてもらっちゃったし……」

 

 もじもじとする小碓に少し心を動かされたものの、ここで手を出すわけには、と理性が俺を止めてくれた。……それにしても、これだけ好いてくれるというのもうれしいものだ。なんていったって、俺の宝具は『死んだ後も力になりたい』と思ってくれるほどの絆でなければ召喚できない。だから、俺の召喚に応じてくれる子たちがいるということはうれしい事なのだ。感謝してもし足りない。

 ……ただ、何人か俺が死なないと思って接してくるのもいるにはいるけど……。たぶん、『このくらいじゃ死なない』と思ってやってくるんだろうが……。やめてくれ。その宝具は俺にきく。

 

「さ、明日は忙しいぞ。退いたカルナたちがどっちに行くかわからんからな」

 

 退いたと見せかけてまた学園を襲撃するかもしれないし、こちらに来るかもしれない。だから学院のサーヴァントは動かせないし……。こっちに全戦力回されたらやばいな。今のうちに一人くらいはサーヴァント見繕っておくか。

 

「ほら、それ飲んだら少し眠ろうか」

 

「はーいっ。あ、ベッドで抱きしめながら頭なでなでしてくださいね!」

 

「はいはい」

 

 部屋の中は狭いが物はないので、宝物庫からベッドを出す余裕くらいはある。着替えながらも宝物庫からベッドを出し、そこに寝転がると、小碓もそこに飛び込んでくる。受け止めてやって、さらに上から布団を出す。よし、これでおっけー。あとは自動人形を一人出してっと。

 

「よし、じゃあお休み」

 

「はいっ。おやすみなさい」

 

・・・

 

「さて、マスター、準備はいいか?」

 

 翌日。いつもより早めにマスターを起こして準備させ、俺たちも部屋にあるものを片付けたりしながら、こうして格納庫で作戦開始よりも少し早い時間に集合していた。なんでこんなに早く集合しているかと言うと、俺たちを誘導、護衛してくれる竜騎士との面合わせがあるからなのだ。

 マスターや小碓と共に地図とにらめっこしてみたり始祖の祈祷書を確認したりしていると、ぞろぞろと少年たちがやってきた。……まさか、彼らが……?

 

「おはようございます!」

 

「え、ええ。おはよう」

 

 元気にあいさつをしてくる少年たちに、マスターが挨拶を返す。マスターと同い年くらいの少年たちだが……。彼らも貴族らしく、自己紹介と軽く作戦の打ち合わせを行った。

 たぶんだが……彼らは、マスターをダータルネスに向かわせるためならばどんなことでもするだろう。そういうような命令を受けているはずだ。それはしょうがないとして……それを俺が認めるかどうかは別問題である。

 世界のすべての命や俺に敵対するものまですべて助けようとは思わないが……それでも、こうして知り合ってしまった以上は、なんとかして守りながら進もう。マスターと同い年なのに、俺の目の前で盾として死んでいくのは忍びないのだ。

 彼らはタバサと一緒で風竜に乗る子たちだ。それもあって、彼らもタバサのように助けてあげたいと思ってしまったのだ。

 

「……よし、それじゃあ行こうか!」

 

 事前の作戦会議も終わり、竜騎士のみんなは自分の竜の所へ向かっていった。俺もマスターと一緒に甲板まで上がっていく。あとは甲板から飛び降りれば、魔術によって隠蔽されているヴィマーナに乗り込めるだろう。

 

「……ほ、ほんとにあるのよね?」

 

「もちろん」

 

 甲板から下をのぞき込むマスターが、顔を青くして俺にきいてくる。俺は安心させるように笑顔で答えると、さてそろそろ乗り込もうかと言おうとして……慌ただしく鐘が鳴った。

 

「なに?」

 

「な、何なの!?」

 

「敵襲のようですよ。……ふむ、そういえば我々で索敵するの忘れてましたね」

 

「……そういえば」

 

 言われてから周りを見てみれば、はるか遠くの上空。雲の隙間から、大量の船がやってくるのが見える。どうにも、あれは敵艦のようだ。……まずいな。

 俺が急いでヴィマーナに飛び乗ろうとしたとき、兵士が一人やってきて、俺たちに叫ぶように命令を伝えてくる。

 

「『虚無』出撃されたし! 目標ダータルネス! 仔細自由!」

 

「了解した!」

 

「ッ! 主!」

 

「……やばいな。口閉じてろ、マスター!」

 

「ふぇ? ひゃぁ!?」

 

 小碓の注意が飛ぶと同時に、爆発音が響く。おそらくだが、魔法が直撃したか……爆薬を乗せた船でも突っ込んできたのだろう。揺れる船の中で、マスターを抱えて飛び降りる。音からして、小碓もそれに続いてきたらしい。マスターの気の抜ける悲鳴を聞きながら、思念でヴィマーナを操り、俺たちを受け止めさせる。

 

「よし、まだ船が突っ込んできてるみたいだな……何隻かつぶしていくぞ!」

 

「了解ですっ。大主のことは任せてください」

 

「よし、行くぞ!」

 

 ぐいん、と俺の思考をトレースしたヴィマーナが、機首をひるがえして目標へ向かう。宝物庫から取り出した黄金のガトリングを機種に付けているので、魔力を通せば直接操作しなくても前には攻撃できる。宝物庫爆撃はあんまり大々的に使うとまた面倒ごとを引き出しそうなので、こうやって『マジックアイテム』でごまかせそうな範囲でのものを使うとマスターとの相談で決めたのだ。

 

「まずは竜騎士隊が空に上がる時間を稼ぐ!」

 

「りょーかいですっ!」

 

 小碓が小刀ではなくもう一つの剣を抜く。草薙の剣と呼ばれるもので、炉心に天照大神の加護を持つ火打石を組み込んでいるおかげで、八岐大蛇の水の属性を炎に変換できるという、いうなれば『草薙の剣・改』とでもいうべきものなのだ。

 今の小碓では大きすぎてあまり使いこなせてないが、それでも炎を操るくらいはできるようなので、こういう時は対人の小刀よりもこちらの方が適している。

 

「小碓、目の前の船を止めるぞ!」

 

 空中でヴィマーナを旋回させて突っ込んでくる船に船首を向け、ガトリングを起動する。数回転した後に、魔力の弾丸が飛び、数隻を砕く。正直威力的には木造の船が耐えられるものではないので、数百発も食らった船はその場で浮力を失い、ほぼ真下へ落ちていく。

 

「行きなさい、炎よ!」

 

 小碓が剣を振るうと、蛇のような形を取った炎が、一隻の船に纏わりつき、大炎上させる。火薬を大量に積んでいるからか、爆発炎上して四散していく。

 

「よし、いい具合だ。……ちょうど竜騎士たちも来たみたいだな」

 

「みたいですね」

 

 塊になって飛んでいる竜騎士たちがこちらに向かってくると、一人だけ先行してヴィマーナに竜を寄せ、大声を掛けてくる。

 

「『虚無』殿! 竜騎士全員集合終わりました! これより『ダータルネス』に向かいます!」

 

「……了解した! 基本的にこの船の周りにいてくれ! この船はマジックアイテムを装備していて、君たちくらいなら守りながら進める!」

 

 俺の宝具の中にある、『雷の守り』の宝具を展開しているので近くに寄ってくれていれば一緒に守ることができる。俺の言葉に了解の意を返してくれた竜騎士の一人は、遅れてやってきた仲間たちと合流して、何かを伝えると、こちらを囲むように近くに寄ってきてくれる。声を掛けてきた一人を見ると、こちらにサムズアップを返してくれたので、おそらくみんなに俺の周りにいるように伝えてくれたのだろう。

 ヴィマーナの周りに固まってくれたので、それを包むように円盤状の宝具が竜騎士隊を含めた外周をひゅんひゅんと飛び交う。これが『雷の守り』の宝具で、この円盤が飛び交う内側にいれば、雷が攻撃を迎撃してくれるという『自動防御宝具(オートディフェンダー)』なのである。

 

「……あれは」

 

 前方から、数十騎の竜騎士が飛んできた。……どう考えても敵だろうな。こちらはヴィマーナ一機に竜騎士が十騎……すれ違うまでにできるだけ削って……あとは突っ切るしかないだろう。いかに早くダータルネス港について、マスターの『虚無』をぶっ放せるかに作戦の是非が掛かっている。

 

「離れずについてこい! 最高速で突っ切るぞ!」

 

 『風』の宝具を使って、周りの竜騎士に声を届ける。全員が頷いたのを確認してから、ガトリングをぶっ放していく。ばらける魔力の弾丸は、広範囲の竜騎士を薙ぎ払っていく。更に、とらえきれなかった竜騎士たちを、小碓の炎が撹乱していく。……よし、これならいける!

 風竜の最高速度にヴィマーナを合わせ、迫る竜騎士たちの下をくぐるように通り抜けていく。

 

「このまま向かうぞ!」

 

「……後ろには……流石に来てないですね」

 

 敵の竜騎士はだいぶ落としたし、小碓の炎が残りをかき乱してくれたので、追ってきている竜騎士はいないようだった。

 ……だが、あの数は……。

 

「……主」

 

「ああ、やっぱりな」

 

 今の敵は、主力ではなかったことが、目の前の光景を見てわかった。……今さっき迎撃したのは、先行していた一部だったのだろう。

 眼前に広がるのは、百を超える竜騎士たち。……これが、本隊か。

 

「固まれ! ……突っ切る!」

 

「ですが! この数では!」

 

 味方の一人からそんな言葉が飛んでくるが、これを見て盾になろうとでも思われたら厄介だ。それに……今この周りを飛んでいるのは宝物庫にある防御宝具。百騎の竜騎士に突破されるほど、『雷』の力は伊達じゃない。

 

「この船を信じろ! 全員で無事にダータルネスへ向かう!」

 

「……了解! 全員、輪形に陣を取り、雷と共に進むぞ!」

 

 また少しだけ風竜には無理をさせると思うが、また最高速に近い速度で駆け抜けてもらうことになる。……ダータルネスにはもう少しだ。この部隊を抜け少しすれば見えてくる。ここを抜けるしかない。ガトリングをぶちかますと、数が多いからかすぐに散開される。

 ……だが、それならそれでいい。穴が開いてくれるならば、そこを通るだけだ。

 

「ちっ、竜騎士隊! 魔法は自衛か敵の隊列を乱すためだけに使え!」

 

 飛んでくる魔法は、『自動防御宝具(オートディフェンダー)』が防いでくれる。向こうの竜騎士に少なくない動揺が広がっているのを感じる。ま、そりゃそうだろう。俺だって、固まって突っ込んできて勝手に防御してくる敵とか、頭おかしいにもほどがある。

 ガトリングを何度か撃つと、相手も学習したのか固まらないように俺たちを囲み始め、なんとか死角を突こうと散発的な魔法が飛んでくるが、それをすべて宝具が防いでくれるので、何度か味方のビックリする悲鳴が聞こえるものの、おおむね問題なくダータルネスへと向かえた。

 

「マスター、準備をしろ! そろそろ見えてくるぞ!」

 

「わ、わかったわ!」

 

 始祖の祈祷書を開き、歌うように呪文を唱え始めたマスターと、竜騎士隊の全員で、追いかけてくる竜騎士を防ぎながらダータルネス上空で旋回するように飛ぶ。だいぶん敵も減ってきたので、この作戦が成功すれば……。

 小碓や竜騎士たちと共に防衛戦をしていると、ダータルネスの上空。雲を割くように大艦隊が姿を現した。

 あれが、『幻影(イリュージョン)』……。凄い魔法だな……。『虚無』と言うのは……。

 

「マスター、体調は大丈夫か?」

 

「ん、大丈夫よ。ぎりぎりのところまで使ったけど……限界ではないわ」

 

 そういうマスターの顔色は、良いとは言えないものの、そんなにまずそうではなかった。

 俺たちの後ろをついてきていた竜騎士隊はと言うと、大艦隊が見えた時点で散開し、おそらく自分の部隊へと戻ったのだろう。この近くにはいなくなっている。……まぁ、彼らにはこの『大艦隊』発見の報を伝えてもらわなければ困るので、全速力で戻ってもらいたいものだ。

 

「……さ、戻ろう。みんなで無事に戻るまでが、作戦だ」

 

 そう言って、俺は味方の竜騎士隊たちに作戦は無事に成功し、そして帰還することを伝える。竜騎士たちの顔に、安堵と笑みが浮かぶのが見える。……まぁ、宝具で守ってたとはいえ、あれだけの竜騎士隊の中を突っ切ったのだ。……彼らの今後に、何かいい影響でも与えられればいいんだけれど。

 さて、合流地点はアルビオ大陸に向かう途中の空。目印も何もないところだが、まぁ空図を目印に行くしかないだろう。

 そんな風に少しだけ気が抜けたことを考えていたからだろうか。……小碓が声を上げるまで、俺は『それ』に気づかなかったのだ。

 

「――主!」

 

「ん? ……なにっ!?」

 

 急に、上空に現れた反応。……これは……。

 

「小碓、マスターを守れ! 竜騎士隊、船の後ろに!」

 

 慌てて陣形を返させる。いや、間に合わん! この速度では……! 防御宝具を目の前に固め、迎撃のために宝物庫からデルフを抜いておく。

 その一瞬の後に、雷鳴。そして……は? 防御宝具を突破された!?

 

「不味い! マスター、さらに後ろへ……!」

 

 白い閃光のように、魔力反応は近づいてくる。

 

「→目標。接触」

 

「な……」

 

 なんと、魔力反応は防御宝具を抜け、ヴィマーナへとランディング。火花を散らしながら足を滑らせ、俺の前までやってくる。

 ……敵意が……ない? 不思議な感覚だ。

 見た感じは……少女と言っていいだろう。褐色の肌に、白い髪の毛。やけに黒目が大きい気もするけど、違和感を覚えるほどではない。服装はぴったりと体に張り付くような黒いボディスーツに、後頭部に大きなリボンを付け、その上からブーケのようなものを被っている。

 こちらに対して、特に何をするでもなく、ただ見上げて、しばらく見つめ合っている。

 

「→目標。こんにちわ」

 

「え? あ、こんにちわ」

 

 ……え? その、どこかでお会いしましたか……?

 

・・・




――ステータスが更新されました。

クラス:けつばん

真名:アネ゙デパミ゙ 性別:Q 属性:ヂゲ・ノ゛ゴ

クラススキル

まだはやいよ:?

固有スキル

みちゃだめだよ:!

みちゃだめっていってるのに:・

だから、まだみちゃだめ:d

のうりょk

――ステータスが消去されました。


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