ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント!   作:AUOジョンソン

29 / 64
「にやにや」「にやにや」「口で『にやにや』言うのはやめろぉ!」「だって、ねぇ?」「なぁ?」「う、うぅー!」「可愛いもんだよ、ほんとに。『曲がり角でぶつかってパンチラしたい』って目的のためにずっとパン銜えて待ってたなんて、なぁ?」「ええ、しかも逆の方向に待ち伏せしてた所為で後ろから目標に話しかけられてびっくりして尻餅つくとか……ねぇ?」「可愛いなぁ」「可愛いですねぇ」


「……なにアレ」「可愛い失敗した月の民を弄る王様と土下座が得意な女神さまだよ」「悪趣味ねぇ」「でもまぁ、あの月の民チョロウザポンコツヒロイン属性持ちだからなぁ。愛されるよねぇ」「……私も愛されてこよーっと。ギルせんぱーい!」


それでは、どうぞ。


第二十八話 そういうのはニヤニヤしながら見るタイプ。

「ひどい目にあった……」

 

 いや、ひどくはないんだけど、あの後壱与とアサシンが参加してきたのがやばかった。底なし性欲М王女はちょっとでも隙を見せたらすべてを吸い取る勢いだったからな……。

 

「部屋に戻ってちょっと休むか……」

 

 鯖小屋は今大変なことになっているので、シエスタだけ別の部屋に運んでもらって、他は適当に放り投げてきた。ぐでんぐでんになっても英霊だ。すぐに復活するだろう。その時に俺がいたら絶対に襲われるので、とりあえずマスターの部屋に避難しようと思ってこうして歩いているんだが……。

 

「む?」

 

 あれは……ギーシュ? ここは女子寮のはずだが……またどっかの女の子ストーカーしてんのかな?

 放っておくわけにはいくまい。一応声掛けをしておこう。少しの距離を歩いて、部屋の前へ。コンコンとノックをしてから、扉を開く。

 

「ギーシュ?」

 

「ん? おや、ギルじゃないか。どうしたんだ?」

 

 扉を開くと、部屋の中にはギーシュともう一人女子生徒が。お互いにワイングラスを持っているから、知らない仲ではないのだろう。

 とりあえず、ギーシュを女子寮で見かけたので、怪しいと思って一応様子を見に来た、と正直に話した。前科もあるしな。

 

「はっはっは! きみぃ、それは早とちりというものさ! モンモランシーと僕は知り合い以上の仲でね。こうしてワインを飲み交わすのもよくあることなのさ!」

 

「なるほど。……ワインか。どんなのだ?」

 

 俺の問いに、ギーシュはワインのラベルを見せてくれる。……うん、わからん。そういえば文字はさっぱりだった。いや、さっぱりって程ではないんだけど、それにしてもこれはわからん。『どこどこ産のなんとかを使った』までは読めるんだけど……地名らしきものとかがわからん。

 

「そうか、まだ文字はあまり読めないんだったか。飲んでみるかい?」

 

「お、いいのか?」

 

「あっ……!」

 

 ギーシュが差し出してくれたワイングラスを受け取ると、女子生徒……モンモランシーが短く声を上げる。まぁまぁ。一口だけ貰えればすぐに退散するから。そう心の中で思いながらワインを口にしようと……。

 

「ギルっ!」

 

「うおっ!? お、っとと!」

 

 急に後ろの扉が開いて声を掛けられたものだから、驚いてこぼし掛けてしまった。

 

「どうした、マスター。……というか、よくここにいるってわかったな」

 

「あんたの自動人形から知らない女子生徒の部屋に籠ってるって聞いて飛んできたのよ! ……って、ギーシュもいるじゃない。なんだ、走って損したわ……」

 

 どーせ下らない四方山話でもしてたんでしょ、と腰に手を当ててため息をつくマスター。走ってきたというからか、少し息が荒い。

 

「……走ったらのど乾いた。ちょっと、そのワインちょうだい」

 

「ん? ああ、口はつけてないから安心するといい。ほら」

 

「あぁっ……!」

 

 渡したワインを、ぐびぃ、と煽るマスター。……いくらジュースみたいな度数と言えど、一気はダメだと思うよ俺は……。あーあ、俺も一口くらい飲んでおきたかったんだけど……ま、厨房にでも行けばあるだろ。今度でいいや。

 マスターからワイングラスを貰ってギーシュに返す。ついでに謝っておく。全部飲んでごめん。飲んだの俺じゃないけど。

 

「――ひっく」

 

 しゃっくりみたいな声を出したマスター。不思議に思って視線を向けてみると、一度俺と目が合った後、うつむいたまま動かなくなってしまった。……酔ったか?

 

「おい、マスター? ……返事がないな。すまん、ギーシュ。マスターが酔ったみたいだからちょっと部屋に帰るよ。邪魔したな」

 

「うむ、しっかり見てあげたまえよ。使い魔にとって主人は大切な相棒であるからね!」

 

 流石ヴェルダンデを愛しているだけあるな。

 さて、とりあえず部屋に戻るかー。

 

「ほら、帰るぞマスター」

 

「……うん。帰る」

 

 寄ったら素直になるのか、こくんと頷いたマスターは俺に手を引かれるままについてくる。今度から定期的に酔わせようかな。いつものツンツンな感じも元気でいいのだが、この素直な感じもたまに味わうならとても新鮮で楽しそうだ。

 ……結局、部屋に戻った後、マスターはそのままベッドに飛び込んで眠ってしまった。……ま、休みだしいいか。俺もあっちのベッドで寝よっと。

 

・・・

 

「……おきて。……ねぇ、起きてよぉ」

 

「……ん、む、セイバー、か? くぁ……久しぶりに寝入った気がする。久しぶりに多人数相手にしたから疲れてんのかなぁ……」

 

「……まだねる?」

 

「んー、もう少し寝ようかなぁ……」

 

「じゃ、私も寝る。隣あけて」

 

 セイバーは甘えん坊だなぁ、なんて思いながら、寝ぼけつつ布団にセイバーを受け入れる。もぞもぞと入ってきたセイバーは……ん? これセイバーじゃねえな。細いし髪の毛がふわっふわしてる。目を開けてみると、桃色のブロンド。……あえぇ?

 

「あ、あれれー?」

 

 おっかしぃぞー? なんでマスターがこんな素直に甘えて……おぉう、すっごい抱き着かれてるぅ……。

 

「もういっかぁ……髪の毛もふもふで気持ちいいしぃ……」

 

「こらぁ!」

 

「うおっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 ぼふん、と俺たち二人の上に飛び込んできたのは、軽装になったセイバーだった。

 

「『いっかぁ』って何!? 完全に変でしょ!? おっかしいでしょお!?」

 

「いや、素直になったんならもう俺も素直に抱き枕にしたろうかなって」

 

「この性欲の権化が! 抱き枕からどうせ空気入ったワイフになるんだろうに!」

 

 ぼっふんぼっふんと俺の上で跳ねるセイバー。元気だなー。

 

「よっと」

 

「うひゃ」

 

 暴れるセイバーの脇をもって持ち上げながら起き上がる。変な声を上げるセイバーを持ったままベッドを降りる。

 

「……むにゃ? ……ギルぅ、私もだっこぉ……」

 

「……はいはい。ちょっと下すぞ、セイバー」

 

「ん。……これは原因究明が急がれるね」

 

 ニュースの原稿みたいなことを言い出したセイバーを降ろし、マスターを抱っこする。

 

「んぅ。えへへぇ、あったかい……」

 

 俺の首に腕を回してがっつり抱き着いてきたマスターに、ちょろっと魔術を発動する。健康診断みたいな魔術だが、これでいつもと何が違うかは……。む。

 

「精神汚染……? 効果的には……惚れ……惚れ薬ぃ?」

 

何だってそんなものが……? ……うぅむ、寝る前にあったことは……あ、あれか! あのワイン! あれを飲んでから様子が変だった! あれは酔ったからではなくて、惚れ薬が効いたからだったのか……!

 

「ま、それなら解決はすぐだろう」

 

「どうするのさ?」

 

「これを飲ませればいい」

 

 そういって、俺は宝物庫からエリクサーを取り出す。これは錬金術の究極、『賢者の石』を使って作られるという不老不死の秘薬……のちょっと下のもので、効果をあらわすならば『状態異常の回復』程度の薬だ。……だが、それに関しては効能は最高であり、スタン状態や毒、やけど、攻撃力や防御力ダウンなどの異常から、封印等の弱体状態を解除できるのだ。前にやった実験で、『千紫万紅・神便鬼毒』を食らった後『陽の眼を持つ女』と『百合の花咲く豪華絢爛』のダブル魅了やられてもこのエリクサーで無事に回復したからな。……三日後に、だけど。

 

「あー、それなら大丈夫だね。ほら、ルイズ嬢、あーんしてー」

 

「……なにそれ」

 

「マスターは今ちょっと混乱してるみたいだからな。すっきりする薬だ」

 

「その言い方めちゃくちゃ怪しいよ、君……」

 

 そう言われるとそうだな。ま、とりあえず飲んでくれれば治るし、少しくらい怪しかろうといいだろう。

 

「すっきり? ……いま、すっごいすっきりしてるのよ。もやが晴れたみたいなの」

 

「あー、そう? いや、でもこれ、美味しいんだぞー?」

 

 何度か宝物庫の中にある薬を飲んだことがあるが、とても不味い。どれもこれも一部の例外を除いてまずい。その問題に対して、俺とパラケルススで『宝物庫の秘薬の味改良プロジェクト』を発足。研究を重ねた。対象となったのは、『若返りの薬』『エリクサー』『栄養ドリンク』の三種類。それぞれグレープ、メロン、レモンの味になるように調整をした結果、とても清涼飲料水みたいな味になった。味の調整のために飲みまくっていたら、異常に元気になったりして困ったこともあったけれど、その時は有り余る元気を受け止めてくれる娘に事欠かなかった……と言うよりも普通に過多だったので、逆に助かった面もあった。

 ……まぁ、生前のそういう頑張りのおかげで、今現在宝物庫の中にある薬の味は改良されているといってもいい。不味くて飲んでもらえないことはほぼないだろう。だが、俺の話を聞いたマスターはぷい、とそっぽを向いて飲むのを拒否した。

 

「やっ! 飲みたくない!」

 

「そんな駄々っ子みたいな……いい子だから飲んでくれよ。な?」

 

 なんとか宥めすかして飲ませようとするも、マスターは変わらずそっぽを向いたままだ。

 

「んー。……ルイズ嬢、どうしたら飲んでくれる? ギルはある程度のことなら聞いてくれるよ?」

 

 そうやって優しく聞くセイバーに少しだけ心を開いたのか、マスターは顔を赤くしながらぼそぼそと何かを呟く。

 セイバーが近くに寄って耳を貸すと、マスターはセイバーに何事かもう一度つぶやいた。それを聞いたセイバーはうんうんと頷くと、俺の方へと来る。

 

「で、なんて言ってた?」

 

「『恋人みたいに甘やかしてほしい』って言ってた」

 

「……マジで?」

 

「マジで。今は下手に出るしかないだろうね。……無理やり飲ませる手もないわけじゃないけど……」

 

 その場合の抵抗はかなりあるだろう。寄ってたかって小さな女の子に無理やり薬を飲ませる様はあまり人に見せられるものじゃないしな。

 

「いや、それは最終手段だな。今マスターに何か害があるわけじゃないし……」

 

 時間もある。焦る必要はないだろう。

 

「そ? ならいいけど。じゃ、私はちょっと離れておくとするよ。……頑張ってね」

 

 そうウィンクをして霊体化するセイバー。残ったのは、俺とそわそわするマスター。ちらちらこっちを見上げては視線を外し、指を絡めて不安そうにもじもじしている。なんだこの可愛い生物。

 

「マスター。まずは何しようか」

 

「……」

 

 ぷい、と俺の呼びかけには答えてくれないマスター。えぇ……? なんで急に不機嫌になってるんだ……?

 

「マスター?」

 

「……ルイズって呼んで」

 

「あー、えっと、ルイズ?」

 

 俺の呼びかけに、マスター……ルイズは、驚くべき速さでこちらを見る。髪の毛がふわりと広がり、ニコニコとこちらを見上げる。

 

「なぁに、ギル?」

 

「あーっと、甘えたいって例えば……どんなふうに?」

 

 俺の質問に、ルイズは無言で両手を広げる。……あーはいはい。抱っこね。

 

「よっと」

 

「わぁ……!」

 

 ルイズは俺に抱えあげられて、感動したような声を上げる。そのまま俺の首に手を回すと、すりすりと俺の首筋にマーキングするように頬を擦りつけてくる。

 

「んふふー」

 

「嬉しそうで何よりだよ、ルイズ。……さ、次はどうしようか」

 

「えー? しばらくはこのままが良いわ。あ、優しくなでるのも忘れないでよね?」

 

 ルイズの頭を撫でながら、ベッドに腰掛ける。立ったままっていうのも変だしね。

 しばらく撫でていると、ルイズがゆっくりと話し始める。

 

「……あのね。ずっとこうやって欲しかったの」

 

「そうだったのか? ……いつもの態度からだとそうは思えないけど……」

 

「そうよね。……ごめんなさい」

 

「む、いや、謝ってほしかったわけじゃ……」

 

 しおらしいルイズとか勝手が違うぞ。戸惑いを隠せない。

 

「あのね、もっとぎゅってして欲しいの」

 

 言われたとおりに力を込めてみる。可愛らしい声を上げて、ルイズも腕に力を入れたようだ。……まぁ、元々非力なルイズにどれだけ力を込められたところで、たかが知れているんだが。それでもその行為自体には感じるものがある。……うぅむ、これはまずいかもしれんぞ。そういえばマスターは結婚もできる歳……ということは、合法なのでは?

 

「んぅ? どうしたの?」

 

「……イケるか……?」

 

 俺の首元に顔をうずめながら不思議そうな声を上げるマスターに、『やっちゃってもいいんじゃねコレ』という俺の悪い部分が出てくるのを感じる。うおぉ、やめるんだ俺。『絶倫王』『カレンダーに『誕生日』の文字がない日がない王』『プレゼントに使う金だけで経済を回した王』『産婦人科をブラック勤務させた王』と呼ばれたことを思い出すんだ……ほんとろくなことしねえな俺。

 

「どこかに行くの?」

 

「いや、ルイズがイく……いやいや、違う違う。今のは口が滑った」

 

 俺もなんだかんだで安易に下ネタに走る男である。ちゃうねん。ウチの筆頭問題児の所為やねん。

 そのうち召喚できたらすることにするか。あいつのクラスって何になるんだろ。『キャスター』か『バーサーカー』になると思うんだけど……。え、『セイバー』? あの程度の技量で?

 

「……ね、ギル? その、男の人はこうしてると我慢できなくなるって壱与から聞いたわ。どう? 私のことも、好きになりそう?」

 

 頑張って体を密着させようとしているルイズが、そう聞いてくる。や、やめるんだ……俺の理性はそんなに強くないんだ……。英霊になったからか、それとも俺のもともとの性質的なものか、可愛い女の子への興味はいつまでも衰えないんだ……うおぉ、惚れ薬で好意を示してくれている女の子を襲うわけには……ぐぬぬぅ……。

 

「ていやっ」

 

「おぶっ」

 

「ギルっ!?」

 

 必死に耐えていると、後頭部に衝撃が。衝撃でルイズを離してしまったが、逆に良かったのかもしれない。後ろを振り向いてみると、セイバーが拳を握ってそこに立っているのが見える。

 

「……正気に戻ったかい?」

 

「あ、ああ。もともと正気だったというか……」

 

「全く。あれだけ出しておいてまだそういうのが残っているのは流石君と言うべきかな。……もっかいするかい?」

 

「い、いや、それには及ばないとも。……そういえば、この惚れ薬ってなんでギーシュのワインに入って……あ、あの金髪ロールの子か」

 

「みたいだね。話聞いてみるかい?」

 

「その方がよさそうだ」

 

 モンモランシーの所に行こう、とルイズに声を掛けると、悲しそうな顔をして「モンモランシーのほうがいいの……?」と言い始める始末。違うんだよー、と宥めるのに十分ほど消費してしまったが、なんとか交換条件で納得してもらえた。……おでこにキスで満足してくれるうちは可愛いもんだなぁ。

 

・・・

 

 食堂にたどり着くと、どうやら食事が終わった後らしく、生徒たちがぞろぞろと出てくるのが見える。

 その中にギーシュとモンモンを発見したので、声を掛ける。

 

「おーい」

 

「ん? ……おぉ、ギルじゃないか! ヴァリエールは元気になったのかい?」

 

「それが複雑な事情があって……モンモンに話があるんだけどいいか? ……いいよな?」

 

 少しだけ目に力を入れてモンモンを見る。ひっ、と小さく悲鳴を上げたモンモンは、顔を青くして小さく頷く。

 

「よしよし。じゃ、テラスに行こうか」

 

 そういって、俺たちはテラスへと向かう。

 道中、学生たちが俺たちを除けていくんだが……まぁ、これはこれで歩きやすいから良しとしよう。

 

「……で?」

 

 テラスに着き、テーブルに座った俺たち五人。俺から話を切り出すと、モンモンはプルプル震え出した。

 

「ウチのマスターを」

 

「……なまえ」

 

「……ウチのルイズをこんなにした原因は……モンモン、あの時のワインにあるんだな?」

 

 詰問のようになってしまったな。落ち着かないと。

 

「う、うぅ……そ、そう、よ」

 

「あ、いや、そんなに怖がらないでほしい。なんていうか、ギーシュ相手に使う予定だったってのはわかるしな」

 

「……やっぱりわかる、かしら」

 

「ええっ!? そ、そうだったのかい、モンモランシー!」

 

「そりゃあそうでしょう! だってギーシュったらあっちへふらふらこっちへふらふら!」

 

「……わかるわ、モンモランシー」

 

「え?」

 

 ギーシュを問いただしていたモンモランシーに、静かな共感の声が上がる。俺の隣に……と言うより、俺の膝に座っていたルイズが、ばっと顔を上げる。

 

「わかるわ、モンモン!」

 

「え、ええ……? っていうか、あんたまでモンモン言うの……?」

 

「ギルだってね、周りにメイドとか英霊とか侍らせるしね? なんか怪しいのも何人かいるし……」

 

「そ、そう、なの」

 

「そうなの!」

 

「へ、へぇ……ちょ、ちょっと。なんとかしてよ」

 

 テーブルに身を乗り出して詰め寄るルイズから逃れるように身体を反らすモンモンが、俺に助けを求めてくる。……しゃーない。ルイズにあれを飲ませたのは俺の責任だし、ここは少し抑えるとするか。

 

「ほら、ルイズ。モンモンが困ってるだろ。こっちにおいで」

 

「わふっ。……え、えへへ」

 

 ルイズを抱き戻す。再び俺の膝の上に収まったルイズは、撫でてやるともう先ほどのことは忘れたかのように顔を緩めて犬のように頭を擦りつけてくる。

 

「……凄いわね。流石は禁薬……」

 

「え、禁止されてんの?」

 

 マジかよ。そんなもん作ってんのか。ばれなきゃ犯罪じゃないってやつか。

 

「あっ、藪ヘビだったかしら……。ま、まぁ、お金さえあれば解毒薬も作れるし、いいじゃない。……内緒にしてよね」

 

「ああ、解毒薬もあるんだ、ちゃんと。ま、害もないし黙ってるさ」

 

「ええ。まぁ、ちょっと値が張るんだけど……」

 

「薬に関しては大丈夫。コレがあるから」

 

 そういって、エリクサーを置く。

 

「小さい薬ねぇ……」

 

 そういって、モンモンは杖を振る。『ディテクト・マジック』だろうか。少しして、首を傾げ、すぐに顔を驚きに変える。

 

「なにこれ、こんなに小さいのに込められてる魔力が尋常じゃない……!? っていうか、ただの解毒薬とかじゃないわよねこれ!?」

 

「もちろん。効果的には解毒って簡単な感じの物なんだけど」

 

「……どのくらいのものまで解毒できるの?」

 

「どのくらいのものまでも解毒できると思うぞ。……あ、神霊とかの呪いは難しいかなぁ。『毒』じゃなくなっちゃうからね」

 

「そ、そんなの何で持ってるのよ!?」

 

「なんでって……俺の宝物庫にはだいたい何でもそろってるからね」

 

 宝具からメイドまで。なんでも入っているのだ。長い付き合いだが、まだ全容はわかっていない。

 

「っていうか、そんなのあるならなんで治さないのよ? ……まさか」

 

「いやいや、違う違う。この状態を楽しんでるわけじゃないよ。……ルイズが拒否するんだよ。あんまり無理やりもしたくないし、ルイズには令呪もある。本気で拒否されて万が一にも令呪が発動したら……なんていうか、もったいないしね」

 

 宝物庫に何個かあるとはいえ、そもそも無駄に使わないのに越したことはないしな。

 

「へー。……ヘタレね」

 

「そこがいいんじゃないか、モンモン嬢」

 

「えー……? っていうか、あんた誰……?」

 

 ギーシュと仲良くしてるし、この子は薬の調合が得意な水のメイジらしいので、これからもよろしくという意味を込めて自己紹介を兼ねて俺のことを説明しておいた。当初はもちろん信じてはくれなかったが、いくつかの霊薬、秘薬を見せることでとりあえずは『普通の使い魔じゃない』ということはわかってくれたらしい。

 

「え、じゃあ秘薬の材料で必要な物とか入ってるわけ?」

 

 例えば? と聞いてみてモンモンが言った素材を順にテーブルの上に出す。

 

「こっ、かっ、なっ、ばっ……!」

 

「『言葉を失う』とはこういう状態のことを言うんだなぁ、と勉強になるね」

 

「じゃ、じゃあ、『精霊の涙』とかも?」

 

「……んー、それは『こっち』特有のものだな? たぶん類似品はあるけど、モンモンが欲しいものじゃないな。どんなものなんだ?」

 

「『涙』っていっても、泣いてでてくるものじゃなくて、水の精霊の体の一部なのよ。……ちょっと前まではウチの家が水の精霊との交渉を引き受けてたんだけど……まぁ、ちょっとした事情で他の家に変わったんだけど……」

 

「ふぅん。……それ、市場じゃ手に入らないのか?」

 

 金に糸目はつけないけど、と付け加えてみるも、モンモンは首を振った。

 

「私も惚れ薬を作るときに一応解毒剤も作っておこうと思って素材を調べたんだけど……そもそも入荷してないみたいなのよ」

 

「へえ。その交渉担当の家が独占してるとか?」

 

「そもそも水の精霊が姿を見せなくなったとかなんとか……だから、なんで手に入らないのかも謎なのよ」

 

「そうか。……よし、行ってみよう、その精霊の下へ」

 

「え、はぁ!?」

 

 俺が何か動くときは、だいたいマスターであるルイズや協力者としてこの学院の生徒を連れていくことが多い。だから、俺が申請すれば、オスマンはその生徒を『公休』にしてくれるように働いてくれるらしいし、モンモンやギーシュ、ルイズの単位には響かないだろう。……まぁ、あとで復習はしないとダメだろうけど。

 

「モンモンも気にならんか? 水の精霊に何があったのか」

 

「そりゃ、確かにきになるけど……」

 

「よし、じゃあ行こう」

 

 そういって、立ち上がる。ルイズはそのまま片手で抱き上げ、二人をせかす。

 

「ほら、行くぞ二人とも」

 

 とりあえずは、いつものヴィマーナで行くとしよう。

 

・・・




――ステータスが更新されました。

クラス:ライダー

真名:菅野直 性別:男 属性:秩序・善

クラススキル

騎乗:A+
どれだけ乗り物を乗りこなせるかをあらわす。幻獣・神獣を除く乗り物すべてを自在に乗りこなせる。
プロペラで動く戦闘機ならば、さらに有利な判定を得られる。

対魔力:E-
魔術に対する守り。無効化はできず、ダメージ数値を多少軽減する。オカルトを信じていないので、たまに不利な判定を得ることもある。


保有スキル

カリスマ:D+
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
部下からの人望熱く、さらに見知らぬ土地の民から王様のように扱われたりと、近代に近い英霊にしては高いカリスマを誇る。

狂化:E
通常時は狂化の恩恵を受けない。
自身が激昂するようなことが起きたときに、癇癪という形でステータス上昇を発生させる。その時の行動は、まさに『デストロイヤー』と言って差し支えない。

心眼(偽):C
第六感による危機回避。菅野直は、操縦したことのない飛行機が落下しかけたとき、自身でこれを操縦し、不時着までもっていったという逸話を持っている。

能力値

 筋力:C 魔力:E 耐久:B 幸運:A+ 敏捷:C 宝具:A

宝具

■■■■■■■■■■(■■■■■■■■■)

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:自分自身 最大補足:1人

本人曰く、『特に宝具なんていらなかったけど、英霊として必要だと言われたから適当に決めた』らしい。そんなところまで破天荒なのか、と頭を抱える王様がいたとかいないとか。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。