ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント!   作:AUOジョンソン

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「いやー、壮観ですねぇ、空飛ぶ船が並んでると」「だなぁ。海を行く船っていうのが常識だったけど……ヴィマーナ見てからは空飛んでてもそんな違和感覚えなくなったなぁ」「……ね、今度船旅しましょうよ。色んな領域旅してみましょ?」「色んな領域あるんだ……」「ありますよー。そりゃ。神様何人いると思ってるんですか」「……ま、いっかー。とりあえず、仕事終わらせてからだな」「……山みたいになってますね、書類」「新しく世界できたからなー」


それでは、どうぞ。


第二十七話 空の船旅にも慣れてきた。

「まー、これが一番ですよねー」

 

「だろう? いやー、これで人手が足りないこともないし、材料が足りなくなることもない。それに、たまには外に出してやらないとな」

 

 ――その裏技というのは、自動人形アンド宝物庫の建材フル活用での、超高速の村復興だ。村復興RTAと言い換えてもいい。たぶんこれが一番早いと思います。

 

「……あ、あの、ギル様?」

 

「うん? どうした、シエスタ」

 

「いえ、その、村の復興というよりは……その、前より立派になっている気がするのですが……!」

 

「ああ、そうだろうね。なんてったって新生アルビオンのようないつ攻め込んでくるかわからない国があると知ったんだ。俺の庇護下にあるシエスタの故郷を守れるように強化するのは当たり前だろう?」

 

「そういってくださるのはうれしいのですが……あの、これ、多分城下町より立派なのでは……?」

 

 目の前で設置されているのは、バリスタである。本当はもうちょっといいレーザー砲とかレールガンとか宝具を装填できる弩弓とか置きたかったんだけど、時代とか扱いやすさとかを考えてバリスタで落ち着いたのだ。さらに物見やぐらも立てて、望遠鏡を取り付けておいた。

 家は木材の使用を最低限にし、燃えにくい石材やらを使う。逃げやすいように、道も整備しておいた。これでこの村も最低限の守りが出来ただろう。本当なら駐在する自動人形かサーヴァントがいた方が良いんだろうけど……とりあえず目の前の脅威は去ったからな。まずはこのくらいでいいだろう。

 

「個人的にはもうちょっと防備を固めたいところだったんだけど……」

 

「え。これよりですか……?」

 

「……シエスタちゃん。この王様は基本的に完璧に防御が施された拠点を作ってから行動するんですよ。ガッチガチの守りの中に自分の守るべき民と宝をいれて自分が先頭立って脅威を駆逐しに行くタイプの王様なんです」

 

「失敬な。誰だって安心して帰れる場所が欲しいだろうに」

 

 俺はそれを作ってから動きたい人間なだけで、おかしくはないはず。誰でも内政を整えてから遠征したいだろう?

 

「ま、私たちみたいな田舎娘とは考えてるスケールが違うんで、『そういうもんなんだー』って流しとくのが吉です。それを手助けするのは別の人に任せて、私たちは支えてあげればいいんですしね!」

 

「支える……そ、そうですね! 身の回りのお世話だとか、細々とした雑用を代わりにやって、ギルさんの憂いをなくしていくのもメイドの仕事ですよね!」

 

 なにやら納得したらしいシエスタから視線を外し、村の方を見る。……うん、これならもう一日もしないうちに完成するだろうな。

 

・・・

 

「……う、む……」

 

 目を覚ます。体に痛みはあり、けだるさもあるが、行動に支障はないようだ。体を起こすと、近くにいた気配に気づく。

 

「……お前か、ランサー」

 

 いつも通り、すべてを見透かすような顔をして、俺を見下ろすランサーは、ああ、と短く返事をする。

 

「途中でマスターからのラインが揺らいだのを感じたのでな。勘を信じて船から飛べば、なにやら滑空しながら落ちていくお前がいた。ゆえに、引き上げようとしたところで戻ろうとしていた船が落ちた。だから、こうしてアルビオンまで落ち延びさせた」

 

 淡々とあった出来事だけを話すランサー。すべてを聞いた後、ため息を一つつく。まさか、空で負けるとは。

 

「あれは、なんだったのだ……」

 

「あれとは、何の話だ? お前を撃った銃の話か? それとも、船をすべて落とした光の話か?」

 

「銃? ……俺は、銃に撃たれたのか?」

 

 銃というのは、平民の使う取り回しの悪い武器……という認識だったのだが、あの鋼鉄の竜についていたのは、もっと別の、洗練されたもののように感じた。

 それこそ、なにかのマジックアイテムではないのかと疑ったのだが……。

 

「そうだ。俺のいた時より後の世だから詳しくはわからんが、戦闘機の両翼には機関銃がついているようだ。それの射撃を受けたのだろう」

 

 機関銃……ランサーもよくわからないらしいが、簡単に言えば、連射のできる、ある程度正確な銃と言ったものらしい。確かに、連続であれだけの威力の射撃を出来るならば、魔法よりも有用な攻撃となるだろう。

 

「なるほどな。……おい、ペンダントがなかったか」

 

「む、これか?」

 

「ああ。それだ」

 

 手に取り、開く。ああ、よかった。無事だ。

 

「その表情を見るに、大事なもののようだな」

 

「ああ。……中を見たか?」

 

「いや、撃たれた衝撃で落ちそうになっていたものを拾ったのでな。落とさずに済んでよかったと思っただけだ」

 

 なるほど、それは良い働きをしてくれた。落としていたら、もう二度と見つからなかったであろうし、そこは感謝するとしよう。

 

「そういえば、食事が届いている。……いつもは下げる時間になっても食べる人間がいないから下げていたが、今は食べれるだろう」

 

 そういって、別のテーブルに乗っている盆の上から、スープの皿を持ってくるランサー。

 

「冷めてはいるが、冷たいというほどではない。食べれるか?」

 

「……よこせ」

 

 片手で受け取り、伸ばした足の上に置いて、スプーンで口に運ぶ。……確かに冷めてはいるが、むしろちょうどいい。すぐに食べきると、ランサーが皿を戻す。

 

「ほかに何か知りたい状況はあるか」

 

「いや、今のところは」

 

 ないな、と続けようとしたところ、扉が開かれる。

 そこから入ってきたのは、いつも通りの笑みを浮かべるクロムウェル。大敗を喫したというのに、なんとも気楽な男だ。と内心でため息をつく。それか、これも計算の内にしている大物なのか、と試行したところで、クロムウェルから話しかけられる。

 

「意識が戻ったようだな、子爵」

 

「……一度ならず二度までも。申し訳ありません」

 

 謝罪を入れるが、その責任はこちらにある、と彼は再び笑った。……寛容なのか、本当に気にしていないのか……とにかく、今問題にならないのはこちらとしても好ましい。

 ランサーは霊体化せずに部屋の隅へ立っているようだ。……以前『目立たぬようにしていよう』と言っていたのだが、それを守っているらしい。奴の立場は俺の私兵ということになっている。すでにあの『宝具』というのは撃てなくなったらしいが、それでも見えるこいつのステータスはかなり高い。そばにおいておけば、護衛以上の使い方もできるだろう。

 それから、クロムウェルは復活させた皇太子にアンリエッタ王女の出迎え……遠回しな誘拐を、要求した。

 従順に従う皇太子は、それに笑顔でうなずき、立ち去っていく。……そういえば、あのフードの人物……前の時にもいたが、あいつからもランサーと同じようなものを感じる。……あとでランサーに聞いてみるか。

 そんなことを考えていると、クロムウェルは俺にいくつか声を掛けると、去っていく。……あの光。おそらくは虚無の魔法であろうあれについて聞こうと思っていたが、タイミングを逃してしまった。……今は療養に集中し、あとで聞くとしよう。

 

「ランサー、そのまま護衛を続けろ。……この部屋に入るものがいれば、殺すな。仲間であれば俺をおこせ。仲間でなければ、捕まえておけ」

 

「ああ、了解した」

 

 ……次こそは、絶対に負けん。そのために必要なのは……。

 

「あちらと同じ、複数のサーヴァントだな」

 

 一人に一体が基本だというあのサーヴァントを、あと何人かに召喚させ集まれば……。

 

・・・

 

「今のは……あの虚無の魔法を使う司祭だったか。……隣にいたのは……」

 

 どうも、あたしが召喚した『スパルタクス』ってやつと似たような雰囲気を感じるねぇ。全く、この世界はどうなっちまったんだか。……報告書をまとめるとしますか。

 そう思って立ち去る。

 

「……そういえば、『聖なる杯』は一つだけじゃなかったんだねぇ」

 

 あの不思議な船。あれを操る男を召喚した奴から話を聞いたけど、『聖なる杯』を利用し、風石の魔力の流用によって召喚せよと指令を受けたからだと言っていた。……そこまで聞けたのも、あの不思議な光によって船が落ちたショックと、それによって溺れた酒。さらにはそいつが自暴自棄になっていたっていうのもあったんだけど……『聖なる杯』については所在が分からなくなっている。

 

「あれを回収しておかないと、もしかしたらまたこっちに戦力が増えてしまうかもしれないしね」

 

 こちらでそれを調べておくとしよう。……おっと、あいつに通信しておかないとね。

 

「まったく。死んだ盗賊をここまで働かせるなんて、あの英霊王サマは鬼畜だねぇ。……ま、ヤな気分じゃあ、ないけどさ」

 

 そういって、あたしは再び闇に紛れるようにその場から歩き去るのだった。

 

・・・

 

 城下町をクラフトしていたら、マスターが王宮に呼ばれたとのことで、俺もついていくことに。

 そういえばあの後はどうなったのかと思っていたのだが、トリステイン一国で新生アルビオンを倒したため、ゲルマニアとの婚約は破棄。アンリエッタは即位することになり、そのための準備で忙しくしていると聞いている。

 そのねぎらいもあるから、なんか持っていくとしよう。なにがいいかなぁ……聖杖とか持ってくかなー。この辺にいいのが……ああ、あったあった。『偽・災厄の杖(レプリカ・アロン)』だったっけな。十の厄災を起こせる杖なんだけど、これはモーセの『海を割った奇跡』のみを由来としたことにより水の扱いにのみ特化した、レプリカ品だ。その代わり大体の魔術師が扱うことができるし、それなりに水に関係した魔術を行使するときに手助けしてくれるだろう。

 よし、贈り物はこれでいいとして、問題は……。

 

「これなんだオラァ! ヘビが出てきやがるぞ!」

 

「ああ、それはヘビ君が……あああああ! 振ったらヘビ君が! ヘビ君が別の意味でこんにちわ!」

 

「似てねえな! 俺が新しいヘビ作ってやるよ! お! これなんだ!」

 

「それは君のゼロ戦に使われている燃料を使った場合の『えんじん』とやらの試作品で……」

 

「エンジン? 栄より良いやつか? 点くのか!?」

 

「いや、これはまだ試作品で――」

 

「爆発するじゃねえか!」

 

 目の前でコルベールと騒いでいる、ライダーをどうするか、だ。

 ――ライダー・菅野直。太平洋戦争での撃墜王で、『デストロイヤー』の二つ名を持つ男。部下を思う気持ちは強く、部下からも思われたという隊長だ。

 彼はなんと、コルベールが召喚したのだという。コルベールの手首には、フーケと同じように一画のみの令呪。おそらく鯖小屋の聖杯が反応したのだと思う。触媒はゼロ戦。および紫電改。召喚は本人のみなので、乗機はこちらで用意しなければいけないらしい。その代わり、用意さえすれば彼は素晴らしい働きをしてくれる。先の戦いでも、助かった。

 今はコルベールと一緒の所に寝泊まりしているらしく、研究品を破壊されたりもするが、それ以上にライダーのアイディアや知識でエンジンの開発がはかどっているとのことで、仲は良好だ。

 まぁ、どうするかなど決まっている。彼は押さえつけたり出来るものではないだろう。それに、そのあり方は善良だ。燃えたタルブ村を見て怒り、それを引き起こした竜に怖気づかずに突っ込んでいく。こちらから何かを言わずとも、何かあれば勝手に動くと思うしな。

 

「……コルベール。強く生きろ」

 

 試作品のエンジンが爆発してショックを受けるコルベールを見ながら、俺はその場を後にするのだった。

 

・・・

 

 王宮からの使者が来たのが今日の朝。それから準備のためにマスターは学院を休み、俺のヴィマーナで文字通り王宮へ飛んでいく。

 

「まぁ、ルイズ! 来てくださったのね! それに、英霊王様も!」

 

「えっ?」

 

「はい、姫様。……あ、女王陛下と呼ばねばなりませんね」

 

「いや、ちょ、待て待て」

 

「ルイズ、私から親友を奪うようなことを言わないで。あなたはいつも通りがいいわ」

 

「俺の話は聞いてくれない感じか」

 

「姫様……」

 

「ルイズ……」

 

 ……ガン無視されたので心の中だけでつぶやくけど、今『英霊王様』って言った? え、なんで? ちょっと前……っていうか前回あった時は完全に『ルイズの使い魔さん』って言ってたじゃん。絶対隣で微笑んでるマリーがなんかやったな。あ、こっち見てニコリと笑った。確定だ。あいつが犯人だ。

 何をやったんだあの人たらしは……。

 

「ああ、いけない。英霊王様、挨拶が遅れてしまい申し訳ありません」

 

「……いや、その、英霊王様というのは……?」

 

「空いた時間に、マリーからあなた様のお話を聞きました。そして、とても感服いたしました。世界を救い、英霊と共に戦う力を持った英霊の王……!」

 

 なんというか、すごくキラキラとした瞳をするアンリエッタ。……これは、あれか。マリーの話術によってアンリエッタが英雄譚聞いた子供みたいになってしまったということか……。恐るべき人たらし。

 

「……そ、そうか。だが、いつも通りの呼び方でいい。それか、ギルと呼んでくれ。今は王を休業中でな。今の俺は、ルイズの使い魔でしかないんだ」

 

「まぁ、なんて謙虚な……」

 

 感動した面持ちでこちらを見るアンリエッタ。……なんていうか、この子も箱入りっぽいところあるから、マリーみたいなのから見たら格好のカモなんだろうなぁ。

 

「あ、そういえば贈り物があるんだよ」

 

 これ以上この空気を続けられるのもムズかゆいから、強引に話を変えるとしよう。宝物庫から杖を出して、アンリエッタに差し出す。

 

「護身用も兼ねてるけどな。水の魔法を使うときに助けになってくれる杖なんだ」

 

「そんな杖を、私に……?」

 

「まぁ、婚約も破棄されて、一国で頑張らなきゃって時に女王になったんだ。自分の身を守る術は用意しておいた方が良いと思って」

 

「そうよねぇ。受け取っておいた方が良いと思うわ、アンリ」

 

 隣にいたマリーが、アンリエッタにそう言うと、おずおずと杖を手に取る。

 

「あなたたちには感謝してもしきれませんね。……あのアルビオンとの戦いの時の助力と言い、この贈り物と言い……」

 

 何を返せばいいのかしらね、と笑うアンリエッタに、マスターは跪いて言った。

 

「私の『虚無』は……姫様に捧げようと考えております。……ですので、姫様が気に病むことはありません」

 

 マスターは、迷った上にアンリエッタに『虚無』を明かそうと言った。……友達に、隠し事はしたくないから、と。

 それに、あれだけの出来事があったのだ。マスターのことは調べがついていることだろう。現に、アンリエッタはマスターからの『虚無』の言葉に、大した驚きをあらわしてはいなかった。

 

「『虚無』……。ヒミコさんとイヨさんから聞いていましたが、あの光はやはりあなただったのね、ルイズ」

 

「……はい」

 

「よく、打ち明けてくれました。あなたにとって私は、信頼に足る友達だと思っていいのね」

 

 うれしいわ、と微笑むアンリエッタ。それから、これからのことについての話し合いを行う。

 今回の戦果に対しては、マスターどころか俺に爵位を与えてもいいほどのものだという。だが、『虚無』を表に出せないトリステインとしては、大っぴらに褒美を与えることはできない。そして、『虚無』を捧げると言ったマスターに対して、アンリエッタは『すべてを忘れること』と言った。過分すぎる力は分不相応な大望を抱くから、と。

 

「それでもっ! ……それでも、姫様の力になりたいのです。今まで『ゼロ』と蔑まれていた私に、神は力をくださったんです。……なら、私はそれを信じるもののために使いたい」

 

 そう言い切ったマスターに、アンリエッタも折れたのか、直属の女官に任命する、と任命書を発行してくれた。……これで、女王としての権力をマスターは振るえる様になったのだ。……だが、心配はいらないか。彼女は、アルビオンへの道中、振るう力の怖さを知ったから。

 

「……あなたたちでなければ解決できないようなことがあれば、必ず相談します。平時は学院で学生として生活なさい。何かあれば、使いを向かわせます」

 

「最悪私が飛んでいくわ! 霊体化すればすぐだしね!」

 

 隣でマリーがニッコリと笑ってそう言った。……まじめな空気はどこかへ行ってしまったので、そこからはアンリエッタがマスターと旧交を温め、少ししてから、俺たちは王宮を出たのだった。

 

・・・

 

 マスターを部屋に送り届け、鯖小屋へ来てみた。

 自動人形が紅茶を出してくれたので、それを飲みつつ周りに視線を向けてみる。なにやら調理中のセイバー。珍しく一人の卑弥呼。ジャンヌはテーブルで読書……いや、表情的に勉強だな。ぐむむと唸っている。

 

「あ、ギルさんっ。おかえりなさいませ!」

 

「ああ、ただいま、シエスタ。……村の方はどうだ?」

 

「ギルさんの支援のおかげで、元通り……よりもさらに強固な村になりました! なんとお礼を言っていいか……」

 

「あー、気にするな気にするな。俺は福利厚生に力を入れていてね」

 

「……福利厚生のレベル超えてんじゃないの……?」

 

 卑弥呼がなにやら呟いたようだが、こちらに視線は向けていないので独り言だろう。

 視線をシエスタに戻すと、シエスタは「そうだ!」と言ってキッチンの戸棚から包みを取り出す。

 

「これ、お渡ししようと思っていたんです!」

 

「?」

 

 受け取り、ワクワクするシエスタの前で、包みを開ける。中からは手触りの良い編み物……マフラー、か?

 

「あのっ、ギルさんは黄金の船を使っての空での移動をするとお聞きしました! ですので、少しでも寒くないように、マフラーを編んでみた、んですけど……」

 

 「ご迷惑でしたか……?」と瞳に涙を浮かべながら上目遣いをするシエスタに、そんなことないよ、と即答する。

 

「編み物できるのあんまりいないからなぁ、ウチの城」

 

「……わらわは女王だし?」

 

「私は掃除洗濯調理なんでもできるけど……んー、編み物はまだ勉強中かなぁ」

 

「……村娘には必須スキルですよ……んぐむぅ……」

 

 卑弥呼、セイバー、ジャンヌが俺の言葉に反応する。話を聞いただけでも三分の一しか編み物スキル習得してねえもんな。壱与はもちろんできないし、アサシンも無理だ。出来そうなのは……良妻狐とか対魔忍ママとか元ヤン聖女とかパッと出てくるのはそのくらいかなぁ。

 

「いやー、でも贈り物ってホントうれしいなぁ……額に入れてかざっとこ」

 

「使ってください! 飾るものじゃないですよ!?」

 

「いや、俺基本貰ったものは大切にしたいからさ」

 

「大切の意味が違いますよ! 絶対! 使ってくださいね! じゃないと……」

 

「じゃないと?」

 

「……マルトーさんの所で意味ありげに泣きます」

 

「それはまずい」

 

 マルトーが怒るのもそれはそれで不味いけど、そこからマスターに情報が行くと俺が爆発することになると思う。

 

「そこまで言うなら、使わせてもらうよ。その前に保存と防御と加護と防塵と防水を付与して、絶対汚れないようにしてからだけど」

 

「……ギルさんって一度手に入れたものすっごい大事にしますよね」

 

「なによ。惚気?」

 

「ふえっ? いやっ、そんなっ、えへへ、大事にされてますけどぉ、えっへへへぇ……」

 

「あーくそ、わらわも大事にされてるっつの。……今日ぐらいに行くかなー」

 

 ぼそぼそ話す卑弥呼とジャンヌをしり目に、俺は魔術書と宝具を使用して、マフラーを保護する作業にかかる。

 

「よし、これで大丈夫だ。シエスタから貰った大事なものだからなー。使い続けて宝具になるまで神秘高めてやるよ」

 

「ええっ!? そ、そんな! 確かに使ってくださいとは言いましたけど……その、えと、古くなったり痛んだりしたら、また作りますから!」

 

「おぉ、そうなのか。じゃあ、その時は『シエスタからの贈り物コーナー』としてミュージアムに飾ろうか」

 

「ちょっと過激すぎませんか!?」

 

「過激なことなんてあるものか。俺は一度内側に入ったものは大切にしているだけだ」

 

 その辺は俺の性格的なものもあるのかもしれないな。コレクター的な。その辺を考えると、俺とギルガメッシュにはいくつか共通点があるのかもしれない。

 

「しかし、マフラーか。……装飾品なぁ。ん、シエスタってメイド服の他の私服ってどんなのあるの?」

 

「私の私服、ですか? ええと、寝間着に使うようなのを除けば、本当に普通の服しかありませんけど……」

 

「ふぅん……ジャンヌ」

 

「んー、ブレザーよりセーラー、体操服よりブルマ、ビキニタイプよりは旧スク、って感じですよねぇ」

 

「だよねえ。メイド服もちゃんと丈の長いやつのほうが似合うもんなー」

 

「ミニスカメイドじゃないですねぇ、このタイプは。清純系の野暮ったいのとか似合いますよ、絶対」

 

 俺はうなずきながら宝物庫を地面に展開する。現れるのは、セーラー服にブルマに旧スク。

 これが俺の変態的アンリミテッド・コスプレ・ワークスだ。俺の心象風景は宝具とコスプレ衣装で出来てるからな。

 

「じ、地面からお洋服が!?」

 

「これ、シエスタに似合うと思うんだよねぇ」

 

「こ、これなんて足も腕も出ちゃうじゃないですか……!」

 

「ああ、それ水着だからな」

 

「みずぎ?」

 

「そうそう。海とか湖とかで遊ぶ時に使うんだけど……そっかぁ、そういう文化ないかぁ」

 

 前ちょっとトラブルが起きたときにシエスタの胸がっつり揉んだことがあって、その話の流れからブラジャーとかの下着の話になったんだけど、そもそも存在しないって聞いてびっくりしたもんなぁ。水着もあるわけないか。

 

「ま、とにかく受け取っておいてくれよ。今度着てもらうから」

 

「お、お仕事で使うということでしょうか?」

 

「……仕事でセーラー服着るとかそれ完全に風ぞ」

 

「それ以上いけないぞセイバー」

 

「でも、似たようなことしようとしてるでしょ。セーラー服着せたシエスタに何する気なんだか」

 

「気を付けてくださいねシエスタちゃん。この人たいてい変態なんで、どんなプレイさせられるかわかったもんじゃないですよ」

 

「……一説によると男が女に衣服を送るのは『それを脱がしてやりたい』みたいな意味合いを持つらしいわね。……やーらしー」

 

「ぎ、ギルさんの夜伽用の服ということでしょうか……!? そ、そんな、うれしいですけど、こ、心の準備が――きゅぅ」

 

 ジャンヌ達に耳打ちされたシエスタが、あっという間に目を回して気絶してしまった。セイバーが調理の手を止めてキャッチしてくれたので良かったが、どうしたんだろうか。

 

「……立ちくらみみたいね。それで、ギル? あんた、この子とか手出す気あんの?」

 

「えぇ? なんでそんな話になんの?」

 

「なんでって……あんたの性格的に? 近くにかわいい子いたら絶対食べるじゃないあんた」

 

「いや、否定はしないけど。それでも相手の同意って大事だからな?」

 

「……ここに同意の取れて意識がないメイド一人いるけどいる?」

 

「それ世間的に言って最低だからな?」

 

「へー、それ酒呑さんに言ってみなよ。へべれけにしてつぶしてお持ち帰りした酒呑さんに」

 

「うっ」

 

「ま、とりあえず今日は私たち三人で我慢したまえよ」

 

 そういって、セイバーが作っていた料理を机に並べる。

 

「すっぽんの生き血とワインを混ぜて煮込んだウナギのかば焼きだよ。匂いがえぐいことになったけど、精力はつくと思う」

 

「……だろうな」

 

「というわけで、それ食べてしっぽりしようか」

 

 ……というわけで、卑弥呼とセイバー、あと顔を真っ赤にしたジャンヌに、かなり絞られるのだった。……あ、シエスタは自動人形の看病により無事目が覚めたらしい。

 

・・・




クラス:アサシン

真名:小碓命 性別:? 属性:混沌・善

クラススキル

気配遮断:B+

サーヴァントとしての気配を立つ。隠密行動に適している。さらに、男の下へ忍び寄る際には、有利な判定を受ける。
ただし、自身が攻撃態勢に移ると気配遮断は解けてしまう。


保有スキル

単独行動:A
マスターが不在でも行動できる。ただし、宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターからのバックアップが必要。

神性:B
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
天照大神の系譜である。

変装:A
自身の衣装、髪型、所作等を変え、自身の身分を偽る技法。ランクが高ければ高いほど見破られず、他人になり切れる。
このランクであれば、別人になれるどころか性別、骨格までも変えることができる。
美少女に変装し、熊襲健の下へと潜入、暗殺をした逸話と、後述の宝具、『西方征伐(くまそうちたおし)倭姫刀衣(だますころもとつるぎ)』より。


能力値

 筋力:C+ 魔力:B 耐久:D 幸運:B 敏捷:B+ 宝具:EX

宝具

西方征伐(くまそうちたおし)倭姫刀衣(だますころもとつるぎ)

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:2人

西方に住まう熊襲健を始末する際に、倭姫より授けられた女性の衣装と短刀。この衣装を着ることによって、スキル『変装』を得る。
そして、短刀は男性に対して気配遮断の状態で近づき、突き刺すことによって、ダメージ判定に関わらず霊核を破壊することができる。しかし、一度の召喚でその効果を使用できるのは二度だけであり、それ以降はただの短刀になってしまう。
『男性を二人刺殺した短刀』『血に濡れてしまった衣装』の二つを使用することによって、第三宝具『■■■■(■■■■■■■■)■■■■(■■■■■■■■■)』を発動できる。


■■■■(■■■■■■■■)■■■■(■■■■■■■)

ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~100 最大補足:200人

これはですね、ちょっと今のクラスだとおっきくてあんまり使いこなせてないんです。……切れ味は、良いんですけどねぇ?

■■■■(■■■■■■■■)■■■■(■■■■■■■■■)

ランク:EX 種別:■■宝具 レンジ:― 最大補足:―

ボクは、死んでも君とは離れたくないんです。ずっと。……ずぅっと

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