ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント! 作:AUOジョンソン
「……なにやってんのアレ」「……座に登録できる宝具を増やそうと勝手に人の霊基いじろうとしてる英霊王とそれを防ごうとしてる月の姫様」「仲いーわねー」「そーよねー」
生暖かい目に見守られながらの霊基変遷は無事失敗に終わりました。
それでは、どうぞ。
「その武器に動き……セイバーか」
「その通り。最初から全開で行くよ!」
すぐに、セイバーが魔力を高める。俺からかなりの魔力を引っ張っているので、宝具を放つのだろう。
「オン・ベイシラ・マンダヤ・ソワカ……我が身体に宿りその御業を現したまえ……。刀八毘沙門天が御業、その目に焼き付けよ!」
セイバーの背後に、八つの刀を持つ毘沙門天……刀八毘沙門天が現れ、セイバーに宿る。その御業は、本来ならば一太刀で八度の斬撃を繰り出せるものだが、人間の身であるセイバーにはその再現は不可能。故に彼女ができるのは、再現とはいえ劣化した連撃……即ち。
「『
武田信玄との一騎打ちの際の逸話。三太刀で七つの傷跡を付けたというものと同じく、不確かなものではあるが、一撃で大体二撃の判定を発生させられる宝具。
それを受けるカルナに、初めて驚いたような表情が生まれる。
「む。これは……不可思議なものだな。防いでいるはずなのだが、俺の体に刃が届いている」
「これを防ぐか……さすがはインド神話……」
「しかもなにやら懐かしいというか、同郷の者でも出会ったかのような気分がするな。不思議なものだ」
そりゃそうだろう。毘沙門天はインド神話の財宝神。その称号が、音写されたものが毘沙門……つまり、セイバーの信仰する刀八毘沙門天の前身となったものなのだ。
「セイバー、そのまま押し切れ! 俺はライダーを抑える!」
「無茶を言う……! 頑張るけどさぁっ……!」
俺の無茶ぶりを聞いて、カルナと打ち合うセイバーが、苦し気にそう返す。
それを聞いて、俺は宝物庫の射出をライダー側へと多く割り振る。サンタマリア号からの砲撃や碇が飛んでくるので、それも弾くために大目に割り振らなければいけなくなってきた。対空の処理もしないといけないしな。
「ちぃっ、あんまり時間かけられると俺も押し切られそうだぜ、このままじゃよう」
「なら退いたらどうだ……!?」
「馬鹿言え! この状態で退けるかっつの。隙を見せたら終わりだぜ!」
ライダーを煽るように挑発してみるも、冷静に判断できているようだな。流石は船長。冷静な判断をするのに慣れている。
どちらかのサーヴァントを倒せなければ、この戦いは勝てない。だが、逆に言えば、カルナを押さえている現状。……あのサーヴァントなら、この状態を打破できる。先ほど、セイバーが俺から魔力を引っ張るのと同時に、同じように魔力を持って行った存在がいた。
その存在は、潜み、隠れ、騙し……その逸話によって、あるものに対しての絶対的な判定を持つ宝具だ。
――その真名は。
「隙を見せたら? いや、もう終わりだよ、お前は」
「……あ?」
「私は、貴様を打ち取るよう命ぜられ遣わされたのだ。……この一刺しは、お前の命を狩るだろう」
セイバーがカルナを抑え、俺がその他を相手にしている間に、アサシンはカルナの下からライダーの処へと気配遮断をして移動していたのだ。
「手向けだ。これが初めの一撃。逝け――『
「うおぉっ!? はっはぁ! これでも幸運は高いんだよぉ。不意打ちなんかじゃ……お、ぐぅっ!?」
小刀が掠ったライダー……コロンブスが、切れた頬の血を拭いながら笑って、突然血を吐いた。
「……これで、もう終わり。真名開放をして、この小刀で切られてしまったなら、もう、終わり」
膝をついたコロンブスに、アサシンは冷たく言い放つ。
あの宝具は、掠っただけで終わりなのだ。毒だとかじゃないので、対毒は無意味。その本質は……。
「『男』が、この小刀で切られたが最後。その瞬間に霊核まで破壊される。それに例外はない。……非力な僕が使える、『暗殺』の宝具だよ」
西方の熊襲兄弟を打ち倒した逸話。その再現だ。気配遮断で近づき、真名開放した小刀で切り付けることで、『男性』ならばかすり傷でも霊核を破壊する絶対の一撃。それが、アサシンの第一宝具だ。
「くそ、がぁ……! あんだよその宝具はよぉ……反則だろうが……!」
「僕の復讐を邪魔したからね。仕方ないね」
「あー、くそっ。こんな早い退場になっちまうとは……だが、異世界っていう新たな資源を見つけたのは喜びだ……! ここじゃない異世界もあるかもしれねぇ! 俺はあきらめねえぜ……」
絶対に諦めねえ、と残して、コロンブスは消えていった。……横付けされていた船も、それと同時に消えていく。これで……。
「あとはお前だけだ、カルナ!」
「……『男』を一撃で屠る宝具、か。……それは、俺も危ういかもしれぬな」
「ハッ。思ってもないこと言わないでよね……!」
カルナの言葉に、アサシンが反応する。……ほんとカルナのこと嫌いになったなぁ、この子。出し抜かれたのが相当堪えているらしい。
「さて、それじゃあ第二ラウンドだ」
「こい、黄金よ」
長い槍を構えるカルナに、俺とアサシン、セイバーは対峙する。
下のジャンヌ達も気になるが……先にこちらを片付けないとな。
・・・
「大丈夫ですか、シエスタちゃん!」
「は、はい! みんな、こっち!」
私は、今シエスタちゃんの故郷、タルブ村のみんなと一緒に森の中を駆けていた。最初は、空中に浮かぶあの巨大な船から下を監視する、侍女さんの一人の報告だった。「タルブ村の村民たちが襲われている」……その報告を受けて、私は勝手に船から飛び降りてしまっていたんです。
宝具の剣を抜き、ステータスを上げて着地できる耐久を得る。ずどむ、と地面を陥没させつつ着地する。……あー、この着地方法、マスターが「膝に来る」って言ってたのわかる気がする。……ちょっと膝が痛い。
顔を上げたとき、ビックリした顔のシエスタちゃんと、村の人たちがいました。そこからシエスタちゃんたちと共に逃げつつ、相手の兵士さんたちをなぎ倒しながらここまできて、今に至る、って感じです。
現在地は森の奥深く。あの綺麗だった草原は燃え、森にも火の手が上がっている。艦砲射撃が着弾するたびに、どこかからトリステインの兵士さんたちの声が上がる。
「『
両手に剣と旗を持ち、上がったステータスと長い旗を武器にたまに襲い来る兵士さんをぶっ飛ばす。
「なんだこの女……ぎゃあぁぁぁぁ!?」
「き、気を付けろ! この女旗の一振りで人を……うおあああああああ!?」
「こいつ片腕でこんな力を……ご、ゴリラだ! 女の姿をしたゴリラだ! 気を付けろ! 魔法と弓矢で対処しろ!」
「失敬な! ゴリラではありません! バスターカードは確かに三枚ありますけど、人間の女です!」
「セイヴァーのくせにバスター三枚とか恥ずかしくないの?」とか「え、クイックとアーツ一枚ずつ? 大丈夫?」とか「宝具も脳筋仕様のゴリラだしカードもゴリラだしゴリラ・ゴリラじゃん。性格ゴリラも含めたらゴリラ・ゴリラ・ゴリラで西ローランドゴリラじゃん」とかめっちゃ言われるけど、ゴリラじゃないもん!
「あっちの方にトリステインの軍がいます! そちらに合流しましょう! っ!」
ごう、と炎。これは、竜のブレス! 上空からの攻撃には旗の力でみんなのステータスを上げて躱すしかないから、どうしようもない……!
「んもう、炎も、矢も、嫌いなんだから……!」
だけど、そんな我儘は言ってられない。いざとなれば、第三宝具を使用して私が囮になるけど……。
「もう少しで森を抜けます! そしたら、たぶんトリステイン軍がいます!」
「わかりました! 私が殿を務めます! シエスタちゃん、先に行って! 卑弥呼さんと壱与ちゃんがいるから!」
「はい! ……っひ!」
駆け抜けて、森を抜けた先。何故か、みんなの脚が止まったようだった。
「どうしたの!? 早く走り抜け……て……」
追いついて、理由を知った。目前に、竜騎士たち。しかもこれは、トリステイン軍のじゃあない! トリステイン軍が後退したんだ……! だからここにアルビオンの竜騎士が!
「みんな、森の中へ戻って……!」
そういうも、すでに目の前のドラゴンは口を開いている。ブレスが、来る――。
「『
目の前に旗を立て、魔力を回す。ごめんなさいマスター! ちょっと無茶します!
そう覚悟して、目の前にいる竜を見据えていると――。
「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「なにっ、新手……ぐああああ!?」
「……ふえっ?」
轟音。突風。続いて爆発。
目の前を緑色が通り過ぎていき、目の前にいた竜騎士は落ちていた。
――風切る翼は羽ばたかず、その体は合金で構成されている、空の王者。人が自らの手で生み出した高速の騎竜!
「あれは……」
「あれって……! 『竜の羽衣』ですか!?」
何事かとこちらに駆け寄ってきたシエスタちゃんが、空飛ぶ『それ』を見て叫ぶ。
その言葉を聞いて、森へ逃げようとしていた人たちが続々と空を見上げ、口々に称えた。
「本当だ! 『竜の羽衣』が! 『竜の羽衣』が飛んでいる!」
名を『零式艦上戦闘機』……持って帰ったゼロ戦が、飛んでいた。機銃を放ち、アルビオンの竜騎兵を落としていく。……あれを操縦できる人は学院にいないはず。誰が乗っているんだろうか……? だけど、今は……。
「助かった、んですね。……みなさん! 今のうちに行きましょう」
「あ、そうだったっ! みんな、こっちへ!」
どっちも混乱してるなら、今が逃げるチャンス! 私たちは、今度こそ森を後にして、トリステイン軍の下へと急いだ。
・・・
「なんなのだあの竜騎士は! 早すぎる!」
「囲んでブレスを放て! 速度の出る風竜ならば、耐久力はないはずだ! 一撃でも当てれば……! ぐあっ!」
バスバスバス、と竜の翼と頭に穴が開く。まただ。
あの音が鳴り、あの竜の翼が光ると、竜が落ちていく。魔法のようには見えない。そもそも、あんな形の竜は見たことがない。羽ばたかず、人を体内に収納するように乗せる竜など。何より、このワルドの駆る竜よりも早く、小回りの利く竜など……!
「だが、追いつけないほどではないな……!」
雲に隠れ、一瞬のスキをついて急降下。謎の竜の背後についた。
……やはり、と思う。竜ではない。この世界のものではない『論理』で動いている。……『聖地』か。やはり、そこなのか。
「貴様は……ガンダールブではないな……! 誰だ!」
「あァ!? テメェこそ誰だコンチクショウ! ここを燃やしたのはテメェだな!? テメェなんだな!?」
こちらを見るなり叫ぶ男。……野蛮だ。茶色い防寒着に耳まで覆うような不思議な形の帽子。ゴーグルのようなものまでついている。腕を振り上げ、叫んでいる。……相手の乗っているものの音で聞き取りづらいが、これでも風のメイジ。相手の声を拾うことくらいは造作もない。
「バカヤロウコノヤロウ! 竜だろうとなんだろうと、負けはしねえ!」
急降下していた相手が逆に急上昇を始める。……しめた。上に上がるには、当然ながら減速する。その隙を突けば、こちらが追いつき、魔法の槍による攻撃が可能だ……!
こちらも風龍の首を上に向け、相手を追いかける。距離を詰めていく途中で、呪文を唱え、魔法を杖にまとわせる。これで、あとはあの謎の竜に突き刺せば……!
「追ってきてんのかコノヤロウ!」
後ろを振り向いた男と目が合う。その瞬間。――相手が消えた。
「なに――」
「初めてやってみたが出来るじゃねえか木の葉落とし!」
すでに、背後にそいつはいた。いつの間に。どうやって。そんな疑問ばかりが浮かぶ中、奴の竜、その翼が光る。これは……!
「くっ!」
とっさに魔法を纏わせた杖で自身をかばう。ばす、と肩に当たってしまったが、それ以外は杖に当たり弾かれた。……なんという衝撃。これは、小さな何かを飛ばしてきている……!
「隙ありだバカヤロウ!」
「しまっ」
防ぐために減速したその隙を突かれた。相手は私が狩る風竜の翼に自身の駆る竜の動かぬ翼を当ててきた。鈍い音と共に風龍の翼は千切れ飛び、一瞬の浮遊感のあと、高度を失っていく。
「がああぁぁあっ……! くそ、『レビテーション』! ……船まで耐えろ!」
一度、退くしかない……! 通り過ぎていった相手は、すでに他の竜騎士を相手にしている。もうこちらは落ちるのが確定したからだろう。……この恨みは必ず。必ず晴らす。落下の速度も利用しながら、私は『レキシントン』号へと後退するのだった。
・・・
目の前で起きた出来事が、よくわからない。だから隣のライダーに目を向けてみると、彼女はにこりと笑って説明してくれた。曰く、この二人は別の国の女王と王女で、姉妹のように似た特性を持ち、その能力によって相手を薙ぎ払っているのだ、ということ。
……目の前で、光線を放ち敵兵を薙ぎ払う女王と光の球でこちらへ飛んでくる魔法や破片を逸らす王女を見たら、そういうものなのか、と言うしかありません。
そんなことを思っていると、その二人がこちらへやってきました。
「ちょっとどーすんのよ。わらわたちだけじゃ防ぐだけで精いっぱいよ。船を落とさないとどうにもならないわ」
「ですねー。流石にあれ落とすならここ離れないとですしねー」
「そもそも私の宝具にそれが出来るだけの火力はないので、王様待ちではないかしら?」
「……『王様』?」
ライダーからでた、何度目かの『王様』という言葉。今なら詳しく聞けるか、と思って聞き返してみると、ライダーはにこりと笑って説明してくれた。
「ええ、王様! 多くの英霊と絆を結んで、英霊たちから玉座に座ることを望まれた、英霊王! それが王様よ!」
「ほら、あんたのお友達のルイズの使い魔やってるじゃない。……『絆を結ぶ』っていうのがとっても意味深なんだけれどね」
「壱与、そういうの正しく言った方が良いと思うんです! ぶっちゃけギル様とセッ」
「まーてまてまて。『待て』よ、壱与。油断も隙もあったもんじゃないわねこいつ……」
口をふさがれている壱与さんを見ながら、私は思考を巡らせる。
多くの英霊と絆を結び、玉座に座ることを望まれた英霊王……。それがあの時のルイズの使い魔だったとは……。目の前にいる二人だけでも、相当な戦力を持っていることがわかる。魔法を扱う精神力とでもいうべきものが、二人からは強大に感じるのだ。
先ほどの船が現れて消えていったのも、それがらみなのだろうか。
「ああ、あの船? ……たぶんアルビオン側のサーヴァントよね」
「ですねー。……なーんかヤな感じしたんで、そうだと思います」
不思議な衣装に身を包んだ二人が、うんうんと頷きながらそう言う。
「とにかく、空に上がってるあんたの『おともだち』とその使い魔のあいつを信じなさい。……きっと、やってくれるから」
「あの淫乱ピンクはともかく、ギル様は絶対に負けないので!」
絶対の信頼を置いているのだと分かる二人の言葉に、私はうなずいた。……ならば、私の役目はこの陸上でトリステイン軍が壊滅しないように守ること。
「行きましょう、ライダー……いえ、マリー。この一戦、必ず勝たなければ……」
「ええ、もちろんよマスター。んー、アンリと呼んでいいかしら?」
「――もちろん。その方が気楽ね」
にこりと微笑みかけられて、私も笑う。
ユニコーンと、ガラスの馬。その嘶きが、戦場に響く。
・・・
「……む」
セイバーと何度か打ち合った時。カルナの動きが、わずかにぶれた。
そこをセイバーに突かれ、俺の射撃も受けて、カルナが大きく後退する。
「隙を見せるなんて……疲れたのかな?」
「いや、この体に疲れなどないことはお前も承知だろう」
そういわれて、セイバーは小さく舌打ちをする。馬鹿にされたと感じたのだろうか。いやまぁ、カルナはなんていうか、口下手な感じはするけど。
オブラートに包まないから真実そのままぶち込んでくるというか……。
「……しかし、押されているのもまた事実……っ!」
「っち、防ぐか……」
「お前のその小刀は恐ろしいからな。注意しているだけだ」
後ろからくるアサシンの宝具を防ぎ、カルナはさらに俺たちから離れる。
「……あの空を飛ぶ機械。ヴィマーナ程ではないが脅威だな」
「! セイバー、逃がすな!
「っ! させな……ちぃっ!」
「一手遅かった、みたいですね」
こちらに見向きもせずに、カルナは船から飛び降り、どこかへ行ってしまった。……あの背中、ジェット噴射できるんだ……。
「……仕方ない。ここからなんとかしてアルビオン軍を……ん?」
そういえばさっきからマスターが静かだなと思っていたら、抱えられたまま俺の服を引いてくるマスター。その手には、光を放つ本が……って、始祖の祈祷書じゃないか。
「どうしたんだ、それ」
「わ、わかんないんだけど……えっと、選ばれた……みたい?」
「なんで疑問形なんだよ。……何か読めるのか?」
「うん。えっと、古代ルーン文字で書いてある……ええっ!?」
始祖の祈祷書を(俺はわからないが)読み進めているマスターが、驚いた声を上げる。
それから、俺には見えない文字を追うようにページを指で追いかけるマスターは、そのまま杖を取り出した。
……何かをするつもりらしい。俺が船を落としてもいいが、それよりも何かを試すならマスターに任せた方が良いだろう。幸いここにはサーヴァントが三人もいる。呪文を唱える間の守りなら任せてほしい。
「……ちょっと時間がかかるから、私を守って、ギル」
「了解だ。どんな危険からも、マスターを守ろう」
そういうと、マスターは杖を取り出して目を閉じ、呪文を口ずさみ始める。
……それは、歌のようで。流れる波に体を負かせている様な心地よさ。……凄いな。こんな魔術、見たことがない。この世界でも、特殊な系統だろう。
しばらくして、その呪文が終わる。……魔法が、完成する。
「……っ!」
そして、杖が振り下ろされて――。
「うお」
――太陽が、生まれた。
・・・
「あれは……!?」
「……! 魔力……いや、強すぎない!? しかもこれ……」
「多分その通りです卑弥呼さま。……『選んで壊して』ますね」
「うっそでしょあんたそんなのどれだけ細かく……」
目の前の二人が先ほどの光に対して驚愕したように話し合っているのをしり目に、マザリーニは『これはフェニックスの仕業である』とし、こちらの士気の向上に利用している。……なにが起こってるのかわからないのに利用するのも凄いと思うし、たぶん目の前の二人はこれが何かわかってて話し合ってるのもそれはそれで凄いと思ってしまう。
……惚けている場合ではないわね。聞くだけ聞いてみないと……。
「……あの、お二人に聞きたいのですが……」
「ん? あー、キャスターって呼びなさい。それか卑弥呼よ」
「あ、自己紹介まだでしたっけ。バーサーカーです。もしくは壱与と」
「ヒミコさんにイヨさんですね。アンリエッタです。それで、聞きたいことというのは……」
「どうせあの光についてでしょ? あれ、たぶんあんたの友達よ。わらわたちのマスターのマスターのね」
「……マスターのマスターって言い辛いなー。淫乱ピンクでいいじゃないです?」
「いいわけないでしょ。流石に姫のおともだち淫乱ピンク扱いは面倒じゃないの」
「でも髪の毛ピンクですよ?」
「……え。だから?」
「あの!」
お二人でなにやら別の方向へ話がシフトしてしまったので、割り込んで声を掛ける。
「ああ、ごめんごめん。で、あの光はあんたの友達って話だったわね」
「ええ、その通りです。……あんな魔法を一人で放てるなんて聞いたことがありません。……まさか、ルイズの使い魔さんが手助けを?」
「……んー、違いますね。あの魔力は混じりっけない一人の物です。……すっごい無茶してぶっ放したと思うから、たぶんあのいんら……ピンクは今頃気絶でもしてんじゃないです?」
「そんな! それでは……」
「焦らなくても大丈夫! 王様がそれを許したってことは、そのルイズさんは王様の庇護下に入ってるんでしょう?」
「そりゃもちろん。マスターに大甘なのはいつものことでしょ?」
「そこがいいとこでもあるし悪いとこでもあるんですけどねぇ」
「まぁまぁ。だからこそ、私たちが甘やかしてあげるんでしょう?」
マリーに止められ、説明を受けてとりあえず足を止める。あの使い魔さんはかなりの技量を持っているらしい。……ヒミコさんとイヨさんの主ということだし、あの二人よりも実力があるのだという。さらにあちらにも護衛ということで二人いるらしいので、今は安心なんだとか。
なら一先ずはこちらに集中しても大丈夫だろうとマザリーニの下へと向かう。
「姫様……」
「今の光については説明を受けました。……だけど、今は『フェニックス』の所為ということにしておきましょう」
「……ええ、わかりました。奇跡の光によって『ロイヤル・ソブリン』号を初めとした敵艦隊は全滅。竜騎士隊もあの不思議な竜によって数を減らし、陸では謎の光線が敵を減らし、こちらへの攻撃は防いでくれました。……『奇跡』と。そういって間違いない勝利ですな」
マザリーニの皮肉の籠った言葉に苦笑を返す。
……あの黄金の王を召喚できたことは、これまで苦しんできたルイズが掴んだ、『奇跡』なのだろう。
・・・
「マスター、大丈夫か?」
「ええ、ちょっと精神力……あんたたち風に言うと『魔力』ね。それを使い過ぎたみたい。少し眠いくらいよ。ちょっとだけ寝たら治るわ」
「……安心して寝ていいぞ。俺がちゃんと帰すから」
「……ふふ。あんたのそんな心配そうな顔、初めて見たかもしれないわね。……ん、ちょっと、寝るわ。あとは、よろしく、ね……」
寝ぼけ眼で話していたマスターも、流石に消費した魔力が多かったのか、ゆっくりと瞼を閉じた。すぐに穏やかな寝息が聞こえてきたので、両手で抱えてヴィマーナの乗り込み用円盤を呼ぶ。
「よっと。……セイバー、アサシン。ヴィマーナにマスターを戻したら、二人はマスターの護衛についてくれ。俺はアンリエッタの所に行って、卑弥呼と壱与に色々と聞いてくる」
「了解! じゃ、行こうか」
俺達四人を乗せた円盤が、音もなく飛び立つ。そのままヴィマーナに格納され、待っていた自動人形にマスターを渡すと、二人に任せてもう一度降りる。
「……よっと」
どずん、と着地。んー、膝に来る。あんまり目撃されないように、ちょっと離れた森の中に着地した。……ん? この魔力反応は……。
「マスター!」
「ジャンヌか。ということは……」
「ギルさんっ」
「シエスタ! 無事だったか!」
「はい! 村のみんなも一緒に、ジャンヌさんに守って貰っちゃいました!」
なるほど、ジャンヌはタルブ村のみんなを守ろうとヴィマーナから降りたんだな。それがわかって一安心というか。
「……そういえばマスター。先ほどの話なんですが……」
そう切り出したジャンヌから聞いたのは、空を飛んだゼロ戦と、それに乗っていたパイロットの話。
……ワルドが途中からいなくなったと思ったが、まさかサーヴァントがゼロ戦を駆って来るとは……誰が召喚したんだ……?
「どんなやつかとかはわかったか?」
「いえ、なんか破天荒そうな感じでしたけど……あ、日本人っぽかったですね」
「ゼロ戦に乗れるくらいだからなぁ。んー、どこ行ったんだか」
まぁ、学院に戻ればだれか見てるだろうし、目撃証言くらいは聞けるだろう。
とりあえず、タルブ村のみんなを連れてトリステインの軍まで行くか。
「俺が先導するから、ジャンヌは殿を頼む。さ、行くぞ」
そういって、俺は卑弥呼の反応を頼りに歩き始めるのだった。
・・・
「ギルっっっっっさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「R↓」
「緊急回避ッ!?」
飛んできた壱与を避けると、ずさぁ、と地面を滑っていく。それをしり目に見ながら、俺は卑弥呼に状況を聞く。
先ほどのマスターの魔法については、アンリエッタとマザリーニという枢機卿がごまかしてくれたらしい(と言うよりも、実際に何が起こったかわからないので、適当に士気が上がりそうなことを言っただけらしいが)。
「ならば、この後の処理は頼んでもよさそうだな。……マリー、久しぶり、になるのかな?」
アンリエッタ達との話がひと段落ついたので、背後にいる別の王女様に声を掛ける。
「ええ! 正確な日数と時間と秒数を言うとドン引きされると思うので絶対言わないけど、体感的に言っても久しぶりよ!」
「うんうん、まだ白百合モードみたいで何よりだ」
黒百合モードだと凄まじい嵌め技使ってくるからなこの王女様。もう一人の百合の騎士と一緒だとほんと大変なことに……うぅ、『え? 私としすぎてもう出ない? ならデオンとすればいいじゃない!』ってなんだよ……違うよ。人を変えれば出るようになるわけじゃないんだよ……いや、出したけど……。っていうかその名言君が言ったわけじゃないのに利用するのはどうなんだ……。
「アンリエッタのサーヴァントになったんだな」
「そうよ。だってとっても共通点のあるお姫様なんだもの! それに、こういう子は手助けしたくなっちゃって……勝手にあなたの宝具を利用しちゃったわ。……怒ってる、かしら?」
……この姫は、こういうところがずるいのだ。
天然でこういう上目遣いで瞳をうるうると子犬のように潤ませ、小首をかしげて見せる。これをされては、だいたいのことは許してしまう。まぁ、そもそも怒らないけどな、この程度じゃ。
それを行動で示すために、マリーの帽子を優しくたたくように撫でながら、笑いかける。
「別に構わんよ。マリーがこういうことで悪用することはないって信じてるから」
「わぁっ……! ありがとう王様! あなたのそういう優しいところ、大好きよ!」
俺の手を取って嬉しそうに上下に振るマリー。……あー、癒し系だなぁ。
「取り合えず、タルブ村も大変なことになってるだろうから、そっちに寄ってから戻ることにするよ。そっちは何か支援は必要か?」
「いいえ、今は大丈夫だと思うわ! アンリには私から色々と説明しておくから、その辺も心配なさらないで!」
「ん、了解。よし、ジャンヌ。タルブ村に戻るぞ」
俺がそう声を掛けると、ジャンヌと共にいたシエスタが不思議そうな顔をする。
「ギル様もタルブ村にいらっしゃるんですか? ……今のタルブ村は皆様をお迎えできるような状態じゃ……」
「俺たちも再興に協力するんだよ。……裏技があるからな」
そういって笑う俺を見て、ジャンヌはぽんと手を叩き、シエスタは首を傾げた。
「その裏技っていうのは――」
・・・
――ステータスが更新されました。
クラス:セイバー
真名:上杉謙信 性別:女性 属性:秩序・善
クラススキル
対魔力:■++
騎乗:B
戦国時代の武将として、騎乗の技能を持っている。
だいたいの乗り物を人並み以上に乗りこなせる。が、幻想種は該当しない。
保有スキル
■は天にあり:A
■は■にあり:A
手柄は■にあり:A
矢除けの加護:A■
夜叉■■:B
守護騎士:B
戦乱続きであった越後を統治し、秩序の維持に奔走し、さらに要請されれば秩序回復のために出兵するなどの逸話より。
秩序の形成に力を注いだ、という事からこのスキルを得た。
他者を守る際に耐久ステータスを上昇させる。
能力値
筋力:C 魔力:D 耐久:B 幸運:A+ 敏捷:A 宝具:A
宝具
『
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~3 最大補足:1人
毘沙門天の数ある派生の姿、そのうちの一つ、異形種である刀八毘沙門天の御業の再現。
八つの刀を持つ刀八毘沙門天の御業を人の二つの手、一つの刀で再現するために、本来ランクEXのこの御業はランクがダウンしている。
一度の斬撃で八度判定を生み出すのが本来のものだが、これはだいたい一度の斬撃で二度の判定を出している。
姿勢、魔力量、立ち位置などで斬撃の量が変わる不確かな宝具。