ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント! 作:AUOジョンソン
「ギル様ー? 卑弥呼さまー? ……どこいったんですかー? うぅ、壱与、虐められないと生きてる実感なくて寂しくなっちゃってその辺の関係ない建物とか消し飛ばしたくなっちゃ……あ、いた。……し、死んでる」「死んでないぞ」「死んでないわよ」「うわ、びっくりした。……ちっ。卑弥呼さまの脈を確認するふりをして頸動脈ちぎろうとしたのに……」「ちぎるって言ったぞ、この子」「諦めなさい。生前からよ」「あ、そういえばどうしたんですか、こんなところで倒れて」「……これ、読んでみなさいよ」「? あ、これあの人ですよね、ギル様の前のマスターのゆ……うわ」
――数時間後、仲良く重なり合って気絶した三名が発見された。
それでは、どうぞ。
「これで、全員か」
鯖小屋のリビング。一番広く取っているそこには、かなり大きめのテーブルが置いてある。席はかなり多くおいてあるが、さらに椅子を追加すればもっと人を座らせることができる。ここには結構力を入れたので、今いる知り合い全員が座ってもまだまだ余裕があるほどだ。
そこに座るのは、俺のほかにジャンヌ、謙信、小碓命、卑弥呼、壱与のサーヴァントと、シエスタと自動人形の一人。計八人が、テーブルに座っていた。
「え、えと、その、私は……いても大丈夫なんでしょうか……?」
「はいっ。シエスタちゃんはギルさんの専属メイドさんですし、この鯖小屋の管理人みたいなものですから!」
「ええっ!? そうなんですか!?」
「そうですよね、ギルさん!」
「んん!? あ、ああ、そう、そうだな!」
完全に初耳だったが、ジャンヌの純粋な瞳に押されてうなずいてしまった。……まぁ、この世界の拠点なんだし、管理人はこちらの世界の人間のほうがいいだろう。
「……そこの芋煮会は放っておくとして」
「とりあえずあのにっくきYARIOを探し出して座に返しましょう。……ボクの宝具なら、一撃だよ」
「あー、あのビジュアル系の……」
「壱与ああいう系苦手なんですよねぇ。眩し過ぎるところが特に。自分から近づいてくる太陽ってめっちゃやばいですよ」
妙な会を作られて勝手にメンバーにされているジャンヌとシエスタをよそに、サーヴァントたちがランサー……カルナについて話し合う。
小碓命はあの時俺と一緒に裏をかかれたからか、直接戦ったからか、この中では一番闘志を燃やしているようだ。……君の宝具についてはちょっと制限あるから、ちょっと考えてくれよ?
「っていうか太陽に関する英霊でヤバくないのいないですよね? ……ね?」
「なんでわらわ見るわけ? ……ん、まぁ、やばいけど」
「っていうか小碓命さんは直系ですよね……?」
「よく考えたら私凄いのと共闘してるんだなぁ……」
小碓命、卑弥呼と壱与の古代トリオを見て、謙信が一人煤けた瞳をする。
……あっちはちょっと時間かかりそうだな。
「ジャンヌ、今のうちに聞くけど……この中で、正面から一対一でカルナに勝てるのはいると思うか?」
「……んと、全力なら、ギルさんと……私だと思います」
「まぁ、その場合はジャンヌの第三宝具まで開放しないといけないからなぁ……」
あれはあんまりジャンヌも使いたくない最終手段。……やっぱり、ジャンヌと謙信に前面に出てもらって、卑弥呼と壱与と俺が後方から火力を発揮、小碓命にはトドメを刺してもらうというのが一番理想だな。……それができるかはわからないけど。
「これ以上召喚する予定はないけど……なんか必要な英霊いる?」
「……ライダー枠の人がいてくれれば一番ですねぇ。大量輸送できるような大空ぶっ飛びガールいましたっけ?」
「今のところ俺の宝具で代用はできてるからなぁ」
もし別行動しなければならないって時じゃないとなぁ……。
「あーっ、そっちだけ仲良ししてずるいですよぉっ!」
そういって、壱与が俺の腕に飛び込んでくる。あー、軽いなぁ、こいつは。……うん、最盛期があのくらいの年だったから今もこれなんだけど、ちょっと不安になるレベルだ。
「それで、どうするのよ。新しいやつ呼ぶの?」
「いや、今のところはこのままで大丈夫だと思う。……呼ぶにしても、ライダークラスかなーって結論が出たところだ」
「ふぅん。……そこの侍女にはなんか付けなくて大丈夫なの?」
「あっ、わ、私ですか!? 私のことは、その、お気になさらず!」
急に話を振られたからか、シエスタはわたわたと手を振って立ち上がった。
……今のところは自動人形だけでもなんとかなっているけど……もしこれ以上シエスタみたいな子が増えるようなら、ランサークラスの召喚を考えるとしよう。
「今のところは話すのはそれくらいよね? ……なんか食べる? 久しぶりに腕振るうわよ?」
「あっ、ずっこ、ずっこいですよ卑弥呼さま! ギル様、壱与も作れますよ!」
「うん? なんだなんだ、次は料理の腕を見せるところかい? ふふ、良いよ、ここいらで伴侶としての実力を示しておくのも悪くない」
「……料理……料理は、ボク、その……できない……かも」
「うー、お料理なら……あっ、シエスタちゃんとのコンビで行きます!」
「が、頑張りますっ!」
マスターも食事をとっているころだろうし、こちらも食事にしよう。一応わずかながら魔力に変換できるし、人間として食事をとるというのは精神衛生上大切だ。なので、余裕があれば食事をとることを基本としている。
みんな乗り気みたいだし、いただこうかな。ついでに俺も一品作るとしよう。なに作るかなー。
・・・
ジャンヌさんとお料理を作る、となったとき、私の脳裏に出てきたのは、お父さんから教わった、ヨシェナヴェ。これなら、多い人数で囲んで食べるにはちょうどいい量になりそうだ、と思ったので、それをジャンヌさんに伝えてみる。
「ヨシェ……うん? 寄せ鍋?」
「? どうしました、ジャンヌさん」
「いえ……聞き覚えが……ま、まぁ、とりあえず作ってみましょうか!」
そういって、ギルさんに材料をお願いするジャンヌさん。それを聞いたギルさんも、何を作るんだ? と首を傾げた。
……そ、そんなに変なものかしら。だいたいどんなお野菜も入れられるし、みんなでわいわい食べられるし……あっ、で、でも、ギルさんは元々王様だったと聞いています。そんな方に食べさせるにはちょっと地味かしら……?
「あ、シエスタちゃんが思ってるような『ギルさんのお口には合わないんじゃ……』みたいなのはないんで、安心してください」
「そ、そうなんですか?」
「そうなんですよ。ま、とりあえず作りましょう! 今回はシエスタちゃんが主役! 私はサポートに徹しますね!」
そういって、ぐ、と両手を拳にしたジャンヌさんが「何からやります?」と声を掛けてくる。
「ええ、それではお野菜を食べやすい大きさに――」
とにかく、全力を尽くそう! 素材はギルさんの『宝物庫』産。あとは、調理の腕が試される。
……ぎ、ギルさんの専属メイドとして、恥ずかしくないヨシェナヴェづくり! 頑張ります!
・・・
「……これは」
出来上がったのは、卑弥呼と壱与の鯖の味噌煮、謙信の小松菜の胡麻和え、そして――。
「シエスタちゃんチーム! ヨシェナヴェ……寄せ鍋です!」
ジャンヌがどん、と置いたのは、土鍋に酷似した鍋に様々な野菜や肉、キノコが詰め込まれた……うん、ぶっちゃけ寄せ鍋である。え、シエスタもこの世界の人じゃない可能性?
「これ、シエスタちゃんのお父さんが教えてくれたらしいですよ。……どういうことか、気になりますね」
「……確かに。今度、確か連休あるよな。ほら、アンリエッタ姫が結婚する関係で」
「ええ、ありましたけど……」
ジャンヌの答えに、俺はこれからの予定を一つ決めた。
「……シエスタ」
「は、はいっ!」
「君のご両親に挨拶がしたいんだけど、今度の連休ちょっと早めにとって故郷に帰れたりする?」
「はい! もちろ……ふぇっ!? りょ、両親に挨拶って、ギルさん、その……!」
「うん? いやほら、俺の専属になってくれてるわけだしさ、その件の報告とか、聞きたいことがちょっとあるんだよね」
「そ、それって、わ、私を貰ってくださるとかそういうアレですか――!?」
シエスタの言葉に、そういわれるとそうだな、とうなずく。
シエスタのご両親にも、これからは学園ではなく俺個人にやとわれることになるが、給金や待遇に変わりはないこと、安心してほしいことを伝えないとな。
「あっ、ばか、そういうこと言うとまた変な勘違いが……!」
「え?」
「――きゅぅ」
「えっ、おい、あれ、シエスタ!?」
「……あー……卑弥呼さま、ちょっと遅かったみたいですね」
ぽふ、となぜかふらついたシエスタを、壱与が椅子で受け止める。……サーヴァントになっても筋力値が最低の壱与としては、女性一人と言えども受け止めにくいのだろう。なんて非力なんだ……。
「……ま、いいわ。どうせお手付きになるんだろうし、大きな意味じゃ間違ってないわね」
卑弥呼に大きなため息をつかれたが、え、なんだよ。なぜ俺をそんな、生前の時みたいな目で見るんだ……!?
シエスタについて聞いてみるも、問題はないということしか教えてもらえなかった。しばらくすると元に戻ったので(頬はまだ少し赤かった)、食事をとることに。
「ちょっと問題もあったけど……今度の休みの予定は決まったな。マスターにも伝えて……あー、マスターも来れるなら誘うか。こういうのハブられたら拗ねそうだし」
「あー、そういうとこありそうですね」
「その場合はあの褐色メロンも誘わないとうるさそうじゃないです?」
「となると、あの青い子も誘っとかないと。独りぼっちは寂しいもんね」
「そこまで行くなら金髪の男子も誘わないとですね。一番うるさそうですよ?」
「じゃあ結局いつものメンバー全員だな。ま、来るかはわからないけど」
その日の夜。マスター含む全員にシエスタの故郷……タルブ村に来るかどうかを聞くと、全員イエスと答えてくれた。マスターは詔を考える関係で早めに休みを取れるらしいが、他の子たちはどうするんだろうか……。まぁ、その辺はなんとかできるんかな。貴族の学校だし、何か用事があるなら休みを取れるとか……?
ま、その辺は彼らが上手くやるだろう。それよりも、これから旅行準備だ。城下町でも城でもない、この世界における平民の村……楽しみだ。
そういえば、キュルケがなんか変な笑みを浮かべてたな。……なんか企んでる、みたいな……。
・・・
――ここは、話し合いが終わった後の鯖小屋のリビング。
少しの明かりだけが、俺と卑弥呼を照らしている。
卑弥呼から「あの神のことで話があるんだけど」と言われ、こうして二人、別に集まっていた。
「それで、話って?」
「……こんだけ引っ張っておいてなんだけど、わかったことってあんまないのよ」
「それでも、わかったことを教えてくれないか。あの神様に何が起きてるのか」
「多分だけど、あの神様はなんかに攻撃されてるわ。……それが何か、まではわからないけど」
その言葉に、うなずく。自分からキャラを変えた……にしては、途中の苦しみようが不可解だ。何者かからの攻撃に対して、防御するための殻としてあのような人格を作り出したのだろう。
「あんたの蔵から神を縛ったり神を変えたりするものが無くなってるのは、たぶん攻撃した側も攻撃された神側も両方が利用してるから……だと思う」
「なるほど……」
「で、私たち召喚されたサーヴァントの共通点としては……神に関係したなんかを持ってるってことかしら。……神性はもちろん、逸話としてだったりね」
ああ、啓示とかそういう類のものか。確かにそうだな。
「あとは……あれよね。あの神に攻撃っていうか干渉した『何か』だけど……んー、多分……あれよね。系列が違うわよね」
「系列?」
俺が首をかしげると、卑弥呼はえーとね、と前置きして話し始める。
「ほら、日の本とかギリシャとか、色んな神話体系があるわけじゃない?」
「ああ」
「国が違って、民族が違っても、神話ってある程度モチーフとか元にしたものは同じになってくのよ。太陽とか月とか、夜空に浮かぶ星だとかね」
その通りだ、と頷く。太陽だけでも数十柱。月に星座に動物に、色んな神様が色んな神話に出てくる。
「でもね、たぶん……違うのよ。その、違う神だとか、神話ってわけじゃなくて……そもそも……なんていうんだろ。んーと」
唇に人差し指を当てて、卑弥呼は悩み始める。どうやらうまい言葉やたとえが浮かばないのだろう。しばらく悩んでから、渋い顔をして口を開いた。
「そーね、乱暴なたとえだけど……地球の人間じゃない……宇宙人が考えた、みたいな違い。……わかりにくいか」
「いや、ある程度はそれでわかるよ。……認識というか、発想の違いみたいなもんか。感性が違う……存在が違う?」
「あ、それが一番近いかも。神とも英霊とも、人間とも違う……『何か』みたいな」
卑弥呼自身もよくわかってい無いようで、手を叩いて理解を示しながらもまだすべてがわかっていないからか、渋い顔はやめない。
「……気持ち悪いわね、このなんもわかってないのに振り回されてる感じ。……取り合えず、今は召喚したあの子の……ちょっとまって」
「うん?」
何かに気づいた顔で、卑弥呼が考え込む。しばらくしてから、俺に視線を向ける。
「あんた、召喚されたのよね?」
「ああ、そうだよ」
「……んと、あんたを召喚して、わらわたちも召喚して……なんで無事なの、あの子」
「ああ、魔力の話か? それなら、神様が持ってくれてるからだよ。なんでかはわからないけどさ」
「神で魔力を持ってる? あの子が召喚したのに?」
驚く卑弥呼に、俺は今回召喚される前。神様から今回の召喚を持ち掛けられた話と、その条件を話した。
神妙な顔をしてその話を聞いていた卑弥呼は、しばらく唸って、口を開いた。
「あの子が召喚したっていうより、召喚させられたって感じね」
「そうだな。それは俺も思ったよ」
唐突に俺の座にやってきて、マスターを進級させるために召喚されて欲しい。そして、その契約が終了するときまで守れというのが今回の神様のお願いである。
その時には召喚の際の魔法陣、魔力、つながりのためのラインなんかを、すべて神様の方で用意するという高待遇。そこに疑問は持ったものの、情報を貰う前に『予定が早まった』と召喚されてしまい、そのあとは神様が変質してしまったので高待遇の理由は聞けていない。
「そこに理由がありそうね。あんたをあの子に召喚させないといけなかった……? そこまでしないといけない……ものがあの子に?」
「確かに他の魔法使いとは違うっぽいけど……爆発させるのが上手な感じで……あぁ、でもワルド……ランサーのマスターは、マスターに何かを感じたらしいな」
伝説の使い魔のルーンだか何だかの話をしていたな。それも伝えると、さらに顔を顰める卑弥呼。情報を頭の中で整理しているのだろう。
「伝説の使い魔ぁ? ……それが守る理由? ……ってのはちょっと弱い気がするわね。んー? わらわたちが考え付かない理由? あの子にそれ以上の何かが……いや、それこそ考えが違う? 逆に考えるのよわらわ……。理由があるのはマスターじゃなくサーヴァント……ギルにある? 召喚させなければいけなかった? なんで? 神と一緒にいると巻き込まれるから? それがわかってた? ――ギルを逃がした?」
卑弥呼がハッとした顔をする。
「あんた、座からは分霊じゃなく本体が来てるのよね?」
「そうなるな。生まれが特殊な英霊だから、そのまま本体で召喚に応じてるって聞いたぞ」
「……推測になるんだけど……」
そう前置きして、卑弥呼は自分の考えを話し始めた。
『俺を召喚する少女が現れた、その少女を守るために召喚されて欲しい』と言われたが、それは建前。本当の目的は、『何か』の襲撃を知った神様、もしくはその上の存在が、それに対処させるため、もしくは襲撃してくる『何か』をやり過ごすために、俺をマスターの下へと逃がすのが目的だったのではないか、というのが卑弥呼の推測だった。
時間軸から外れているのが英霊の座だが、さらにそこから外れた神様の『領域』の一角に存在している俺の『座』は、確かに神様に何かあれば俺にも影響があるかもしれない。……そういえば、俺の座……黄金領域の方は行ってなかったな。呼び出されなければそこへはいけない卑弥呼達にも、現状はわからないといわれた。
「……だけど、神様自体はそのことをわかってはいなかったと思うけどな……」
俺が召喚されるという案件を持ってきたのは確かにあの神様だったけど、理由についてははぐらかされていた。さらに上から頼まれたっぽい感じだったけど……。
「何回かサーヴァントと戦ったのよね?」
「ああ。こっちで見つかったマジックアイテム……『聖杯』の所為だと思ってたけど……」
それも違うのだろうか。……うーん、謎が本当に多いな。
「……ま、今わかってるのはこの程度ね。……ね、今日はもう何もないのよね?」
「ん? ああ、もうあとは寝るだけだな。みんなには必要ないだろうけど」
はは、と軽く笑うと、卑弥呼ががたん、と立ち上がった。
「……じゃ、久しぶりにしましょうよ。……ね?」
肩をちらりと見せる卑弥呼に、おおう、と思い至る。
「んしょっと。こうして卓に乗って誘うと、生前思い出すわね。……ふふっ」
……こうして、俺の夜の予定に『寝る』以外の選択肢が生まれることとなるのであった。……その、とっても良かったです。
・・・
ある日の昼下がり。キュルケとの何度目かのお茶会の時。
シエスタの故郷、タルブ村へ行くマスターたち貴族組は、前回の密命の件もあり、早めの休みをとれたらしい。キュルケが嬉しそうに報告してくれたので、間違いはないだろう。
なので、行く日にちを決めようとすると、キュルケはあるものを取り出してきた。
「早めに休みを取れたから……これ、行ってみない?」
「なんだこれ?」
「宝の地図よ! 一攫千金ってロマンよね!」
「ほー……」
確かに古ぼけているし、なにやら暗号らしきものも書いてあるようだ。
けど……『アタリ』はあるんだろうか……? それを聞いてみると、キュルケは嬉しそうに俺を見て笑う。
「そこはほら……ダーリンの黄金律で!」
「……何で知ってるか……はマスターあたりだな。あとでデコピンするとしよう」
「ステータス? の幸運ってやつも高いんでしょう? だったら、私が買ったこの地図でも、一個二個くらいは何か出てきそうじゃない?」
「んーむ……ああ、このあたりとかはタルブ村行く途中に通るな。……ま、いくつか行ってみるか。じゃないとあきらめないだろ、キュルケは」
「ふふっ。さっすがダーリンっ。私のことわかってるわね!」
キュルケは、それに、と続ける。
「いくらかお宝を見つければ、ダーリンも貴族になれるかもしれないし! そしたら、本当に私のダーリンになれるわよ? ……ふふ、私、そういうの好きなのよ」
「貴族に?」
「ええ。この国は確かに平民が貴族になんてなれないけど、私の国、ゲルマニアは別よ。一定の金額さえ納めれば、誰でも貴族になれるの」
「ふぅん。……ふぅん?」
「あ、あら? ダーリン、笑顔なのに顔が怖いわよ?」
キュルケに言われて、おっと、と頬を軽くたたく。変な顔になっていたようだ。
「だから、お宝を見つけて一攫千金! そのお金でゲルマニアで貴族位を得て……そうして、私と結ばれる! そういう、困難を乗り越えて男女が結ばれるっていうのが好きなのよ~」
そういって、頬杖をついたキュルケは物憂げにティーカップを持ち、中の紅茶をくるくる回す。
「ダーリンは元王ってこともあってそういうマナーとか振る舞いもわかるでしょうし、貴族になってからもさらに上り詰められると思うし」
「んー、そこまで食い込むつもりはないけど……宝さがしっていうのはロマンあるな」
デルフリンガーみたいな、この世界特有の宝剣みたいなのあったりしたら嬉しいしなぁ。
よし、宝さがしも予定に入れるとしよう。……うんうん、ちょっと移動期間が延びるけど、問題はないな。
「よし、これとこれ……あとはこれも行ってみようかな……あれ?」
あんまり文字はわからないけれど、これは……タルブ? タルブって書いてあるな。
「あ、そうそう。これね、最終目的地のタルブ村にもあるらしいのよ。詳しい名前とかはわからないんだけどね」
「ふぅん……なんだろ。気になるなぁ」
ま、結局行くからわかるだろ。
選んだ宝の地図をキュルケに渡して、お茶を再び楽しむ。
「それじゃあ、宝さがし楽しみにしてるわね!」
最後に、そういってキュルケが去っていくのを見送って、俺は中庭を後にするのだった。
・・・
――ステータスが更新されました。
クラス:バーサーカー
真名:壱与 性別:女 属性:混沌・狂
クラススキル
狂化:E+
耐久のパラメーターを少しだけ強化するが、通常時はその恩恵を受けることはない。
恩恵を受けたとしても『ある人物からの痛みを快楽に変換する』くらいしか恩恵はない。――恩恵と言っていいかは疑問な上、元々持っている性質(性癖?)なのだが。
保有スキル
カリスマ:C
軍団を指揮する転生の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、小国の女王としては十分といえる。
若くして女王となったことや、結構嫌々だったことから若干低くなっている。
鬼道:A
卑弥呼に教えられ、彼女も鬼道を行使することが可能。
卑弥呼ほどの親和性は無いが、それでもそれなりに成功率は高い。
神性:B
神霊適正を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
卑弥呼と同じく天照大神だとも、その娘だとも言われているが、明確な証拠は無い。
予知:A
鬼道、宝具の銅鏡を合わせて使用することによって、彼女は自身の知りたい未来を見ることが可能。
その応用として、未来を見続け、時間軸を一周することによって擬似的な過去視も可能とする。
能力値
筋力:E 魔力:A+ 耐久:D 幸運:C 敏捷:E 宝具:EX
宝具
『合わせ鏡:銅鏡』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:? 最大補足:?
卑弥呼と同じく、彼女の習得している『第二魔法』が宝具化したもの。鏡を介し、予知や魔力の無制限行使を可能とする。
……通常の聖杯戦争では決して起こりえないことではあるが――この先の情報は破損して読み込めないようだ――が起こる。
『■■■■:■■■』
ランク:EX 種別:? レンジ:? 最大補足:?