無限の精霊契約者   作:ラギアz

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第十九話「授業」

「おはようー! じゃ、HR始めよっか!」

 その静かさを破る夕張先生。右手にファイルと書類を抱えた先生はドアを後ろ手に閉めると、教壇の上に立ち教卓にファイルを置いた。

 それと同時に、誰かが「きりーつ」と告げ、教室中の全員が立ち上がる。

 声を揃えて挨拶し、全員が座った所で夕張先生はにこやかに笑いながら話し始めた。

「今日は時間割通りだよー。学校に入学して二日目だけど、この学校はどうかな? 慣れてきた……って言うのは早いかな? ま、廊下とかで初めて会う先生には元気よく挨拶して、クラスの皆の名前を覚えること。『ゆうばりせんせー、お昼ご飯一緒に食べよー』っていうのも大歓迎だからね!」

 ぐっ! と元気よくサムズアップする夕張先生に、クラスの中で笑いが起こる。

 仲の良さそうなクラスに違わず、元気の良い先生だ。黒髪のポニテを揺らしつつ、HRの余った時間を生徒との雑談で潰している。身振り手振りを交えつつ、常に笑顔を絶やさない。

 会話には参加せずとも、話は聞いていた俺も時々笑っていた。夕張先生が話を終えたタイミングで丁度チャイムが鳴り、皆が一時間目の授業の準備を始める。

 夕張先生も黒板に授業の内容を書き始めた。一時間目の教科の担当は夕張先生である。

 火曜日の朝、晴れの日差しを浴びながら窓際の席で机の中から教科書を取り出し、バッグから筆記用具を取り出す。シャーペンをくるくると回しながら、授業が始まるまでの十分間を潰す。

 チャイムが再び鳴る。号令をして、夕張先生の授業が始まった。

 一時間目の夕張先生の授業は、分かりやすくそしてやはり面白い授業。

 問題を幾つか出して、回答を生徒に黒板へ書かせた後に詳しい説明をしてくれる。基礎的な所をしっかりと押さえつつも応用問題も出していき、解説には覚えやすい様に例え話をしてくれていた。

 その授業内容は基本的な物。田舎の教員免許持ちのお爺ちゃんとお婆ちゃんに教えて貰っていた範囲だったからスムーズに解けて、理解も深める事が出来た。夕張先生の話にリラックスして授業に取り組み、50分の授業が直ぐに終わる。

 チャイム、号令。その一連の流れをこなし、二時間目の授業の準備をしてから教科書を捲りつつ、徐に教壇を見上げるとそこには夕張先生が変わらずに居た。

 先生は教卓に置いてある教科書を見て、黒板に何かを書いて、見て、書いてを繰り返している。

 二時間目も夕張先生が担当なのだろうか。

 中学、高校では教科によって教える先生が違うって聞いていたのだけれども。

 ……まあ、二時間くらいなら珍しくも無いのだろうか。田舎のマンツーマン授業を受けていた俺は話しか聞いた事が無いから分からない。

 しかし。

 三時間めも。四時間目も。

 夕張先生はずっと教壇に立ち続け、面白く分かりやすい授業を繰り返していた。

 


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