「……そういえば、昼間畑、やってたよね?」
「うん。ルテミスに頼まれたんだ」
涼花の問いに、俺は頷いて答える。
「大変じゃないの?」
「人手が足りないから結構大変。畑も広いからさ」
軽く笑って、俺は返す。
すると涼花は突然目を輝かせて、
「私も畑仕事やってみたい」
「え?」
そんな事を、言ってきた。
「友達も居ないし、それに体を動かすのも好きだし。畑仕事やった事無いから、凄く興味がある」
「いやいやいや、大変だよ? 朝は早いし、日によっては一日中屈んで収穫、重たい野菜を運んでたりしなきゃ行けないよ?」
「大丈夫。やってみたい」
「……ルテミスに聞いてみる」
「ん」
どうやら、目の前に居る少女は俺が思っていたよりも好奇心が強く、ぐいぐい押していくタイプだったらしい。
そのやり取りで圧倒されていた俺は、これは早めにルテミスに言わないと毎日会う度に何か言われそうだなと考える。しかしまあルテミスとの関わりなんて薄い物だから、何日後になるのかは分からない。
取り敢えず俺は最後のデザートであるゼリーを食べ終え、席から立ちあがった。
「ごちそうさまでした。……じゃあ、おいおい連絡する」
「ん。じゃあね」
「じゃあな」
涼花と短く言葉を交わし、俺はその場を後にする。
食器を台所にいる人に返却し、満腹になったお腹をさすりつつエレベーターで最上階へ。そのまま一番端っこまで歩き、俺はポケットに突っ込んでいた鍵で部屋のロックを開けて中へ入った。
そのままふらふらと白いベッドに歩いていき、少しジャンプして仰向けにベッドへと沈み込む。
白い天井に、光る蛍光灯。
壁も白く、それはフィニティとの白い世界での会話を思い出させる。少し顔を顰め目を右手で覆うと、俺は長く息を吐いた。
疲れた。今日はもう寝たい。
率直な思いだったが、しかしお風呂開放時間は七時。今から三十分後で、まだまだ寝れそうにない。
かといって今日学校に行けてないため教科書も何もなく、予習も出来ないし遊戯室に行っても一人寂しいだけだ。
外はもう暗くて、畑仕事も出来ない。テレビも無い。
「……暇だあ」
ため息交じりに呟いて、俺はベッドから起き上がった。
お風呂の道具を簡単に纏めて、学校案内書を何となく取って読み始める。
『普通学科』の、俺は一年二組だ。
生徒手帳に書かれているから分かる。教室は『普通学科』の校舎の二階にある。全四階建てだ。
図書室、保健室、体育館に運動場。視聴覚室に木工室と、大抵の教室は全て入っている。当たり前かもしれないけど、その教室それぞれが大きく、案内書には最新機器が使われていると写真付きで書いていた。
欠けている教室は、恐らく無い。
全ての高校が、この校舎で生活できるだろう。専門学校から、普通の公立まで。
電車内でも読んでいた案内書をじっくりと読み進めていき、気づけば七時。
俺は大浴場に一人で行って隅っこで一人で入って一人で出てきて、そしてその日は速やかに眠った。
これでひと段落・・・と言ったところですね。
次回からは学校生活がスタート・・・?
物語が進みます。では、また明日!