「勝てる……! これでぼっち脱出だ!」
そう叫んだ時点で、俺は自分自身の事をぼっちと呼んでいるのだけれど、それは知らない事にしておこう。
十分後。
午後六時、春の太陽はもう沈み、藍色の夜空に三日月が浮かぶ時間。
土臭い服を着替えて、ジャージになった俺は部屋を出て食堂へと向かっていた。
最上階の端っこだから、どの部屋に行くのにも遠い。ルテミスに案内された道を、うろ覚えながら必死に思い出して歩いていく。
途中にある地図を見たり、何人かの寮生達に付いていくこと、五分。
俺はやっと、昼間一度来た食堂へと辿り着くことができた。
台所には何人もの調理員さんが居て、作ったものをカウンター越しに直接一列に台へ載せている。列になってその台に乗っている沢山の料理を好きなだけ取っていく形式の食堂には、もうジャージや制服姿の寮生で溢れかえっていた。
席もまばらに空いているだけで殆ど埋まっている。お盆を持って、数人の友達と席を探している人もちらほらと見えた。
初めて見る、こんなに多くの同年代。
田舎では俺一人が若かったから、同年代は居なかった。老人は見飽きた。
早速、俺は皆の真似をして列に並ぶ。賑やかな話し声が響く食堂の中を一列に進んでいく途中で、俺は今日のメニューとやらを確認したり、背伸びして列の先を見たりと慌ただしく動いていた。急な畑仕事もやったし、何だかんだで昼食は抜き出しでお腹はぺこぺこ。やっと料理を取れる順番が回ってきて、俺はここぞとばかりに皿へ料理を盛っていく。
肉に魚、野菜にスープ。白米やパンも見境なしに手当たり次第に皿の上に載せていき、俺のお盆の上は小さい山みたいな状態になっていた。
水を注いだコップもお盆に乗せて、最後にデザートのゼリーも籠から取る。
「盛りすぎて……バランスが難しい……!」
重たいお盆をふらふらと体を揺らしながらバランスを取って抱えつつ、周囲を見渡して席を探す。
さて、ここで俺の秘策の発動だ。
(ぼっちと隣になって、友達関係を築くべし……!!)
俺はぼっちだ。
友達がいない。
しかし、俺だけがぼっちと決めつけるのは早い。俺以外にもぼっちは居るんじゃないのか?
その考えに辿り着き、俺が思いついたのは単純にぼっち同士で友達になろうという作戦だ。
シンプルで、画期的。お互いに友達を求めている人同士なら、断る理由も無いのでは無かろうか。というか俺が友達を作れなかったのは『精霊』の所為だ。多分。
さて。
何はともあれ。ここから、俺の友達百人伝説が幕を開けるのだ……ッッ!!