とある火影の転生録   作:ぼんてん

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模擬戦

シスイはシュンたちを探そうとはせず、演習場の丸太に腰かけていた。探すのが面倒くさいというわけではなく、シュンたちの出方を探っているのだ。いくら模擬戦と言えども、これは下忍に成りたての者たちと行うものである。よってシスイにはシュンたちを探す気も写輪眼を使う気もなかった。ただただ純粋にどんな戦い方をしてくるのかを楽しみにしていた。

 

≪ジャリ≫

 

「・・・来たか」

 

砂を踏む音が聞こえてそちらに注意を向けた・・・その瞬間

 

≪バシッ≫

 

シスイの後ろから木製のクナイを構えたシイナが飛び出してきた。しかしシスイは多少驚きながらも同じく木製クナイで対処する。

 

「火遁・豪火球の術!!」

 

鍔迫り合いになった一瞬の隙をついてナツナがシイナに当たらないように豪火球の術を発動させる。

 

(良いタイミングと向きだ)

 

シスイは内心感心しながらもクナイを持っている手に力を入れてシイナを後退させ、すぐさま印を組む。

 

(印を組むスピードが速い!)

 

「火遁・豪火球の術!!」

 

流石はうちは一族の中でも天才といわれるシスイと言うべきか、凄まじい速度で印を組み術を発動させる。

 

(押される・・・!!)

 

しかもその術の威力はナツナの豪火球を押し返すほどである。しかし術を放ち一瞬硬直するタイミングこそシュンたちの狙っていたものである。

 

「瞬身の術!!」

 

「はああああああ!!」

 

左右からシュンとシイナが木製クナイを構えて攻撃を仕掛けてくる。完璧なタイミングである。

 

「!!」

 

すでにナツナは横に飛んで豪火球を避けていたため、シスイの豪火球はナツナの豪火球を飲み込んで空に消えていった。そしてシスイが2人の対処をしようと木製クナイを両手に構えた瞬間・・・

 

≪ボコッ≫

 

地面がめくれ上がった。

 

「何っ!?」

 

「捕まえた!!」

 

地面から出てきたもう1人のシュンがシスイの足をつかむ。バランスを崩されたシスイは迫ってきた2人とギリギリ鍔迫り合いの状態になることに成功した。

 

「危なかったが・・・まだまだ甘・・・!!」

 

そして3人の対処をしつつ口を開いたシスイは背中に感じた木製クナイの感触に驚愕する。

 

「僕たちの勝ち・・・ですね」

 

シスイの背後には、木製クナイをシスイの背中に押し付けているシュンがいた。

 

 

 

 

 

「3人とも文句なしの合格だ」

 

「「「やったー!!」」」

 

模擬戦を終え、演習場の丸太に腰かけている3人にシスイが合格を言い渡す。3人は互いにハイタッチをして喜んでいる。

 

「よくあんな作戦を思いついたな」

 

「僕たち3人で話し合って考えました」

 

「まあ、ほとんどシュンが考えたんですけどね」

 

作戦は至極単純なものである。誰かがシスイの足止めをしてその場にとどめる。そこに影分身のシュンが地面から近づきシスイの動きを封じる。そして3人(+シュンの影分身)の誰かがシスイに攻撃するというもの。

1人1人が無駄なく動き作戦を成功させたことにシスイは大いに感心していた。

 

「お前たちはこの模擬戦の意味が分かったようだな」

 

「はい、3人で協力することですよね?」

 

「その通り。任務は基本的にこの班で行う。その時に一番大切なのがチームワークだ。これが無いとうまく連携が取れずに最悪の場合全滅ってこともあり得る。このことをよく覚えておいてくれ」

 

「「「はい!!」」」

 

「いい返事だ!じゃあこれから合格祝いと親睦を深めるために何処かに食べに行くか。もちろんオレのおごりだ」

 

「本当ですか!?」

 

「やったね、シイナ」

 

「うん!!」

 

シュンたちはシスイに連れられ親睦会を楽しんだのであった。

 

 

 

 

 

「どうやらシュンたちは合格したようじゃの」

 

水晶でナルトとシュンの様子を見ていたヒルゼンは火影の執務室でほっと安心し息を吐いた。

 

(しかし、シュンの技量は下忍の中でも目を見張るものがあるのう。シュンが努力をしていたことは知っていたがまさかこれほどとは・・・)

 

人知れずヒルゼンはシュンの技量に驚愕していた。

 

 

 

 

 

それから数日後。

 

「よし、これで全部かな」

 

「ああ、ありがとうね。私じゃとても運べなくて」

 

「いえ、気にしないでください。何かあったらまた僕たちが手伝いますよ」

 

シュンたちは任務をこなしていた。今日の任務は里に住むおばあちゃんの買い物を手伝うことである。買い物の最中、おばあちゃんと班員の女子たちの会話が盛り上がっていてシュンは(すぐ仲良くなれるなんてすごいな)なんてことを考えていた。

 

「今日も無事任務達成だ、皆お疲れ様」

 

「「「お疲れ様です!!」」」

 

シュンたちのこなしている任務はDランクである。木の葉隠れの里の任務はグレードが分かれていて、Sランク、Aランク、Bランク、Cランク、Dランクの五つのランクに分かれている。シュンたちはまだ下忍になって間もないので一番下のランクの任務をこなしているというわけだ。他の下忍の班の中には、Dランク任務をずっとこなしていることに不満を持つ者たちもいたが、シュンたちの班はそうではなかった。むしろ、里の人たちと触れ合うことができると楽しみにしているまでである。そのせいか、シュンたちの第十一班の里の人たちからの人気は凄まじく、わざわざ指名してくる人もいるくらいだ。シスイはこの事実に(シュンたちの人柄の良さかな)なんて考えていたが、シスイも里のマダムたちから人気でその第十一班の人気を高めていることを知らない。

 

「明日は9時に集合だ。遅れないように」

 

「わかりました」

 

「了解です」

 

「はい」

 

シスイの言葉に3人はそれぞれ返事をしてその日は解散となった。

 

 

 

 

 

今日は久しぶりにナルトと一緒に一楽で夕飯を食べることになった。話を聞いている限りナルトたちも試験があったようだ。3人とも無事合格できたらしい。

 

「でさ~その千年殺しってやつのせいで未だにケツが痛いんだってばよ」

 

「そ、それは痛そうだね・・・。大丈夫だった?」

 

どうやらナルトはカカシ先生という人にとてつもない攻撃を食らったらしい。とても痛そうだ。

 

「まあ、それはいいとして。任務が退屈なものしかないんだってばよ」

 

「しょうがないよ。僕たちはまだ下忍になったばかりなんだから」

 

「でもさ、オレは早く活躍したいんだってばよ!サスケも退屈だって言ってたし」

 

「あはは・・・」

 

まさかナルトだけじゃなくサスケまでそう思っていたなんて知らなかった。ナルトもサスケもお互いにライバル意識を持っているからしょうがないのかな・・・。

 

「こうなったらやけ食いするしかないってばよ!おっちゃんお替り!!」

 

「ナルト・・・これで3杯目だよ」

 

「シュンもちゃんと食べなきゃダメだぞ!!」

 

「僕はもうお腹いっぱいだから・・・」

 

僕はナルトの食欲に驚くばかりだった。




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