そして、お気に入りが100件を越えました!!
目を通してもらえるだけでも嬉しいのに・・・・・本当に有難うございます!!
偉大なる航路のとある春島。
少々小ぶりな島ではあるが、辺りに満ちる活気はどの島にも負けていない。
そんな島に上陸した俺と黒歌、白音は船を停泊させて上陸。
火拳のエースとは最終的に戦えれば俺としても満足で、今すぐ拳を交えないと気がすまない、なんて気が短い訳じゃない。
この島に来る道中で襲ってきた海賊共で白火の試し斬りも出来たし、今はゆっくりと過ごして楽しもう。
広い石畳の街道の至る所に花壇が設置され、色とりどりの花達が俺達を出迎える。
その街道を挟むように背が似たような店が奥まで続いている。食材、服、雑貨、はたまた武具など多種多様で興味を引くものばかり。
「良いところだな、クライガナ島より随分明るくて綺麗だ」
「あそこが特別暗すぎるんですよ・・・・・」
「にゃははは・・・・・。正直、新鮮な空気が恋しかったにゃん」
白音と黒歌はそれぞれ俺の隣で苦笑を浮かべる。
どうやら二人にとって余り好ましい環境じゃないらしい。
正直言って・・・・・俺もあそこの空気には偶に、本当に偶にうんざりしてしまう時がある。
だから気分転換にこういうのも良いのかもしれない。
と言っても、親父がいる場所で軽率な発言をした時には無言で斬撃を飛ばしてくるから十分注意だ。
「ログは一日で溜まるそうだから行きたい所にどんどん行こうか」
二人にそう言うと、黒歌は何かを思い付いたのか純粋とは言えない笑みを見せる。
「ん〜でも〜、人が多くてはぐれそうで怖いにゃーん」
「く、黒歌!?」
何とも態とらしい口調で俺の右腕に左腕を絡ませてきた。その行為で一瞬で心臓が跳ね上がる。
ま、まてまて・・・・・落ち着け俺!
黒歌が完璧とも言えるプロポーションの持ち主で、その柔らかさが尋常じゃないからって相手は妹だぞ!
深呼吸、深呼吸だ。取り敢えず落ち着こう。
・・・・・。
よし!
「あー、私も怖いですー」
落ち着いたそばから棒読みの白音が反対の腕をロック。
失礼極まりないけど・・・・・黒歌と比べたら涙が出そうな程に実りの無い体だが、女子特有の柔らかさはばっちりだ。
くっ・・・・・!
アルビオン、俺はどうすればいいんだ!?
『ふむ・・・・・専門外だが、今はそのままで良いんじゃないか?。何より、二人が幸せならヴァーリも本望だろう?』
ま、まあ・・・・・否定はしない。
アルビオンの言うとおり、今はこのままでもいいか・・・・。
恐らく二人に言っても離れてくれるとは思わないし。
半ば諦めモードの俺は黒歌と白音と共に町を巡る。
二人は子供のように目を輝かせてあちこちへ引っ張るから俺の身が持つかどうか・・・・・。
▽▼▽
一通り町を探索し終わった俺達は、町の一角にある噴水広場へ移動した。
そこにはアイスとクレープの屋台があり、黒歌はクレープを、白音はアイスを買って近くに設置されているテーブル付きのベンチに座る。
因みに俺は別の所でコーヒーを頼んだ。
「ふぅ、あまり良い情報は手に入らなかったな・・・・・」
カップに口をつけてコーヒーを渇いた喉に流す。
ほろ苦さが口の中に広がるが、それがまた好ましい。
「ヴァーリ、クレープ一口あげるから元気出すにゃん。はい、あーん」
黒歌は食べかけのクレープを俺の口元に近づける。すると、白音はむっとした表情でアイスを乗せたスプーンを同じように近づける。
「いえいえ、姉さまのより私のアイスの方が元気出ますよ。あーん」
「何言ってるにゃん白音?ヴァーリはクレープがほしいって言ってるにゃん」
「姉さまこそ、ヴァーリ兄さまはアイスが良いと言ってますよ?」
いや、そもそも俺は何も言ってないぞ・・・・・?
二人が無言で睨み合って火花を散らしているのを見て内心そう呟いた。
普段はべったりくっつく程に仲良しな姉妹だけど、こんな風に小さなことで喧嘩を始めることがある。
喧嘩するほど仲がいいとはこの事か。
でも、公共の場で口論なんかしたらいい迷惑になってしまう。流石にそれはいただけないな・・・・・。
俺は言い合ってる黒歌と白音の手を掴んで、クレープとアイスを同時に口の中に入れる。
「「えっ!?」」
「うん、美味いな」
クレープの生クリームと甘酸っぱいイチゴソース、それにバニラアイスの冷たさが口いっぱいに広がる。
二人もこれなら文句は無いだろう。
「まったく・・・・・喧嘩なんてするんじゃない。折角観光も兼ねてるんだから楽しく行かないと損だぞ?」
「で、でも白音が!」「姉さまが!」
「仲良く、だ」
「「むぅ・・・」」
俺の言葉に黒歌と白音は納得がいかない様子だったが渋々頷く。
「分かればよろしい」
そんな二人の頭を優しく撫でる。
ムスっとしていたが、次第に猫のように目を細めて気持ち良さそうに身を委ねてくる。
まあ、実際に猫なんだが・・・・・。
やばいな、普段も当然可愛いが今この瞬間は特に極まってる。
『ヴァーリは既に兄バカの域に達しているな』
ふっ、今の俺には誉め言葉にしかならないぞ、アルビオン。
この気持ちは実際に体験しないと分からないからな、是非とも伝えてやりたいものだ。
『何故だかわからんが、凄く腹が立つな。・・・・・まあいい。それよりもだヴァーリ、少々厄介な事が起きるかもしれん』
なに・・・・?それは一体━━━━━
『きゃあああぁぁぁぁぁああッ!?』
アルビオンに問い掛けようとする前に甲高い女性の悲鳴が遠くから聞こえてきた。
俺達を含めたこの場にいる全員が声のした方を不思議そうに向く。
面倒事じゃなければいいんだが・・・・・。
二人の撫でる手を止めて目を瞑り、周囲の気配察知に集中する。
親父の殺気全開のスパルタで嫌でもこの気配察知の力が身に付いたんだよな・・・・・。というか、身に付けなきゃ殺されるレベルだった。
黒歌と白音も気配を探れるそうだが、それは俺のと違って悪魔の実の能力の一部だ。
なんでも、“気”を操ることで出来るとか・・・・・。
アルビオンはその力を知っていて、名を『仙術』と呼んでいる。
「結構いるにゃん・・・・・」
「とても平和そうな気ではないですね・・・・」
名残惜しそうな顔をしていたのも一瞬の内で、二人も俺と同様に気配を探っていたようだ。
港付近で20・・・・・いや30人。海賊かは知らないが善人ではないだろうな。
先程の悲鳴で周囲がざわつき始めた時、港方面から大勢の人が我先にと地響きを起こして走ってくる。
「海賊だあぁぁぁ!!海賊が攻めてきたぞぉぉ!!」
「な、なんでこんな島に海賊が!?」
「知らねぇよ!?そんな事よりさっさと避難しないと殺されるぞ!!」
島の住人、観光客は海賊が攻めてきたことを叫びながら必死に中心部、またはその奥へ逃げていく。
この島だけでなく近辺の海にも海軍の支部は無いため、助けにくるとしてもどれ程時間が掛かるか・・・・・。
周囲が逃げ惑う中、俺達は特に焦ることもないので各自頼んだものを完食していく。
その途中で避難を促されたが、お気遣いなく、と丁重に遠慮させてもらった。
それから少しして、この町の男達が武器を手に持って港へ駆けていく。
「皆!この町を!家族を守るぞぉぉ!!」
『おおぉぉぉッ!!』
しかし、その人数は海賊と比べると少なくて十数人しかいない。それに、戦闘慣れした相手に素人が敵うとも思わない。
老若男女が集っていたこの噴水広場も今では俺達だけ。
遠くからは野蛮そうな雄叫びや銃声が聞こえてくる。
不愉快極まりない・・・・・耳障りだ。
とてもじゃないが心を安らげそうにもないな。
俺は椅子から立ち上がり、テーブルに立て掛けていた“白火”を帯刀する。
黒歌は首をかしげて俺に問う。
「助けに行くのかにゃ?」
「まさか。それは海軍の仕事だ。俺はただ、この耳障りな音を止めさせるだけだよ」
「同じようなものじゃないですか。兄さまは父さまに似て素直じゃありませんね」
白音はやれやれと肩を竦める。
白音、親父が素直じゃないのは認めるが俺はいつも素直だぞ?
それに、食後の運動として丁度体を動かしたかったんだ。
『コーヒー一杯とクレープ、アイスを一口食べただけじゃないか。人助けをするのに何を恥ずかしがる必要がある?』
俺の中にいる皇帝様がよく分からないことを言っている。
人助けなんかじゃないさ。
これはただの自己満足というやつだ。
『そうか・・・・。まあ、それが本心かどうかは知らないが、俺も戦うことには賛成だ。最近じゃ俺の力を使うほどの相手に出会わないからな』
アルビオンが物足りなさそうにそう言うのも頷ける。
戦うにしても殆んど俺の基本スペックで対処できてしまうんだ。黒歌と白音の実力も高まってるから尚更な。
だから今度の相手には期待したいところだ。
▽▼▽
━━━━━と、思ってたんだが・・・・・・・・・。
「この程度か」
俺は眼前で気を失って倒れている29人の海賊共と、恐怖で全身が震えている船長に落胆の目を向ける。
俺達が港に到着した頃には海賊に挑んでいった男達が全員やられていた。
黒歌と白音が慌てて仙術と回復魔術で応急処置をしているから命に別状は無い筈だ。
その間に、何故か身体中がボロボロで包帯を巻いた海賊共と戦ったんだが・・・・・・・結果は見ての通り。
俺は持参してきた指名手配書をパラパラめくって本人と照らし合わせる。
船長は黒い髪を2本に束ねM字型の触覚のようにする特徴的な髪型、顔を見てもどうやら本物のようだ。
「アクメイト海賊団船長“デビル・ディアス”。懸賞金は4000万ベリー・・・・・か」
海軍の基準は随分と低めに定められているんだな。
いくら傷だらけでも本当に4000万ベリー掛けられていたのか疑いたくなる。
それに案の定、神器は使わず白火さえ引き抜かなかった。
デビル・ディアスは膝が笑い、手に持つサーベルをカタカタと震わせながら後退りする。
「ち、ちくしょう・・・・!何なんだこのバケモノは!?」
「俺程度を化け物と呼ぶなら親父は一体何だというんだ・・・・・。いや、考えるのは止めよう」
脳裏に世界最強の黒刀を持つ最強の剣士が浮かんだが一瞬で消し去る。
俺は掌サイズの魔力弾をデビル・ディアスに向けた。
「それでどうする?大人しくこの島から消えれば見逃してやるが、まだやる気なら海軍に突き出して海賊人生を終わらせてやるぞ」
「こ、ここから居なくなるから見逃してくれ!!おれァ監獄なんかに入りくねぇんだ!!」
ディアスはサーベルを投げ捨てて敵意が無いことを慌てて証明する。
この男には海賊としてのプライドは無いのか。
それに、仲間には目もくれず己の命だけを考えているとは、つくづく格の低い。
「ならさっさと仲間を連れて去れ」
俺は吐き捨てるようにそう言うと、ディアスは気絶している仲間達を次々に船へ乗せていった。
まったく、もっとましな海賊はいないのか?
せめて火拳のエースはこんな無様な男ではないと願いたい。
ディアスが最後の一人を担ぎ上げて船に向かう。
「・・・・・・・くそっ、火拳の次はバケモンかよ・・・・・!」
ぼそっと、それこそ自身にしか聞こえないくらいに小さく彼が呟いたのを俺は逃さなかった。
背を向けて走るディアスに待ったをかける。
「まて、いま火拳と言わなかったか?」
ビクッと体を震わせて錆び付いたかのように首を此方に向ける。
「うぐっ、た、確かに言ったぜ。そ、それがどうした?」
「俺達は火拳のエースを探しているんだ。何か情報を持っているなら大人しく吐け。・・・・・尤も、傷を増やしたかったら話は別だが」
「・・・・・!」
再び魔力弾をディアスに向けると首が取れそうなくらい上下に振った。
▽▼▽
プライドの欠片もない船長、デビル・ディアスが言うには数日前に火拳のエースに挑んで返り討ちにあったんだそうだ。
七武海に勧誘された海賊を倒せば俺の名声が世に広まる、そう思って挑んだらしい。
ディアスの言っていることが本当なら、此所からそう遠くない島に火拳のエースは滞在している。
俺の船なら一時間弱。
明日、ログが溜まり次第すぐにここを発つとしよう。
それと、この島を襲った理由としては単なる八つ当たりで、偶々居合わせた俺に再度返り討ちにされてしまったと・・・・・。
完全に自業自得じゃないか。
「も、もういいだろ?教えられるような事は全部話したぜ」
「ああ、呆れるほどの内容だったが十分だ」
俺の言葉を聞くとディアスは急いで船に乗り込み、仲間を叩き起こして出航させた。
実に下らない戦闘だったが、それを上回るくらいに良い情報が手に入り喜びを感じる。
「あれ?もう終わっちゃったのかにゃ?」
黒歌と白音が 額に汗を浮かばせて此方にやってくる。
どうやら手当ては一通り終えたようだ。
「ああ、たった今終わったよ。二人は大変だったろう、お疲れ様」
「「にゃぁ・・・」」
頭を撫でてあげると二人の猫耳がピコピコと動き、尻尾は左右にスイングする。
ああ・・・・・癒しだ。
いつまでも撫でていられる。
「よしよし。あ、そう言えば火拳のエースの居場所が特定できたよ・・・・・・・って、聞いてないな」
「うにゃ〜ん♪」
「にゃん♪」
黒歌と白音は甘えのスイッチが入って俺の胸に頬擦りしてくる。
獣人型だと不思議なことにいつも以上に甘えやすくなるんだ。
当然、戦闘とのメリハリはつくんだが、これは悪魔の実の影響なのだろうか・・・・・。
スイッチが入ると殆んどが猫語で、黒歌はいつもだが白音も『にゃん』と言う。
白音が『にゃん』だぞ?
普段とのギャップで思わず抱き締めてしまったのは仕方ないと思う。
勿論、黒歌も一緒だ。
こうなったらとことん撫でまくってやろう。
━━━━━結局、避難していた町人が様子を見に来るまで俺は可愛さ溢れる妹達を愛で続けてしまった。
デビル・ディアスは懸賞金6000万ベリーでしたが、2年前だと4000万ベリーくらいですかね?
それと、今回もまったくといって良いほど戦闘シーンが無くてすみません・・・・・。
次回からは漸く戦闘に入っていけそうです。