白龍皇と姉妹猫の大海賊時代   作:しろろ

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原作に介入するまでどれだけ掛かるのか不安になっている、しろろです!

今更ですが、この世界のヴァーリくんは正真正銘の人間で悪魔の血は一切流れておりません。


3話 ヴァーリも年頃の男子

何もない広くて白い空間。

 

村や町が無ければ、大地や海も無い。

 

ただそこには、蒼白い翼を広げ、この空間に劣らない白さの全身鎧を身に纏うヴァーリと一人の男。

 

デザインに多少の違いはあるものの、互いに鏡合わせのようにジッと佇む。

 

構えずとも二人からは莫大なオーラが放たれ、飲み込もうとするようにこの空間を覆っていく。

 

オーラとオーラがぶつかり合ってバチバチとスパークが発生。

 

 

そして、同時に動き出す。

 

 

ドゴォォォンッ!!

 

 

消えるような速度で接近し、拳と拳が衝突する光景はまるで白い閃光が走ったかのようにも思える。

 

もしも地面があったならクレーターが出来ているのは間違いない。空気は震え、木々も騒ぎ始めるだろう。

 

「ぐっ・・・・・!」

 

拮抗していたがヴァーリが僅かに押されてきた。

 

対する男は、まだまだ余裕を持て余している様子を見せる。

 

「あらよっとぉッ!」

 

豪快な声と共に腕を振り抜いてヴァーリを吹き飛ばし、すかさず右手を正面に向け照準を合わせる。

 

掌からは青黒い魔力の奔流が流れ、それが一点に集まって球状に変形。

さらに、バランスボール程の大きさがバレーボールの大きさまで凝縮され━━━━━

 

 

「こいつぁ、防がねぇと軽く死ねるぜ?」

 

 

不敵な笑みを浮かべ、男は破滅的な魔力の塊を殴りつけた。

 

凝縮された魔力は一気に解放されて、一筋の極太の光線と化し、音速でヴァーリに襲いかかる。

 

 

「なめるなっ!!」

 

 

ヴァーリは翼を使って空中で体勢を立て直し、魔力の光線に向けて右手をかざす。

 

 

『Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide!!!!』

 

 

アルビオンの音声と共に襲いかかってくる魔力の光線はどんどん小さく、細くなっていき、終いには消滅した。

更に、それに比例してヴァーリの魔力は跳ね上がる。

 

━━━━これこそが白龍皇の力。

 

触れた相手の力を半減させ、己の糧とする。

過剰に取り込んだ力はヴァーリの背にある光翼から放出され、常にベストな状態を保つことが可能だ。

 

「おお、やるじゃねぇか!手加減はしたが、まさか消滅させられるとは思わなかったぜ!」

 

「こんなのはまだ序の口だ。俺は何れ、あなたをも越える」

 

「へっ、俺を越える・・・・・か。ガキが大口叩くようになりやがって」

 

男は嬉しそうにそう呟く。

 

ヴァーリは宙に漂いながら両手を男に向けると、白い魔方陣が展開される。

 

先ほど吸収した魔力とヴァーリの魔力が掛け合わせられ、距離を取っている男にまで力の奔流が届く。

 

「はあっ!!」

 

ヴァーリの魔方陣から複数の魔力弾が撃ち込まれ、男に襲いかかる。

 

そのどれもが殺人級の威力を秘めていた。例え、億超えの賞金首だろうとまともに受ければ重症、あるいは死に至るだろう。

 

白龍皇の力はそれほどまでに凄まじい。

 

しかし、それは相手も同じ(・・・・・・)力を持っていたら話は別。

 

 

「中々いい攻撃じゃねぇか。けどなぁ・・・・・」

 

 

男はヴァーリが半減したときのように右手をかざす。

 

 

 

「歴代最強の座はまだ譲らねぇよ」

 

 

『Divide Divide Divide Divide Divide!!!!』

 

 

男━━━━歴代最強の白龍皇、“グリット”は半減の能力でヴァーリの全力の魔力弾を全て消滅させる。

 

「な、なんだと━━━━ガハッ!?」

 

そしてほぼ一瞬・・・・・目視出来ない速度で懐まで潜り込み、グリットの拳がヴァーリの強固な鎧を容易く砕く。

 

たったの一撃。

 

だが、絶対の一撃がヴァーリの意識を無理やり刈り取った。

 

 

「まあ、俺じゃなきゃ十分すぎる威力だったぜ。・・・・・・・あと数年もすりゃ、越されちまうかもなぁ」

 

 

グリットの言葉を最後に、この空間は閉じられた。

 

 

 

 

▽▼▽

 

 

 

 

「く、そ・・・・・っ!まだ・・・・・遠いのかっ!」

 

まるで赤子の手を捻るかのように軽くあしらわれた。その事が無性に悔しくて自室の壁を力任せに殴り付ける。

 

『ヴァーリ、そう気負うな。俺が宿ってきた中でグリットは間違いなく最強、あれだけ戦えただけでも十分だ』

 

アルビオンはフォローしてくれるが、彼との戦いは無様な姿を晒すばかりで気持ちが沈む。

 

戦うことは好きだが、滅多打ちにされて楽しめるほど変わった性癖はしていないつもりだ。

 

 

先ほどグリットと戦闘をした場所は神器の中。

 

戦闘経験を積むためによく神器に潜ったりするが、彼と戦うのはこれで七度目だ。何の気まぐれか、前兆もなく突然現れては勝負を仕掛けてくる不思議な存在。

 

初めて戦ったのは、確か・・・・・俺が禁手(バランス・ブレイカー)に至った時だから10歳くらいの頃だな。当時の俺は言葉通りの瞬殺で、何をされたのかも分からないくらいに圧倒的だった・・・・・。

 

禁手は、簡単に言えば神器の進化、奥の手。

俺やグリットの場合だと『白龍皇の光翼』がさっきのように純白の鎧姿『白龍皇の鎧』になる。

 

 

元の能力は“触れた相手の力を10秒毎に半減させ、自分の糧とする”ことだが、禁手だと際限なく半減させることができるんだ。

 

 

 

彼との戦いは神器の能力は互角でも、肉体面と技術面の両方で差が出てしまう。

 

だが、今回は少しだけ手応えがあった。ほとんど手を抜かれたが、5回の半減を使わせることができたのは自分でも嬉しく思う。

 

『しかし、歴代の奴等はまったく反応がないのに、何故グリットだけが意識を保っていられる?まあ、あの人外ならば何でも有りな気がするが』

 

ひ、酷い言い方だな・・・・・。

 

確かに、あの人は人間とは思えないくらい人間離れしているけど、生物学上では人間だったんだろう?

 

『信じがたいことにな。それにしても、何故“あれ”にならなかったんだ。そうすればグリットも少しは本気を出していたと思うぞ?』

 

“あれ”はまだ未完成じゃないか。

 

そんな力で勝てても俺は嬉しくない。だから、自分のものにしてからと決めたんだよ。

 

『そうか。ふっ、グリットの驚く顔を見る日が楽しみだ・・・・!』

 

ああ、次会ったときは目にものを見せてやるさ!

 

 

気持ちを入れ換えた俺は、汗でぐっしょりになったインナーを脱ぎ、新しいのに着替える。

 

ついでに昨日着た衣類も洗濯してしまうか。

 

よし、そうと決まれば早速行動あるのみ。

 

そして俺はせっせと洗濯を済ませ、次は城内の清掃に取りかかる。

 

因みに言っておくが、この城にはメイドや執事なんて都合のいい人は一人もいない。俺はいつもいつも雇えと願うが親父はそういうのをあまり好かないんだ。

 

それなのに、家事全般をするのは俺だけなのは可笑しいと思わないか?

 

親父が家事らしい家事をしたと言えば、以前に恐竜を丸々一頭持ってきたことくらいだな。

 

いや、これは家事に入るのか・・・・・?

 

それに、いま思えばどこで捕まえてどうやって運んできたのかも疑問だ。

 

まあ、親父に疑問は付き物だからそこは気にしない方がいいのかもしれない。

 

っと、そんなこんなで城の半分くらいが終わったな。

 

『相変わらず掃除速度がおかしくないか?まだ数分も経っていないぞ』

 

何を今さら言っているんだ、アルビオン。

慣れればこのくらい出来るさ。

 

『普通は出来ないから言っているんだ・・・・・』

 

何故かアルビオンに呆れられてしまう。変な所でもあっただろうか?

 

気になるが、今は掃除が先決。

それに、もう少しで昼の時間だから黒歌と白音のことも呼びに行こう。

 

 

その後も順調に掃除を進め、落ちない汚れがあった場合は汚れの落ちにくさを『半減』させて綺麗にしたりと、スムーズに終えることができた。

 

疲れるけれど、掃除は達成感があるから続けられる。初めの頃は、この城を隅から隅まで掃除するのにどれだけ時間が掛かったことか・・・・・。

 

俺は我ながら大した成長だと自負しながら厨房へ向かう。長く長く続く廊下をひたすら歩いていると・・・・・。

 

 

『にゃぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

『きゃぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

 

奥の部屋から二人の悲鳴が響いてくる。

 

っ!?

 

黒歌と白音の声・・・・・!!

 

俺は神器を展開して悲鳴のした部屋へと一気に飛ぶ。その部屋は今はあまり使われていない宝物庫、という名の物置小屋だった。

 

まさかヒヒ達が?

 

いや、あれだけ教え込んだのにそれは考えられないか・・・・・。

 

何にしても、急いだ方がよさそうだ!

 

 

バンッ!!

 

 

宝物庫の扉を突き破る勢いで開けて中に入る。

 

 

「黒歌、白音!一体なに・・・・・・が・・・?」

 

 

視界に映り込んだ情報が予想外すぎて、思わず体と思考が停止する。

 

 

結果的に言ってしまえば二人は無事で、外傷もなく侵入者もいない。それだけを見ればここまで動揺することもないのだが、如何せん突然でね。

 

 

あぁ、何度見ても見間違いじゃないのか・・・・・。

 

 

 

「・・・・・何で、二人に耳と尻尾が?」

 

 

何とか頭を働かせて口に出してみる。

そう、二人の頭にはピコピコと動く動物の耳と腰辺りから生えている尻尾があった・・・・・。

 

 

「わ、私の方が聞きたいにゃん!」

 

 

「ヴァーリさん、私・・・・・獣に・・・・・」

 

 

黒歌は自身でも混乱しており、白音は生気が抜けきったかのように尻尾を見つめる。

 

二人とも耳と尻尾の色が違うな。

黒歌は黒色、白音は白色でイメージカラーというか髪の色と同じ毛色だ。

加えて黒歌は尻尾が二つもある。

 

それにしても、何でこんな事に・・・・・考えられるのは動物(ゾオン)系悪魔の実を食べるしか・・・・・。

 

・・・・・ん?悪魔の実?

そう言えば、以前に親父が海から帰ってきたときに『拾ってきた』と言って俺に譲ってくれたけど、食べる気になれずここに保管してたはず。

 

ま、まさか・・・・・!

 

「なあ、もしかして変な模様が入ったサクランボを食べたりしなかったか?」

 

「えっ?そうだけど、何でヴァーリが知ってるの?」

 

「黒歌姉さまと実を一つずつ分けて食べました」

 

うむ、どうやら確定らしい。

 

俺は思わず溜め息をついて額に手を当てる。

 

「あれはな、悪魔の実なんだよ。どんな能力か分からなかったが二人を見る限り動物系なのは確かだ。モデルはネコ科の何かだろう」

 

「「えっ・・・?」」

 

「これからは間違っても海には入っちゃダメだぞ?それから海楼石にも注意だ」

 

俺の説明を聞いていく内に二人からは血の気が引いていくように蒼白になる。

 

だけど不思議だな、一つの実から二人の能力者が出来るとは。サクランボ型だからか、姉妹だからか興味があるが今は二人を落ち着かせないといけない。

 

「ま、まあ、黒歌も白音も似合ってるからいいんじゃないか?」

 

まずい。俺、異性の落ち着かせ方なんか知らないんだった。こんな言葉を聞いたら逆に気分を悪くさせ━━━━

 

 

「そ、そう?・・・・・ならこのままでもいいにゃん!」

 

「ヴァーリさんがそう言うなら、私もこのままでいいです」

 

二人はゆっくりと尻尾を左右に振りながら頬を赤らめてそう言った。

どうやら大丈夫らしい。

 

うん、二人ともお世辞抜きで似合うな。元が美女と美少女だからこうなるのも頷ける。

 

俺はこれでも年頃の男なんだ、多少はドキッとしてしまうのは不可抗力だよ。それに何だろう、無性に守ってあげたくなるような・・・・・保護欲がくすぐられる。

 

『ほう、ヴァーリがなぁ・・・・・』

 

うるさいぞ、アルビオン。

 

 

何はともあれ、何時までも此処にいても仕方ない。今後の事を考えるのは後にして今は昼食だ。

 

「二人とも、一旦ここから出て昼食にしよう。何かリクエストはあるか?」

 

「はーい!カルボナーラがいいにゃん!」

 

「私はペペロンチーノが食べたいです・・・!」

 

右手を挙げると同時に二人の尻尾もピーンと垂直に立ち上がる。

 

すごいな、尻尾が感情豊かになってる。

 

二人がパスタ希望なら俺もミートソースにしようかな。さて、期待の眼差しが強いから張り切って作るとしよう。

 

「良ければ手伝ってくれてもいいんだけどな?」

 

「「・・・・・」」

 

「おい、何故目を合わせない」

 

不自然なまでに視線を外す黒歌と白音。

 

「だって料理出来ないにゃん」

 

「右に同じく」

 

「だからこそやらなきゃ駄目じゃないか。大丈夫、俺だって初めは碌に料理なんて出来なかったさ。何事も挑戦あるのみだぞ」

 

二人は渋々頷いて手伝いを了承してくれる。

 

 

その後、悪戦苦闘しながらも無事に三種類のパスタ料理は完成し、美味しく頂くことが出来た。

 

 




白龍皇の歴代最強はまだヴァーリでなく、オリキャラにしました。この世界のヴァーリは原作よりも魔力量は少ないけれど弱くはありません。

更に、黒歌と小猫は悪魔の実を食べるということにしました。無理矢理感が否めませんが、そこはご了承下さい。

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