白龍皇と姉妹猫の大海賊時代   作:しろろ

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11話 悪者デビュー

 

 

 

 煌々と輝く太陽は沈み、今は月と星が主役となっている。

 

 そんな静寂が支配しそうな時間帯だが、俺━━━ヴァーリと火拳のエースの周囲にいる者たちでお祭り騒ぎとなっていた。

 

 

「「んぐ・・・んぐ・・・ぷはぁ!次持ってこい!!」」

 

 

『うおぉぉッ!!お互い負けてねぇ!!』

 

 

 俺とエースは同時に空になったジョッキをスペード海賊団員に渡し、それを受け取った船員達は忽ち歓声を上げて、笑い声が夜空に響き渡る。

 

 

 只今、絶賛宴会中だ。

 

 

 俺の魔力がある程度回復して動けるようになった事で、エースが「宴だぁぁ!!」と突然騒ぎだし気がつけばこの状況だ。

 

 何でも、戦いと出会いには宴が付き物だとか・・・。正直嘘のような気もする。

 

 だが、黒歌と白音も楽しそうに笑っているから良しとしよう。

 九重と言う少女とも友達になれたようで、俺としては嬉しい限りだ。

 二人は仲良し姉妹だが、やはり同姓の友人は欲しかったのだろう。

 

 仲良く3人で話す姿を見て、俺は口許を綻ばせた。

 

 不意に、追加された酒を一気に飲み干したエースが、俺に話しかけてくる。

 

「そういや・・・・お前さんについて気になってた事があるんだ。聞いてもいいか?」

 

「ああ、いいとも」

 

 酔いが回っているのか、エースは呂律がやや怪しい。顔も微かに赤らめていた。

 

 ・・・・・かなりの量を飲んでいたのに潰れないとは、どうやら親父に匹敵する酒豪のようだ。

 

 反対に俺はさして強くは無いが、魔力と言う裏技で何とかやり過ごしている。

 素の状態で飲んでいたら、真っ先にダウンしていたのは俺に違いない・・・・。

 

「あの翼・・・・ありゃ一体何なんだ?動物系の能力にしか思えないが・・・それにしては異質過ぎる」

 

 ふむ、いきなり神器についてか。

 悪魔の実とは異なり、それを凌駕する力。気になって当然だ。

 特に隠す必要もない・・・・・よな、アルビオン?

 

『そうだな、ヴァーリには禁手もある。教えたところでどうにかなる訳でも無いからな。構わないだろう』

 

 相棒からの確認をとって、俺は神器の事を説明する。ただし、『悪魔の実では無い』事と『半減能力』についてだけ。

 

 アルビオンや神滅具について説明しても混乱させてしまうだけだしな。

 しかし、それでもエースは目を見開いて驚いていた。

 

「はぁ!?“相手の力を半減させて自分の力にする”!?そんなの滅茶苦茶じゃねぇかよ!━━━あ、ならあれか!突然の脱力感はお前の能力のせいだったのか!」

 

「まあそう言う事だな。直接触れなきゃ発動しないのがネックだが・・・・」

 

「それでも空が飛べるだろ?現にあの機動力に手こずったもんだぜ!」

 

 エースから羨望の眼差しで見られるが、白龍皇の光翼は欠点無しの万能器ではない。

 

 さっきも言ったように、この身で相手に触れなければならないんだ。まあ、歴代最強━━━グリットはお構い無しに半減させてくるんだが・・・。

 

 俺があの領域に達するにはまだまだ道のりは険しい。

 

 加えて、半減する度に体力が消費される。

 今は鍛えてあるから問題ないが、もしそうでなければ使用した瞬間に血反吐を吐くのは間違いない。

 

 

 ああ・・・・・神器に目覚めたての頃が懐かしいな。

 

 

「それはそうとヴァーリ。お前、俺の仲間にならないか?」

 

「いや、話が突然すぎるだろ」

 

 ごく自然に何気なく仲間に誘ってくるエース。

 そのせいで酒を吐き出すところだったじゃないか・・・!

 ムードもタイミングもまるであったものじゃないぞ!

 

「勿論、お前の妹たちも連れてだ。どうだ?」

 

 酔った勢いもあるだろうが、彼は真摯に提案してきた。

 まあ、誘われるんじゃないか?と、心の隅で思ってたりしなくもないが・・・・。

 

「悪いが、俺は海賊になるつもりは無い。君との冒険の日々も暇が無くて面白そうだと思う・・・・・けど、黒歌と白音を危険な目に会わせる訳にはいかないんでね」

 

 俺は無邪気に笑う妹たちを一瞥してからそう言った。

 

「・・・まあ、そうだよな。俺も九重が傷つく姿なんか見たくないし、早く故郷に帰してやりたいと思う。はぁ・・・兄貴は心配性になっちまうぜ」

 

 同じ兄として、やはり思うところがあるのだろう。

 それにしても、()()

 そう言えば、戦う前に「訳あって同伴させている」と言っていたな・・・・・。何か事情があるのか?

 

 エースは俺の表情で察したのか、更に言葉を続ける。

 

「九重はな・・・・・実はお姫様なんだ」

 

「可愛い妹を姫のように思うのは当然だと思うぞ?」

 

「そうじゃない!あ、いや、それもそうなんだけど・・・・・・・・正真正銘、一国の姫なんだよ!!」

 

 何やらエースが身ぶり手振りで説明してきた。

 その内容は、思わず眉を潜めてしまうものだった。

 

「━━━つまり、“キョウノ国”という国のトップの娘が九重で・・・・・・・・親と喧嘩して家出をしてきた・・・・と?」

 

「ああ、そうだ!」

 

「その九重を故郷に送り届けてあげている最中だと?」

 

「そうだ!」

 

 エースが何に対して胸を張っているのか知らんが、何とも可愛らしくもはた迷惑な事件だ。

 

 親と喧嘩して家出?

 

 内心で深く深くため息を着いた俺を許せ、エース。

 君がそこまで必死になるから、命を狙われているとか、国が戦争中で逃げてきたとか・・・・・壮絶な想像をしてしまったじゃないか!

 

「何と言うか・・・・・頑張ってくれ」

 

「ああ!これは兄貴としての使命だ!例え海軍大将が来ても返り討ちにして送り届けるって約束したんだ!」

 

 その決意は素直に尊敬できる。

 まあ、俺なら天竜人相手でも容赦なく蹴散らすくらいの覚悟はあるけどな。

 

 そもそも天竜人は好かん。

 存在しているだけで天龍の名を汚されている様な気がして、腸が煮えくり返りそうだ。

 

『それには非常に同感だ・・・!あの腐りきった人間が天竜を名乗るとは・・・・我々を侮辱している!!』

 

 と、アルビオンも大変ご立腹なんだ。

 もし実体を持てたら直々になぶり殺しにしてやりたい、と牙を剥き出しにして激怒している。

 

 俺はアルビオンを宥めた後、骨付き肉にかぶり付いているエースに一つの提案をした。

 

「君たちの仲間にはなれないが、俺たちの根城付近の島までなら同行しよう。彼女たちも折角出来た友達と直ぐに離れ離れになるのは流石に気が引ける」

 

「本当か!?よっしゃぁああッ!てめぇら!新しい仲間に乾杯だぁぁ!!」

 

「お、おい・・・・俺は仲間になるとは言って━━━━」

 

『うぉぉおおおッ!!』

 

 何て都合のいい解釈の仕方だ!

 俺は“同行する”と言ったんだぞ!?

 

 しかし、盛り上がる海賊たちは収まることを知らず、更にテンションが上がっていった。

 

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 

 

 宴が終わり、スペード海賊団と共に海に出てから一ヶ月は経っただろうか?

 

 俺は船を魔力で独立飛行させながら、黒歌と白音と一緒にエースの船に乗っている。

 現在向かっているのは、シャボンディ諸島。

 

 海賊がそこへ向かうということは新世界に行く為と考えていいだろう。

 

 後から知ったことだが、九重は新世界の出なんだそうだ。つまり新世界の島から家出してきた。

 考えれば考えるほど疑問尽くしになるぞ。

 

 あんな子供が一人で前半の海に来れるだろうか?

 答えは否だろう。

 

 いくら妖怪だろうと、子供は子供。俺には到底理解できないものだ。

 

 ━━━と、気になる事が山程だが、まあ今はそんな事よりも・・・・・。

 

 俺はニュース・クーから購入した新聞━━━に、挟まれていた一枚の紙に目が釘付けになっていた。

 

 

『WANTED』『DEAD OR ALIVE』

 

 

 この文字が書かれている。

 

 

 指名手配書だな。見て分かる。

 なら、この顔写真は・・・・・?

 

 

 俺の視線の先には、立派な翼を広げ、刀を構えている一人の男の顔写真。

 

 

 これ・・・・・俺だ。

 

 

「な、なななな・・・・・」

 

 

 一思いに叫んでやろう。

 柄じゃないのはわかっているさ。けど、これは発狂ものだぞ。

 

 

「何でだぁぁああああッ!?」

 

 

 俺は海に向かってそう叫んだ。

 

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 

 

「数多の海軍将校を降す『白龍皇ヴァーリ』!懸賞金は1億6千万ベリー!そして、『火拳のエース』の右腕として悪名を轟かす!はははっ!最高じゃねぇか!」

 

「エース・・・・・その体、肉片に変えてやろうか・・・?」

 

 甲板の上でエースが新聞に記されている内容を熱く語る。

 

 その姿に心底苛ついて全力の殺気を放ってしまったのは仕方あるまい。

 

「ヴァーリ、これ自業自得だからね?今回ばかりは私と白音も庇えないにゃん」

 

「そ、そんな・・・・黒歌」

 

「姉さまの言うとおりです、兄さま。海軍が襲ってくるのは仕方ありませんけど、態々全滅させる必要なんてありませんからね?」

 

「し、白音まで・・・・」

 

 妹たちに嘆息されてしまう。

 

 確かに、俺や黒歌と白音が海賊と間違われて襲われたから反撃したさ。身を守るために、二人を守る為にな。

 

 その中で強者もいたから思わず楽しんでしまったんだ。それが結果的に全滅させたということになる。

 

 そして何より、おれがエースの右腕だと?

 

 とんだ勘違いをされたもんだな・・・・・。

 

「まあまあ、いいじゃねぇか。どのみち俺らの仲間なんだから」

 

「そうじゃ!黒歌と白音も一緒にいよう!」

 

 エースとエースの膝の上に座る九重が笑顔でそう言う。

 

「はぁ、何度も言っているだろ。君たちの仲間にはなれないんだ━━━と言うか、何故俺が君よりも懸賞金が低いんだ?」

 

 率直な疑問だ。

 加えて納得がいかない。

 

「そりゃお前・・・・・俺の右腕だからだろ?」

 

「だから何度言えば・・・・・はぁ、反論するのも面倒になるな」

 

「お?と言う事は仲間に「ならん」・・・・・んだよ、期待させやがって」

 

 このように、この一ヶ月間懲りずに勧誘してくるんだ。正直、その粘り強さに根をあげてしまう。

 

 もういっそのこと海賊になってしまうか?

 

 いやいや、黒歌と白音だけじゃなく親父にまで迷惑をかけるだろ、それは。

 あ、でも既に指名手配されてるしな・・・・・。

 

「見るのじゃ皆!島が見えてきたぞ!」

 

 九重の元気ある声に思考が現実に戻される。

 少し先に見えるのは、巨大な樹木の集合体の島。

 

 シャボンディ諸島だ。

 

「やっと着いたか・・・・・俺たちが同伴出来るのもここまで。物のついでだ、俺たちも観光していくか?」

 

「行きたーい!」

 

「行きます!」

 

 こうして、俺たちもシャボンディ諸島に上陸することにした。

 

 この島は近くに海軍本部もある。

 俺やエースがこの島に来ることは海軍に予想されている可能性が高い。

 だから、常に気は緩められないな。いざというときは禁手を使ってでも二人を逃がす。

 

 

 頼むから・・・・・何も起こらないでくれよ?

 

 

そんな事を思いながら、俺たちはシャボンディ諸島に向かっていった。

 

 

 

 






この頃のエースの懸賞金はいくらなのでしょうか?

最高が5億5千万だから、3億くらいですかね。
そして、海軍はヴァーリを副船長と思っているので1億6千万にしましたが、いくらなんでも低すぎたでしょうか・・・・・。

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