白龍皇と姉妹猫の大海賊時代   作:しろろ

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10話 白龍皇VS火拳のエース 決着

 

 

 

 

 何だ・・・・・あれは?

 

 

 ただただ頭の中にその言葉がぐるぐると回り続ける。

 

 俺の目の前にいる男は、爽やかな笑みを浮かべて刀を手にして立っている。それだけで絵になりそうなくらいだ。

 

 風に靡かれる銀髪はサラサラで、キラキラと輝く宝石のよう。

 

 そして、それ以上に神々しくて蒼白い光を放つ機械的な翼。

 

 考えられるのは、やっぱり悪魔の実だよな・・・・・。

 見た感じ自然系(ロギア)でも超人系(パラミシア)でもない。翼だから鳥?動物系(ゾオン)か?わからん・・・・。

 

 ジュラキュール・ヴァーリ・・・・火の俺に攻撃を当ててくる奴。

 

 これだけ強いのに名前を聞いたことがねぇ。

 いや、ジュラキュールってのに聞き覚えがあるんだけどなぁ、思い出せねぇ。

 

 うーん・・・・まあ今は戦いに集中だ!

 こいつ相手に考えながら戦ってたら一気に斬られて即終了になってしまう。

 

 それに、九重が見てるのに負けてる姿なんて晒すわけにはいかねえ!

 

 俺は両手に炎を灯し、未知の力を持つヴァーリに向かって構える。

 

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 

 

白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』を見て多少は動揺するものかと思ったが、案外そうでもないらしい。

 

 恐らく動物系とでも推測しているのだろう。この光翼を見たものは皆そう考える。

 

 まあ、まずそうとしか考えられないからな。

 

 逆に誰が予想できようか、俺には龍の魂が封じられている神器を有しているなんて、常識外れな事を。

 

 ━━━━っと、あちらは既にやる気満々だ。

 

 両手を炎と化してファイティングポーズをとるエース。

 考えるよりも実際に戦って得ようという魂胆か?

 

 面白い・・・ならば俺とアルビオンの力を見せてやろう。━━━だが、そのためにはまず彼の体に直接触れる必要があるな。

 

 俺の神器はそのままだと飛行能力だけで、兎に角相手に触れなければ始まらない。

 いや、飛べるだけ贅沢と思うべきか?

 

 俺はフワッと音を立てずに上昇する。

 

「やっぱり空飛べるのか」

 

「勿論飛ぶための翼だ。飾りな訳がないだろう?」

 

「そりゃごもっともで」

 

 俺達は軽口を叩き合っているが、互いの瞳に映る獲物への視線は鋭く、射殺すようだ。

 

 目には見えない殺気が肌をピリピリと刺激する。結界のお陰か、辺りは静寂に。

 

 いつ味わっても、この瞬間は好きだ。

 これだから強者との戦いは止められないし、続けてしまう。

 

 戦闘狂?

 

 いい言葉じゃないか。俺は好きだ。

 

 さて。お喋りはここまでにして、戦いに身を投じるとしよう。

 

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 

 

「うおおぉぉおおおぉぉぉッ!!」

 

「はああぁぁぁあああぁぁッ!!」

 

 

 ドゴォォォォオオオオッ!!

 

 

 俺の蒼白い斬撃と、エースの業火の拳が衝突する。

 

 

『Divide!!!』

 

 

「うぐっ・・・!また・・・・これか!?」

 

 俺の神器━━━『白龍皇の光翼』の能力、半減が発動してエースの火力が目に見えるように落ちていく。

 

 彼に触れてから、3度目の半減だ。

 

 一度触れれば、後は十秒毎にエースの力は半減され、俺の糧となる。

 つまり、時間が経てば経つほど俺が有利になっていくということだ。

 

「どうしたエース!どんどん威力が落ちているぞ!!」

 

 俺は吸収した分の力を魔力に変換して、斬撃に注ぐ。

 一際巨大な斬撃に成長すると、“火拳”をいとも容易く飲み込んでそのまま結界を突き破っていった。

 

 間一髪で避けたエースはその光景を見て愕然とする。

 

「な、なんて斬撃だよ・・・・・!?俺の力が急に抜けたり、お前の力が急激に上昇したり、意味がわからねぇ・・・・・!」

 

「戦いの最中に余所見とは、随分余裕じゃないか」

 

 俺は立ち尽くしているエースに高速で接近し、白火の柄を勢いそのままで鳩尾に吸い込ませた。

 

 

 ドゴッ!!

 

 

「がはっ!?」

 

「君も空を飛ぶといいッ!!」

 

 くの字に体が折れ曲がるエースの腕を掴み、上空に向かって強引に投げ飛ばす!

 

 魔力で強化した身体能力に加えて、エースから奪った力のお陰でかなり遠くまで飛んでいった。

 

 早く体勢を立て直さないと、全て喰らうことになるぞ?

 

 俺は視界を埋め尽くす程に夥しい数の斬撃を、エース目掛けて放った。

 

「な、め・・・るなぁッ!!“鏡火炎(きょうかえん)”ッ!!!」

 

 エースは広範囲に、炎の壁にも思える火炎を出して俺の斬撃を防ごうとするが・・・・・。

 

 その程度の火力じゃ、今の俺の斬撃は防ぎきれないよ。

 

 最初の数発は消滅させるも、波のように襲いかかる俺の斬撃によって、次から次へと炎が打ち消される。

 

 そして、そろそろ十秒だ。

 

 

『Divide!!!』

 

 

「━━━ッ!?」

 

 

 ガクン、と炎が弱まる。

 それを期に、俺の斬撃は一斉にエースになだれ込んでいった。

 

 

 ズババババババァァァアアァァッ!!

 

 

「ぐああぁぁぁああぁぁ・・・・ッ!?」

 

 

 全てをもろに受けたエースは、重力に従って真っ直ぐと地面に落下してくる。

 

 

 ドゴンッ!

 

 

 体に炎を揺らめかせながら、受け身も取れずそのまま墜落した。

 普通の人間なら怪我じゃすまない高さだが、火の流動する体だから問題はないだろう。

 

 

「手応えは十分だが・・・・・どうかな?」

 

 

 舞い上がる土煙が収まり、エースの状態を確認する。

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 全身に出来た剣の傷。

 そこから溢れるような出血量で、当然ながら意識を手放していた。

 

 

「どうやら俺の勝ちのようだな、火拳のエース」

 

 

 恐らく聞こえていないだろうが、俺はそう宣言した。

 

 自分でやっておいて何だが、今のは下手したら死んでるレベルだったな・・・・・。

 

『そんな柔な男でもないだろう、この小僧は。しかし、久しぶりの神器使用は良いものだな。後半はほぼ一方的になってしまったが・・・・』

 

 いや、合計4回の半減をしてもあの力を出してきたんだ。十分称賛に値するよ。

 

 俺だってアルビオンがいなければ、この勝負がどっちに傾いていたか分からなかった。

 

 この神器()が卑怯だなんて言うつもりはないけれど、やはりどこか悔しく思う。もっともっと鍛練を積まなきゃな・・・・。

 

『その意気だ、ヴァーリ。俺はいつでも力を貸すぞ』

 

 ああ、ありがとうアルビオン。

 

 俺は神器を解除すると、仰向けで倒れるエースの元へ行き、回復魔術を施した。

 彼が自然系で強靭な体を持っていると言っても、この出血量は流石に命に関わりかねない。

 

 まあ、俺が出来るのは応急処置程度のもの何だけどな。

 

 暫くすると、遠くから叫び声と慌ただしい足音が響いてくる。

 

 

「うわぁぁぁああ!エース!エースゥゥッ!!」

 

『船長ぉぉっ!!』

 

「ちょ、ちょっとヴァーリ!?彼のこと殺してないよね!?」

 

「兄さま、やりすぎです・・・!」

 

 戦いが終わった俺達の元に黒歌たちが駆けてきた。

 

 九重と船員達は泣きながらエースの側に寄り、その重症の体を見てさらに涙を流す。

 

 俺は、黒歌に胸ぐらを掴まれていた。

 

「にゃぁ!ヴァーリ!!死んじゃってたらどうするにゃん!?犯罪者になるよ!?指名手配だよ!?」

 

「く、苦しい黒歌・・・・・手当てはしたから・・・・・死んでないから」

 

 妹に胸ぐらを掴まれる日が来るなんて・・・・・。

 これはあれか?噂の反抗期というやつか?

 

「えっぐ・・・・ひっぐ・・・・・えーずぅ・・・・!!」

 

「九重ちゃん、大丈夫です。命に別状はありませんから。お馬鹿な兄さまに代わって絶対に治します」

 

「うぅ・・・・・本当か、白音?」

 

「はい、任せてください」

 

 目に涙を溜めて嗚咽を漏らす九重を安心させようと、白音が優しい口調で宥める。

 

 うん、流石は白音だ。

 お兄さんは嬉しい。嬉しいんだけど・・・・・。

 

 さらっと『馬鹿』と言われた気がするのは気のせいだろうか。

 

「姉さまも良ければ手伝って貰えますか?私一人よりも二人の方が効果がありそうなので」

 

「うん、分かったにゃん。━━━ヴァーリ?後でちゃんとお説教だからね?」

 

「あ、ああ」

 

 黒歌と白音は獣人型になって、エースの体内に巡る生命エネルギー、“気”を仙術で整え始める。

 

 

 ━━━数分後

 

 

 治癒力を上げるなどをしたそうで、彼の表情は幾分か和らいだ。

 

 それに引き換え、今の俺は色々とつらい・・・・。

 

「本当にすまなかった。戦いに夢中になってしまって・・・・・その、申し訳ない」

 

 俺は地面に正座して、顔に涙の跡を残す九重に頭を下げる。

 

 

『て、天龍が、幼子に・・・・土下座だと・・・・!?』

 

 

 そうはっきり言わないでくれよ、アルビオン。

 悪いのは完全にこっち何だから、こうでもしないと顔が立たないんだ。

 

 それに、黒歌と白音が土下座しろと言うもんでな・・・・。

 

「あ、頭を上げるのじゃ。この勝負は双方の意思の確認もしていた。だ、だから・・・結果がどうであれ、謝罪は必要ない・・・」

 

 九重の顔は見えないが、微かに声が震えていた。

 

 ま、まずい!

 段々と涙声になってきてるじゃないか!?

 

 ぐっ・・・・クソッ!

 こうなればやけだ!俺の現存する魔力を全て費やしてでも即効で治す!!

 

 俺は立ち上がって、包帯で全身を巻かれているエースの所へ行き、地面に膝をついて両手を傷口に向ける。

 

 周囲からは怪訝そうな視線を感じるが、気にせず集中力を高める。

 

「ふっ・・・!」

 

 ブワッ!と、蒼白く淡い光がエースを包み込んだ。

 

 元々、回復系の魔術は得意じゃない俺が、それをカバーするために必要なもの・・・・・。

 

 

 ━━━そんなの、自身の魔力量しかないだろ!

 

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 

 

「うっ・・・・・・こ、ここは?」

 

「お、起きたか。火拳のエース」

 

「・・・・・何で、勝ったお前が倒れてるんだよ」

 

 体をゆっくりと起こしたエースは、隣で仰向けに倒れる俺に対して疑問符を浮かべる。

 

「ははは・・・・まあ、色々あってな」

 

 すっかり空っぽになってしまった俺の魔力。

 これがまた面白いくらいに体が動かなくなってしまった。

 

 いや、本当に。

 指先すら動かせない。辛うじて話せるのが限界だ。

 

「俺の攻撃が効いた・・・・・って、訳ねぇか。なあ、聞いてもいいか?お前の翼、あれは一体なん「エースッ!!」━━━ぐほッ!?」

 

 彼は言い終える前に、九重が豪速球の如く鳩尾に飛び込みそのまま倒れ込んだ。

 

「エース!良かった、本当に良かったのじゃ!」

 

「く、九重・・・・・俺、怪我人だぞ。胸に飛び込んで来てくれるのは嬉しいけどよ・・・・・」

 

「怪我は全部、この者が治してくれた!魔法のようだったぞ!!」

 

 ああ、全力で治したから掠り傷一つ無い筈だ。

 たった今、鳩尾が重症になってそうだが・・・・。

 

 エースはそう言われて、自身の体を見る。

 

「鳩尾は凄ぇ痛いけど、本当に怪我は無いな・・・。どうなってんだ、これ」

 

 ペタペタと触って確かめる。

 未だに信じられないといった感じか。

 

 船のある方から、黒歌と白音が水の入った桶とタオルを持ってやって来た。

 

「もう、助けるために自分が倒れちゃ世話ないにゃん・・・」

 

「それに、私たちが治療した意味が無いじゃないですか・・・」

 

「・・・・面目ない」

 

 そう一言言うのが精一杯だ。

 恥ずかしくても顔を背けることすら出来ないとは、何とも辛い。

 

「でも、私たちが介護してあげるから心配しないでね」

 

「え・・・?」

 

「まずは、その汚れた体を拭きましょうか」

 

「いやいやいや・・・・・!?」

 

 二人は俺の服をテクニカル且つ、スピーディーに脱がしていく。その時の二人の顔はとても笑顔だった。

 

「エ、エース・・・!二人を止めてくれ・・・!?」

 

「いいじゃねぇか。妹の愛を受け止めてやれよ、()()だろ?」

 

 ぐっ・・・・俺が助けた恩を忘れたのか!

 な、なら・・・・!!

 

「はわわわっ・・・・!?」

 

 九重()の方に頼もうとしたが、両手で真っ赤な顔を覆って此方を凝視している。

 

 それ、隙間から見えてるじゃないか!

 これじゃ、彼女も期待できそうにない・・・!!

 

 残りは・・・・・・・・多分、同じ結果だろう。

 

 そして、爆笑してるそこの船員Aは覚えておけ。必ず報いを受けさせてやる。

 

 

「はあっ、はあっ、ヴァーリの腹筋・・・・!!」

 

「に、兄さまの胸板・・・・!!」

 

「黒歌、白音?息づかいが荒いぞ?落ち着こうな?」

 

 黒歌は俺の露になった腹筋を、白音は胸筋を何度も拭く。というよりも、撫で回している。

 

 

 アルビオン・・・・・俺は、どうなってしまうんだ?

 

 

『まあ、頑張ってくれ』

 

 

 相棒にまで見捨てられる俺は一体・・・・・。

 

 

 ━━━━その後、裸体に近い所まで脱がされる俺であった。

 

 

 





神器を使ったらヴァーリが圧倒的になってしまいました。これは、禁手を使う日は来るのでしょうか?

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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