まだまだ若いけど、最近腰痛が酷いです。
悪化させないようにしなくては…
月曜日、俺は曜と珍しく早起きした千歌と共に学校へと向かっていた。
「本当に今日も持っていくの?」
「うん!ダイヤさんにもう一回お願いしてみる!諦めちゃダメなんだよ。あの人達も歌ってた。その日は絶対に来るって!」
千歌は今日もダイヤさんのところに申請用紙を持っていくつもりらしい。部員はまだ揃ってないんだけどな。その時、俺は千歌との約束を思い出した。
(千歌…俺は何があってもお前の味方になってやる…)
そうだ。あの時千歌と約束したんだ…スクールアイドル、手伝うってな。
「千歌、その紙とペンを貸してくれ」
「えっ?どうするの?」
「…こうするんだよ!」
俺は名前の欄の二行目のところにに自分の名前を書いた。よし、これでいいだろう。
「ほらよ!これで二人目だな…」
「龍ちゃん…ホントにいいの?」
「いいんだよ。この前君と約束したでしょ?スクールアイドル手伝うって!」
「龍ちゃん…」
千歌は目に涙を浮かべていた。相当嬉しかったようだ。
すると曜も千歌にこう告げた。
「私ね、ずっと思ってたんだ。千歌ちゃんと一緒に、夢中で何かやりたいってね」
曜は俺の手から申請用紙とペンを受け取ると三行目の欄に自分の名前を書いた。
「だから…水泳部と掛け持ちだけど!」
曜は千歌にニッコリと微笑みかけると、千歌に申請用紙を手渡した。
「龍ちゃん…曜ちゃん…」
「これからもよろしくな、千歌」
「千歌ちゃん、よろしく!」
「二人目とも…本当にありがとう!」
千歌は俺と曜に抱きついてきた。俺はそのまま千歌の頭を優しく撫でてやった。
「よーしー!絶対にすごいスクールアイドルになろうね!」
「おう!」
「ヨーソロー!」
会話に夢中になっていた俺達は気づかなかった。大切な申請用紙が千歌の手から水たまりに落ちてたことに。
「「「あー!」」」
時すでに遅し。気づいた時には申請用紙はもうボロボロになってしまっていたのだった。
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「よくこの状態で持ってこようと思いましたね。」
俺達はダイヤさんのいる生徒会室に来ていた。当然、申請用紙は受け取ってもらえなかった。
「やっぱり、駄目なんですか?」
「一人が三人になっただけですわよ」
理由は部員の数が足りないからのようだ。やはり部員を五人集めてこないと駄目みたいだな。
「やっぱり!簡単には引き下がってはいけないと思ったんです!きっと、生徒会長は私達のことを試しているんじゃないかって」
「違いますわ!それより何度来ても同じとあの時も言ったはずですわ!」
「どうしてですか!」
「それは…この学校にはスクールアイドルは必要ないからですわ!」
「なんでです!」
「あなたに言う必要はありませんわ!」
千歌とダイヤさんはお互いに一歩も引かなかった。それよりスクールアイドルが必要ないと言うのにその理由を言わないのは少し理不尽な気がする。そう思ったからダイヤさんに一つ質問をしてみた。
「部員以外に何か必要なものでもあるんですか?」
「そうですわね…ラブライブの本戦に出場するためには、オリジナルの曲が必要になるのです。スクールアイドルを始める時に、最初の難関になるポイントですわ」
「そうだったんですか…」
「東京の高校ならともかくうちのような高校だとそのような事が出来る生徒は……」
何でそんなにラブライブについて詳しいのかという疑問はこの際置いておこう。確かにこの学校には作曲が出来る生徒はいない。ダイヤさんがスクールアイドル部の活動に反対するのも無理はないのだ。
「千歌、お前は作曲とか出来るのか?」
「出来ない!」
「やっぱりか…」
聞くまでも無かったな。俺も作曲は出来ないから人のことは言えないのだが。
「でも…探してみる!」
「ちょっ、千歌ちゃん?」
「おい!千歌!ダイヤさん、失礼しました!」
俺達は生徒会室を後にして千歌のことを追いかけた。今は自分達の教室へと戻っている途中だ。その間も千歌はずっと悩んでいた。
「うう…生徒会室の言う通りだった…この学校に作曲出来る生徒なんか一人もいないよ…」
「うーん作曲ねぇ…やったことないけど出来るのかな?」
「難しいと思うぞ、ピアノとかでもやってない限りは作曲なんてすることないからな」
「あーあ、タイミング良く作曲出来る人が転校してきたりとかしないかなぁ…」
「流石にそれはないだろ…」
俺達はまだ知る由もなかった。この後本当に奇跡が起こるということに…
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「スクールアイドル始めるのも大変だなんだねぇ…」
教室に戻ってきた俺達は千歌の席で話し合いをしていた。まだ作曲については考え中なのだ。
「一から始めるのは何だって大変だよ」
「作曲どうしようかな~?こうなったら私が!」
千歌は机の中から音楽の教科書を取り出した。どうやらこれを見ながら作曲をするらしい。それだけで曲が作れるんだったら誰も苦労はしないのだが。
「出来る頃には卒業してる気がするぞ」
「だよねぇ…」
「というか作曲だけじゃない。作詞をしたり衣装を作ったりする人もスクールアイドルには必要らしいぞ」
「そうだった~!」
千歌はやはり作詞や衣装のことも忘れていたようだ。こんな調子で本当に大丈夫なのだろうか。
「うーん、衣装だったら作れないことはないけど…」
「曜ちゃん!ホント?」
「う、うん」
「じゃあ、頼んでも大丈夫?」
「うん、私はいいよ」
「ありがとう!曜ちゃん!」
曜は衣装を作ることは得意らしい。確かに今まで色々な制服を俺や千歌に見せてきていたけどあれが全て手作りだったとはな。
「はーい!皆さん席についてください!」
しばらくすると俺達の担任の先生が教室に入ってきた。俺と曜はすぐに自分の席に戻った。
「今日は突然ですが、皆さんに転校生を紹介します!」
クラスは一瞬でざわめき始めた。この学校は生徒の数が減っていく一方だったので転校生が来ることなどは今まで一度も無かったのだ。
「転校生?誰なんだろうね?」
「この学校に転校生か…珍しいこともあるもんだなぁ」
俺と曜がそんな会話をしていると先生が話を進め始めた。
「皆さん静かに!じゃあ、入ってきていいわよ」
ガラッと教室の扉が開く音がした。そこから入ってきたのはロングヘアでワインレッドの髪色をした女子生徒だった。あれ?どっかで見覚えが…
「今日からこの学校に編入することになりました。桜内梨子です。東京の音ノ木坂学院という高校から転校して来ました。よろしくお願いします」
なんと転校してきたのは俺と千歌が数日前に浜辺で出会った桜内梨子さんだった。俺は後ろの席にいる千歌の顔を少し見てみた。俺と同じで驚いた顔をしていた。
「奇跡だよ!」
「あ…あなたは…」
千歌は急に立ち上がって梨子さんのところまで向かっていった。
「あれ?千歌ちゃん、知り合いなの?」
曜は千歌が梨子さんと知り合いだったことに驚いたようだ。そういえばあの時のことはまだ曜に話してなかったな。そして千歌は梨子さんにあることを言った。
「桜内梨子さん、私達と一緒に…スクールアイドル、始めませんか?」
それは当然スクールアイドルへの勧誘だった。梨子さんは自分でピアノの曲を作れるほどの腕前らしい。彼女が入ってくれるのは、本当に心強い。
「ふふっ…」
梨子さんはそんな千歌のことを見て静かに微笑んだ。これは彼女がスクールアイドル部に入ってくれるのではないか、そう思っていた。しかし…
「……ごめんなさい!」
「え…えええええっ!」
俺達の予想に反してあっさりと断られてしまうのであった。
To be continued…
今回でやっとアニメの一話が終わりました。これからも少し短編などを挟みつつ進めていきたいと思います。
それではまた。