今回は少し本編から外れます。
それではどうぞ。
今日は日曜日。俺は買い物をするために沼津に来ていた。
「沼津に行くのも久しぶりだな…ん?あの制服は…」
俺の目に入ってきたのは浦の星学院の制服を着た、ブロンドヘアの女子生徒だった。どうやら三年生のようだ。その生徒は高身長の男三人組に囲まれていた。
「お嬢ちゃん、俺達と遊ばないか?」
「遊ぼうぜ~きっと楽しいよ~」
「大丈夫だって、悪いようにはしないからよぉ?」
「Sorry。私はこれから大切な用事があるんデース」
どうやら彼女は男達にナンパされているようだ。やれやれ、困っている女の子を放って行くわけにはいかないな…
「やぁ。待ったかい?」
俺は平然と彼女に話しかけた。彼女は一瞬キョトンとしたが、すぐに俺に合わせて返してきた。
「ダーリン!遅かったじゃない!」
「チッ…彼氏持ちかよ…」
「なんだし…残念だわ~」
「さっさと帰ろうぜ…」
男達はすぐに立ち去っていった。暴力沙汰にならなくてよかった。問題なんて起こしたくないし…
「すみません。馴れ馴れしく話しかけてしまって…」
「ぜーんぜんOKよ!ホントにありがとうね!」
「あっ…浦の星の生徒ですよね?それに三年生の…」
「YES!もしかしてあなたも?」
「はい!俺、海藤龍吾っていいます。浦の星学院の二年生です」
「私は小原鞠莉よ!よろしくね!」
これが、俺と鞠莉さんとの出会いだった。
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「本当にいいんですか?俺はお礼なんていりませんよ。」
「いいのよ!私がお礼をしたいだけだから!」
俺と鞠莉さんはショッピングモールにある喫茶店に来ていた。さっき助けてくれたお礼にと鞠莉さんが連れてきてくれたからだ。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「何を頼んでもいいのよ。私が奢るから!」
「それじゃ、アイスコーヒーとワッフルでお願いします」
「私はホットコーヒーとシフォンケーキで!」
「はい、かしこまりました」
店員さんは俺達の注文を聞いた後、何故か俺達の方を見つめてきた。そして、静かに微笑むとすぐに厨房へと戻っていった。
「本当にこれだけでよかったの?」
「いいんですよ。俺みたいな庶民にはこれ位が丁度いいんです」
いくら奢ってくれるからといって、あまり高いものを注文してはいけないからな。それが最低限のマナーだ。
「リューゴって~結構イケメンなのね!女子にモテモテなんじゃないのかしら?」
「別にモテてないですし、イケメンなんかじゃないですよ…」
俺は所謂普通の顔つきだ。今まで彼女がいた事なんて一度もない。それに、俺がイケメンだったら、この世にいる男性の殆どがイケメンということになるじゃないか。
「私、もっとあなたのことを知りたいわ!沢山お話しましょ!」
「いいですよ。俺もあなたのこと知りたいですしね」
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「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」
俺と鞠莉さんが話し始めて暫くたったら、さっきの店員さんが、コーヒーを運んできた。なんかまた俺達の方を見て笑っている気がするんだが…
「それじゃあ、頂きましょうか」
「そうね!」
俺はまず、コーヒーの香りを楽しんだ。そして、ゆっくりと口に運んだ。
「……美味い」
「でっしょー!ここのコーヒー美味しいのよ!」
俺はもう半分も飲んでしまった。この店のコーヒーは本当に美味かった。
「リューゴのワッフル美味しそう!少し貰っていいかしら?」
「ええ、いいですよ」
俺はワッフルを一口サイズに切り、彼女に差し出した。
「ん~せっかくだから食べさせてちょうだい!」
「ええっ?そこまでするんですか?」
鞠莉さんは俺にワッフルを食べさせるようにせがんできた。やめてください…周りからの目線が痛いです…
「はやく食べさせて!」
「…仕方ないですね…」
俺はフォークでワッフルを鞠莉さんの口に運んであげた。
「ん~!美味しいわ!ありがとうリューゴ!」
「ど、どういたしまして…」
少し周りを見てみると、俺達に好奇の目を向けてくるおじさん、こちらを睨みつけている男だけの大学生達。その他諸々がこちらを注目するように見ていた。俺は早くここから逃げ出したくなっていた。まぁ、彼女の笑顔が見られたから別にいいか。
「リューゴ!はい、あーん!」
「えっ…いや…俺は別にいいですよ!」
鞠莉さんは今度は俺に自分の食べていたシフォンケーキを差し出してきた。いや、これ以上は本当にやばい。さっきの大学生達が俺に殺気を向けてきているのがわかった。
「いいから!ほら、口を開けて!」
「はぁ…わかりましたよ…」
俺は渋々、彼女の差し出したシフォンケーキを食べた。
「どう?美味しいかしら?」
「ま…まぁ…美味しいですよ…」
正直、シフォンケーキの味は殆どわからなかった。多分俺の顔は真っ赤になっているはずだ。うん、これも全部鞠莉さんのせいだな。
「さあ、そろそろ出ましょ!これから行くところがたくさんあるのよ!リューゴも付いてきてくれるかしら?」
「ええ、俺は大丈夫ですよ。」
俺と鞠莉さんは会計を済ますと、すぐに店に後にした。ずっとあの空間にいるのは耐えられなかったから早く店から出ることが出来て良かった。
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「うーん!楽しかったわね!今日はありがとう!」
「はい!俺は鞠莉さんに振り回されていただけのような気がしますが…」
「細かい事は気にしないの!」
店を出た後、俺と鞠莉さんは色々な場所にいった。(主に鞠莉さんの用事)俺は散々振りまわされただけだが、けっこう楽しかった。
「そういえば…」
「ん?どうしたのリューゴ?」
俺は鞠莉さんと出会った時からずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。
「何で鞠莉さんは制服を来ているんですか?今日は日曜日で学校は無いはずですけど…」
「ああ、そんなことね。理由は簡単よ!それはね……あら?電話だわ。ちょっと出てもいいかしら?」
「はい、大丈夫ですよ」
会話の途中、急に鞠莉さんの電話がなった。相手は親父さんのようだ。
「うんうん…リョーカイ!すぐに戻るわ!」
「どうしたんですか?」
「パパからよ!用事があるからすぐに帰ってこいだって。それに、ヘリを待たせているの。」
「えっ?ヘリですか?」
なんでも、鞠莉さんの家は淡島にあるホテルを経営しているらしい。場所は果南姉さんの家の近くだった。
「それじゃあね!これ、私のアドレスよ!また遊びましょうね!」
「はい!また会いましょう!」
鞠莉さんは自分のヘリが止めてある場所に向かって走っていった。俺は彼女の後ろ姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。
「俺…とんでもない人と友達になったんじゃ…」
これから鞠莉さんに会うことがあっても無礼なことは出来ないことと思った。
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「リューゴねぇ…やっぱりカッコイイじゃない!」
その頃、鞠莉はヘリコプターに乗り込み、ホテルに戻る途中だった。彼女の持っているケータイにはさっき龍吾と撮った写真が写っていた。
「鞠莉様、今日はいつもより元気がありますね」
「やっぱりそう思う?」
ヘリの運転手は鞠莉の様子が普段と違うことにすぐに気づいた。いつも以上に元気がいいからという理由らしい。
「はい、今日の相手はかなり手ごわいようです。あまり浮かれないようにしてくださいね」
「OK!わかったわ!」
「この契約が取れれば、あの学校への寄付もより沢山出来るようになりますよ」
「リョーカイ!あっ、リューゴに
この後、鞠莉はすぐに龍吾と再開することになるのだが、あのことを彼に伝えるのはまだ先の話しである。
To be continued…
本編から外れた理由ですか?鞠莉ちゃんを出したかったからですよ。今まで出番がなかった上に、ヘタしたら当分登場しない可能性だってあるんですから…
それではまた。