「はぁ…」
俺、海藤龍吾は幼馴染みである高海千歌に散々振り回されている途中だった。
「龍ちゃん!何やってるの!こんなところでのんびりしてる暇なんてないんだよ!早く私についてきてよ!」
「へいへい…」
「返事はしっかり!」
長い時間俺のことを連れ回し続ける千歌はいつも以上に強引なように見えた。
「ど…どうしてこんなことに…」
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これは今日の朝のことだ。部活に行くための準備をしていた俺に千歌から電話がかかってきた。
「もしもし、龍ちゃん?」
「千歌か、どうしたんだ?」
「龍ちゃんはさ、これから時間あったりする?」
「時間?いや部活あるからそんなにとれない。すまねーな」
「そ、そう…龍ちゃんも忙しいんだからしょうがないよね。あはは…」
電話越しに聞こえる千歌の声は誘いを断られてとても残念だというように聞こえた。
「全くしょうがないな…練習終わったら連絡するからな。」
「え?どういうこと…?」
「千歌の用事に付き合ってやるってことだよ。あんまり長い時間はとれないと思うけどな」
「龍ちゃん…ありがとー!」
「いいってことよ。」
千歌にそれだけ言い残し俺は電話を切った。
「はぁ…付き合ってやるって言っちまったけど今日の練習はいつもよりハードなんだよなぁ…俺の体力が持つかだけが心配だわ…」
俺の頭の中は不安でいっぱいだった。
その日の練習は確かにハードだったら苦ではなかった。俺は全体での練習後の自主練も早めに切り上げ、千歌との待ち合わせ場所へと向かった。
「よぉ…待たせたな…」
「もう!遅いよ!」
「忙しい中で時間を割いて会いにきてくれた俺のことをほんの少しでも褒めて欲しいものだがな」
「ふぅん、それは感謝するよ」
「そうかい…」
「じゃあ早速行くよ!覚悟しといてね!」
「は?ちょっと待てって!」
そこから俺は千歌に散々振り回された。それは一日で回るのも辛いと思われるほどだった。そして今に至る。
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「つ、疲れた…」
「お疲れ様、大変だったね」
「誰のせいじゃい」
俺と千歌は海沿いの公園で少し休むことにした。俺達が幼い頃からよく来て遊んでいた場所だ。
「膝枕してあげるから横になって。龍ちゃんも部活とかで疲れてるでしょ?」
「ありがとな」
俺は千歌の言う通り膝の上で横になった。女子特有の甘い匂いが鼻をくすぐった。
「どう?」
「ああ、めっちゃ気持ちいいよ」
「えへへーありがと♪」
(やっべ…千歌の膝めっちゃ気持ちいい…なんだか急に眠くなってきたな…)
龍吾は当然襲ってきた睡魔に抗うことが出来ずにそのまま深い眠りへと落ちていってしまった。
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「あれ、寝ちゃってる」
私に膝枕をされたままの状態だった龍ちゃんはいつの間にか寝てしまっていた。龍ちゃんも疲れてるんだから仕方ないかな。
「龍ちゃん…」
千歌は自分勝手に龍吾のことを振り回している自分が好きではなかった。今日もそうだ。彼が忙しい中で急に呼び出して迷惑をかけてしまっている。
「龍ちゃんが忙しいことなんてわかってる。それでも今日は…今日だけはどうしても龍ちゃんと一緒に過ごしたかった…」
「龍ちゃん、私の気持ち…受け入れて…」
「………わかってたさ。そんなの…」
「り、龍ちゃん!?起きてたの?」
「今起きたばっかりなんだよ。それよりもよ…千歌」
「なに…?」
「…お前の膝さ、ちょっと硬くなってきてるな。Aqoursの練習頑張ってるんだな」
「え…?うん…」
龍ちゃんはなんか私のことをとてもよくわかってるみたいだったけどやっぱり違うような気もする…本当はどっちなんだろう…?
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気がつくと空は紅く染まっていた。随分長い時間寝てしまっていたようだ。
「そろそろ帰るか。俺は明日も部活あるし。千歌も練習あるでしょ?」
「うん。そうだね…」
そう答えた千歌は少し寂しそうに見えた。笑ったり怒ったり寂しがったりほんとに忙しいやつだな…
「そんな顔すんなって。また付き合ってやるからさ。今度はもう少しゆっくりしたいけどな」
「…うん!」
千歌の顔には笑顔が戻っていた。そして俺は鞄から箱を取り出し千歌に渡す。
「千歌…誕生日おめでとう!」
「…え?」
突然の事で驚いたのだろうか、千歌はその場で固まってしまった。
「おーいどうした?」
「…覚えててくれたんだね!」
「あたり前じゃないか。俺が千歌の誕生日を忘れるわけないし毎年祝ってたでしょ?」
「うぅ…そーだけど…」
千歌は目に涙を浮かべていた。でもそれは悲しくて流す涙じゃない。嬉しくて流す涙だった。
「全く…千歌は本当に忙しいやつだな…」
俺は千歌を抱きしめ、耳元でこう囁いた。
「これからもずっと俺の傍にいてください…」
千歌、誕生日おめでとう。
To be continued…
遅れましたが千歌ちゃん誕生日おめでとう!
それではまた。