最近は暖かったり寒かったり大変ですね。
皆様も風邪とかを引かないようにしてくださいね。
月曜日
「え?本当にいいの?」
「うん。海の音を聞かせてくれたお礼。スクールアイドルの曲作り、手伝うよ!」
梨子の口から出たのは意外な言葉だった。今までスクールアイドルを始める気がなかった梨子が曲作りを手伝ってくれるというのだ。とてもありがたい。
「梨子ちゃーん!スクールアイドルになってくれてありがとー!」
「何か勘違いしてない?私は曲作りを手伝うだけ。スクールアイドルにはならないよ」
「ええ!でもしょうがないか!梨子ちゃんにも都合があるんだからね」
とりあえず梨子が俺達の曲作りを手伝ってくれることになった。
「それじゃあ、詩を頂戴!」
「「「詩?」」」
俺達三人声が見事に被った。確かに曲を作るには詩が必要になるな。
「龍ちゃん、詩作った?」
「作ってねーよ。千歌は?」
「作ってなーい!曜ちゃんは?」
「私もやってないよ」
三人とも作詞をやっていなかった。まぁ誰が作るとか決めてなかったから仕方ないか。
「よし!今日家でやろう!」
「本当にやるのか?」
「やるしかないよ!梨子ちゃんと曜ちゃんも放課後に私の家に来て!」
「うん!」
「わかった。」
俺達は放課後に千歌の家に集まって、みんなで作詞をすることになった。
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「ここ…旅館でしょ?」
「ここは私の家だし、時間を気にせずに考えることが出来るよ!」
初めて千歌の家に来た梨子は驚いていた。そりゃ友達の家が旅館だったら誰でもびっくりするよね。
「ワンワン!」
「おお!しいたけか。久しぶりだな!」
千歌の家にはしいたけという犬がいる。しいたけとも昔からよく遊んでいたものだ。
「しいたけも久しぶりに龍ちゃんに会えて嬉しいと思うよ!」
「よしよし」
俺が頭を撫でると、しいたけは嬉しそうな表情をした。やっぱり毛がモフモフで可愛いな。
「ん?どうかしたのか?」
「あの…私、実は犬が苦手で…」
どうやら梨子は犬が苦手らしい。しいたけは大きいけど大人しい犬だから大丈夫だと思うけど。
「ワン!」
「きゃ!」
「ちょ!梨子!?」
急にしいたけに吠えられてびっくりしたのか梨子は俺の背中に抱きついてきた。やっぱり千歌達ほどではないけど梨子もなかなか…
「お願い、このままでいて…」
「…はいよ。それじゃ千歌の部屋に行こうか」
「むー、龍ちゃんは梨子ちゃんには甘い…」
「龍くんのえっち!」
「酷くね?俺は何もしてねーぞ!」
幼馴染み二人に冷たい目線を送られながら俺は千歌の部屋へと向かって行ったのであった。
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「ここはこうした方がいいかな?」
「そうだな。それでこの文をここに入れてみたらどうだ?」
俺達は千歌の部屋に行き、作詞を始めていた。千歌はさっきから何かブツブツ言っていたが。
「うう…酷いよ!せっかく志満姉が東京で買ってきてくれた限定プリンなのに!」
「限定プリン?」
「いつまでも取っとく方が悪いんです!」
「もぉー!うるさい!とりゃ!」
千歌と美渡姉はぬいぐるみや浮き輪を投げ始めていた。どこから取り出したかのかはわからないが俺達も巻き込まれそうだから気をつけないと…
「これでも喰らえ!」
「甘い!」
「ちょっと、二人とも…ぶっ!」
二人が投げたエビのぬいぐるみと浮き輪が梨子の顔面にクリーンヒットした。
「げっ、退散!」
美渡姉はすぐに逃げやがった。まぁそれはいいとして作詞の続きを…
「そ、それじゃあみんな…」
「あ!曜ちゃん、スマホ変えた?」
「うん!進級祝い!」
「お、なかなかいいじゃん!」
「…………」
この時、俺達は気づかなかった。背後から何かが迫り来ていることに。
「……ちょっと」
「あっ、梨子ちゃんも見る?すごいんだ…あれ?」
その刹那、俺の背中に悪感が走った。千歌と曜も同じようなものを感じているようたった。
「り…梨子ちゃん?」
「は・じ・め・る・わ・よ。」
「「「……はい」」」
俺達はこの瞬間に悟った。梨子を絶対に怒らせてはいけないことを。
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それから先は順調に進んでいる…ように見えた。
「千歌ちゃん、まだ出来ないの?」
「もう別のでいいんじゃないのか?」
「ダメ!絶対にμ'sのスノハレみたいな曲を作るの!」
制作は難航していた。作詞なんてしたことがない普通の高校生が急にやろうとしてもすぐには浮かばないのは当然のことだが、幾ら何でも時間がかかりすぎだ。
「だけどよ、千歌は恋愛経験とか無いだろ?」
「うーんよくわかんないなぁ…それより龍ちゃんは?恋愛経験とか無いの?」
「龍くんにある訳ないじゃん!だって今まで彼女とかいた事ないでしょ?」
「オイ!まぁそうだけどよ…」
千歌と曜に何も言い返せなかったことが俺は純粋に悔しかった。ってお前らも彼氏いたことないだろ!
「そういう曜はどうなんだ?」
「わ、私?ないない!」
「えっと…梨子は?」
「……ないです」
質問したけど全員恋愛経験ないみたい。こりゃ作詞は難航するぞ…
「でも、μ'sがこの曲を作った時に、恋をしていた人がいたってこと?」
「どうだろうな。いくらスクールアイドルって言っても女子高校生なんだから恋愛とかしててもおかしくない気もするなぁ」
「たしかに…ちょっと調べてみる!」
俺達はパソコンでμ'sの恋愛事情について調べてみたけど何一つわからなかった。
「でも、なんでここまでやるの?成功するかなんてわからないのに…」
「さあね。だけど千歌ちゃんはスクールアイドルに恋しているから」
なるほど、そういう考え方もあるのか。だったら千歌が諦めずにスクールアイドルをやろうとしているのにも辻褄が合うかもしれないな。
「それだったら書ける気がしない?スクールアイドルが大好きっていう気持ちを込めれば!」
「うん!それならいくらでも書けるよ!」
千歌は机に広げたルーズリーフに自分がスクールアイドルをやってみて思ったこと、スクールアイドルが大好きだという想いを一つ一つ書き始めた。
「スノハレみたいな曲は書けそうか?」
「ううん、恋愛ソングもいいけど、やっぱりこんな曲を作ってみたい」
「これは…」
「えっと…ユメノトビラ?」
千歌が書いていたのはユメノトビラという曲の歌詞だった。俺も前に千歌とこの曲を聞いたけど、とても良い曲だった。
「私はこの曲を聞いて、本気でスクールアイドルをやりたいって、μ'sみたいになりたいって思ったの!」
「千歌ちゃん…」
「頑張って、努力して、力を合わせて奇跡を起こしていく。私にも出来るんじゃないかって今の私から変われるんじゃないかってそう思ったの!」
俺達は黙って千歌の話を聞いていたが、やがて梨子が口を開いた。
「本当に好きなのね…スクールアイドルが!」
「うん!大好きだよ!」
「ふふ、それじゃ作詞の続きをしましょう。作るんでしょ?この曲みたいに」
「千歌ちゃん、やろう!」
「俺も最後まで付き合うよ」
「みんな…よし、続けよう!最後まで!」
俺達は曲作りを再開した。ふと千歌の方を見てみると千歌は今までに無いぐらいの真剣な表情で机に向かっていた。俺も負けていられない。そんな千歌に対抗するかのように俺も机に向かって作詞に取り組んだ。
To be continued…
少しキリが悪いですが、今回はここまでです。
それではまた。