Fate/promotion【完結】   作:ノイラーテム

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追い求めるモノ

後より居出て先に断つモノ(アンサラー)抉り取る戦神の剣(フラガラック)!』

 逆光の剣フラガラック。

 ソレは無限音叉に包み込まれたバセットが放った起死回生の一撃。

 防御も回避も不可能なほど、全方向より放たれる音の爆弾に包まれながら、時間を逆行することにより無力化する。

 

 いいや、無力化するのは絶体絶命と言う事実。

 これを覆す事で、窮地であったという事すら消え失せた。

 技が発動する前に倒す矛盾に寄り、痛哭の幻奏(フェイルノート)を放つ前に倒しきった事に改変されたのである。

 

 そして合流しようと仲間達が考えた時、陽が当たらない斜面側でも爆音が二度続けて聞こえた。

「どうやら足止め食らってたリンもなんとかしたみたいね。さて、どうしたものかしら」

「それなんだがよ。連中の程度が判ったぞ」

 イリヤが伝達されたことを教えてくれると、モードレッドは訝しげな顔で考え込んだ。

 連続で敵を倒せたと言うのに、浮かない顔だ。

 

「どうしたの?」

「円卓があんなに弱いはずはねえ。おそらくはアイツの投影と同じで熟成が要るんだ。ここまでは良いか?」

「耐久力はスパルトイと同じって予想はできたけど…、こうなると時間が惜しいな。それで何が問題なんだ?」

 モードレッドが無茶をしたのも、結果を見れば判らなくはない。

 

 ゲームで例えると命中回避が向上しただけで、威力・防御・HPは変わって無い。

 そして最大のウリである、命中精度や引き出せる技・宝具の質が成長式ならば、速攻で倒すに越したことはなかったのだ。

 

「だけどそれなら、なんで出撃を許したんだ? 元から籠城戦なんだろ?」

「あっ…」

 慣れれば慣れるほどに強くなり、経験も引き出せるように成るのならば…。

 時間稼ぎを求めている事もあり、討って出る必要などなかったのだ。

 

「仕方ねえ。オレらはこのまま表から動くが、てめえは裏側のフォローに回ってくれるか?」

「やれやれ、人使いの粗い王様だよ」

 まるで…倒させる為に、出撃したがる騎士たちを止めなかったように見える。

 だがその答えは、その場で求められる物ではなかった。

 モードレッドは獅子劫に裏手のフォローを任せ、そのまま陽のあたる側をけん制し始めた。

 

 そして、答えはこちらにある。

 山陰を進んだ凛の前に、カソックの黒衣が待ち受けて居た。

「観念しなさい綺礼。あんたが何を企んでるか知らないけど、ここまでよ」

「企み? そんなモノは最初からありはしないとも」

 追い詰めようとする遠坂・凛に、言峰・綺礼は薄く笑って手を広げた。

 その様子は教会に居る時と変わり無く不気味でしかない。

 

「じゃあ、なんでこんなことをしたってのよ! 世界が滅びちゃうじゃない!」

「私はただ、祈りを捧げる者を協力し、ソレを見て居たかっただけだ。ソレがお前たちなのか王なのかという差でしかない」

 そう言ってのける綺礼の表情に嘘は無く、むしろ厳かな真摯さが見受けられた。

 

 バーサーカーのように話が通じないのではなく、通じて居てなお、ベクトルが異なっているというのが正しいだろう。

 重視することがあまりにも違うので、すれ違って通じないのである。

 

「何を求めても求め続けるばかりで私は何も得られなかった。ならば…と思ったのだ。何かを得ようとする人々を助けることで、いつか、ナニカが得られるのではないかと」

 その果てに世界が滅びるとも、救済されるとも構わない。

 空虚でいて、それでいて真摯な言葉であった。

 誰かがナニカに辿りつくことを、必死に祈り続けて居るのであろう。

 

「私の中に届くモノは何もない。何かを為して成果を得る事も達成感を得る事もなかった。だからこそ、私は人が求める切なる祈りをこそ愛そう」

「ハア…いいわ、残りの戦力を潰す手間もあるからさっさと済ませちゃいましょ」

 それは歪ではあるが、ある種の真実の愛なのだろう。

 歪で迷惑な人類愛を戯言のように聞きながら、凛は綺礼に向かい合う。

 

 だがおかしそうに綺礼は笑うのだ。

 凛は今度こそ、彼の言葉を無視し得なかった。

「残り? それもありはしないとも。戦力と呼べるものは全て地上に持って来た。大聖杯の元で待つのは王だけだ」

 そう言って指を鳴らすとスパルトイが現われる。

 子ギルの方に二体、凛の方には一体も居ない。

 

「これは驚いた。見れば軍師タイプまで連れてきてるじゃないか。随分とボクの事を信用してくれてるみたいだね」

「そういえば旧知なんだっけ? 座に戻るから経験が連続しないはずじゃないっけ」

 子ギルは何が楽しいのか、それとも既に何かを悟っているのかくすくすと笑う。

 

「千里眼を持つのと同じボクにはそんな理屈に意味は無いけど…。ここはまあ予想出来る範疇というやつさ」

「お前がどれだけ企画外か知り抜いて居るとも。本気ならば取っておくことに意味など無い。ならば潰されることを前提に最初から全てを注ぎ込んで、残った数%の運が良かったと言える」

 嵐に向かって船を漕ぎ出すのは愚か者のすることである。

 だが、何かの理由で越える必要があるならば、数を出し範囲を広くして免れるしかない。

 嵐が過ぎれば消え去る定め、だが、嵐が来なかった場所が僅かにあれば良いだけだ。

 

「その割りには足止めすら果たせて無い様な気もするんだけど」

 何かに気が付いているらしい子ギルは、おかしそうに笑いながら二歩・三歩と歩く。

 理性のある軍師タイプのスパルトイはまだしも、もう一体は隙ありと見て飛び出した瞬間に、陰から飛び出した鎖で雁字搦めにされてしまう。

 そして、手に持った剣を突きつけはしたが、そのまま動かさずに綺礼を眺めた。

「もしかして、ワザと倒させている?」

「正解みたいだね。なら倒す必要はないよね」

「ああ。その通りだ。彼らは十分に役を果たしてくれた。最初から時間稼ぎなど可能とは思っても居ない。私は…いや、王は聖杯戦争の基本に立ち返ったに過ぎない」

 さすがに凛も、ここまで来れば理解が出来る。

 正解に至った以上は、黙っておく必要もない。

 元より尋ねられたならば、嘘をついてまで隠すつもりがこの神父にはなかった。

 

「まさか…」

「…そうだ、最初から彼らは聖杯を埋める為の生贄に過ぎない。王の願いを叶える本命の方は、聖杯ではないのだがね」

 満たせ満たせ満たせ。くりかえし満たされたという刻をこそ破却しよう。

 魂を戦いに寄って少しでも昇華させ、その上で生贄として捧げる。

 同時に足止めの為の戦力として、攻撃側のリソースを割ければ言うことは無い。

 

「アインツベルンのホムンクルスは完成度が高いからまだ大丈夫だろうが、間桐の兄妹はまだ正常を保って居るか? 小聖杯は次第に人間性が欠如して行くぞ。そして…」

「ああ、そう言えば大人のボクがあの子に言って居たよね。彼女が人間で居られるのはあと、どのくらいかな」

 まるで示し合わせたように、綺礼と子ギルが笑っていた。

 そのつもりはないが、絵に描いたように図式にはまっているのだ。これを笑わずに居られまい」

 

「っ! オルガマリー・アニムスフィアに無数の死を経験させる為に。直死の魔眼が有効な場面を造り出す事で誘導して…」

(おわり)を司る権能の顕現、『アトロポスの鋏』。…ああ女神ってやつはなんて厄介なんだろうね」

 凛はギルガメッシュが試し続けていることを知っていたので、内通は疑わなかった。

 だが、なんと悪趣味なことだろう。

 聖杯を満たす為にスパルトイと円卓の騎士を犠牲にし、その死はオルガマリーを人でないモノに変える。

 

『死ぬかもしれない。を、確実に死に至らしめる力』

 

 不確実な戦況で、最低限のダメージで倒す為には、彼女が持つ測定の直死の魔眼は実に有効。

 もし使わなければ、死に難いクーフーリンが致死ダメージを受けただけで倒され無いかもしれないし、巻き込まれただけでスパルトイが倒されもしないかもしれない。

 いずれかの個体は生き伸びる可能性があり、それを避けるためには、オルガマリーが能力を使うしかなかったのだ。

 

 魔眼の力が習熟すると共に、やがて彼女は後戻りできなくなり無辜の怪物と化す。

 廃人となるならまだ良い方だ、いずれ世界の終焉をもたらす為に、世界に取り込まれるだろう。

 デミサーバントの能力も持ったオルガマリーではなく、アトロポスを降ろしたデミサーバントとして、世界を終わらせる為に力を振るい始めるだろう。

 

「王もそこまでの期待はしていないだろう。おそらくは人類史が焼却され易くなることで因果が解れ、運命を改変し易くなる。出来ればそうあって欲しいと期待しているのだろうな」

「でも、あんたはそうは思って居ない。仮定本当にアラヤ全体の消滅まで行ってしまうと踏んでる…と。救えないわね」

 その通りだと、あっさりと綺礼は肯定した。

 焼却式という仮定が成立する事で、運命改変の足掛りを卑王と化したアーサー王は狙っている。

 だが、そんなに都合が良い訳が無い。投影で儀式用の素材を誤魔化すのとはわけが違うのだ。

 

 聖杯は巨大な魔力で可能なことを実行するだけ、時間移動だけならともかく運命改変が単独で無理ならば、運命改変の為に焼却式を発動させてしまうだろう。

 滅びる運命という分岐線を切り替える為に、遮断機を降ろして一つの世界に終わりを迎えさせる。

 それが『アトロポスの鋏』という権能力の、本当の意味での完成である。

 

「じゃあその前にあんたを倒して向こうを止めに行くことにするわ。アーチャー、こっちは私がやるから奇襲を経過しながら補縛しておいて」

「無茶を言うもんだね。でもまあ、そっちに手を出さないで良いならそうしようか」

 凛は即座に子ギルたちを隔離して、これ以上の魂が格納されてしまう事を防ぐことにした。

 

 それにこちらが奇襲を用意している以上は、あちらも奇襲を用意していると思うべきだろう。

 慢心気味のギルガメッシュがうっかりと倒されたら目も当てられないし、迂闊に頼れば厄介ごとに巻き込まれかねない。

 ギルガメッシュは他の英霊と比べ物にならない魔力を保有しているし、万が一を考えるならば、戦力を遠ざけてでも避けておくべき未来だ。

 

「そう来るならそれも良いだろう。だが一つだけ忠告をしておこう。凛、これは『真実を知る為の戦い』だということをな」

 綺礼はそう言うと、黒い剣と短剣を両の手に構えた。

 黒い剣はいささか長く、西洋で使われる長剣。

 黒い短剣はこの世界で良く見られる、サブアームとしての軍用ナイフだ。

 

「どうしたのよ綺礼、いつもの黒鍵は?」

「何、黒鍵と拳は手慣れて居るというだけだ。これはこれで習った覚えはある」

 凛は牽制としてガンドを放つと、斜めに前へ移動。

 速攻で詰めようとする綺礼から、うまく逆方向に距離を離す。

 恐るべき踏み込みであるが、知っているなら対処はそう難しくない。

 

「何よりコレの材料は、十年間埋まっていた古傷から取り出したモノだ。塾成という意味では何より馴染む」

 長剣でガンドを弾きつつ、短剣は常に凛を狙って空いて居る。

 投擲と剣撃双方を兼ねると言う意味では、短剣は黒鍵と同じ用途だが、一本きりと使い捨てでは意味が異なる。

 何かしらの付与が為されていると疑ってしかるべきだろう。

「妖しすぎてまともに闘う気がしないわっ、ね!」

 凛は小さな宝石を取り出すと、軽く魔力を通して投げ放った。

 

「……この地に冬は訪れる!!」

「ふむ。そんな小さな宝石で…成長した物だ!」

 凛が小さな蒼い宝石を投げると、そこから霜の柱が扇状に走る。

 それを綺礼は震脚の一踏みで道を分け、亀裂を生じさせ直進出来ないようにすることで阻んだ。

 

「宝石魔術でも同じことだが…。何かの布石と思っておこうか」

「そう思うなら試してみれば?」

 即座に疾走し、氷の上を滑る様にして綺礼が接近する。

 確かに距離を取る意味では狙い通りだが、それならばもっと他の手段も取れるはずだ。

 綺礼は凛に八極拳を教えており、その事を知っている以上は、この程度の足場の悪さでは阻害できないことを良く知っているはずである。

 

 何しろ、どんな足場の悪さでも、常に力を出せるようにと教えたのは彼だ。

 例え泥沼であっても同じ事。

 だから、次なる手は、冷気と連携する錬った連技である。

 

 両手に一つずつ黄色い宝石を持ち、一つを天に一つを地に放る。

「春雷よ、この地に春の訪れを告げよ! ならびに木気雷、金気鉄へと墜ちよ!!」

「超伝導に五行相克? 驚いたな、まさかお前が科学や仙道を混ぜて来るとは思わなかった」

 冷気によって抵抗力の無くなった大地に、足元に放った稲妻は想定よりも早く蛇の様に走り抜ける。

 同時に雷撃は金属へ落ち易いという性質を利用しており、こちらの抵抗力も相当に下げられていた。

 

 当然ながら飛ぶか、伏せるかしなければ両方を受ける。

 なんとかして防がなければ雷撃を受けるが、どうやっても抵抗力が上がらないこの状況。

 綺礼は単純な方法で解決することにした。

 

「これまでの流れはおおよそ判った。狙いはコレだろう? 乗ってやるとしよう」

 綺礼は黒い長剣を投げ放ち、大地に釘のように刺すことで、剣へと雷撃を流させる。

 一の手である冷気は、攻撃であると同時に、足止めを兼ねた継ぎ手の手段。

 二の手である雷撃は、攻撃であると同時に、武具を手離させる継ぎ手の手段。

 

 さて、三の手はトドメか、それともまた継ぎ手の技か。

「次にどう出るか興味深いが…まあいい。ギルガメッシュがその気でないなら、お前に使ってしまおう」

「鎖? って、こっちも!?」

 投げ捨てたはずの剣から、凛に向けて鎖が出現する。

 絡みつく鎖から避けようとするものの、凛の手元からも剣へと延びて、二本の鎖が絡まる様に繋ぎ止められてしまった。

 

「ガンドや雷撃を受けた時に細工をさせてもらった。相手の攻撃を受けることで、因果の線を結ぶと言うやつだ」

「あんたも人の事は言えないわね。教会の人間が仏教を混ぜるなっての」

 因果応報という判り易い理屈。

 綺礼の放った逆転の技に、凛は顔をしかめた。

 

 時間稼ぎを目的とした敵に対し、足止めを食らってしまった。

 付け加えるまでもなく、綺礼が格闘を得意とする以上はこの上ないピンチだろう。

「これは虚数属性の縛鎖? 桜ならともかくあんたが使ってくるなんてね」 

「正確には私ではなく、その剣の使い手であったアグラベインだな。先ほども言った様に、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を防がせてから、ギルガメッシュを足止めするつもりだった」

 鎖は軽く質感もなく音すら起てることはない。

 凛の言葉に綺礼は、スパルトイに軽く眼をやってから続けた。

 王の財宝を投射するスタイルであったら、スパルトイに黒剣を持たせてから受けさせるつもりだったのだろう。

 

 それで倒されるのは同じだが、ギルガメッシュほどの大英霊をこの場に繋ぎとめられるならば大金星だ。

 実際にはギルガメッシュではなく凛に使うことになってしまったが、ギルガメッシュに積極性が無いようなので同じ効果をあげたと言えるだろう。

 

「さて、どうするね? このままジっとして居てくれるなら助かるのだが」

「イヤだって言ったらどうする気?」

 綺礼は凛の答えに対し、片手を開けたまま短剣を掲げて見せる。

 

「手加減はしないが、それで生き伸びたらお前の運が良かったと言うところだな」

 空いた手には何も持たず、常に子ギルの側に向けることで、何らかの対策があると見せながら、短剣と格闘で戦うつもりだ。

 元より拳法があれば凛を倒すのに十分であるし、片手を開けておくことで、先ほどの黒剣にスペアがあると見せて居るのだろう。

 虚数属性はサーヴァントや魔術防御越しでも有効な手段の一つであり、対策なしで食らえば子ギルと言えど簡単には対処できまい。

 あえて動く気も無い事もあり、命じた通りスパルトイを補縛しただけで、そのまま静観の構えを見せている。

 

「そろそろ隠し札の一つも見せる時じゃないのかね? ここまで何もせず誰も連れずに来ている訳はあるまい。それが余裕の理由なのだろう?」

「あちゃー。バレバレかぁ…。って、勿論伏せてあるわよ。とびっきりの隠し札をね」

 綺礼は迂闊に飛び込んでは来ず、そればかりか凛の策を見抜いて見せる。

 だが彼女としても奇襲が見抜かれるのは覚悟の上だ。

 その上で、何をするか、誰を連れてきているかが読みあいなのである。

 

 そんな時、風が緩やかに吹き始めた。

 冷気を使った事により、大気が撹拌されたのだ。

「季節は廻り夏が再び訪れる! 来たれ、夏の赤帝!」

 凛が赤い宝石を投げると風に巻かれて業火と化す。

 西洋に置いても東洋に置いても、風は炎を助長する力だ。

「大した炎だが、まさかこの程度で切り札とは言うまいな? もしそうなら死んでもらおう」

 業火は燎原之火が如くに周囲を焦がして行くが、綺礼は近くにあった木をへし折るだけで、燃える方向を変えてしまう。

 

 火を持って火を制すやり方を、魔術を使わずに力だけで為し遂げたのだ。

 当然そこには隙はなく、凛が次の術を使ったとしても、綺礼はあっけなく対処してみせるだろう。

 そう…、彼に直接、手を掛けるならばの話だ。

 

「残念だけどこれはただの煙幕よ。良く見なさい、あんあたが守ろうとした結界の有様をね!」

「なんと! 自身を囮に私を狙ったのではなく、最初から結界をこじ開ける算段か。なるほど…ギルガメッシュは瀬極的に動く気が無いのではなく、まさしく対して動く気が無かったのだな」

 周囲に張り巡らされた結界が次第に解け、一定の方向にしか移動できない道が、陸が続く限り移動できるようになった。

 

 そして凛の言葉を受けて綺礼が子ギルの方に目をやると、虚数で出来た鎖がズブズブとスパルトイを沈め始めている。

「スパルトイを捉まえて居たのは、ボクの鎖じゃなかったってことさ」

 そう言えば、さきほど凛は、虚数の鎖を見た時に、桜の魔術のようだと言ったではないか。

 どこで見たのか? それはこの時の為に作戦を打ち合わせた時である。

 

「…なんとか術の主導権を奪いました。倒しては居ない筈です…」

「やったわね桜。これで向こうの連中も横穴から大聖杯を目指せるわ」

 ハデスの隠れ兜で姿を消していた間桐・桜が現われる。

 荒い息をついて居るのは、難しい術を使ったからか、それともスパルトイを倒さないように呑みこんだからだろうか。

 あるいは、綺礼が言った様に、魔力が満ちて行くことで人としての機能が損なわれているのかもしれない。

 

 いずれにせよ、結界が解けた。

 あとは大聖杯を巡る戦いに決着を付け、この場を切り抜けるだけである。





 という訳で、結界は解けましたが、聖杯に魔力が少しずつ満ち、所長の無辜の怪物度合いが上がって居ます。
より確実に敵を倒す為、オンオフを繰り返していたことを利用された感じです。
(ただし、直死の魔眼を使わないと、生死判定次第で生き残る可能性が出ますし、使わざるを得ない感じ)
次回に言峰戦の残りと、卑王戦をやって本編は終る予定です。
その後はオマケを入れるか、書ききれなかった部分を調整して書き足すか…になります。

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