Fate/promotion【完結】   作:ノイラーテム

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原作には居ないけど、他のFate物からサーヴァントが登場
相性良さそうだから選びましたが、御気に障る方は、そっと閉じていただけると幸いです。


ボーイ、ミーツ、ガールズ?

「きゃっ!?」

「っ!」

 剣を振りかざして土塀を飛び越えた少年が、少女の顔を見た瞬間に驚いた顔をした。

 少女は思わず息をのみ、後ずさることもできずに佇んでいた。

 

 いいや、そもそも判断できないほど一瞬の出来事なのだろう。

「マっ…っと、大丈夫か」

 脇からもう一人飛び出してくるが、その時には、少年が手に持つ剣は消え失せていた。

 無理やり態勢を縮め、剣が消えなくても良い様に、万が一にも拳が顔面を殴り付けない様に強張らせる。

 少年が出来たのはそこまでで、両手を着いて膝を曲げたまま、その場で動かなくなった。

 

「衛宮? く…ん?」

 息を吐き出しながら少女が尋ねる。

 だけれども返事は無い。

「気絶してるみたいだぜマスター? でもなんかアレだな、随分とダイナミックなDOGEZAじゃねえか」

 もう一人は笑いながら取り出そうとした武装を退転させる。

 少年が自分達に畏まった様にも見え、悪い気分ではなさそうだ。

「サーヴァントが駆け付けて来る気配も無し。同盟という名の利用をするにしても、本当に役に立つのか?」

 もう一人も少女のようだが、少年を見て疑問と言った表情を浮かべる。

 そして答えを得るべく、マスターと呼んだ少女の方に声を掛けた。

 

 その言葉に、マスターと呼ばれた少女は、心外だと言わんばかりに肩をすくめて見せた。

「人聞きの悪いことを言…わないでくれるライダー? 衛宮くんが望むなら、知らないことを教えてあげるとか、彼が不得意な事をボクらが担当する交換条件を持ちかけるってだけよ」

「なんだ。てっきり利用するだけして、最後は石油王辺りにぶつけんのかと思った」

 割と良い奴だな、マスター。

 そう言われた少女は、ほんの僅かに口ごもる。

 

 だが、褒めていると言うよりは、もう一人の少女が言う利用方法と言うのは、余程悪辣なのだろう。

 少しだけ考えをまとめる為、気絶した少年を調べながら、少女は溜息をついた。

 

「一応は無傷(・・)に見えるけど、とんでもなく消耗してるみたいね。中まで運んでくれる?」

「あー!? ただ働きしろって?」

 バーサーカーでも召喚したか、それとも身に合わぬ大英雄でも…とブツブツ呟きながら少女は立ちあがる。

 推論は抱いても口に出さない少女に怒ったのか、それとも本当に働くのが嫌なのか、もう一人の少女は顔をしかめて見せた。

 

「代金は衛宮くんに払ってもらえばいいじゃない。適当に食べる物漁るとか、知らないなら聖杯戦争のこともレクチャーしようと思うから、渡してる宿代も浮くわよ?」

「へいへい。マスターがそう言うなら、こいつの所から代価でもいただくとすっか」

 少しだけ意地の悪い良い方で少女が告げると、もう一人も満更では無い表情で頷いた。

 

 勝手知ったるなんとやら、少女は衛宮家にズカズカと上がり込みながら、もう一つだけ付け加えた。

「ああ、そうそう。他の人の目もあるし、衛宮くんがどの程度理解してるか判らないから、暫く、貴女のことを、フランシスって呼ぶわ。フランシス・ライダーさんイギリス人ってことでよろしく」

「…上官の言うことにゃ、逆らえねえなあ」

 振り向きもせずに少女が告げると、もう一人はニヤリと笑ってスカーフを頭に巻いた。

 

 

 暫くして少年は座敷へ放り投げられたまま、苦悶の声と共に目を覚ました。

 視点もまた少年の元へ、痛そう…という比喩表現は、文字通りの激痛へと移り変わる。

「グっああ!! …っ!?」

 

 ギチギチと体の中を這う、猛烈な痛み。

 まるで急成長しているかのような、体を作り変えているような、…耐えることのできない猛烈な痛み。

「「あ、起きた」」

 俺が目を覚ました時。

 意外なくらい、脳天気な声が聞こえる。

「ゴホン…。あー、ようやく目を覚ました様ね、衛宮くん。ボクは間桐くんの従兄妹で間桐慎。気軽に慎って呼んでくれてもいいけど?」

「あ…? 慎二の…? なんで此処にっていうか、俺は…何を…」

 間桐…桜の兄…違う、俺の友人でもある、慎二の従兄妹?

 

 此処の世界の俺と、此処の世界では無い俺の、混在する記憶。

 螺子曲がりそうになる頭に、取り合えず棚上げしようと整理を付けて、コクコクと頷いた。

「外に転がって居て風邪ひきそうだったから、中に連れてたんだけど…。その、衛宮くんはサーヴァントって知ってる? その絡みで紹介されたんだけど」

「外…サーヴァント…。そうか、俺はキャスターを追って…っ!? っっ!」

 矢継ぎ早に繰り出される言葉に面くらいうながら、俺はようやく理解が追いついた。

 

 正しくは二人の俺が体験した出来事を、順に思い出していた。

「ふーん。その様子じゃ、サーヴァントと契約してキャスター追い返したのはいいけど、消耗が強過ぎて、霊体に戻してるみたいね。ひとまず休んだら?」

「いや、霊体とかじゃなくて、そもそも俺自身が正面から戦ってって、傷は慎さんが治療してくれたのか?」

 害が無いのは判ってるだろうし…と続ける慎さんは、ぞんざいだが心配してくれてるようだった。

 判り難いし面倒そうな所は誰かさんソックリで、言葉使いこそ遠坂に似てる気がするが、やっぱり親戚なんだな…と慎二を連想させる。

 

 そんな彼女は怪訝な顔をしながら尋ね返してきた。

「貴方自身が前衛って、契約したのはキャスターなの? 同じサーバントが現われるならまだしも、同じクラスなんて聞いたことが無いけど。それに…私は普通の治療なんて出来ないし、傷なんて最初から無かったわよ?」

「俺は正式に契約した訳でも無いけど…。傷が…、ない?」

 面食らうのはお互い様だ。

 問題になってもなんだからカードを使ったことは黙っておくにせよ、あれほどの傷が無いなどありえない。

 

 何しろ俺は、何度も殴られ蹴り飛ばされ、火で炙られ。

 最後は猛烈な打撃でブロックした腕をもがれ掛け、呪いを受けてしまったのだから…。

「そうだ、最後は片手がグチャグチャになって、何かの呪いを受けたくらいなんだ。やつのゲイボ……」

 言いながら俺は腕を抑えた。

 ギチギチと何かが成長する音が聞こえ、押しのけられて筋肉自体が悲鳴を挙げるようだった。

 その場に転がり、のたうちまわり、額の脂汗を拭くどころか、張りつめた神経が逆撫でして全身に嫌な汗をかく。

 

「サーヴァントが即座に治療したんじゃなければ、幻を見せてダメージ与える宝具とかか? 何か痕跡とか見えりゃあこっちにも見覚えあるかもだが」

「腕自体がグチャグチャって、おじい様の内臓ひっくり返して、再生蟲でももってこないと無理だ、と、思うレベルよ?」

 後ろの方から、知らない女の声がした。

 正確には慎さんもさっきまで知らなかったのだが、驚き方まで慎二そっくりで、他人とは思えないから除外する。

 かろうじて目線を回すと、スカーフを頭に…いわゆる海賊巻きにした少女がそこに居た。

 




登場人物

間桐・慎:ライダーのマスター
 ワカメこと間桐・慎二の従兄妹と名乗る少女。
魔術回路は正副ともにピッタリ二十本、士郎以下であるが、才能であるのか他の理由か、遥かに効率の良い運用が出来る。
使用可能な魔術は、共感魔術・感染魔術を元にした、呪符魔術(宝石魔術と同じ物)と蟲魔術…ようするに符蟲道に近いことが実行可能。


ライダー:フランシス・ライダーさん?
 慎と契約したサーヴァントで、マスターともども少女とは思えない悪童めいた表情を浮かべる。
頭には縞のスカーフを海賊巻きにし、ズボンはダメージドになってしまったジーンズに、上は皮ジャンとかなりラフな格好の少女。
慎は名前を選ぶ時、テムジンという名前にしようかと迷ったらしいが、とある理由でこの名前に落ち付いたらしい。

宝具:?
 真名を偽装可能。
装備しなくとも効果はあるが、この宝具を使用したままではライダーとしての真価を発揮できない。


という訳で、ライダー陣営の登場です。
原作よりもマスターと相性が良さそうなサーヴァントを選び、特殊性は無いけど、スタンダードに強いキャラを選んでおります。
素直に姐さんでも良いのですが、色々なネタ的に変更。

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