Fate/promotion【完結】   作:ノイラーテム

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 新章の一話目の前に、ちょっと小ネタとギャグを入れますが御容赦ください。
士郎が特殊な投影を使えるんだよとか名前紹介、それをオルガマリーが納得するだけのお話なので、飛ばしてもOKです。
本編に出て来ない礼装のはずなので、ネタ話は問題無いと言う方だけ、ご覧ください。


外伝?蝶は虹色に羽ばたく

「それで、世界が破滅するってどういうことなの?」

「え? ち、違うわよ。私はそんな事…」

 常時150kmを越える高速にも落ち付いたのか、慎が当然と言えば当然の質問を投げかけた。

 オルガマリーはいきなり信じてもらえると思って無かったのか、疑われているのかと勘違いしているようだ。

 

 風切り音も強いので、負けない様な声を出すとどうしても詰問している様な気がする。

「慎、それじゃ混乱するだけだろ。それに…この態勢はヤバイ。ライダーさえ良ければどこかで降りて、落ち付いて話さないか」

 士郎は華奢な腕一本で支えられている事実よりも、女の子の胸が当たって居る事の方が問題らしい。

 抱えて居るのはモードレットの慎ましい胸だから大丈夫とか言ってはいけない。

 健全な少年にとって、我が左手におっぱい、我が右手におっぱい、後方にもおっぱいと言う守護方陣は毒でしかない。

 というか、大員数モードにする余裕が無かったので、非常に狭い。

 

 衛宮士郎、爆発しろ!

 と誰かが言い掛けた所で、船主が思いもよらぬ暴挙に出た。

「駄目だ。…オレの代わりにこいつ抱えてろ。ちょいと飛ばすぞ!」

「きゃあ!? い、いやーああ!!」

「へっ!? そういえば裸だった! ちょっと待て、これは幾らなんでもマズイ!」

 だが暴れ馬は止まる所を知らない。

 再生用の繭から、文字通り生まれたままの格好のまま出て来たオルガマリー。

 それを直接渡されて、士郎はドキマギを通り越して焦った。

 幾らなんでも、これでは変質者である。

 

「ライダー、ライダー! ちょっと聞いてくれ。これは…」

「黙ってろ! …やっぱりだ、追いかけて来る奴が居る。ちょいと跳ねまわるから口を挟むんじゃねえ!」

「追っ手!?」

 男の尊厳を訴えようとした士郎だが、モードレットの怒声に思わず黙る。

 270kmへの増速、そして死の恐怖からオルガマリーが目を閉じ、ぎゅっとしがみついたのは仕方無い事だろう。

 

「あ…はっ、離さないで…落ちる、落ちゃうから~」

「あ、あのさ。もうちょっと大人しくしてもらえると助かる。あと後ろも」

「やっぱり衛宮士郎は爆発しろ!」

 震える少女をお姫様だっこする士郎を見て、かやの外におかれた慎はふてくされた表情でワザとらしく抱きついたとか。

 

 というか慎の女としての部分がどうのというよりは、どちらかといえばヒーローしてるのが気に食わないのだろう。

 本性を少しだけ出しながら、イミヤったらしく質問を重ねた。

「あーあー、これでアインツベルンが出てきたら大惨事だな~。それで! 話は長いのか!? もしそうなら、ダミーを載せてボクらは一度降りた方が…」

「そうね…、降りた方が安全…っ!? 馬鹿じゃないの? 追われてる状況で、サーヴァントから離れるだなんて!」

 一度降りて建設的な話をしようという、慎の意見をオルガマリーは半狂乱で否定した。

 ダミーが上手く機能すればいいが、相手が見破ったらどうするのか?

 あるいは最初からソレを目論んで居たらどうだろう?

 例え精度の良い幻覚であろと、相手はたちどころに見破ってしまうに違いない。

 それに魔術士を騙せたとしても、幻覚を見破る様な英霊や、当て物の逸話を持つ英霊というのは、実に多いのだ。

 

「とりあえず元気を取り戻したようでなによりだ。今の内に何から話すか考えといてくれ。あと…寒くないか?」

「あ、はい。寒いですけど…我慢できないほどじゃないです」

「…なにか露骨に態度が違うんですけどー!?」

 律義に心配してくれる士郎に、オルガマリーは上目使いで身を寄せた。

 防寒対策の魔術を使って居そうな気もするが、自分だったらこの体勢で使う余裕が無いなと、慎はふてくされたまま懐疑的な視線を向ける。

 

 すねた様子があまりにも悪友にそっくりだったのか、士郎は笑いながら考え込んだ。

 生命のやりとりをしてる最中で、常識的に対応しようとする彼は、やはり、どこかおかしいのかもしれない。

「んー。やっぱり妹と同じ年頃の子が裸のままにしておくのは、よろしくないな。あんまり布地はないけど、それで良ければ俺が用意してやるよ」

「ハア!? 家に寄る気か衛宮? 気持ちは判るけど、止めた方が良いし、あってもチャンスは装備か何かを持ち出す為に一回だけに絞るべきだろ」

 あまりにも呑気な士郎に、慎はへの字口で文句を垂れた。

 

「あー違う違う。ジイサンの形見の礼装は持ってるし、家に必要な物はもうないよ。ただ、さ。服装を伴う武具を投影しようと思っただけ」

「なるほど。投影が消える前に外見だけでもコピーしてしまえば、後は楽ですしね」

「…? 着る物を呼び出せるなら、それを着っぱなしでいいじゃん。わざわざ外装を維持し続けるなんて魔力の垂れ流しも良い所だろ」

 士郎は魔術士っぽくないが、必要な物でも、全て不要と斬って捨てる覚悟があるのだな…とオルガマリーは好意的に判断した。

 だが続けて放たれた、慎の言葉に思わず侮蔑の表情を浮かべようとして、思い留まる。

 

「さっきも思ったけど、馬鹿じゃないの? 投影なんて短い間しか存在できないでしょ。それでもデザインが目の前に在った方が良いに決まってるし、防御を考えたら装甲系で…」

「え?」

「え?」

 三人は思わず黙った。

 あまりにも、お互いの意見がかけ離れて居るからだ。

 

 本来の投影魔術とは、その場しのぎの偽物。

 儀式の過程で、僅か一瞬だけでも成立すれば良い道具を、一時的に存在させて、その場を誤魔化す為の代物なのだ。

 本来は…。

 

「どうして黙るのよ!? これじゃ私が馬鹿みたいじゃない! 良い、投影ってのはね…」

「多分だけど、俺は自己流でやっててさ。アレンジなんだよ。最初にコスト払ってると思うんだけど、そもそも能力が全然追いついて無いしな」

 …話が通じない。

 何故常識に着いて講義する必要があるのだろうか?

 思わず罵倒しようとして、この少年だけが自分の救い主なのだと思い直す事にした。

 ここで思いのままに口にして、放り出されたら死ぬかホルマリンである。

 

「まあやってみた方が早いな。イリヤに見つかったら、ランスロットが戦闘機に乗って来ちまいそうだ。どの道無理だし、機能は省いてっと…投影開始」

 士郎は軽く目を閉じると、過去に視た魔術礼装を思い出した。

 

 創造理念・基本骨子・構成材質・製作技術・成長経験・蓄積年月。

 それらを次々に思い浮かべ、『自分だったらどう工夫するか』というアレンジを加えて成立させる。

 物が物だけに、いつもよりも多くの魔力と、全ての魔術回路を一時的に占有するほどの過負荷を掛けながら、ソレは創り出された。

 

『…外見、骨格、内包する魔力により確認。当該区域に適格者は一名。シエロ様、彼女が契約者ということで構いませんでしょうか?』

「頼むよサファイア。オルガマリーに何か服を着せてやってくれ」

 目も眩むスパークと同時に、蒼い宝石が出現する。

 そこから黒い構造物が伸び、白い羽が包み込んで行く、そして蒼い刀身が銃剣の様に延びて行った。

 

『わたくしはキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが魔術礼装、銘をサファイアと申します。オルガマリー様がよろしければ、カレイドの契約をお願足します』

「超抜級の礼装を…投影…した? しかも破綻する事無く、存在を…それとも超抜級だから勝手に存在を…」

 ひくと頬をひきつらせて、オルガマリーは現実から心を切り離した。

 あまりにも論外の現象。

 投影した物が自己存在を続けるだけでも大事件なのに…。

 

 待て、これは、これこそが封印指定級ではないか?

 この事を明かして、彼を脅せば、自分を見捨てる事無く一蓮托生で逃げてくれるかもしれない。

 いや、一緒に逃げる? つまり二人っきりの逃避行…。

 

 混乱したオルガマリーの思考は、あまりにも浅ましい考えと、少女らしい乙女チックな考えに二分された。

 その葛藤が収まらないからか、それとも景気になったのか、サファイアと呼ばれた礼装は強引な手段に出た!

『……マスターは。貴女です』

「…このグリップを持てばいいのね?」

 グールグール。

 礼装から延びる催眠電波に、少女は思わず銃剣付きのハンドガンを手に取った!

 

 

『呼称確認を要請します。当方は既に、採血完了、接触、乙女心。滞りなく諸手続きを確認。それが最後のイチジクの葉、契約は為されます』

「わっ、わたしは…私の名前は、オルガマリー・アニムスフィア!」

 ハンドガンを構成する白い六枚の羽根が、オルガマリーの身を包む。

 

 いずこより精製された膨大な魔力が、魔法少女に相応しい、蝶をイメージするかのような可憐な衣装を構成する。

 そう、真似ごととは言え蝶魔術によってデミサーバントと成った彼女には、この装いが相応しいだろう!

『カレイドの少女、プリズマ・サファイア。ここに誕生です。皆さま末永くマスターを…』

「転身、プリズマ・マリー! …って何が末永くよ! あなた今、私を操ったでしょ!? ノーカンよノーカン」

 その後、少女の可憐な罵声が周囲に響いたと言う…。




 と言う訳で、今回は箸休のギャグ回でした。
調べたらオルガマリーはこの時、十一歳~十二歳みたいだから仕方ないですよね。
本編には関係ないし、士郎にステッキを完全な形で創り出す能力は無いので、サファイアモードで戦うことは無いでしょう。
士郎の上着とか借りてて、島村なカジュアルとかブルマとか途中で購入したと思ってください。
意味はありませんが、サファイアの外見は、みんな大好きピースメイカーを銃身を黒、白い翼状の装飾加工して、宝石で作られた銃剣が付いてる感じで。
確かホロウに出て来たルビーはライフルというかランチャーでしたが、こちらはハンドガンをイメージ。

最後に本編への影響は

1:士郎の投影を知ってる
2:呼びにくいので、シエロと呼ぶ

以外ではないんじゃないですかね
本編を期待していた方が居られましたら、申し訳ありません。

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