Fate/promotion【完結】   作:ノイラーテム

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 と言う訳で、一人だけプリヤと繋げてみました。
 あまり他のFate作品とか好まれない方は、そっと閉じていただけると幸いです


夢幻の召喚

 ホンの僅かに思い出す。

 それは少し前の出来事、この世界ではない何処か。

 

 どうしようもなく行き詰まった世界で、どうしようもなく間違った願いの果て。

 それでも良いとあがき続けた果てに、少年たちが最後の口論を重ねる。

「最初からお前はうっとしかったんだよ。だから行ってしまえ、間にあう内にな」

 にっちもさっちも行かない世界線。

 苦い笑いを浮かべた少年は、最後の最後に奇跡を願った。

 どうやっても救えぬ世界なら、救える者だけでも放り出すしかない。

 

「馬鹿、まだやりようはあるはずだろ! 諦めんなよ、お前も俺も、みんなも…」

 人も人形も転がる死体と残骸の山の中で、もう一人の少年は奇跡に抗おうとした。

 だが心の準備もしてない人間が、物理的にも万端の準備をした少年に叶う筈が無い。

 

 それでも最後まで居残ったのは…。

 まあ単に、彼の方が似たようなことをするつもりだったからだ。

「試してない方法がまだあるはずだ。それに…行くならお前だろ! ジュリ…」

「そんなモノがあるなら…いや、そのつもりがあれば、持って帰って来るといいさ」

 奇跡が閉じて行き、送り出せたことで、苦笑いはそこで晴れ晴れとした笑顔に変わる。

 

 清々したとばかりに、死体と残骸の玉座の上。

 滅亡寸前から滅亡に、世界を置換した少年は、誰も居ない世界で笑った。

 

 

 そして視点は再び冬木の町に戻る。

 果てしも無い彼方の世界で、少年は少年の意識の中に。

 知識の断片は、異なる世界の技術であっても、使い方を記憶の中に刻みこんで居た。

「インストール!」

 夢幻の彼方、この世界には居ないどこかの英霊に道を繋げる。

 

 聖杯を最初の媒介に、膨大な魔力の籠ったカードを第二の媒介に、自分への降霊を第三の媒介に。

 三段ロケットの花火が煌めき、ついには英霊の座に届く!

 

 輝く光明の向こうで、ドルイドが呆けていたのは一瞬。

 口には獣めいた笑みを、瞳はランランと獲物に向きあう。

「なんだそりゃっ…って英霊、英霊に決まってるよな。今代の器が閉じるのを感じる。いいぜ、こういう驚きなら歓迎ってもんだ!」

 男が詠うと、ただそれだけで殺意は魔力に変わる。

 当然ながら世界に刻んだよりも弱いが、『人間の魔術師』を殺すだけなら十分な威力。

 視線だけで作った魔力は光の塊に、腕と共に振るった魔力は形無き刃と化していく。

 

 対する武装は3つ。

 手には剣、腰には鉄槌、背中には斧か何かが括りつけられている。

 重いことは重いが、これは武器として必要な重みだと理解出来る範疇だ。

(使わせてもらうぞジュリアンっ)

 世界線を越えて独り。

 この世界の衛宮士郎ではないエミヤシロウは、聖杯戦争という知識を全身全霊で受諾した。

 

 まだ形に成って居ない魔力を剣で叩き潰し、追跡を開始した形が無いだけの刃を片手で受ける。

 受けた瞬間に自らの体に魔力を流し込み、先ほどまでとはケタの違う強化を掛けてスルーした。

「ほう…。アレを受けて大したダメージじゃねえとは、まさしく英霊の体だな。…正真正銘の英霊を呼ぶ準備した上で、降ろした時にしか使えないって制限掛けてんのか」

 男は狂騒の笑顔を顔に浮かべながらも、頭脳は冷静に事実を捉えていた。

 心のどこかに焦りが拡がるが、今はソレを無視して回路を全開に回す。

 

 上位者の力を降ろすワザは、確かに存在するが高位のワザだ。

 だか、前提条件を覆せば他愛ない手段に成り下がる。

「現界した俺らの全力に比べたら弱えーが、それでもマスター保護するにはむしろ利点だよな。で…、これはどうするよ?」

「っ!? 足で蹴っただけで…」

 まさしく破格。

 男が足踏みすると、ただそれだけで地面が裂ける。

 小さな地割れが俺に攻めかかり、咄嗟に腰の鉄槌で叩き潰した時…。

 

 男の姿が消えていた。

 正しく言えば、俺の側…魔術師が接近すると言う死角の裏まで、忍びこまれてしまっていた。

「てめえは何のクラスに当たるんだ? 魔術師と戦った経験は薄いみてーだが」

「さてな。セイバーか、メイサーか、それともパンクラチオンのレスラーって線もあり得る、かな!」

 背中に感じた殺気に身をよじるが、奴はそれより速く動いていた。

 男はろくでも無い威力で、俺の腹を打ち抜く。

「ハン! ぬかせセイバー」

 メキメキとヒビが入る音を受け入れて、反撃とばかりに剣を翻す。

 前回よりも強く、開戦当初とは比べ物にならない魔力で強化したのに、それでも届かない!

 

 控えめに言って魔境、どう考えても死地。

 どうしようもない袋小路の中で、俺は自分自身を嘲笑った。

「温い。この程度の逆境、越えて見せなきゃ会わせる顔が無いな」

「そうか、じゃあ死にな」

 護り切れないなら攻め立てるまでと、特攻を覚悟した俺に無情な死の宣告が舞い降りる。

 強化して走り出した俺は、いわば止まることのできないロケットダイバー。

 そこへ杖の先から延びる影が、刃と化して容易く迎撃されてしまった。

 

 本当のセイバーなら可能かもしれないが、俺には避けることが出来ない。

 さらに念の入ったことに、この刃は物理現象ではない。

 刃を手で受け止め、もう片方の手で攻撃しようとしても、止めることなど最初から無理なのだ。

 だから…。

「なら、もう一歩前へ!!」

「何…だと!?」

 急ブレーキでは、止められないのだから止まらない。

 

 振り降ろす刃なら絶死でも、振り降ろし切る前なら斬られるだけだ。

 急加速を掛けて自ら肩の肉を削りとられながら、俺は男の顔面に頭突きを掛ける!

 




登場人物

第四の介入者:?
 綺麗なジュリアン、こっちに側に●士郎を送り込んだ原因であり
送りだしただけなので、出て来ることは無い予定


●士郎:セイバーのマスター
 スタッブ・スリーピングで解体されてしまった、本家士郎に混じり込んだイレギュラー。
●は最新刊での雪というイメージであり、同時に行き詰まったどうしようも無い、プリヤの裏世界というイメージ。
 カードを媒介に英霊を自らの体に降ろし、あるいは武器の一部を限定的に効率よく使用可能。
使える魔術は、御存じ投影魔術・強化魔術、そして限定的ながら置換魔術。


セイバー:?
 セイバーのカードに宿った英霊で、逆境に臨む●士郎に力を貸してくれる物好き。
決して優良な英霊ではなく、金ぴか曰く、「拾ったは良いが使い勝手に困る屑カード」とのこと。

現時点で判明する能力は、膨大な魔力による肉体強化。


キャスター:?
 何フーリンなんだ?一体。

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