Fate/promotion【完結】   作:ノイラーテム

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秘密の花園は何処に

「おっ遠坂じゃない、こんな時間に珍しい」

「何を言ってるの美綴さん。何日か前にも会ったでしょ」

 とはいえ、彼女…美綴綾子と出会うのは数日ぶりだ。

 ここ数日、学校を休んで居たのだが…。

 不思議なことに、弓道部主将であるはずの彼女は、制服のまま登校していた。

 本来であれば、この時間はとっくに練習を始めて居るはずなのに。

 

 そこで近くに寄って確認すると、余りよろしくない物が見受けられた。

「どうしたのよ、包帯巻いてるじゃない」

「あー。ちょっと事故に巻き込まれちゃってね。例の新町のやつ」

 事故に巻き込まれて怪我…?

 にしてはピンピンしており、首筋や手足に巻いてる包帯にも特に血は滲んで居ない。

 

「ふーん? ちょっと診せてみなさいよ。もしかしてあの噂本当じゃないの? 恋人出来てキスマーク隠してるとか」

「ばっ…。そんなんだった遠坂にだけは教えて、自慢してるよ。あたしの勝ちだってね」

 悪戯っぽく話しかけると、少しだけ顔を赤らめて反応が返って来た。

 都合の悪いことを覚えて居ると言うか、この回答が帰って来る辺りは本人か。

 我ながら詰まらないことで勝負を申し出たものだが、まあ、こいつも縁無しと言う事でお互い様。

 

 腑に落ちないのは、アヤコが迂闊にも怪我をするなんて、という疑問なのよね。

 普段ならしないような、つまらない理由を使ってまで、確認するのはその為だ。

「遠坂なら大丈夫だろうけど、あんましキツクは触んないでよ? 念の為に巻いてるとは言え、打ち身は打ち身なんだから」

「湿布を固定する程度でしょ? っていうか、結構、本格的に治療してるわね」

 軽く触ってみると、案の状、反応が少し遅れてる。

 打撲に効果の無い湿布ではなく、ちゃんとしたテーピングこそ施しているが、暗示による疑似症状だろう。

 

 さて問題なのは、この『暗示』を誰が掛けたか、だ。

 新町で起きている事件はアサシン陣営のやってる事だろうけど、隠蔽工作は教会の人間がフォローしてるはず。

 それならまあ、放っておいても大丈夫だろうけど…。

 

「あんまり無茶しないのよ? 怪我が治ったら直ぐ無茶する人も居るけど」

「流石に新町の話は、先生方も問題だって話してて、残念ながら部活自体が暫く御休みになちゃいそうなのよね。新入生獲得のためにも、もうちょい色々したかったんだけどね」

 軽く流しかけたが、この話で少しだけ疑問が再燃した。

 少し、対策が早過ぎないだろうか?

 アサシンは隠れてる為か、評判の店やデパ地下など、不特定多数をコッソリ狙える場所でしか事件を起こしていないから、こちらも姿を特定出来て無い。

 いつもなら、もうちょっと大騒ぎになるか、多くの学生がってから動きそうな物だけど…。

 

 部活の子に伝えると言う、アヤコと別れ私は一足早く教室に向かう。

 

 だけど、ここに一つのピースを当てはめれば解決するような気がした。

 アヤコはマキジ…槇寺さんと違って買い食いをするタイプでもない。

 意図的に遠避けられた時、たまたま事件にあった。

 そして、先生たちの動きも、意図的に操作されているならどうだろう?

 

 アヤコと此処で出会ったのも、偶然では無く、顔見知りを使って人払いを済ませたぞ…と言うメッセージなら意外でも何でもなかった。

(だとするとキャスターの結界は弓道場に基部があって、マスターはそこに潜んでいるのかしらね?)

 アヤコを見たからそう思ってしまうのかもしれないけど、案外、あってるような気がした。

 穂群原学園では弓道部が優遇されていて、かなり広い敷地がある。

 それに、そこは繰り返す所作と、無数の音で埋め尽くされることに成る。

 グングニールは、ガンガンという音だと言う説もあるくらいだし、音に満ち溢れた場所と言うのは東洋に限らずあちらでも良い場所なのかもしれない。

 

 私は苦笑しながら、余計な考えを止めた。面倒くさい…。

「ま、どっちみち全部を回るのも面倒くさいし、当たりつけて適当にやるだけなんだけどね」

 どの道、相手が何処に居ても遠慮する気は無かったし、全てのルーンを破壊する必要も余裕も無いのだ。

 弓道場を外しておいてあげるとして、たまたま壊しに行った他の居場所が拠点だったら、笑って済ませるとしよう。

 

「後は裏を取るか。…この時間なら、柳堂くんをからかうのも悪くないかも」

 生徒会長である彼なら、先生方の対応も知って居るだろう。

 彼から見ても違和感があるか、判を押した様な暗示でも掛って居れば、確定だ。

 実際に弓道場かは置いておいて、夕方以降は学校を戦場にしても問題ないでしょう。

 

 そして私は生徒会室で、意外でも何でもない出逢いと、他愛ないが意外な話を聞く事になる。




 と言う訳で、サクサクとイベント進行。
さっさとキャスター陣営の拠点が判明して、どこを爆破してはいけないのかが確定しました。
風呂敷を拡げても仕方無いので、前半戦に向けて準備を片付けることになります。
弓道場が基点なのは、サクっと終わらせる意味と、整合性を保つのを考えるのが楽だったので、変えてませんでした。

現在の凛の想定としては
対魔力持ちのバーサーカーに、キャスターとアーチャーで挑む感じ。
ドラゴントゥースウォリアーはTRPGゲームと違って弱いし、楽勝楽勝と言った風情ですな。

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