ビブリア古書堂の聖地巡礼!!
楽しかったです!!!
最新刊もやっと発売が決まってホッとしています!!
「ここは………」
目覚めると知らない天井だった。
漫画やアニメで多用されるこの言葉がまさに今現実に起きていた。
白い天井に少し硬いベットと枕、周りはクリーム色をしたカーテンによって囲われている。
微かだが薬品の匂いも夜如の鼻は感じ取った。
夜如は自分が何処かの病室に運び込まれたのだと察した。
続いて襲ってくる体への倦怠感と鈍い痛み。
起き上がろうにも関節が固まって動きにくい。
如何にか上半身だけを起き上がらせて夜如は何故こうなったのかを思い返す。
「あの人の眷獣を正面から受けたんだっけ?」
夜如は絃神島東地区にて世界最強の吸血鬼である暁古城の眷獣を正面から受けてしまったのだ。
当然、夜如は即興で不完全ながらも防御技を駆使したが、間に合わず衝撃のほとんどが襲ってきた。
いくら鬼気で身を守っていても相手の世界最強の名は伊達ではなく、鬼の夜如は死なないまでも倒されてしまったということだ。
何故あんなところに古城がいたのかを夜如が知る由もないが、とりあえず夜如は古城に何かしらを奢ってもらおうと深く心に刻んだ。
すると、ダメージで感覚が麻痺していたのか気配を感じる間も無くカーテンが開かれた。
「あらら?夜如君が起きていたりして!!」
「笹崎さん?」
カーテンの隙間から突如顔だけひょっこり出してきたのは夜如の知り合いだった。
赤いお団子ヘアーでチャイナドレス風のシャツにミニスカート、その下からは短めのスパッツとなかなかスポーティーな格好。
彩海学園中等部、体育教師の
天真爛漫なその性格と少し癖のある喋り方は生徒たちに好印象で非常に人気が高い教師だ。
反面、力押しのような授業内容のため一部の生徒から逃げられていたりもする。
「てことは、ここは彩海学園の………保健室ですか?」
「そうだよ。先輩が血相変えて”私の夜如を助けて!!”って駆け込んできたときはびっ、痛!!」
「誰がそうんなデタラメを流せと言ったこの馬鹿犬」
岬が頭を押さえてその場にへたれこむ。
漫画のようなたんこぶは見られないが、かなり激しい音を響かせていたので夜如も思わず顔をしかめた。
そして、岬の頭に扇子を一閃した張本人の南宮那月がカーテンをどかして入ってくる。
「外傷は治ったようだな。流石は鬼の生命力といったところか」
相変わらずのドレス姿、今日は白のドレスだが常夏の絃神島には黒でも白でも厚着の彼女は視界に入れただけで暑くなる。
ちなみに、那月と岬は学生時代からの付き合いで、岬は珍しく那月が苦手意識を持つ存在なのだ。
見た目からしたら年の離れた姉と妹のような身長差だが、少女のような那月の方が先輩なのである。
そんな那月は夜如の心配を全くしていない様子で夜如の体を見てきた。
夜如は那月の視線に釣られて自分の体に目を移す。
夜如はこの時になって自分が裸だったことに気がついた。
「あれ!?服がない!!」
「それは当たり前だったり。夜如君は体だけじゃなくて服までボロボロだったりしてね」
「この馬鹿犬が全部ひんむいた」
わざとらしく頬に手を当てて体をくねくねとさせる岬に夜如は思わず体を抱きしめた。
それでもなお岬は面白がって”すごかったよ………”と教師にあるまじき言葉を呟きながら潤んだ瞳で夜如の体を舐めるように見る。
さらには少しずつ夜如に近づいてそっと胸元を指でなぞるまでの行為を働く。
流石に我慢できなくなった夜如は声を上げようとした。
その直後、
「うん、中は乱れてるね」
「え?」
岬の目が突如鋭くなり、声も冗談の類が含まれていない真剣なものとなった。
夜如は岬の変貌に出そうとしていた声が出せなくなってしまう。
「そうか、ならその餓鬼のこと頼むぞ。私には授業がある。おい、終わったら昨夜何があったのか聞くからな」
那月はそう言い、長い髪をたなびかせて保健室から悠然と出て行ってしまう。
夜如は”大事にな”や”今度は気をつけろ”など、辛辣でも心配の言葉を期待していた。
しかし、那月の口からそのような言葉は無い。
取り残された夜如は混乱していた。
「え?那月さん!?」
「さて、始めますか!!」
「はい?何を!?」
「はい!とりあえずシーツどかして」
「ちょっと!!」
那月の自分を心配していない様子に若干ショックを受けたのもつかの間、夜如は表情がいつもの天真爛漫に戻った岬に問答無用で襲われるのだった。
「大丈夫だって、先輩ツンデレなだけだったりするからさ」
「そうですかねー?」
ベッドの上でうつ伏せになりながら夜如は岬にぼやく。
実を言うと夜如にとって那月の存在はとても大きい。
それは命の恩人でもあり育ての親でもあるからだ。
その那月から今回何も言われなかったことにショックを受けた夜如は岬に思いをぶつけていた。
夜如の姿はまるで親に構ってくれなかった子供のようだ。
「むしろ今回は逆だったりして………」
「え、何がですか?」
「ううん。なんでもない。ほら、精神の乱れは気に影響したりするから」
岬はうつ伏せになった夜如の背中に指をゆっくりと突いていく。
岬の指先には薄く光っており、その光を夜如の体に注入しているような光景だ。
夜如は不満そうな表情を岬の指が当たる度に苦悶の表情へと変えていった。
「痛っ!」
「硬ばらないで、我慢だよ。鬼は筋肉が濃密で力がいるし鬼気が邪魔で難しいんだよ」
岬が行なっているのは気功術の一種だ。
そもそも岬は武術と仙術を高いレベルで極めた
仙術という体内の気を操る術を身につけている岬には触れているだけで相手の気が分かるのだ。
「気はどんな生物にも流れていてその流れで体調とかが変わるんだよね。夜如君の気は今めちゃくちゃに乱れているから、こうして特殊な治療しないと外傷がなくても倦怠感とか内部からの痛みとかがずっと続いちゃったりして大変だから」
「自分にも普通の気ってあるんですね。鬼だから鬼気だけかと思ってました」
「そりゃそうだよ。夜如君にも鬼気や気だけじゃ無くて魔力とか呪力とかもあるよ。使いこなせるかどうかは別の話だけど」
針治療のように指先で的確な部位を突いていく岬は鬼の筋肉に苦労しながら治療を進めていった。
しかし、一人でギャングを潰したり、拳一つで地面を割ったり、手から気功波のビームを出したり、数々の伝説を残して”
時間がかかるのは仕方がなかった。
「先輩もツンデレだなぁ」
「那月さんがですか?」
「だって、こんなこと普通専門病院に行った方が絶対にいいもん。なのにわざわざ学校に来て私に任せるんだよ?もしかして、取られたくないとか思ってたりして」
夜如は岬の言っている意味がわからなかった。
だが、那月と学生の頃から付き合いのある岬の言葉はあながち間違っているわけではない。
鬼という珍しい生物の治療、あらゆる建前を並べて死なない程度に人体実験ならぬ鬼体実験をされる可能性だってあるのだ。
最悪なのは夜如を細切れにしてクローンを何体も製造すること。
殺されはしないだろうが、実験動物として扱われる夜如を見過ごす那月ではない。
那月はそのことを危惧したのだと岬は考えている。
(側にいすぎて情が大きくなってたりして)
「笹崎さん?」
岬は頬を緩ませてこの場にはいない那月のことを思う。
那月が今の岬の顔を見たら間違いなく岬の頭に大きなこぶができていただろう。
「夜如君、那月先輩と一緒にいてあげてね」
「………何のことですか?」
「はい終了!!」
「うぐっ!!」
夜如の乱れていた気を整えた岬は最後にうなじを小突いて夜如を気絶させる。
鬼にも効くように強く突いたので夜如は白目を向きながら眠ってしまった。
自分と同じぐらいの背丈の鬼を気絶させるなど本来なら不可能と言ってもおかしくない。
ただの弱いパンチだ。
しかし、それをやってのけた岬は額の汗を拭って満足そうにしている。
「起きたら自己回復で相当元気になってるどころか強くなってたりするから」
岬は夜如の規則正しい寝息を確認するとカーテンを閉めて保健室にある別のベッドに倒れこむ。
よく見ないとわからないが、額だけではなく岬の肌からはすごい量の汗が流れている。
指先に至っては赤く腫れてしまっていた。
「気の流れを治すだけでこれって………鬼気どれだけすごいのよ」
そんな岬でも鬼の鬼気を相手にするだけで消耗してしまう。
魔力でもなく、呪力でもなく、気でもない。
鬼だけが持つ特別な力。
「その鬼気の流れをあれほど乱す力って一体………?」
岬はそのまま夜如と同じように眠りに入ってしまった。
その後、二人が目を覚ましたのは那月による扇子の一撃で、授業が終わった放課後だった。
岬が職務放棄の謝罪をするために大急ぎで校長室に向かっていくのを面白がるように那月は見ていた。
「やはり保健室に人払いと放送が流れないように音響の結界を張っておいたのは正解だったな」
(笹崎さん、那月さんはツンデレじゃなく百パーセント悪です)
古城視点からの話がないですが、ご了承ください!!
この小説の本番は原作4巻からなんです!!
その前の巻もちゃんとやりますけど内容スカスカになるかもです!!
でもちゃんとやります!!(大事なことなので二回)
では、評価と感想お願いします!!