ストライク・ザ・ブラッド〜鬼の目にも涙〜   作:*天邪鬼*

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テストが〜


20話 女王

(どうしよう………)

 

その場の勢いでカッコつけた自分には似合わない台詞を言ってから、夜如は後悔していた。

勿論、街を破壊させないという意志に揺らぎはないが、相手は進化を続ける神々の兵器である。

同じ方法で街を守っていてはいずれ夜如の羅生門による防御は突破されてしまうだろう。

つまり、必要最低限の防御と反撃で浅葱が作っている筈のナラクヴェーラの停止コマンドが届くまで凌がなくてはならないのだ。

幾ら何でもそれを夜如一人で行うのは不可能に近い。

唯一の救いは古城と紗矢華が地下にいることだ。

しかし、こちらもいつ現れるか分からない以上しばらくは夜如がナラクヴェーラを足止めしなければならないということ。

 

(やるだけやるしかないか………)

 

かと言って、諦めるのは論外。

夜如の後ろには市街地がある絃神島の南地区。

研究者の家族が多く住んでいる場所なのだ。

もし、ナラクヴェーラが本島に渡ってしまえば多くの犠牲者が出ることは必至である。

 

「ふっ!」

 

夜如は腰を落としてナラクヴェーラ六機の襲撃に備えた。

ナラクヴェーラはその瞬間に動いた。

三機のナラクヴェーラからのレーザーである。

光学兵器は一直線上にしか攻撃ができないことから、夜如は火を噴く槍と恐れられるレーザーを紙一重の差で躱す。

しかし、残りの内一機から狙いすましたかのようなレーザーが飛んでくる。

幸い、足を離して回避したわけではないのでそれも躱す。

すると、また別のナラクヴェーラが夜如が避けた先にレーザーを打ち込む。

これが延々に続く。

一つでも十分強力なレーザーを正確に計算して相手を追い詰めるために使っているのだ。

加えてナラクヴェーラの一部が羅生門に向けてレーザーを放つ。

 

「やばい〜!!」

 

街を守る。

その大きな決意が逆にナラクヴェーラに大きな好機を与えてしまったのだ。

ただ放っただけならまだいい。

レーザー数発で破壊されるほど羅生門は脆くないからだ。

しかし、羅生門にレーザーが当たっている瞬間にも夜如への攻撃は止まっていない。

夜如へ攻撃する機体、羅生門へ攻撃する機体、予備機。

羅生門を解いてしまえば街にレーザーが飛んで行くことになり、自分がレーザーでやられても羅生門が消えて同じことが起きる。

数の優位をナラクヴェーラはしっかりと理解していたのだ。

 

「羅生門が破壊できれば良し、自分をやれればなお良し。機械とは思えないですね………!」

 

摂氏二万度の超高温レーザーが鬼気で守っているとは言え少しずつ夜如の体を傷ついていく。

羅生門も着実にダメージを蓄積していく。

ここにきてナラクヴェーラが統率を測り始めたのだ。

それは何故か?

夜如の頭はグルグルと回る。

単純に考えればナラクヴェーラがそのように進化したと考えればいい。

しかし、ナラクヴェーラの進化はこれまで見た限り自身の機能に対しての進化だけだ。

進化するなら夜如のスピードやパワーに対抗できるような進化、例えば装甲を強化する物体を感知する感度を上げるなどだ。

実際、海から出てきたナラクヴェーラは巨大な機体からは考えられない気配を断つ機能を身につけていた。

新たな機能を開発するのではなく戦術を変えるというのはナラクヴェーラの機能的に進化とは言い難い。

 

「いや、違う………これがナラクヴェーラ?超火力を持つ無数のナラクヴェーラ………それが神々の兵器の所以ってこと?なら、これが本来の戦闘方法ってことか!!」

 

夜如が結論に至るのにそう時間はかからなかった。

雨あられとレーザーが降り注ぐ中で夜如は苦笑いを浮かべる。

”負けるかもしれない”

初めて夜如は心の底からそう考えてしまった。

そもそも、吹き飛ばされて増設人工島と本島の間の海に羅生門を立ててしまった時点で夜如は詰んでいたのだ。

飛行能力を持たない夜如に空中でレーザーを躱す手段はない。

一直線にナラクヴェーラへと突っ込んだら一瞬で灰も残らないほどのレーザーで焼き殺されてしまうだろう。

逃げられないうえに反撃できない。

残された道は命を懸けた時間稼ぎのみ。

思えば、五機のナラクヴェーラが現れた時からこの状況はナラクヴェーラにとって予想通りの展開なのかもしれない。

そして、

 

「あれは………親?」

 

レーザーで攻撃を続けている六機のナラクヴェーラの後ろから現れる影。

攻撃中のナラクヴェーラより数段大きいナラクヴェーラである。

巨大ナラクヴェーラはまるで王のような貫禄で夜如の前に立ちはだかった。

夜如も流石にマズイと感じる。

 

『ほう………?鬼か。絃神島、珍しいものを飼っているな』

 

「………あれ?」

 

巨大なナラクヴェーラから聞こえる低いダミ声。

この時、ナラクヴェーラの性能を過大評価しすぎていたのではないかと夜如はレーザーを避ける際の逆立ちの状態で頭を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させるか〜!!!」

 

『む!?』

 

赤い閃光だった。

ナラクヴェーラの”火を噴く槍”とはまた別の赤い閃光である。

それも太く大きく、そして何より赤い閃光はナラクヴェーラが密集する地点の地下から地面を破って天空へと伸びている。

これの発現者であろう古城は抉られた地面から拳を突き上げていた。

 

「間に合った〜………!!」

 

古城の復活、それも恐らく新たな眷獣の力を覚醒させた古城が現れたことで夜如は思わず腰を落とす。

光速のレーザーを数十メートル離れたナラクヴェーラの発射口を見ながら避けるのは鬼でも至難の技。

全身に火傷を負ってバイト支給の青ジャージはボロボロで右腕の部分は綺麗に無くなっていた。

 

「南宮夜如!!無事なの?………てか、何この壁!?」

 

「お陰様で!」

 

古城が開けた穴からは紗矢華も飛び出てきていた。

何故かシャツのボタンをかけ間違えているのを夜如は見逃さなかったが、どうせ後で雪菜からの説教が待っているだろうから何も言うまいと黙っておくことにした。

 

「夜如は休んでいろ!!後は俺に任せておけ!!」

 

古城は巨大な壁の上で腰を落としている夜如に叫んだ。

上空で輝いている閃光は同時に輝きを失い始め、中から馬のようなシルエットが浮かび上がる。

それは突如として一体に爆音を響き渡らせた。

存在しているだけで空気を振動させる眷獣だ。

 

「ここから先は、第四真祖()戦争(ケンカ)だ!」

 

緋色の双角獣を上空に従えた古城が巨大なナラクヴェーラに拳を突き出した。

そして、

 

「いいえ、先輩。私達のです!」

 

連れ去られた筈の姫柊雪菜が最新戦闘機のような流麗な槍を構えて古城の目の前に降り立った。

 

「姫柊さんが来たってことは」

 

「できたのか!?」

 

雪菜はこくりと冷静に頷く。

 

「はい。藍葉先輩と凪沙ちゃんは南宮先生が保護しています」

 

「那月さん流石です!!」

 

夜如は小さくガッツポーズをとる。

遠くて小さな雪菜の声も夜如の耳には届いているのだ。

 

「まぁ、紗矢華さんのシャツのボタンがかけ間違えていることについては後で追求しますけど、とにかく今はナラクヴェーラです。これを女王の中に放り投げて音声ファイルを再生させれば私たちの勝ちです」

 

雪菜が取り出したのは普通のスマートフォンだ。

ナラクヴェーラは音声操作で動く兵器。

倒すのは非常に難しいが考えて適切な対応をすれば予想以上に簡単に倒すことができる。

このまま進化すれば別でも、中途半端に近代化して進化したナラクヴェーラはそこに弱点があるのだ。

 

「その為にも女王の中にいる獣人を引きずり出さないといけません」

 

「中に誰かいるのか?」

 

「はい、そもそもナラクヴェーラには人が入って操作する兵器ですから」

 

雪菜の説明に夜如の頭の中で合点がいく。

ナラクヴェーラの子機が連携し始めたのは親、女王が接近して来た頃だった。

女王を操作している奴が子機の味方に指示を出していたのだ。

指導者が現れたことでバラバラだった戦闘員がまとまったということ。

 

「クリストフ・ガルドシュがいます」

 

「あ?」

 

古城、雪菜、紗矢華の背中に嫌な汗が流れた。




原作を読み直しました。
設定全然違う………話も全然違う………
でも気にしないのが自分です!!
とあるYouTube実況者さんのラジオを聴きながらパソコンに打っていたので誤字脱字と話の内容が酷いかもしれませんがご了承を。

次回が戦王の使者編の最終回ですかね?

では、評価と感想お願いします!!

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