ストライク・ザ・ブラッド〜鬼の目にも涙〜   作:*天邪鬼*

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SAOの映画見に行きました!!
ラストバトルで泣いたのは自分だけじゃないと思っています!!
特にマザーズロザリオの時が………
二週目絶対に行きます!!


15話 怒り

「アスタルテ!アスタルテ!!」

 

アスタルテの目は虚になって、今にも薄い水色の瞳の奥に輝く光が途絶えそうになっていた。

夜如は壁を背にして倒れているアスタルテの正面に回って必死に呼びかける。

腹部から胸部にかけて黒く固まった血液が那月からの支給品であるメイド服を染めていた。

傷口からの血は止まっているように見えるが流れ出た血液の量は床にまで届いている。

六発の銃創が確認でき、致命傷なのは明らかだった。

 

「アスタルテ、ちょっと待ってろ!!」

 

夜如はすぐに救急車を呼んでもらおうと職員室へと向かおうとした。

こんな時に限って携帯を持っていない自分に腹をたてる夜如だが、苛立ちの間に微かな声を感じ取った。

 

「………って」

 

駆け出そうとしていた夜如は足を止めて振り返った。

見ると、アスタルテが口を震わせていたのだ。

当然、夜如はアスタルテの口元に耳を近づけた。

 

「報告します………現時刻から約二十五分前、クリストフ・ガルドシュと名乗る人物と数名が本校校内に侵入………クリストフ・ガルドシュは私を撃って藍羽浅葱、姫柊雪菜、暁凪沙を誘拐していきました」

 

「何!?」

 

アスタルテの声は今にも消え入りそうな程小さかった。

それでもここまで正確な情報を報告できたのは奇跡に近い。

アスタルテは誰かにここでの出来事を報告しなければならないと思い待っていたのだ。

胴体を銃弾で撃たれても、撃たれてから二十五分経とうが決して意識を失わないで待っていたのだ。

 

「その後の行方は不明、謝罪します………私は彼女たちを………」

 

「もう喋るな!!」

 

夜如はアスタルテに怒鳴って今度こそ職員室へ向かおうとした。

しかし、意識を手放そうとしているアスタルテの最後の言葉に夜如の足は再度止まることになる。

 

「ごめんなさい………お兄ちゃん………」

 

「………ッ!?」

 

夜如の脳裏に昔の記憶が駆け巡る。

それは最近では思い出すこともなかった悪夢のような現実の光景。

悲鳴や怒号が里中にこだまし、家屋は破壊され、大切な同種の仲間が殺されていく。

夜如の腕が震える。

昔のことだとわかっていても当時の恐怖を忘れられるはずがない。

呼吸は乱れ、腕から始まった痙攣も全身へと回った。

 

「お前まで………」

 

夜如は震える全身でアスタルテに歩み寄った。

肩に手を置いて、今にも消えそうなアスタルテの瞳の光に訴えるよう夜如は正面からアスタルテを見て言う。

 

「お前まで()()を言わないでくれ!!」

 

夜如の叫びにアスタルテは僅かに瞳を大きくして顔を上げる。

焦点が乱れてしまい靄のかかった視界で、アスタルテは確かに見た。

涙を滲ませる夜如の姿を。

その涙はアスタルテの心に大きな衝撃を与えた。

 

「ごめんなさ………い………」

 

「アスタルテ!!!」

 

その衝撃は人工生命体として生まれたアスタルテにとって初めてのことだった。

病は気からと言われるように、アスタルテの精神に動揺が走る。

そもそも精神力のみで繋いでいた意識はその影響で途絶えてしまう。

 

「夜如!?」

 

「暁さん!!」

 

すると、アスタルテが気を失ったとほぼ同時に保健室へ古城が走り込んできた。

魔族が誇る高度な五感の内の嗅覚で昼休み中の校内から血の匂いを嗅ぎ分けてやってきたのだ。

古城も夜如が呼びかけるアスタルテの悲惨な状態を見てすぐ駆け寄ってきた。

しかし、アスタルテが古城の声に反応する様子はない。

 

「どいて!!」

 

そんな医療知識のない二人の間に一人の女性が入り込んできた。

長身のポニーテールが特徴的な人だ。

女性はアスタルテの様子を見ると無駄のない動きでアスタルテのメイド服を脱がせ始めた。

突然の行動に夜如は女性を止めようとするが、女性の表情を見て動きを止める。

女性は額に汗を滲ませていた。

 

「あなたは………?」

 

「私は獅子王機関の舞威媛!大丈夫、任せて!!」

 

夜如は古城と共にやってきた獅子王機関の舞威媛(まいひめ)と名乗る女性に全てを任せるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「応急処置は施したわ。けど、危険なのは変わらないから急いで救急車を呼んだ方がいいわね」

 

舞威姫は保健室のベッドにうつ伏せに寝かせたアスタルテを見て言った。

その声にはやり遂げた達成感と安堵の感情が混じっている。

アスタルテの背中には数本の針が刺されており、その針はアスタルテの生命維持に関わる臓器機能を必要最低限にし、仮死状態にして肉体への負担を減らしているのだ。

しかし、銃弾自体は未だにアスタルテの体内に残っているので一刻を争うことに変わりはない。

可能性は低いが鉛中毒になる可能性もあるのだ。

 

「ああ、今呼んだ。でも、すぐには来れないみたいだ。多分、さっきのヘリの墜落と無関係じゃない」

 

「ヘリ?」

 

アスタルテの顔を心配そうに見ていた夜如が古城に聞く。

 

「さっき屋上でヘリが一機撃ち落とされてるのを見たんだ」

 

「そうですか。なら、そっちの方面にアスタルテを撃った奴がいるんですね?」

 

古城の話を聞いた夜如は全身から赤黒い鬼気が漏れ出す。

アスタルテを生死の境に追い込んだ者への怒りが夜如の鬼気に力を与えているのだ。

世界最強の吸血鬼たる古城でも夜如の変貌に気圧されてしまう。

 

「ちょっと、暁古城!彼平気なの!?」

 

その圧力に恐怖を覚えたのは古城だけではない。

いくつもの修羅場を潜り抜けてきた獅子王機関の舞威媛である女も夜如の姿は十分警戒すべき者だった。

日常の夜如を知っている古城は大丈夫だと迷いなく言える立場だ。

多忙なアルバイトに勤しんでいるし、唯我独尊をゆく那月が最も信頼している男なのだから。

しかし、今の夜如は古城が今まで見たことのない雰囲気を出している。

古城と夜如は数年の付き合いだが、古城に限らず夜如の友人は夜如が本気で怒ったところを見たことがないのだ。

故に、古城は喉を詰まらせた。

 

「そうだ、自己紹介がまだでしたね。自分は南宮夜如と言います。見ての通り鬼です」

 

「へ?あ、ああ………そうね。私は煌坂沙矢華(きらさかさやか)、獅子王機関の舞威媛よ」

 

夜如は醸し出す雰囲気とは裏腹にとても丁寧な口調で軽く頭を下げた。

沙矢華は警戒しながらも夜如の礼儀に則り手を胸に当てて返した。

 

「あなた一体………」

 

夜如の丁寧な口調に警戒心を一瞬緩めた沙矢華は少し踏み込んだ質問を投げかけようとする。

”これから何をするつもり?”そう沙矢華は問いかけようとした。

しかし、沙矢華の言葉に被せる形で夜如は言った。

 

「勿論、クリストフ・ガルドシュをぶん殴りに行きます!」

 

「「ッ!?」」

 

右拳から音を鳴らし夜如の鬼気は更に膨れ上がった。

古城と沙矢華は味方である筈の夜如に対して思わず臨戦態勢をとってしまう。

一般生徒が保健室に入ってきたら一瞬で意識を失うであろう圧力を夜如は放っているのだ。

ほんの数メートルの間合いでも古城と沙矢華が気絶していないのは魔族と舞威媛の称号を受けている霊能力者だからに他ならない。

 

「落ち着けって!!アスタルテに悪影響がどうすんだ!!」

 

「あ………」

 

古城の怒号は夜如を落ち着かせるのに十分だった。

夜如は咄嗟に鬼気の放出を止めてアスタルテの顔を見た。

心なしか仮死状態で感情が現れることはないはずなのにアスタルテの表情は苦しそうにしている。

息を乱す夜如を古城は力強く小突いた。

夜如は思わず頭を抱えてしゃがみこんだ。

 

「痛った〜!!」

 

「ちょっとは頭を冷やせ!」

 

授業中とは真逆。

古城が夜如を叱る珍しい場面だ。

 

「ごめんなさい………煌坂さんも………」

 

「い、いえ。別に私は」

 

またも変化する夜如の雰囲気に沙矢華は着いていけなかった。

先ほどまでは正に鬼のようなプレッシャーを放っていた夜如が見る影もなく古城に殴られた頭を抑えているのだ。

 

「でも………」

 

「「?」」

 

「アスタルテを撃った奴をぶん殴る意志は変わりません!!」

 

夜如の瞳が赤く染まる。

その瞳は古城からしても沙矢華からしても明らかな怒りを含んでいた。

 




PSvitaが修理に出されたのでゲームができません………
投稿ペースは早まるかな?

では、評価と感想お願いします!!

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