問題児に紅茶、淹れてみました(休載)   作:ヘイ!タクシー!

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今回は急いで出したんで結構荒いから後日修正するかもです。
ついでに未だ会議終わってない。


手掛かりっぽいモノが見つかったらしいですよ

黒ウサギの声が室内に響き渡る。

それを聞いたエミヤは話し始めた。

 

「いや、だからレーヴァテインは巨人ス―――」

「それはもう聞きましたよエミー」

「今の、はい?は理解の許容範囲を越えたから漏れた疑問だぞエミヤ」

「…………わかってるよ」

 

場を和ませるためのウィットに満ちたジョークじゃないかと、ぶつくさエミヤが言っていると、復帰した黒ウサギがツッコむ。

 

「……………はっ!いや、いやいやいや!!何ですか"世界を焼き尽くす炎"の剣って!?本物のレーヴァテインじゃないですか!!」

「ヤホホ………………数々の名剣を造っているのは知ってましたが、まさか神剣を造っているとは…………」

「ああ、すまない。盛り上がっているところ悪いんだけど、私の剣はそこまでの性能じゃないよ」

 

黒ウサギとジャックがエミヤの発言に戦慄していると、エミヤが待ったをかけて発言し直した。それを聞いた一同が安堵する。

 

「そうですか………もぉエミヤさん驚かさないで下さいよ」

「ごめんね黒ウサギ。まあ、私の"レーヴァテイン"は北欧神話の剣をただ模倣した紛い物。到底あらゆる全てを焼き尽くす事はできないと言う訳なんだけど……ただ問題もあるよ」

 

エミヤは一度、皆が落ち着いたのを見計らって発言した。

 

「あの剣は使用者によっては"万物を焼き尽くす"炎を生み出す。だからアンダーウッドの要である水樹が相手でも、ここ一帯を更地にするなんてわけないの」

「へぇー…………ってお馬鹿様!!メチャクチャヤバイじゃないですか!?」

 

期待した私が馬鹿だった!とばかりに机に突っ伏し頭を抱える黒ウサギ。他の面々、特にサラとジンが真っ青になり始めた。

地獄の炎を生み出すジャックは比較的冷静だが、それでも少し焦っていた。

 

「ヤホ……不味いですね。万物を焼き尽くす、つまり水だろうと金属だろうと"全て等しく焼き尽くす"と言うことですよね、エミヤ殿?」

「うぇ!?ジャックさん、それは流石に言いすぎでしょ!」

「いや、ジャックの言うとおりだよ。海だろうと金の塊だろうと全て焼き尽くすよ。まあ、持ち主の霊格によるけどね」

 

その絶望的な言葉を聞いたアーシャも机に突っ伏し、頭を抱えた。つまり燃えたら最後、その存在がこの世から消えるまで炎は止まらないと言うことだ。

しかし、事前に聞かされていたレティシアやフェイスレスは冷静に尋ねる。

 

「エミヤ。その神剣の対策はあるのか?そもそも奴等に渡っているとしても、巨人達はその剣を操れるのか?」

「………難しいところだね。まあ、仮に操れても十全の力は発揮できないだろう。できてここの水樹を焼き尽くす程度かな」

「確か、彼等巨人族には北欧の者も多くいるのでしたね?………しかし、スルトの血統を持っていたとしても扱えるものなのですか?」

「………そもそも、レーヴァテインは神と巨人のハーフである神ロキが鍛えた神剣。それがムスペルヘイムに封印されたと言う記述しか無いんだよ。だからスルトの血縁とは関係なく北欧の巨人がその剣を操れるのかもしれないし、操れないのかもしれない」

 

そこで一度言葉を止め、エミヤは再度口を開いた。

 

「だからこそ巨人の襲撃を防ぐなら最悪の展開を予想しないといけないの。一応、制作者である私はその対策も持ってるけど、他の人が襲われたら私は何もできないよ。加えてあの霧が問題だね。居場所がわからなければどうしても対処が遅れる」

 

霧と言う単語に反応するのはフェイスレスとサラだった。二人とも混戦と化した防衛戦を見たからこそ驚異を感じたのだ。

もし仮にあの霧の中で災厄の炎が放たれれば、被害は格段に増えるだろう。ただでさえ、先の襲撃で戦闘専門コミュニティである"一本角"と"五爪"はかなり被害を受けたのだ。これ以上被害が出れば、確実にこの後の収穫祭は中止になる。

それを悟ったサラに焦燥が浮かぶ。

 

「それは不味い!仮に私達が負ければ収穫祭の中止どころか南側の安寧も乱れてしまう!!」

「……えっ?サラ様、それはどういうことですか?」

 

サラの発言に今まで黒ウサギと共に突っ伏していたジンがガバッ!っと勢い良く顔をあげた。

サラはジンを見て、少し躊躇いながらも説明のために口を開いた。

 

「………私達は以前白夜叉様に南側の新たな"階層支配者"を選定して欲しいと相談したのだ。だが、秩序の守護を司る"階層支配者"の候補は簡単に見つからなくてな…………推定五桁の魔王である"黒死斑の魔王"を倒した実績と、最近の東側の安寧を白夜叉様に代わって守護している"無銘"殿にお願いできないか聞いたのだが………」

 

サラはちらりと話を聞いているエミヤに視線を向けるが、直ぐにジンに向き直り話を続けた。

 

「かの騎士には、色々と白夜叉様に考えがあって、それは出来ないと言われたんだ。だが、そこで白夜叉様からこの状況を打破する案を出された…………それが"龍角を持つ鷲獅子"連盟の五桁昇格と"階層支配者"の任命を同時に行うと言うものだ」

 

ハッと話を聞いていたメンバーがサラの言わんとすることを察した。ジンはサラにその考えが合ってるか問う。

 

「つまりこの収穫祭の成功報酬こそが、"龍角を持つ鷲獅子"連盟の五桁昇格と"階層支配者"の任命を賭けたゲームと言うことですか!?」

「そうだ」

 

元々サラは北側出身のため、縄張り意識の強い南側でも伝統のある"龍角を持つ鷲獅子"連盟の議長になるのは殆ど不可能に近かった。

しかしサラは北側の"階層支配者"である"サラマンドラ"の元・跡取り娘。その経験を見込まれて三年間で議長の座に就いたのである。

もし仮に彼女が星海龍王の角を継いでいれば、"サラマンドラ"は最盛期を迎えただろうと言われた程の逸材だ。

 

そんな彼女のいる"龍角を持つ鷲獅子"が次期"階層支配者"になるのも不思議ではない。

しかし、当のサラは憂鬱気に苦笑を浮かべていた。

 

「次期"階層支配者"という立場を捨てて"龍角を持つ鷲獅子"連盟に身を置いた私が、南側"階層支配者"になろうとしているのは、さぞかし滑稽に見えるだろう…………。しかし今はそんなことも言ってられない。南側の安寧の為にも、どうか両コミュニティには力を貸してもらいたいのだ」

 

そう言って真摯な表情をジンとジャックに向けるのだった。

 

「と言われましてもねぇ…………」

「…………少しメンバーと相談させてください」

「構わない」

 

視線を向けられたジャックはあまり乗り気ではない様子だった。

ジンも一人で結論を出していいものかと黒ウサギやレティシア、エミヤに目を向ける。

 

「今のコミュニティのリーダーはジン坊っちゃんです。貴方が正しいと思う選択をなさればよろしいかと」

「そうだな。黒ウサギの言うとおりだ。それに今の私はコミュニティの1メンバーでしかない。参謀の十六夜がいない今、ジンが決めなければ」

 

視線を向けられた黒ウサギとレティシアは厳しくもジンの為に敢えて助言を出さなかった。それを聞いたジンは、十六夜と同じく成果を挙げているエミヤに視線を移した。

その視線を受けたエミヤは、自分の与えられた身分相応の言葉を返すつもりで返事を返す。

 

「………私も二人の意見には賛成だけど、求められた分の仕事は活躍しよう。といっても私からは情報を整理させてもらうくらいだけどね」

「構いません。エミヤさんの考えを聞かせてください」

 

そうジンに言われてエミヤは口を動かす。

 

「まず不参加の場合についてだけど、これにデメリットはほぼ無いだろうね。手伝わなかったとしても私達が訴えられる義理もないしね。神剣についても、アレは"サウザンドアイズ"と"サラマンドラ"の管理責任であって私達には関係ない。

強いて言うなら、ここの特産品とゲームの商品を得る機会が無くなるくらいかな。

………次にメリットだけど、私達は危ない橋を渡ったりしなければ、コミュニティに被害を出さず、安全に本拠に帰れるってことが最大のメリットかな」

 

エミヤの発言を聞いていたサラは少しずつ意思消沈していく。それを視界の端に捉えたエミヤは、次に、と少し強調を付けて話し始める。

 

「参加するデメリットは参加しないメリットの逆だね。運が悪ければ私達は全滅することが最大のデメリット。

最後にメリット。私達は南側に恩を売れるし、未だ評判の悪い"ノーネーム"が活躍すれば、一気に私達の当初の目標に近づく。後は南側の住人の平和を救えることかな」

 

その言葉を聞いてジンはハッとする。もしかしたら自分達の行いで南側の住人に"ノーネーム"と同じ悲劇を与えてしまうかも知れないということに気付いたのだ。

表情が変わったジンを見たエミヤは、さらにここでもう一押しした。

 

「それとこれは私の推測なんだけどね………もしかしたら元"ノーネーム"メンバーの居場所の手掛かりを見付けられるかもしれないよ」

 

そう言い放ったエミヤに、静観していた黒ウサギとレティシアも驚いた表情を向けた。

 

「そ、それはどういうことですかエミヤさん!?」

「……推測の域は出ないけどね…………簡単なことだよ。今回の襲撃と"階層支配者"の消失。それに加えて北側で盗まれた神剣レーヴァテインが相手の手の内にあるんだ。北側の魔王襲撃とは無関係では決して無いと思う」

「たしかにそうかもしれませんが……それと同士の関係は?」

「まあそう急かさないで………私はずっと疑問に思ってたんだ。十六夜も言っていたけど、"黒死斑の魔王"のゲームでは黒ウサギが"審判権限"を使用した時点で私達は負けるはずだったんだよ。

蔓延する黒死病は一部の人を除けば、1ヶ月と経たずに北側の住民全てに死を与えていた。そうなれば都市の機能は壊滅。私達は降参するしかない」

「ヤホホ…………確かに相手側の条件を飲んでいれば私達はヤバかったですね」

 

話を聞いていたジャックがあの時聞いた情報を思い出す。

 

 

"黒死斑の魔王"ペストが、ゲームを誤審で止めた対価に付けてきた条件は、30日後のゲーム開始であった。それが受理されれば北側に黒死病が蔓延してゲームオーバーであったのだが、ペストが勝った時の報酬の上乗せとゲームの時間制限を条件に、ジンが交渉を進めて事なきを得たのだった。

 

 

それをあのゲームを経験した者達が思い出している中、エミヤは話を続ける。

 

「なのに私達は勝った。じゃあなんで勝てたと思う?」

「えっと………そ、それは相手がまだ新参者の魔王で、僕達の提案に引っ掛かってくれたから、ですか?」

「それも無くもないけど、後のゲームルールだって相手にしてみたらよっぽど有利な状況だったんだ。リスクと見返りを天秤にかけただけで、悪くはない。…………私が聞いてるのはもっと根本的な理由だよ」

「??」

 

ジンがエミヤから出された質問に頭を捻っていると、それを見かねたレティシアが答えた。

 

「ゲームメイカーがいなかったから、だなエミヤ?」

「そうだよレティシア。まあもっと厳密に言うと、あのゲームを考えた人物が襲撃時にいなかったからだね。もしあの時に造った人物がいれば、ジン達の提案には乗らなかっただろうからね」

 

そもそもあのゲームは、最大の敵である白夜叉を封印したルールも、本命のためのブラフだったのだ。不平等なルールと思わせておいて、公平なルールで行われたゲームの内容全ては、"審判権限"を誤審させるための罠。

ペストもそれは聞かされていたはずだろう。それでも目先の利益に翻弄されたが故に失敗したのだ。

 

仮にあの場に制作者がいたのなら、確実にジン達の誘いには乗ってこなかっただろう。そう思わせるほどにあのゲームは緻密に考えられたモノだった。

 

「なるほど…………でもそれとエミヤさんの言っていた黒ウサギの同胞とどう関係するのですか?」

「ペスト達や今回の巨人達、それと南側"階層支配者"を襲った魔王の後ろに実力者が付いているのは確実だ。それも相当階層の高い組織だと私は予想している。

じゃないと今回の襲撃のタイミングといい、レーヴァテインといい、偶然というには出来すぎているしね。そしてそれほど大きい組織と三年前に東側を襲った魔王に接点が無い方がおかしいでしょ?」

「…………確かにエミヤの言うとおりだね。"審判権限"を持つ黒ウサギがいることを知っていて、かつ優秀なゲームメイカーがいる組織なら、私達を襲った魔王とも関係があるだろう」

「……………」

「私が出せる情報と推測はこれくらいかな。これ以上の推測は憶測になるからね。後はジンが自分で判断して欲しい」

 

そう言ってエミヤは黙った。

 

 




この作品のジンはどことなく臆病

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