ここは幻想郷の中にある冥界の屋敷、白玉楼。
そこの主、亡霊姫。西行寺幽々子は待っていた。
「よ~む~まだかしら~?」
そう話す相手は白玉楼の庭師であり、幽々子の剣術指南役でもある魂魄妖夢だ。
因みにその妖夢といえば、厨房で必死に料理を作っていた。
【ぐぅぅぅ……】
部屋に響くお腹の鳴る音……。
「お腹すいたわ~……」
そう呟く幽々子の元に不意に現れる謎の人影が一つ。
「久し振りね、幽々子。元気にしてる?」
そう話すのは幻想郷の創設者であり賢者と称されるスキマ妖怪、八雲紫だ。
「あら~?紫じゃない!久し振りね~♪
今日はどうしたの?」
「えぇ、最近こっちの仕事の方はどうなのか気になってね」
「そうねぇ、帰ってきた時はご飯を食べる暇もない位に忙しかったけど、最近はとんと魂が流れてこないから暇してるわね」
と、そこで幽々子は以前の教え子達の事を思い出していた。
かつて教鞭を振るい時には修行をつけたりもした。あの子達……。
(今頃どうしてるかしらね~?)
そんな風にかつての教え子達に思いを馳せている幽々子に紫が声をかける。
「……幽々子?どうかしたの?」
遠い目をしていた幽々子を不思議に思ったのか紫は不思議そうな顔をして問いかける。
「え?あぁ、ごめんなさいね~ちょっと昔の教え子達の事を思い出していて」
その言葉に紫は『あぁ……』と納得する。
そしてその後にこう告げるのだった。
「幽々子。またあの世界に行ってみる?」
「え?」
紫の問いに幽々子はキョトンと首を傾げる。
「仕事も一段落して暇なのでしょう?それなら向こうにまたいってみるのもいいんじゃないかしら?」
「でも……」
また仕事がたまったらと思うと中々首を縦には振れない。
「それなら大丈夫よ、庭師の子もいるし、最悪の場合は私や藍が手伝いに来てもいいのだから」
そこまで言われてしまうと心が揺れる……。
「そうねぇ、じゃあまた行ってみようかしら?」
幽々子の言葉に紫はニコリと頷いた。
「決まりね、それじゃあ早速送るけど準備はいい?」
「えぇ、バッチリよ♪」
幽々子の言葉にスキマを作り出しかけた紫はふとある事を思い出す。
「あなた、ご飯はどうするの?」
「向こうに行ってから食べるわ~」
幽々子の間延びした言葉に若干呆れつつも紫は『そう』と答えるとスキマを作り出して幽々子を包み込ませた。
「じゃあ、行ってくるわね~」
「えぇ、行ってらっしゃい、楽しんできて」
こうして、西行寺幽々子は幻想郷から姿を消した。
「……さて、それじゃあこの事をあの二人にも伝えてこないとね」
幽々子が消えたのを見届けると、紫は庭師と従者にこの事を伝えにいくのだった。
sideout
亡霊姫、生徒の危機を救います!
side小猫
私達は絶望に支配されかけていました…。
目の前で暴れ狂うイッセー先輩に……。
どうしてそんなことになってしまったのか…。
それは時間を少し遡ります。
…………………………………………………
アーシアさんを助けたイッセー先輩や私達は安堵していました。
ですが、そこに現れたシャルバという旧魔王派の悪魔の手によってディオドラは殺され、アーシア先輩は消し飛ばされてしまったのです……。
目の前でアーシア先輩が消えたことのショックでイッセー先輩は神器を暴走させてしまい、未完成な覇龍を発動させてしまいました。
未完成とはいえ、発動した覇龍はとても強力で、シャルバの攻撃をものともせず打ち倒していました…。
シャルバを倒したイッセー先輩はそれでも止まりません……。
そこに現れたのはイッセー先輩のライバルである白龍皇のヴァーリと天使化したイリナさんでした。
ヴァーリの提案とイリナさんが持ってきてくれた映像機器で試してみましたが効果は全く無く、私達は諦めかけていました……。
こんな時、あの人がいてくれたら…。
私がそう考えた時でした。
「ん?なんだぜぃ?あれは…」
「人か?何故あんなところに……」
ヴァーリと美猴の言葉に私はイッセー先輩の方を見ると……。
「えっと…これはどういう状況なの?」
それは私達のかつての大恩人であり恩師でもある西行寺幽々子先生だったのです。
sideout
side幽々子
「えっと…これはどういう状況なの?」
そう呟く私の目の前には赤い龍を彷彿させる姿をした誰かがいた。
私が何がなんだかわからず困惑していると背後から声が聞こえてきたの。
「幽々子先生!今すぐイッセーから離れて!」
「そこにいては危険ですわ!早くこちらへ!」
「幽々子先生!早く!」
「殺されちゃいます!早く来てください!!」
その声に振り返ると見覚えのある人達の姿があった。
あの子達は……。
久し振りね~どれくらいぶりかしら?
それにしても……。
私は目の前の方を見る
「あなた、イッセーちゃんなんですって?どうしたの?そんな格好しちゃって……」
私がそう声をかけると目の前のイッセーちゃんはピクリと反応した。
「……ゆ…………ゆこ…………」
そして途切れ途切れにではあるが確かに私の名を呼んだ。
「えぇ、あなたの顧問の先生である西行寺幽々子よ。イッセーちゃん」
更に声をかけるとイッセーちゃんはあたまを抱えて悶えだした。
「うぅぅぅぅぅッ!!…………ゆ……………ゆこ……せ…ん…せい……」
少しずつ反応が鮮明になってきてるわね…。もう少しかしら?
「そうよ?私よ、イッセーちゃん」
「うぅぅぅぅぅっっ!!…………ゆ…ゆこ……ゆゆ…こ……
ゆゆこ……幽ゆこ……幽々こ…………幽々子…先…生…」
かなりはっきりしてきたわね、もう少し粘ってみましょうか。
すると、私の耳にある声が聞こえてきた。
『亡霊の姫…今がチャンスだ、すぐに相棒の体に乗り移れ』
『え?この声はドライグさん?いったいどういうことですか?』
『お前の登場と呼び掛けで相棒の意識が戻りかけてるのさ、後はお前とあのリアスとか言う悪魔の協力があれば相棒を元に戻せる可能性が高い……』
なるほど、それなら……。
「いくわよ?イッセーちゃん。それ!」
「ぐぅぅぅっ!?」
私はイッセーちゃんに乗り移った。
徐々にイッセーちゃんの体が女体化していく。
そして数分後には桜色の鎧を身に纏った女の姿があった。
sideout
side桜龍姫
『おぉ!凄いぞ!かなり覇龍を抑えられてきている…!これなら相棒が禁手に至ったときと同じ方法を使えば元に戻せそうだ』
『それはどういう方法なの?』
『……方法は簡単だ…リアス・グレモリーの乳首を突く……。
それだけだ……』
『そう……ドライグ』
『…………なんだ?』
『強く生きてね…………』
『うおぉぉぉんっ!!慰めるなぁ!逆に惨めになる!!』
こうして、彼の体を乗っ取った私はリアスさん達の方を向く。
「…………っ!?!?」
相当警戒しているようね…。それも当然かしら?
けど、私は構わずリアスさんの方に向かっていく。
途中
「………」
「な、何か用なの?」
リアスさんが険しい表情で聞いてくる。
「……えぇ、あなたのおっぱいを突つかせて」
『『……え?』』
その場にいる全員がそう声をあげた。
「彼を戻したいのでしょう?なら、私に協力して……」
私の言葉に暫悩むリアスさん。
そんな中話す声が聞こえてきた。
「……覇龍を元に戻すのに胸を突つくとはどうなんだ?」
「いやアレだろ?あの悪魔の姉ちゃんの胸が赤龍帝のスイッチなんだとおもうねぃ、名付けて『スイッチ姫』だぜぃ」
と、そんな会話が聞こえつつもリアスさんは頷いた。
「分かったわ、こうすればいいのね?」
そうして服をはだけさせブラを外すと大きな山二つが露になる。
「それじゃあいくわ…」
私は両手でリアスさんの山二つの山頂を突ついた。
【パァァァァァァ…‼】
次の瞬間、私の纏っていた鎧が解除された。
「ふぅ、これで大丈夫ね…」
いそいそと胸を隠すリアスさんを横目に私は声をかける。
「この子の状態が分からないからしばらくこのままでいるわ、さて帰りましょう」
こうして私が帰ろうとした時だった。
「その前に空中を見てみろ」
ヴァーリの言葉に私は白い空を見上げる。
するとーーーー。
バチッ!バチッ!
空間に巨大な穴が開いていく。
そして、そこから何かが姿を現した。
「あれは……」
ヴァーリは口元を緩くにやけさせながら言う。
「よく見ておけ、亡霊の姫とも兵藤一誠ともみえる者よ。アレが俺が見たかったものだ」
空中をとてつもなく巨大な生物……真紅のドラゴンが雄大に泳いでいく。
あれは……。
「『赤い龍』と呼ばれるドラゴンは二種類いる。ひとつは兵藤一誠に宿るウェールズの古のドラゴン……ウェルシュドラゴン。赤龍帝だ白龍皇も伝承に出てくる同じ出自のもの。だが、もう一体だけ『赤い龍』がいる。それが『黙示録』に記されし、赤いドラゴンだ」
「黙示録……?」
「『
「でも、どうしてあんなところを飛んでいるの?」
「さあね。色々説はあるが……。アレがオーフィスの目的であり、俺が倒したい目標だ」
そう話すヴァーリの瞳は以前見たものより真っ直ぐな瞳だった。
「俺が最も戦いたい相手……『
俺は『真なる白龍神皇』になりたいんだ。赤の最上位がいるのに、白だけ一歩前止まりでは格好がつかないだろう?だから、俺はそれになる。いつか、グレートレッドを倒してな」
そう、それがヴァーリの夢なのね……。
「グレートレッド、久しい」
ーーっ!
私達のすぐ近くに黒髪黒ワンピースのゴスロリ少女が立っていた。
「誰?あの子…。さっきまでいなかったのに」
ヴァーリがそれを確認して苦笑する。
「オーフィス。ウロボロスだ。『
ーーっ!!
こんな少女がテロリストのトップなの!?
少女、オーフィスはグレートレッドに指鉄砲の構えでバンッと撃ち出す格好をして話す。
「我は、いつか必ず静寂を手にする」
そう話す少女の顔驚くほどの無表情であった……。