The music of mind for twintail .   作:紅鮭

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みんながご存知の「ツインテール戦士」といえば──
そう、『セーラームーン』。
金髪のツインテールを靡かせ、セーラー服を翻し、キメ台詞の「月に代わってお仕置きよ」は誰でも耳にしているだろう。

「ヒーロー戦隊」と「少女漫画」をコラボレーションした様な作品であり、その人気は社会的現象にまでなった。

ちなみにアニメでは『レズビアン』『男の娘』『女体化』などの要素を多数取り入れ、オタク時代の金字塔と言わしめる作品でもあり、『最終回はヒロインが全員死亡』とシビアな展開まで及んだ。

『ツインテールに代わって、お仕置きだ!』
うん!いける!ファングのキメ台詞!
(この後メチャメチャ嫌そうな顔で断られた)


チューニング/同調のための特訓

──キャッスルドラン

 

 

キャッスルドラン内部は変幻自在である。

内部に貯蔵している(プシュケー)属性力(エレメーラ)を使って内部の構造を変える事はおろか、幾つもの部屋を作り出し、そのキャスルドランの内部面積以上の大きさに変える事も可能である。

そして今響輔達がいる所はキャスルドランの訓練場。

 

「はぁっ!」

「やぁっ!」

「たぁああ!!」

 

次狼から剣術、ラモンから射撃、(リキ)から格闘術を学ぶ響輔。しかし、全く身につかない。

次郎からは木刀で分からないくらい叩かれ、射撃の的は外しまくり、(リキ)からも投げられ、殴られる。

 

「も、もう…無理……」

 

今の響輔は(プシュケー)生命(プネウマ)そのものが響輔の姿に具現化された、いわゆる幽霊の様なもので痛覚はないのだが想像以上にハードな特訓にダウンしていた。

 

「それは冗談か?今の貴様は幽霊そのものだ。疲労や痛覚などあるはずがなかろう」

 

テナーは呆れ気味に言った。

 

「と言うか、お前体力なさすぎだろ」

「よくいままで生きてこれたね」

「弱、いな」

「まあ、努力など数日そこらで身につくものではないからな。気長に頑張るしかない」

 

上から次狼、ラモン、(リキ)、テナーの容赦ない言葉が響輔の背中に突き刺さる。

何故こんな特訓をしているかというとマルシル曰く、響輔とテナーの心は今うまく共存できていないらしい。

ならばと、響輔にも戦い方を覚えてテナーの戦いについてこれる様にしようというのだ。

しかし、連日この調子で特訓をしているのだが──

 

「うええええ…」

「吐こうとしても無駄だぞ。全く、便利な体だな。いや、今は身体ないが」

「しかしここ連日、この調子で大丈夫か?」

「うん、この効率がいいとは思えないし……」

「間ち、がって、るのか?方法が」

「何を言うか。小僧自身が戦いのイメージを掴めれば、テイルファングの強さに繋がるハズだ。多分」

 

響輔の特訓に皆は疑問を持ち始めた。

こんなやり方で本当に合っているんだろうか?

 

「でもどうしてイメージが強さに繋がるの?」

「前にも教えたが、鎧の戦闘に生身の筋力はあまり関係ない。身に纏う魔金属(ルシファーメタル)の重さは主にファンガイアであるテナーの心の有り様によって、その重量、硬度を自在に変える性質を持っている。修行を積んで魔金属(ルシファーメタル)命の色(ライフエナジー)を通わせたり、強い意志や信念を持つことで、装着者にとっては羽根より軽く感じるようになる。鎧を纏うテナーが戦闘を行い、キバットが魔皇力(アクティブフォース)のコントロールを行う。内面にいる響輔に求められるのは──イメージで求められるのは──えーと、何だ?魔金属(ルシファーメタル)のコントロールはテナーが担っているし……」

 

 

 

 

「え?」

「だからな、小僧は戦いのイメージを掴んで、それからな…あれ?」

 

フォローしようとした次狼やテナーにすら言葉に詰まり、疑問に思われてしまう始末。

 

「え?じゃあつまり、響輔にいちゃんって足手纏い(・・・・)って事?」

「ぐはぁっ!!」

 

ラモンの純粋で容赦ない致命的な一言で響輔は膝から崩れ落ちた。幽霊でも膝はある。

だれも否定しなかった。

つまり、全員同感しているということだ。

床に手を付き、涙を零す響輔。

 

「僕、どうしたらいいんでしょうか?」

 

そんな響輔に掛かる不意の声。

 

「全く、何やってんのさ」

 

入口の方へ皆は一斉に振り返る。

そこには片手に新聞を携えたマルシルが呆れ顔で立っていた。

 

「あ!マルちゃん」

「よっ、おつかれちゃん」

「ヴェディ、は、どう、してい、る?」

 

(リキ)がマルシルに対して疑問を口にする。

ここ最近ヴェディ、それにキバットの姿が見当たらない。

普段ならいつの間にか現れて冷やかしに来るのだが。

 

「キバットと一緒に工房へ篭っているよ。おそらくフエッスルの調律だろうね」

 

ヴェディの仕事は魔道具の作成。

マルシルのエルフィン族、ヴェディのシーケット族はファンガイア族、ウルフェン族と比べて戦闘力は低い。代わりに長命なエルフィン族は魔術や学問、器用なシーケット族は魔道具の作成に特化した一族である。

『キバの鎧』の作成にはこの二つの種族が関与しており、ヴェディは時折キバの鎧やキャッスルドランの調整をしているのである。

最近は鎧の調整ではなく、フエッスルの調整の方に力を入れているらしい。

 

「ところで、今日のエレメリアンは?」

「テイルレッドがもう倒したよ」

「そうか」

 

テナーがマルシルに訪ね、いつも通り新聞や最近創刊された雑誌を差し出す。

その一面や表紙にはでかでかとテイルレッドが掲載されていた。

 

 

 

 

 

回想□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

「疲れた……」

 

高校生活一日目の放課後、総二はぐったりとした様子で下校していた。

 

「そんなにハードな授業だったのかなぁ?ねえ、愛香さん」

「まあ、そーじにもいろいろあるのよ。色々とね」

 

愛香は総二の心境を読み取っている風でおり、総二の肩を叩き元気づけている。

 

「そういえばあのテイルレッドやテイルファングが戦っていた怪人達、敵討ちにでもまた来るのかな?」

 

響輔はふと気になっていた。

 

「まっさかー、昨日の今日で…」

 

愛香さんは響輔の言葉に苦笑しながら、角を曲がる。

そして…。

 

『この世界に住まう全ての人類に告ぐ!』

 

突然、特大の音声が流れたと思うと総二、愛香、響輔は呆然と一斉にカバンを落とした。

 

『我らは異世界より参った選ばれし神の徒、アルティメギル!』

 

聞き覚えのある名前に嫌な予感がし、空を仰げば、空中に巨大スクリーンが浮かび上がり、竜の姿をした怪物が偉そうに足を組みながら玉座に座っていた。

 

『我らは諸君らに危害を加えるつもりはない!ただ各々の持つ心の輝き(ちから)を欲しているだけなのだ!抵抗は無駄である!そして抵抗をしなければ、命は保証する!!』

 

町中にあるテレビやラジオ、電子機器類から同じような声や映像が聞こえてくる。総二も携帯のワンセグを起動させると、どのチャンネルを回しても空のスクリーンと同じ映像が流れていた。

 

『だが、どうやら我らに弓引く者がいるようだ…。抵抗は無駄である!それでもあえてするならば…思うさま受けてたとう!存分に挑んでくるがよい!!』

「これ、世界中にむけて発信しているのか!?」

「まさか電波ジャック!?放送電波全てに介入しているの!?」

「あの怪人達、本当に地球をマルごと侵略するの!!?」

 

総二も愛香も響輔もこの宣戦布告と言わしめる奴らの所業に足をすくませた。

 

『ふはは!!ド派手な連中よな!これはしてやられたわ。ふははははははっ!!』

 

そんな響輔の心境を知ってか知らずか、テナーの方はアルティメギルらの宣戦布告に愉快そうに高笑いをする。

 

「ヒソヒソ(何嬉しそうにしてんの?)」

『これでやつらは正体不明の生物から、ただの害悪な侵略者──この世界における悪党へと成り下がった。私の任務はあくまで調査であり、例えファンガイアにも超えてはならん掟の一線が存在する──他の世界の秩序を乱す事はなど以ての外。だが、外来の侵略者が来たとなれば話は別だ。これでおおっぴらに奴らを叩き潰せる大義名分ができた!ふはははははっ!!』

 

テナーの高笑いの中、偉そうにしていた怪人から亀のような外見の怪人へと映像が変わった。

 

『我が名はタトルギルディ!ドラグギルディ様のおっしゃる通り、抵抗は無駄である!綺麗星と光る青春の輝き…体操服ブルマの属性力を頂く!!』

 

だが申し訳なさそうに一人の戦闘員が現れ、そっと耳打ちをする。

 

『……何、この世界では、今はほとんど存在せぬだと!おのれおろかなる人類よ、自ら滅びの道を歩むかああああああああ!!』

 

絶叫する怪人と、白けた目で絶句する人類。

亀怪人がいったい何を言いたかったのか最後まで分かることは無く、ぐだぐだのままプツンと映像は途切れた。

 

「「「……」」」

 

3人は顔を見合わせ、あははと力なく笑っていると──

 

~~♪!! ~~♪♪♪♪!!! ~~♪!!

 

「ッ!!!」

 

突如として、聴き覚えのある重低音を響輔は頭の中で感知した。

咄嗟に音源と考えられる方へ顔を向ける。

 

「ごめん、二人共。僕ちょっと急用を思い出したから」

「あれ?響輔!?」

 

響輔は総二と愛香の返事を聞く間もなく、二人の視界から離れることにした。

 

「テナー、今いい?」

『どうした急に?』

「あっちの方向に何かが起こっている。たぶん昨日の怪人かも」

『何?少し代われ』

 

周囲に誰もいない事をを確認し、響輔はテナーと入れ替わる。

ベージュ色の陽月学園の制服は漆黒のコートと赤のインナーへと変わり、髪も深い赤色の長髪に、鎖で繋がれた枷のような髪留めを使ったジグザグのツインテールへと変わった。

 

「マルシル、マルシル聞こえるか?」

『何やってるの?』

「私の念波をキャッスルドランへと送信しているのだ。いわば、受話器のない電話の様なもの。マルシル聞こえるか?」

【ああ!ちょうど良かった。いま連絡しようと思ってたところなんだ】

「どうかしたのか?」

【今いる位置から南南西4キロ、QR高校ってところにまた次元震が発生したよ】

 

南南西といえばいま響輔が指した方向だ。隣町か。

 

「(まただ。まさか本当に感知しているのか?昨日も一昨日も怪人の出現場所を特定していたが、まさか本当にマルシルの言う通り、──)」

 

と、テナーは思考を巡らせていると。

 

『テナー、またエレメリアンって怪人が現れたの?』

「そのようだ」

 

エレメリアンの出現を聞くと響輔は当然の如く慌てる。

 

『じゃあ、早く行かないと』

「待て──マルシル、テイルレッドは到着しているか?」

【ああ、ちょうど今来た所。どうするの?テナーも行く?】

「苦戦しているか?」

【いや、優勢っぽい。怪人は「ぶるま」がどうだと言っているけど】

「劣勢でなければ()いか」

 

テナーは今回テイルレッドに任せる事にした。

 

『行かないの!?何で!?』

「今の私は全力を出せん。訳はキャッスルドランに帰ってからだ。それに、しばらくはテイルレッドに任せることになるかもしれんしな」

 

 

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

それでテナーは自分の能力が低下していることを響輔に説明し、響輔は戦闘の勘を少しでも身に付けようと特訓を開始して数日。

 

「戦いはテイルレッドちゃんが全部戦ってるけど、大丈夫かな?」

 

ラモンは新聞を広げて呟く。

 

「今じゃ日本だけじゃない。世界中がテイルレッド、テイルファングの話題でもちきりだ」

「でも、テ、イル、ファング、は、あんまりな、い、ぞ」

「初日のみの活躍だしね」

 

次狼、(リキ)、響輔も雑誌『月刊ツインテール』を見る。

ちなみにアルティメギルは世界中に出現するので、世界中の新聞、雑誌にもテイルレッドのことで持ちきりである。

 

「なるほどなるほど、テイルレッドの活躍を事細かに記事にしているな。ほうほうほう。ええい、人間(アントローポス)共め!私とテイルレッドの太鼓持ちか!アルティメギルやエレメリアンに関する記事が一切書かれていないではないか!!それに見ろ、この記事!『テイルファングはどこへ消えたのか!?』だと!?私のことではなくアルティメギルの根城を突き止めんか!!たわけ共め!」

「それに関しちゃあ全くの同意見だね」

 

人間の書く駄文記事に怒りを露わにし、床に新聞を叩きつけるテナー。

マルシルの方も呆れ、叩きつけた新聞を拾い上げる。

 

「こやつらはいま自分の世界が危機に瀕しているのがわからんのか!」

 

おそらくわからないと、響輔はテナーの叫びを聞いて同情する。

人間の響輔から見れば異世界からの侵略者なんて殆ど漫画や創作の中の出来事だけであり、しかもツインテールのみを狙う怪物など誰が想像できようか。

 

「むう…次狼、マルシル、ラモン、(リキ)。貴様らの目から見た敵はどう考える」

 

実質、サブリーダーたる存在の次狼とマルシル、そしてラモンと(リキ)にエレメリアンの見解を聞いた。

 

「はーい、デザインがすっごくカッコイイ!!」

「言う、事、すべて、理解、できな、い……」

「たわけ!見たまんまの感想を述べよと誰が言った!!次!」

 

残るは次狼とマルシル。

 

「マルシルの水晶で見ていたが、奴らは生物とは言い難いな」

「生物じゃない?」

「それってどういう事なの?」

 

次狼の見解に首をかしげるテナー。

響輔がマルシルが訊く。

 

「つまりエレメリアンには肉体(ソーマ)が無いんだよ。(プシュケー)生命(プネウマ)が剥き出しの状態だって事だ。やつらは倒されれば死体を残さず消える精神のみ生命体と形容したほうがいいだろうね」

「つまり今の小僧と同じような存在ということなのか?」

「いや、それすら同じとは言い難い。密度(・・)が違うんだよ。響輔君はあくまでキャッスルドランの濃い(プシュケー)の補助によって具現化しているみたいなものだからさ」

 

つまりジュースに例えるなら、響輔は果汁を水で薄めた飲料水に対し、エレメリアンは100%果汁といった具合に余計な物がない純粋な状態の生命体という事だ。

それに──と、今度は次狼か続いた。

 

「初日倒した奴や今出撃しているエレメリアンはただの下っ端、雑魚だ。恐らく遠くない内にテイルレッドでも手に負えなり奴が来るだろうな」

 

敵の戦力がわからない以上、正直次狼やラモンの助力も欲しい所だったが、人間から見れば、次狼達魔の者(ダイモーン)もエレメリアンと同じ異形である。

不用意に乱入したらエレメリアンと誤認されて、テイルレッドや民間人に混乱をもたらす可能性がある為、極力避ける必要がある。

 

「ならば早いところ十分に戦える様にしなければな──でだ、マルシル。貴様、特訓の一部始終を見ていただろう。この様なやり方で本当に()いと思うか?」

()いわけないよ」

『──は!?』

 

マルシル以外の全員が目を点にして素っ頓な声を発する。

 

「響輔君の身体は今無いんだから、いくら戦闘技術を鍛えても鍛えられるはずないじゃないか。イメージを掴めたとしても響輔君が戦う訳じゃないんだし」

『テナー様ぁ〜?』

 

テナー以外の全員がマルシルのその言葉にあっさりと納得して、ジト目でテナーを睨む。

テナーは皆から視線を外し、こほんと咳払いをすると──

 

「マルシル、何故黙っていた。この数日の時間を無駄にしたぞ!」

 

責任転嫁。最低である。

 

「いや~、ついつい皆で青春していてて楽しそうだったから──ってゴメンゴメン!!皆そう殺気立たないでおくれ」

 

このアマ──と、全員の目が一斉に据わったのを見て慌てふためくマルシル。

 

「ならば、どうすれば()い」

「んー、やっぱり響輔君の意識がある状態でテナーが戦うしかないね。つまり実戦形式」

「うむー、そういえば初戦の時、小僧の意識はなかったな」

「強さの有無は関係ないのか?」

「そうだね。それに──」

「それに?」

「──足手纏いなんてとんでもない。響輔君はもしかしたら、テナーをさらに強くしてくれるかもしれない存在なんだよ」

「何ッ!?」

「それはどういうことだ!?」

 

マルシルの不意に発せられた意味深な発言それは一体何を意味するのか?その場にいた全員は疑問符を浮かべてマルシルに問いただす。。

 

「そいつぁ…まだまだ研究中だけどね。確かなものかは実際に戦ってみなければわからないな」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

────観束宅

 

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

『名前を! 名前を教えてください!!』

『あ……テ、テイルレッドでs……うわ、ちょっと!』

『素敵です!お姉さまと呼ばせてください!!』

『妹に決まってるでしょ! ハァハァ、一緒に着替えっこしましょう!!』

『わーっ帰るぅ~道あけてぇ~!!』

 

大勢の女生徒にもみくちゃにされるツインテールの幼女の映像。

涙目になっているテイルレッドの姿があった。

ほのぼのと狂気の混じったその映像は朝のニュースには不相応なものであった。だが、ここ数日はこの映像がテレビでは当たり前のように流れている。

 

「何で動画まで撮られてるんだよう…」

 

当人であるテイルレッド──総二がこの映像を見て清々しい朝にも関わらず、絶叫の後、一瞬で生気を失い、亡霊みたいに落ち込んでいた。

世間からテイルレッドの注目は減るどころかますます増え、新聞の一面を飾ったり、動画のミリオン再生は当たり前、うなぎのぼり真っ只中。

愛香の方はと言うと──

 

「そーじ、昨日あんた、あんなコトされて他の……女生徒のおっぱいに顔埋めて……全然抵抗しないし…喜んでたのね……!!」

 

と、顔の険を深くしていた。

 

『警察はこの少女の情報を引き続き求めていく方針です。一方、テイルファングの 出現情報は一切なく、──』

「なんでだよ!ほっとけよ!アルティメギルの方調べろよ!!」

「かわいいわねぇ、総ちゃん♪」

「やかましい!!」

 

ソファーでは総二の母──未春がのほほんとお茶をすすりながら我が息子であると同時に、娘の晴れ姿を見てまんざらでもない様子で和んでいた。

 

「総二様総二様、見てください。ブログ、wiki、考察サイトなどネットでも持ちきりです」

 

テイルギアの開発者であり、異世界からやってきた科学者──トゥアールが、ノートパソコンを片手に嬉しそうにリビングへ駆け込んできた。

これ以上情報が広まったら、俺もう戦えなくなるぞ。

 

「俺、心が壊れそうだよ…」

 

総二たちの意志とは裏腹に世界レベルで祭り上げられていくレッド

もう戻れない所まで来てしまった気がして、改めてとんでもないことに首を突っ込んでしまったということが総二の心にひしひしと伝わってくる。

 

「テイルファングあれから姿現さないし、あの場限りの登場だったのかよ…」

 

もう一つ総二の悩みの種。

それは、テイルファングがあれから姿を現さなくなったのが原因だった。

彼女のツインテールを見たかった。

彼女もアルティメギルと戦う戦士ではないのか?

世界の平和(ツインテール)を守るついでに、そんなご褒美があってもいいじゃないか。

そんな淡い期待をホンの、ホンの少しでも期待して出陣しているのに。

これじゃあ割に合わない。

 

「そうそう、総二様。テイルファングのデータ、解析終わりました」

「何!?ホントか?」

 

吉報──

その言葉が似合う様な知らせに目を光らせる総二。

テイルファングを密かに想う総二にはさっきまでの凶報が帳消しとなった。そんな晴れ晴れとした総二の顔を面白くない様に横目で見ている愛香。

 

「説明には特殊な機材が必要なので、秘密基地の特殊仕様な部屋で──「今、この場でしなさいね〜♡学校があるんだから…」うひぃえぁぁぁぁあああああっ!!」

 

つねり──頬とか耳たぶや乳房ににくらえば地味に痛い技。

愛香のつねりの痛みから立ち直ったトゥアールはパソコンの画像を見せる。

 

「画像のブレや動画での砂嵐状態は何とか修正出来ました、おそらくテイルファングも正体を隠蔽する為のテイルギアのフォトンサークルと同等の能力を所持しておりますね。テイルギアとは似て全く非なる別の仕組みですが──」

 

修正されたテイルファングの画像や映像を見てほっこりとなる総二。

隣では愛香がちゃんと聴けと耳をつねり、正気に戻した。

 

「──そして、テイルファングの両手から出した黒い影のような短剣。アレは私も解析して初めて目を見張りました。言葉にして形容するなら、あれは『属性力(エレメーラ)の具現化』です」

属性力(エレメーラ)の具現化?」

属性力(エレメーラ)は熱や電気と同じエネルギーなのはご存知のはず、しかしテイルファングはそれが目に見える程に高濃度な属性力(エレメーラ)で物質を具現化する事が可能他なのです」

「つまり、テイルファングもすごいツインテール属性の持ち主だったって事なのか?」

「あの城みたいなドラゴンや夜になったのはどうなの?」

「戦いの終わりに見せたドラゴンはまだ解析中ですが、最後の笛の音色と共に夜になった現象。あれは彼女自身が創り出したその場のみの夜──それ程まで大きく属性力(エレメーラ)を具現化した物。つまり固有の結界を展開し、右脚の属性力を大きく上昇させたと思われます。そして、テイルファングの鎧は総二様が纏うテイルギアとは違い、武装していると言うより自分の身体の一部と化し、その戦い方はどちらかといえばエレメリアンに近い戦い方です」

「つまりなんだ?テイルファングはトゥアールやエレメリアンとは違う異世界から来たのか?」

「その可能性が高いでしょうね。初めて見る現象ばかりで私から何とも言えないのですが、彼女はエレメリアンの類とは考えづらいですね。かと言って、事前調査をしていた私があれ程の高いツインテール属性を今まで見落としていたとは……どうも腑に落ちない」


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