The music of mind for twintail .   作:紅鮭

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 運命とは何だろうか?

 運命とは、人間の意思を超越し、人に幸、不幸を与える力。もしくはその力によってめぐってくる幸、不幸のめぐりあわせの事を言う。

「縁は異なもの味なもの」という諺がある。

 この諺は主に男女の出会いを示しており、運命は偶然のようだが、この世の事情が生んだ必然であり、しかし、必然ではない奇跡かつ不可思議な現象であることを言っているのだろう。


TAIL UP!!/運命のツインテールを今結べ

 ワゴン車のクラクションに怪人達がこちらを振り向き、ゆっくりと女性は怪人達に向かって歩みを始めた。

 それに伴い一陣の風が吹くと、彼女のフードの後ろから突き出ている深紅のツインテールがコートの裾と共にはためく。

 

「貴様、何者だ…!?」

「リザドギルディ!ア、アイツだぁ!!俺の左目に傷を付けたのはぁ…!!」

「何ィ!?」

 

 突然の介入者にトカゲ怪人―リザドギルディは戸惑うも、トードギルディの言葉によって警戒を強め、周りの戦闘員も僅かな畏怖の念を抱き身構える。

 彼女──テナーはそんな怪人達に恐る事なく歩みを進める。

すると彼女の周囲を奇妙な生物が飛びまわる。

 

「キバット」

「よっしゃあ!キバって行くぜ!!」

 

 テナーの呼び答えに対し、その生物──キバットは決めゼリフを口にして、気合をいれる。

 そしてテナーは右手を掲げると、そこにキバットを収め、反対の手首に噛みつかせた。

 

「ガブッ!」

 

 キバットはその声と共に、自らの牙をテナーの左手首に突き刺す。

 その途端、彼女の身体に凄まじい量の魔皇力(アクティブフォース)が駆け巡り、チリチリチリチリチッとまるで稲妻の様に奔流し、漲る。

 するとテナーの首から下顎にかけてステンドグラスを彷彿させる模様が浮かび上がり、腰には鎖が巻き付かれ、深紅のベルトへと変質していく。

 キバットを握る右手を勢いよく前方に突きつけると、その言葉を力強く告げた。

 

「テイルアップ…!」

 

 テナーはキバットをベルトの台座──キバックルにぶら下げるように取り付ける。

 キバットが合身し、バックルはキバットベルトへと変化。

 するとその体は、ベルトからの波動によって生まれた魔金属(ルシファーメタル)で生成されたアーマーに包み込まれた。

 

 双眸の虹彩は瞬くと同時に黄金色に光り輝く。

 ワインレッドのツインテールを形成し、様々な情報収集器官を集約、あらゆる衝撃から頭部を守り、周囲の状況をいち早く感知するレーダーの役目を果たすコウモリの耳のような二つの髪留め──キバ・ペルソナ。

 正体を隠蔽する悪魔の顔を象った呪いの首飾り──ダークネス・チョーカー。

 全身を守りながら内蔵する力の暴発を押さえつけ、赤と黒を基調とした吸血鬼を彷彿させる――ブラッドシングレットに幾重にも枝分かれした筋が通り、胸部を守る真紅色に染まった力の貯蔵庫──ブラッディラング。

 銀色に輝き、内蔵する力を押さえつける為に存在する装甲型拘束具──プテラ・プレート。

 右脚、両肩の封印の鎖──カテナ。

 両手両足首で銀色に輝く、力を調整遮断する枷──シール・ブレスレット。

 鋼鉄さえも紙の様に切り裂く爪に超人的な腕力を授ける籠手──デモンズ・ガントレット。

 下半身を守り、いかなる極限状態からもテナーを守る漆黒に輝くインナースーツ──ドランスパッツ。

 それぞれの膝を守り、足先へと流れる力をコントロールすることが可能な防護具──シルバニア・ニーガード。

 どんな不安定な足場でも驚異の安定性を保持し、反重力で壁や天井を駆け上がる事もできるブーツ──デモンズ・ヒール。

 カテナに縛られ、銀色に輝くプレートで堅く構成された右脚の拘束具──ヘルズゲート。

 

 

 そんな異形な姿へと変貌したテナーはだんだんと歩みのペースを上げ、次の一瞬には駐車場のコンクリートの地面を踏み抜き、一息でリザドギルディの首元を掴み、地面へ勢いよく叩きつけた。

 

「うぐぉあ!?」

 

 それだけに留まらず、リザドギルディはそのまま全力疾走で引きずられ、投げ飛ばされる。

 廃車の山へと突っ込み、炎上した廃車はボウリングのピンみたいに弾けとぶ。

 

「な、何していやがるお前達ぃ!掛かれ!!とっとと掛かれ!!」

「「「モケーッ!!」」」

 

 一瞬の乱入に加えて、リザドギルディが投げ飛ばされた事に呆気にとられて動けなかったが、トードギルディの一喝により周りにいた戦闘員―アルテロイドは奇声を発しながらテナーを取り囲む。

 アルテロイドはいずれもテナーに対する敵意を全身にみなぎらせていた。

 特にトードギルディはテナーに対して残った右目から憎悪の念を向けているのがわかる。

 

「てんめぇ、昨日はよくもやってくれたなぁ…!!」

 

 何の事情も知らない常人がいきなりこの状況に放り込まれれば、ほんの一瞬で正気を失ったりするだろう。

 

「ん?ああ、…なんだ昨日の蝦蟇畜生か」

 

 だが敵意をまともに浴びているテナーは取り乱すどころか、眉一つ動かさず、一片のうろたえも見せていなかった。

 

「昨日の左目の借り今ここで返してやるぜぇ!!」

「「「モケーッ!!」」」

 

 にらみ合いはほんの一瞬で終わり、トードギルディが率いるアルテロイドは呼吸を合わせてテナーに打ちかかってきた。

 アルテロイドは前後左右から襲いかかる。

 敵は集団戦に慣れているのか、その動きには調和性があった。

 対するテナーは本能に従って敵の攻撃を回避し、すれ違いざまにカウンターの要領で拳を食らわす。

 デモンズ・ガントレットがアルテロイドの頭を砕き、その深紅の爪の突き手で腹を穿ち、ヒールをコンクリートに突き刺しそれを軸として絶えず体を回転させ、全方位の相手に大立ち回りを演ずる。

 ほんの僅かでも見切りが誤っていればアーマーを傷つけられ、ダメージを受けてしまう。

 いくら鎧の魔皇力で衝撃を防御し、身を守られているからといっても油断は出来ない。

 襲いかかる複数の敵は、一寸の狂いがないように見えても僅かながらのズレが存在する。

 そこを見分ければ陣形が崩せる。

 アルテロイドは一定のダメージを食らうと消滅するらしく。

 一体、また一体と破竹の勢いでその数を減らしていく。

 

「ハッ!いくら人数が多かろうと息を乱しちまったら──意味ないどころかタチが悪いな」

「その通りだ」

 

 バックルのキバットが言う通り、多数を相手取る際、迎えうたず、絶えず自らが動き回り、敵を撹乱させ、反撃の隙を与えずに体制を崩すのが上策である。

 駐車場は見晴らしがよく数の有利が活きる場だが、テナーはそんな不利を物ともせずアルテロイドを打ち倒す。

 ものの数分も経たないうちに最後の一体を打ち倒し、残るはトードギルディのみとなった。

 

「スゲェ……」

 

 置いてけぼりをくらった総二は自分が幼女の姿になった事に悲観していた事も忘れその戦い方に惚れ惚れしていた。

 深紅のツインテールが新体操のリボンの如く踊っている様に舞い、それとともに拳や蹴りを繰り出し敵が次々と倒れていく様に心躍っていた。

 ここでテナーは総二の方を向く

 

「そこの娘、早く去れ。棒立ちされたのでは──」

 

 そこまで言って驚異の瞬発力で総二を抱え、押し倒す。

さっきまでいた場所には空裂音を鳴らし、トードギルディがしたを伸ばしていた。

 

「そういえばまだいたな。蝦蟇が一匹と──」

 

 廃車を跳ねのけて、リザドギルディがはい出てきた。

 

「リザドギルディ、おっせえぞぉ!!」

「ふははは、見事なツインテールの幼女に加えてまた新たなツインテールの戦士か!一分足らずの内にあれほどのアルテロイドが全滅とは!不覚ながら幼女でなくとも見入ってしまったぞ」

 

 テナーは目を細めて双方の怪人を見やりながら、後ろに立つ総二をどうにか逃がそうと考えていると、いつの間にか剣を手にして前に出てきた。

 

「何だ?早く去れといったはずだが──」

「悪いけど…!」

 

 テナーの言葉を遮るように総二は言う。

 

「俺はもう迷わない!!たとえどんな事になろうとも、ツインテールを守れるなら―俺は…幼女でもツインテールでもなんでも構わない!!一緒に戦ってください!!」

「……一つ、問う」

 

 テナーは終始感情を見せなかったが、少し考える素振りを見せたあと総二に問う。

 

「ツインテールは好きか?」

「大好き!!」

「…そうか」

 

 即答だった。

 総二のその言葉に何かを感じとったのか口元を少し上げた。

 それは相対していたリザドギルディにも伝わったのか上機嫌となって言う。

 

「フッ…恐るべき奴!久方ぶりに戦士としての昂揚が噴き上がる!我はアルティメギルの斬り込み隊長、リザドギルディ!少女が人形に抱く姿にこそ、男子は心ときめくというものよ。改めて聞こう、貴様らの名は!!」

 

 そういえばまだ名を名乗っていなかったな。

 と、テナーは考えた。

 しかし、あまり本名を名乗りたくない。

 

「──テイルレッド!!」

「貴様は?」

 

 先にとなりに立つ総二──テイルレッドが名乗りを上げ、リザドギルディはテナーに顔を向ける。

 テナーも何かいい偽名はないか考えていると。

 

「ファングだ!!」

「え!?」

「コイツの名は──テイルファング」

 

 バックルのキバットが叫ぶ。

 

 

「おい、キバット!何を勝手に…」

「いいじゃん、カッコイイだろ?」

 

 

 下腹部のコウモリが喋ったことにレッドも相手も驚いたが、テナーとキバットは構わず話す。

 テナーは根負けしたのかそれで妥協した。

 

「まぁよい、カッコ悪い呼び名ではないしな。──よし、テイルファング。決定だ」

「…しかと聞いた!!」

「なら、もう開戦でいいなぁ!!」

「待て!トードギルディ!!」

 

 テナー──テイルファングが名乗り、リザドギルディの返事が終わった刹那、待ちわびたようなトードギルディの巨体が跳び、不意打ちの体当たり攻撃を両者めがけて繰り出そうとした。

 しかし、その攻撃はどちらにも当たる事はなかった。

 

「そう焦るな」

 

 テイルファングが片腕一つでトードギルディの巨体を受け止め、まるで運動会の大玉みたいに蹴り飛ばす。

 

「テイルレッド、貴様はトカゲの方を任せるぞ。あの蝦蟇は私に用があるみたいだからな」

 

 そう言ってテイルファングの手の平からまたバチバチッと黒い稲妻の様なエネルギーが(ほとばし)る。

 

影創造(シャドウ・クラフト)──黒刃刀(ブラック・ナイフ)

 

 その黒いエネルギーの奔流が収まるとテイルファングの両手に昨晩トードギルディを切り裂いたふた振りの三日月型短剣──黒刃刀(ブラック・ナイフ)が収まっていた。

 トードギルディが起き上がるとその目の前にテイルファングが黒刃刀(ブラック・ナイフ)を両手に携えて目の前に立っていた。

 どうやら起き上がるまで待っていたらしい。

 

「この野郎…!」

 

 時間が止まったかのような静寂に包まれた空気の中、次の瞬間、テイルファングのふた振りの黒刃刀(ブラック・ナイフ)がトードギルディの腹をかっ捌く。

だが、

 

「ん?」

「ハッハッハッ!!そんな蚊の刺した攻撃なんかじゃあ…俺は倒せねぇぞ!!」

「おいおい、かなりデブデブの脂肪だな」

「ああ、これは骨が折れそうだ」

 

 テイルファングは諦めず黒刃刀(ブラック・ナイフ)で斬り裂き、突き刺し、護手の部分で殴る。

 時には順手逆手を使い分け、蹴り技で相手をなぎ倒す。

 両手に黒刃刀(ブラック・ナイフ)持つテイルファングは、流れるような軽やかな動きで敵を翻弄し、短剣の一撃をトードギルディに浴びせる。

 トードギルディも長い舌の舌弾(ぜつだん)をテイルファングに繰り出すが、見え見えの攻撃を躱すことなど造作もない。

 テイルファングがヒットエンドランの攻撃を繰り出す中、その内舌弾(ぜつだん)の一撃がテイルファングに命中した。

 

「ハハハッ!!勝負あったな!!」

「あん?──うぅ…」

 

 突然、立ちくらみみたいにファングは足がおぼつかなくなり、座り込んだ。

 

「何をした…?」

 

 苦しそうにトードギルディに問うた。

 

「俺の属性はぁ…病弱属性(シックネス)。俺は病弱な女に俺は心奪われる。俺の体液には病原菌が充満しているんだ。それに触れてテメェも──」

 

 そこまで言った瞬間、トードギルディの顔面に強烈な拳がめり込み、またトードギルディを吹き飛ばした。

 

「うべぁ……」

「貴様…!まさか、その体液って──よだれのことか!?」

 

 ファングは露骨に嫌そうな顔をしてくらった部分を拭き取る。

 

「馬鹿な!!俺の病原菌をくらって平気なはず──」

「すでにお前の菌に対するワクチンは昨夜の内に完成している」

「な、何ぃ!?」

「クソッ、こんなことならワザと攻撃をくらって、油断を誘おうとするのではなかった」

 

 テイルファングはベルトの左右の脇に備えられているスロットホルダーに収納されている7つのフエッスル。そのうち一つ、青い笛──ガルルフエッスルを抜くとそれをキバットの口に押し込む。

 

「ガルル・セイバーッ!!」

 

 キバットの叫びとホイッスルにような甲高い、その笛の音色とともに蒼い狼を象った彫像がファングの目の前にきたかと思えば、その彫像は狼のサーベル──ガルルセイバーへとその姿を変え、テイルファングはその柄を受け止める。

 

「ムッ!?」

 

 ガルルセイバーを手にしたテイルファングは少し驚くも、即座にトードギルディの懐へ潜り込んでガルルセイバーを振るう。

 超高速の刃はトードギルディの腹へと到達し、一閃──その一撃だけでトードギルディの分厚い腹をまるで豆腐みたいに切り裂いた。

 

「うぎゃあ!!」

 

 反撃の隙も与えずテイルファングはまたトードギルディ目掛けて再び飛び込む。

トードギルディも舌弾(ぜつだん)で反撃を試みようとしたが、その勢いを保ったまま刃を返し、ファングは力を込めてガルルセイバーを振るう。

 変幻自在に軌道を変える斬撃に、トードギルディは為すがまま耐えるしかできない。反撃など不可能だった。

 息が続くままテイルファングはガルルセイバーを振るい続け、その一撃のために勢いを溜めるように構えると、息とともになぎ払う。

 

「ハッ!!」

「グギャアアアッ!!」

 

 渾身の一撃によってトードギルディは火花を散らして吹き飛び、勢いよくアスファルトの上を転がった。

 テイルファングはガルルセイバーを放る。

 するとガルルセイバーは彫像に戻ってどこかへと飛んでいってしまった。

 それを見届けると今度はスロットホルダーの中の赤い笛──ウェイクアップフエッスルを取り出し、キバットの口の中に押し込んだ。

 

「ウェイク・アップ!!」

 

 キバットが叫ぶと美しい笛の音色が鳴り響く。

 それは幻想的で、どこか美麗だった。

 青色の大空は漆黒に染まり、巨大な三日月が出た。

 

「何だ?……夜?」

 

 真夜中のような深い宵闇の中、レッドも驚いて空を見上げる。

 ファングは両の腕を交錯させながら低い息を漏らし、右脚に力を込める。

 

「はぁあああああああっ……はっ!!」

 

 地面を蹴るようにそれを勢いよく振り上げると、蝙蝠の羽が羽ばたくようにかの様に拘束具(ヘルズゲート)が開錠し、封印の鎖(カテナ)は断ち切られた。

 へルズゲートの中は深紅の羽に三つの緑の魔皇石が埋め込まれており、それらがただならぬエネルギーを発していることは誰の肌でも感じ取れる。

 そしてファングは残った左脚を利用し、天へと跳躍する。

 斬撃から立ちなおったトードギルディだったがすべてが遅すぎた。

 三日月の月光を背に、眼前には急降下するファングの右脚が迫ってきており、躱すことなど不可能であったからだ。

 

「ダークネス・ムーンブレイク!!」

 

 矢のような勢いを持った必殺の蹴り──ダークネス・ムーンブレイクがトードギルディの心臓部めがけて打ち込まれ、そのまま地面へと叩きつける。

 地割れが起こったかのような轟音が響き渡り、地面に蝙蝠のような紋章のクレーターが深く刻み込まれ、その脚の魔皇石から流れ出る膨大なエネルギー──魔皇力(アクティブフォース)が流れ込む。

 

「う…うあぁ……」

 

 苦悶の声を漏らすトードギルディだったが、膨大なエネルギーによりトードギルディの身体は徐々に崩壊してゆき、ガラスみたいに砕けて、破片は地面に溶け込むように消えていった。

 技が決まると夜空は昼の青空へと戻り、右脚のへルズゲートは閉じ、カテナが再びしっかりとへルズゲートを封印。

 ファングはその場から背を向けてテイルレッドの方向に顔を向ける。

 と、爆発が起こりあちらも丁度戦いが終わったみたいだった。

 

「勝手に妙な幻想を見て消えるなああああああああああ!!」

 

 一体どんな奴が相手だったんだ?

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「よっと」

 

 テイルレッドは金属の輪を両断した。

 

「これを壊せばツインテールは戻るのだな?」

「そうみたいです……ん?」

「どうした?」

 

 レッドは地面に煌く菱形の宝石を手に取る。

 それは属性玉(エレメーラーオーブ)というのだがテイルファングはまだ知らない。

 

「──あの」

 

 真後ろからかけられた声にふたりは振り向く。

 

「助けていただいて……ありがとうございます」

「あ、あはは、何のことやら……。俺、いや私は、たまたま通りすがっただけですよ」

「Oh、これはこれはカワイイツインテールのお嬢さん!お怪我はありませんでしたか?あ、申し遅れました。私はキバット・バット三世と言いまして──「やめろ」グえ!」

 

 割って入るようにキバットがバックルから飛び出して会長に意気揚々と話しかけるも、ファングが口を無理やり閉ざす。

 

「体の方は大丈夫か?」

「あのカエルの怪人に舐められてからすごく苦しかったのですが、途中であの捕まった()の一人に助けられましたの。とても素敵な戦いぶりでしたわ。お二方──」

「悪いがそろそろ城が来る。話はここまでだ」

「「城?」」

 

 

ギャオオオオオオオオオォォォォンンッ!!!!!!

 

 

 大気を震わせる巨大な雄叫びが鳴り響いた。

 すると向こうからバッサバッサと何かが飛んできた。

 それは洋風の城だった。それもただの城じゃない。

 

「「ド、ドラゴン!?」」

 

 城から亀みたいに首と手足、翼が生えた全長40メートル以上のドラゴンだった。

そのドラゴンはファング、レッド、会長の頭上を飛び越えると駐車場に着地する。

 

「そう!あれがテイルファングが居住する城──グレートワイバーンを改造して造り上げた『キャッスルドラン』だ!!」

 

 周りの廃車が木の葉のように吹き飛ばされるのもお構いなしにトードギルディが敗れ、紋章のクレーターの上にある属性玉を捕食した。

 今度はテイルレッドの持つ属性玉を捕食しようとズシンズシンと地響きを鳴らし、接近する。

 会長は少し恐怖に身をすくめレッドも身構えるが、ファングのみ前へ出てキャッスルドランに左手を翳した。

 

「やめろ──一つでは腹の足しにならぬか?」

 

 ファングの下顎にステンドグラスの模様が浮かび、左手の紋章が輝きを放つ。

キャッスルドランはファングの威圧にたじろぎ、頭を垂れる。

 

「では出発する。キバット」

「おう」

「あの──」

 

 再び会長がファングに声をかけ、尋ねる。

 

「また逢えるでしょうか?」

「ツインテールは好きか?」

「え?」

「…………私が最も敬愛する人間の言葉を今から言う」

 

 会長は予想外の返しに戸惑っていたが、答える前にファングが言葉を口にする。

 

「『一度目偶然、二度奇跡、三度目必然、四運命』。お前と私は今日偶然出会った。次は奇跡を期待しろ──テイルレッド、お前もな。その時、再び答えを聞かせろ」

 

 

 ファングはひとっ飛びでキャッスルドランに飛び乗るとキャッスルドランは羽を羽ばたかせて上昇し、数秒も経たずにどこかへと飛翔していった。


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