The music of mind for twintail . 作:紅鮭
今年はキバ10周年なのに何にもイベントないのかな?
リヴァイアギルディ、クラーケギルディの襲来により、出動したツインテイルズしかし戦闘開始の前にクラーケギルディが膝を付き、テイルブルーを口説き始めた。
はじめはテイルブルーも満更ではない様子だったが、この一言を皮切りに虚を疲れた。
「最高の貧乳を持つ、麗しのプリンセスよ!!」
遠巻きに大勢のギャラリーに見守られる中、この公開処刑はいたたまれない。
そんな中テイルファングは大粒の涙を流していた。
「うぐっ、ひっぐ…」
「テイルファング、どうして泣いているんだ?」
テイルレッドが恐る恐る尋ねる。
「私はこの様にして、第三者の視点から見ることでようやく気づかされた。私は本当に酷い事をしていたのだなと」
どうやらテイルファングはテイルブルーと喧嘩をするたびに胸の大きさを時折指摘してきたが、このクラーケギルディのやり取りに今までの自分を重ね合わせ、さっきの怒りもどこへやら、慚愧の念に堪えないでいた。
『だけど、流石にコレはマズくない?テイルブルーの火に油を注ぐような発言ばっかりしているよ』
響輔の言うとおり「美しく光り輝く貧乳」とか「ツインテールにはあなたのような完全なる貧乳が似合う」とか完全にテイルブルーに喧嘩を売っているとしか思えない口説き文句をベラベラと垂れ流しているクラーケギルディ。
「だな。被害が奴らだけならともかく、オレらやテイルレッドちゃん、特にパンピーに被害が出たシャレにならん」
「仕方ない……」
涙を拭き、気持ちを整理するとまだ口説き文句をクラーケギルディに向けて
いち早く察知したクラーケギルディはさっと跳び退き、躱す。
「フン、無粋だな!テイルファングよ。我が騎士としての義を邪魔立てするとは!」
「無粋なのは貴様の方だ。敵を目の前にしておきながら饒舌に振る舞い、ナンパとはな。お前、田舎はどこだ?」
「?──何故そんなことを聞く?」
「私の経験談だが、貧乳にはろくな女がいない。そんなこともわからんとはよほど最果ての地より参った田舎者の辺境貴族なのだろうな。とっとと田舎へ帰れ」
「馬鹿め!貴様ごとき講釈される謂れはない。貧乳こそがツインテールとベストマッチし、すべての属性に通ずる万能であり至高の属性なのだ!」
「何が万能であり至高の属性だ、くだらん!それに私は貧乳だ、巨乳だと、そんなものに私は全っ然まったく興味がない。戦いの最中、戦闘に関係性のみられない胸の大きさに気を取られるとは貴様の底が知れるな──テイルブルー、奴のたわ言に耳を傾ける必要などない!」
「はん!やはり胸の太った女には理解できんか!貧乳の良さというものが」
「興味がないだけだ。特にテイルブルーに色目を使っているが、この女だけはやめておけ!」
「何だ!嫉妬か?バッファローギルディの時のように貴様になびかぬことに嫉妬しているのか?」
「たわけ!貧乳以前の問題だと言っているのだ!」
クラーケギルディと口喧嘩を始めるテイルファング。
テイルファングは暗に後ろにいるテイルブルーを擁護しているつもりだったが、逆に火に爆薬を注いでいるのに気付かないでいた。
「こんなものよね、エレメリアンなんて…あー、もうなんかど~でもいいわ、思いっきり暴れたい気分。正体不明のテイルファングも──事故ってことで片付くかしら?」
『テナー!何か後ろから禍々しい怒りの音楽が聴こえてくるんだけど!!』
早く避難してと言わんばかりに響輔がテイルファングに警告する。
どさくさに紛れてテイルファングも抹殺対象に入れて勘定している。
テイルレッドも誰かと通信しながら、完全におびえきっている。
「ツインテイルズーッ!!がんばってくださいましー!!」
さらにギャラリーからツインテイルズを応援する声が聞こえてきた。
『会長っ!?』
「ありゃま?えりなちゃん?」
向こうを見るとギャラリーに混じって神堂会長がいた。
「まずいわ、会長の存在に気づかれたらこの騎士バカに狙われちゃう会長はあたしよりも胸が小さいわ……あたしよりも……」
「何を言っとるのだコイツは?」
『あれ?テイルブルーって会長の知り合いなの?』
テイルブルーの発言に呆れているテイルファング、その内面響輔は会長とも知っている仲かと思ったが。
『ああ、応援によく来る少女だからか』
と、勝手に解釈した。
「むう!あちらにもなかなかのツインテール属性だが、巨乳ではないか……」
リヴァイアギルディはぼそりっと残念そうに呟いたのに対し、クラーケギルディは────
「確かによきツインテール属性だが、
「なんだ貴様!お嬢様に向かって何を!?」
クラーケギルディの発言に対して反応したのは傍に控えていた尊の批難に気にもせず、クラーケギルディは迷いなく言い放つ。
「幼き少女は胸が小さくて当たり前なのだときめくどうりはない」
「(男らしいなコイツ)」
『(男らしいなコイツ)』
クラーケギルディの信念にテイルファング、響輔は感心した。
「なるほど、あたしは当たり前じゃないってことね……ハハハハ……ハハハハハ!!」
さっきのテイルファングみたいな狂気じみた乾いた笑いを漏らすテイルブルー。
羅刹もかくやという形相で飛びかかろうという矢先、クラーケギルディに変化が起きた。
「さあ、ご覧あれプリンセスよ!これで私が本気だとわかっていただけたはず!!」
クラーケギルディは両の手を八の字に広げて、身にまとっていた甲冑がはじけた。
いや、それは鎧ではなかった。折りたたまれて、鎧のように奴の身体に収納されていた数えきれないほどの触手。
その無数の触手は摩天楼に彩られた空を完全に覆い尽くした。
「あれがあいつの戦闘形態なのか!?」
テイルレッドも驚愕の声を上げた。
『なんか…カッコイイ』
「は~ん、赤銅のキバみたいなギミックだな〜」
「そういえばビショップも胸は控えめな方だったな、あのスルメのお眼鏡に叶うかな?」
響輔、キバット、テイルファングは呑気に思いふけっていたが、すぐに臨戦体制にはいる。
「しっかし、あの無数の触手の間を掻い潜るにはいささか困難だろうな」
「ああ、だが丁度試したいフォームがあった」
「おッ!今日はなんだなんだ?」
「アルテチェインでいく!」
「了解だぜ!」
テイルファングはスロットホルダーにある白いフエッスルを手に取った。
だが、キバットに吹かせるその直前。
「い、いやあああああああああああああああああ!?」
「何だ?」
「ブルー?」
突如、テイルブルーの絹を裂くような叫び声が上がった。
テイルファングは振り向き、テイルレッドも訳が分からずに近寄る。
「どうした、ブルー!?」
「何が起きた?」
「触手…触手ぅぅぅぅぅぅ!?」
「ひ、姫!?」
「いやぁ────!!触手やだ────!!やだやだやだ──────っ!!」
悪鬼羅刹と恐れられているテイルブルーがこんなにも怯えるのを見たことがなかった。
多分、今なら赤子の手を捻るが如く簡単に倒せるはずだ。
「おいスルメ!その触手、貴様一体何をした!?」
「これは我が求婚の儀!テイルブルーへの溢れん限りの愛を表した、愛の証明なのだ」
「オイィィィッ、戦う為じゃないんかい!!」
キバットの渾身のツッコミ。
「いやあああああああああ触手に告白されたぁああああああああああああ!!」
クラーケギルディが広げた無数の触手が1本1本うねうねと動く光景に、テイルブルーはとうとう泡を吹き、白目をむいて気絶してしまった。
「…ちっ!!」
そして殆ど傍観していたリヴァイアギルディはわざとらしい素振りで舌打ちをした後、踵を返す。
「…興ざめだ!これでは勝負どころではないではないか!」
リヴァイアギルディは一跳びでクラーケギルディに近づき、肩を掴んで退却を促す。
「テイルレッド、そしてテイルファング、今日の所は勝負を預けよう!次の戦いまで不甲斐ない仲間を慰めておけい!!」
「お前…」
「それはお互い様だ、ウナギの畜生!次は求婚の儀ではなく、私が葬儀を執り行ってやろう」
「ふっ…また会おうぞ、テイルファング!このリヴァイアギルディ、貴様との再戦を楽しみに待っているぞ!!」
「姫、姫ぇぇぇぇぇぇ!!」
ニヤリと笑うリヴァイアギルディと名残惜しそうに叫ぶクラーケギルディ。
触手が踊りながら光のゲートに消えていく。そして最後の1本が消え、辺りに静寂が戻ると、突然テイルブルーの身体が眩く発光した。
「まずい!!」
テイルレッドは即座にオーラピラーを薄く展開すると、テイルブルーを抱えてこの場を離脱した。
テイルファングもその余波で少し怯むも、敵のいなくなった今この場を離脱した。
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「あ、危なかった…!」
人気の少ない路地裏に駆け込み、ブラインド代わりに展開していたオーラピラーを解除する。
案の定、オーラピラーの中には変身が解除され、元の姿に戻って気絶している愛香の姿があった。
ゼーゼーとテイルレッドは息をしながら壁に寄りかかり、乱れたツインテールを整える。もちろん愛香のも。
『次からは気絶しても変身が解けないように、ブレスを改良しますね』
トゥアールの申し訳なさそうな声が通信で聞こえてくる。
「そうしてくれた方がありがたいよ、トゥアール。流石に今回は肝が冷えた」
テイルレッドはそんな軽い口調を叩きながら元の姿、観束総二へと戻ろうとする。
(やっぱりテイルファングは凄いな。あんなメチャクチャな空気の中でもシリアスに敵と戦えているんだから…俺も見習ってツインテールを鍛えて…!)
『総二様、変身を解除しては駄目です!!』
「え」
だがトゥアールの警告もむなしく、テイルレッドは観束総二の姿へと戻ってしまった。
瞬間、総二の眉間に電流が走る感覚がした。
…それは鮮烈までのツインテールの感覚。
あの美しき金髪の、舞踏会に現れた姫のようなツインテールの感覚。
そして背後から自分の身体に影が入り込んだ瞬間、総二は息を呑んだ。
「…観束…君?」
後ろを振り返り、路地裏の入り口を見るとそこには…。
「生徒…会長…?」
そこには肩で息をしながら、呆然と総二と愛香を見つめている、神堂慧理那の姿があった…。