私のカルデアでの出来事のあれこれ。

1 / 1
色彩オルゴールverをかけつつ……


決戦前日

「―――お、動いた? 動いたか?」

 

「ふむ、これならば問題あるまい」

 

「おー、マジマジ。動いた動いた。超動いた。いやぁ、マジで助かりましたよ、エミヤさん」

 

「なに、役に立てたというのであれば光栄だ。機械弄りなんて懐かしいことだしな」

 

 ビデオカメラを片手に、スクリーンを通して、カメラが写し取る景色を見る。その向こう側で赤い服装の英霊・エミヤはニヤリ、とニヒルな笑みを浮かべて満足そうな表情を浮かべている。しっかりとビデオカメラが動くのを確認してからこちらからもサムズアップを返し、それでは、と一言置く。

 

「トップバッター、エミヤさん! 最終決戦前に一言どうぞ!」

 

「私かね? トップバッターに相応しいのは他にもいるのだと思うが……まぁ、仕方があるまい。まぁ、私に関しては何時も通りだ。世界を救うなどというのは慣れた作業だ。黒幕を倒して、全員で帰還してパーティーする、その時が私の本番だ。それに比べれば人理を滅ぼす存在など足るに足らんだろう?」

 

 エミヤのそのいつもらしい言葉に苦笑を漏らしつつ、

 

「台所の守護神らしいお言葉ですねー。……んじゃ、カルデアを回ってきますわ」

 

 エミヤはグッドラック、とサムズアップを向けてくる。イエス、とサムズアップを返す。

 

 そうやってエミヤと一緒にこもってビデオカメラの修復を行っていた工房を出る。ついに立香とマシュは、たどり着いた―――ソロモンの神殿へと。その出撃にはまだ時間が残されている。だからこそこの最後の瞬間、生き残れるか解らないこの最後の安らぎ―――決戦前のわずかな時間を、少しでもいいから形にして残したかった。全てが終わった時に自分が生きているとは限らなかった。だから少しでもいい、私が、そしてそのほかのみんなが、

 

 ―――カルデアに集った仲間たち全員が、ここで生きようとしていた。

 

 その証拠を、記録を残したいのだ。

 

 ここで確かに死力を尽くし、頑張ったのだ。

 

「おや、これはオペレーター殿」

 

「なにをやっているかと思えば……」

 

「おやおや、これは先生方じゃないですかー。仲良くどちらへ?」

 

 通路に出たところで作家が二人、シェイクスピアとアンデルセンの姿を見つける。おじさんとショタという凄まじい見た目のコンビだが、二人が人類史に名を残す作家であるのは誰もが知っている。このカルデアでも、その執筆能力は支援能力へと変わり、発揮されている。

 

「休憩です。先ほどまでずっと籠って執筆作業をしていましたものでして」

 

「明日までに原稿を書きあげねばならんからな。全く、あと一週間ぐらい締切までの時間が増えんものか」

 

 終末を前にしても全くやる事に変化がないのは作家らしさだと思いつつ、一言をどうぞ、と求める。

 

「この物語が悲劇か、或いは喜劇で終われるか。私はそれが楽しみでしかたがありませんなぁ」

 

「馬鹿か貴様は。今回に限っては喜劇で終わらせるのが劇場作家としての仕事だろうが」

 

「はは、これは一本取られましたな」

 

 笑いながら作家の英霊が去って行く。その背中姿を収めつつ、さて、どこへ行こうかと思い、とりあえずは良くたまり場として利用されている食堂へと行こう、と決める。しかしあの作家二人、どこか言葉にキレがなかったような気もする。やはり、英霊であってもどこか、終末という終わりの前には感じ入るものがあるのだろうか? そんなことを考えながらカルデアの食堂に到着する。

 

 そこにはかなりの姿の英霊があった。暇そうにお菓子を摘まむ者もいれば、必死に料理をするキャットでフォックスなドッグメイドもいた。というかあのキャット、分身しながら料理を作ってないだろうか。さすがメイド技能が上がると意味不明な行動力を手にするものだ。その横で宝具を使って素材や料理を大盤振る舞いしているのは俵藤太、だろう。第六特異点攻略後にカルデアへとやってきてくれた彼のおかげで常に食事を制限していたカルデアの食糧物資の不足問題は劇的に回復してくれたため、カルデア最大の英雄として全スタッフに彼は愛されている。

 

 実際、二日、三日、食事を抜いている事なんて珍しくはなかったのが、今では三食につきおやつが入る様になったのだ。彼がもっと早く来てくれれば、と何度思った事か。ともあれそれはさておき、

 

「英霊のみなさーん、こんにちわー。突撃となりのカルデアッ! のお時間ですよー。最終決戦を前に皆さんの記録を残しにきましたよー」

 

 軽いノリで食堂に入る。それでたぶん正解だったのだろう、決戦に備えていた英霊たちの視線が此方へとむけられ、興味深そうに集まり始めてくる。ビデオカメラを指さしてその用途を伝えると、座っていた英霊たちが興味を持ち始める。彼らだって永遠にカルデアにいるわけではない。この戦いが無事に終わったら―――もう、カルデアに残っている理由もない。

 

 きっと、座に帰ってしまうのだろう。

 

「まあまあまあ、私たちの姿をその小さな箱に残しておけるのね? なんて素敵なのかしら! ほら、ジャンヌ、一緒に姿を残しましょう? ほら、チーっす、って」

 

「あ、あの、その、マリー? 私は別に……その……」

 

 ジャンヌを押し出すようにカメラの前に立とうとするマリーの姿を見て、フランス出身のサーヴァント達が肩を組みながら此方へと向かってサムズアップを向けてくる。本当にフランスに愛されているな、あの二人は。そんなことを考えていると待て待てまてーい、と食堂に響く声があった。そう言って前に飛び出してくるのは真紅の衣装の少女―――ネロだ。

 

「ここは天上の美を司る余を置いてほかにないだろう! 今なら撮影スタジオに黄金劇場もついてくるぞ!」

 

「待ちなさいよ! だったらドラクル系アイドルとして私だって先に撮影されるべきよ! あ、こら、何私を引っ張ってるのよおばさん!」

 

「だぁーれがおばさんだってこの小娘が! それ以上私たちの恥を晒す前にとっとと消えるのよ!」

 

「じゃあ私がハロウィンな感じで映るわ!」

 

「いいえ、ここはブレイブな私の出番ね!」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛―――!!」

 

「カーミラ殿が発狂しておられるぞ!!」

 

「黒歴史がムーンウォークしながらアピールしてるんだから仕方がないわよね。正直同情するわ。絶対関わりたくないけど」

 

 言い争っているエリザベートズとネロを押しのけるようにデュフフフ、と気色の悪い声を漏らしながら黒髭が何かを言おうとした瞬間、見事なヘッドショットが突き刺さり、

 

「まだ……何も言ってない……」

 

「いえ、喋らせたらせっかくのビデオを処分する必要が出てきそうなので」

 

 アン・ボニーがマスケット銃を片手に、サムズアップを向けていた。海賊組はほんと、容赦がないなぁ、と思っていると部屋の隅でアステリオスが興味を持つような、そんな視線を向けているのに気付く。ビデオカメラをそちらへと向ければ、アステリオスが恥ずかしそうに顔を隠そうとして、どこからかミノタウロスの仮面を取り出そうとして、エウリュアレがそれを邪魔するのが見えた。それを横で見ているステンノがため息を吐いており、メドゥーサがおろおろしている。アステリオスくんは、もう少し自己主張してもいいんじゃないかなぁ、と思っていると、

 

 横から伸びた手がカメラを無理やり横へと動かした。

 

「ヘイヘーイ、俺は映ってるー? 明日は活躍しまくるから良く映せよー」

 

「モードレッド卿? その態度は聊か……」

 

「うるせぇよベディヴィエール。こういうのは無礼講って言うんだよ。ほら、お前も映れ映れ」

 

 そう言ってモードレッドがカメラを横から押し、今までは静かにしていたベディヴィエールとランスロットの姿を映し、それからテーブルの上に山積みされている唐揚げを無言で食べ続けているアルトリア、そしてアルトリア・オルタの姿を捉える。その姿を遮るようにベディヴィエールが動き、

 

「放送事故なのであちらを映すのはやめましょう、ね?」

 

「えー、なんでだよ。あんなに父上がいるんだったらふつう撮影するだろ!!」

 

「アルトリアの撮影って面白さ的な意味でかな? あ、因みに私の場合はギャラをぉぉぉ―――!?」

 

 そう言ってどこからともなくマーリンが現れた瞬間、モードレッドが剣を振るっていた。いいぞぉ、やれぇ、というコールが全方位的にマーリンへと向けられており、誰一人としてマーリンの味方をしていなかった。アイツ、全方位的にヘイト稼いでいるのは芸人的なスタイルなのか? なんてことを考えていると、壁際に集まるインドのサーヴァントを二騎見つける。騒ぎから逃れるように回り込みながらカメラを向ければ、

 

「貴殿も物好きだな。余達よりも残すべき相手はいるだろうに」

 

「とはいえ、このまま何もせずに送り出すのもまた礼に欠ける。求められたのならばそれに応えるのが我々の役目だ」

 

「確かにそれは一理ある」

 

「なんでインド人ってこんなにクソ真面目なんすかね……あ、一言どうぞ」

 

 うむ、とカルナが頷いた。

 

「明日がどうあれ、必ず勝利を齎す事を誓おう。それが我々の最善だ」

 

「その為の余らである」

 

「頼りになるコメントど―――もわぁ!?」

 

 いきなりの衝撃に前に倒れそうになれば、金時が肩に手を回して、サングラスの裏で目を輝かせながらビデオを見ているのが解る。結構子供っぽいよなぁ、と思いつつまだ、ビデオに映りたがっている英霊は多く、こりゃ時間がかかりそうだと、覚悟した。

 

 

 

 

「―――はぁ、やっと解放された」

 

 ケルト組は酒盛りを始める、ブリテン組はいつも通り内乱をはじめ、インド組はそれもありだろ、と納得して、フランス組はキマシタワーの建設に燃えていた。本当に英霊という連中はイロモノが多いよなぁ、と思いながらやっとのところで食堂から脱出すると、廊下でばったりと和服姿のセイバーの式、そして第七特異点で合流したばかりのキャスター・ギルガメッシュ王の姿があった。

 

「あら、記録に残しているのね」

 

「感傷―――とは言うまい。それが再び足跡を刻むのに必要というのであればな。良い、我が姿を記録する栄誉を与えてやろう、雑種」

 

「こんな時でも相変わらずなのね、貴方は」

 

「ハ、この程度の事でこの我が揺らぐと思うなよ! それよりも貴様よ。まさかここまで残るとは予想外であったわ」

 

「そうね……私も執着とは無縁だと思っていたんだけれどね……まさか本当にこうなっちゃうなんて。でも悪くはないわ。いえ、好きよ。安心して、無粋な事はしないから」

 

「元より貴様にそのような心配はしておらぬわ……どうした雑種? 我らの姿は十分撮れたであろう? 次へと行け」

 

「う、うっす」

 

 ギルガメッシュ王に頭を下げながら去って行くと、くすくすくす、と式の声が聞こえた。あの人はどこか、得体がしれないというか、雲を眺めているようで、どうもギルガメッシュと並んで苦手だ。とはいえ、あの二人は戦闘においてすさまじい結果を残してくれてる、味方だ。恐れるところは一つもない。明日、立香と一緒に前線に出てくれるのだから。

 

 そう、明日。明日だ。それで全てが終わる。

 

「……沈んでる暇はないな。どうせ明日もクソみたいにぎりぎりというか限界を超えて働かされるんだろうし」

 

 そう呟き、沈んだ心を振り払いながらそろそろ、主役の立香を探そうか。そう思って立香を探しに、自室のほうへと移動する。現在は様々なサーヴァントの助力でカルデアの施設もだいぶ稼働しているため、移動用のエレベーターも使えて楽だ。故にあっさりと居住区画の立香の部屋へと向かうと、その入り口の前で足を止め、うろうろしている姿を見つけた。ビデオカメラを通したその姿を撮影しながら、

 

「おや、女神様じゃないですか。何をしていらっしゃるんで」

 

「え、な、何でもないわよ! ちょ、ちょっと緊張してるんじゃないの? と思って様子を見に来たとかそんなんじゃないからぁ―――!」

 

 そう叫ぶとイシュタルがマアンナを召喚し、それに乗って超高速で通路を飛翔して逃げた。その途中、吐血する声、ノッブゥーという断末魔、そしてランサーが死んだ! という妙な声が聞こえてきたが、それを完全にスルーし、空いていた立香の部屋の扉の隙間から部屋の中を覗き込む。

 

 立香の部屋、そのベッドの上にはエドモン・ダンテスの姿があり、その膝を枕代わりに藤丸立香()()()は目を閉じて、安らかに眠っていた。安らかな眠りを妨げないようにエドモンは動かず、此方へと視線を向け、人差し指を口元へと持って行った。その意味を察し、音を立てずに静かに部屋を後にした。

 

 そのまま、聞こえない所まで移動し、

 

「……復讐者の旦那にもあんな側面があったんだなぁ」

 

 あの怒りの化身の様な男があそこまで穏やかな表情を見せるのは、正直意外だった。或いはそれこが、藤丸立香という人物の徳義、特徴、才能とも呼べるものなのかもしれない。そう思いながらだいぶカルデア内を巡ったなぁと思い、次の場所へと向けて移動する。まだビデオに余裕はあるし、よし、と足を再び動かし始める。

 

 そう思って、足を向けた先は―――管制室だ。その扉をカメラを回したまま開ければ、その中に予想した通りの二人の姿を見つけた。

 

「チーフと主任チィーっす!」

 

「チィーっす、って君は何をやってるんだ……」

 

 管制室には予想通り、休むことなく作業を続行しているロマニ・アーキマン所長代理、そして技術開発主任のレオナルド・ダ・ヴィンチの姿が見える。相変わらずレオナルドの姿を見て、頭がイカレてるよなぁ、と納得したところで、

 

「最終決戦前ですし、ちょっと皆の気合いとか姿とか、そういうの撮って回ってるんですよ」

 

「また君は妙なものに手を出して……いや、まぁ、別にいいんだけどさ」

 

 苦笑するロマニに対し、ダ・ヴィンチの方はノリが良く、うんうん、と頷いていた。

 

「いかにも最終決戦って感じがしてこういうのは嫌いじゃないよ、私は。というかこういうシチュエーションは寧ろ私よりも君のほうが好みなんじゃないかと思うんだけど」

 

「え、ボクかい? そりゃあロマン溢れていて好きだよ! と、そういう事だったら協力しないわけにはいかないなぁ……えーと、もうビデオ回ってるの? なんか恥ずかしくなってきたぞぉ」

 

「―――安心してください、Dr.ロマンは大体いつも恥ずかしいですから」

 

 背後からの声に振り返れば、扉を開けえ管制室に入ってくるカルデア、唯一のデミサーヴァントの姿があった。マシュ・キリエライトだ。普段は彼女が先輩と慕う立香と一緒にいるのだが、どうやらエドモンに占領されているため、此方へと来たように見える。カルデア随一の萌えキャラだよなぁ、何て事を考えながら、マシュの背後に回り込み、その背中を押して、ロマニやダ・ヴィンチとフレーム内に収まるように押し込んだ直後、再び扉が開く音が聞こえた。

 

「へいよーかるでらっくす―――イベントの気配を感じて起床……! 私も混ぜろー! うぉー!」

 

「立香ちゃん……たくましくなっちゃって……」

 

「ある意味逞しくなりすぎたというか」

 

 お前、さっきまで寝てなかったっけ? そう思ったら扉を巌窟王が横切ってどこかへと去って行った。なるほど、完全に彼氏面してるな、あれ。なんというか、立香ちゃん争奪戦は色々と壮絶そうだなぁ、と思いつつ、立香の背中もビデオカメラのフレーム内に収まるように押し込む。

 

「フォウフォーウ!」

 

「あ、フォウさんこちらへどうぞ」

 

 開いている扉からフォウが走りこんで、そのままマシュの胸の中に飛び込み、抱きかかえられた。羨ましいやつめ、と心の中で軽く嫉妬を抱きつつ、冬木やオルレアンの頃はまるで笑顔を見せなかったのに、今ではどんなに絶望的な状況であろうと作り笑いではない表情を見せるようになった。そんなみんなの表情をビデオカメラに収めながら、

 

 問う。

 

 ―――明日は最終決戦、何を願う?

 

「皆で一緒に帰れる、完全な勝利を」

 

「完全勝利! 魔術王なぞぼっこぼっこよ! 数と気合と根性とカルデア力で囲んでひたすらリンチにする! 歴史に名を刻んだことを後悔しろよ魔術王……!」

 

「フォーウフォーウフォーウ!」

 

「おや、フォウも今日はやる気十分という様子だね? 珍しい。ま、私も明日は全力全力を尽くして君たちの帰るべき場所を守るさ。そう、絶対に守り通して見せる。それが私の抱負、って奴かな」

 

「あ、皆先に言い終わるのはずるいよ」

 

「ヘイヘイヘーイ、チーフ、トリですぜ、トリ!」

 

「これは気合い入れないとだめですねぇ……」

 

「がんばってくださいDr.ロマン」

 

「ハードルが上がってる……!」

 

 ロマニが声を震わせながら戦慄しているが、やがて咳払いをし、そしてそうだなぁ、どうしようかなぁ、と困った表情を浮かべる。それを同僚たちで苦笑しながら見守っているとそうだね、とロマニが言葉を置いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「―――青空、かな」

 

 その言葉に立香が首を傾げ、いや、ほら、とロマニが言う。

 

「どんな特異点を巡ろうと常にボク達の頭上はソロモンが掲げた人理焼却のあの宝具が展開されていて、まともに見れたものじゃない。カルデアで働いているボクらに至っては一度もまともに青空をこの一年半、見てすらいない。だからそうだね、青空が見たいかな、皆で。カルデアの周りはいつも吹雪いているけど、時折それが晴れて、綺麗な青空が見えるんだ」

 

 だから、と、今にも消えそうな儚い笑みを浮かべ、少しだけ恥ずかしそうに言った。

 

「青空、かな」

 

 その言葉にしばし無言が生まれ、フォウが鳴いた。

 

「フォウさんがロマニのくせに生意気だ、と」

 

「辛辣だなあ! 結構良い事を言った気がするのに!」

 

「はははは、ロマニはそういう事をかっこよく言うには少し見た目が頼りないかなぁ」

 

「恥ずかしがってるところも女子的にはマイナスかなぁ」

 

「君たちは作戦前にボクを殺しに来てるのかな! 助けて!」

 

「がんばれ、がんばれチーフ!」

 

 笑い声を響かせながら、そうやってカルデア最後の映像記録をこのビデオカメラに残した。これから挑むのは最後の戦い。最強の敵との戦い。人類の歴史、そのすべてを焼却し、英霊という枠組みから完全に逸脱し、神にすら届く怪物。

 

 それに勝てる保証なんて一切存在しないし、負ける確率のほうがはるかに高い。

 

 カルデアだって無事で済むわけがない。きっと、誰かが死ぬかもしれない。

 

 だけど、今、この瞬間は―――誰もが笑って、そして決めていたのだ。

 

 ハッピーエンド以外は絶対に許さない、と。

 

 そして―――2017年を皆で迎えるのだ。




 さよならDr.ロマンティック。2017年で再び会えると信じて。挿絵は碑文つかさ氏のご提供で。

 我がカルデアは結構大人数だけど全員フレームインさせると無駄に長くなってテンポ悪くなるので、ある程度はカットしつつ、まぁ、皆騒がしくやってるんだろうなぁ、って。

 それでは年末企画、2016年最後の更新です。お疲れ様でした。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。