今回は少し長めです
「知らない天井だ」
一度は言ってみたい台詞トップ10に入る1つを言えたことに感激を覚えていた。周りの状況をを確認するために体を動かそうとすると、体のあちこちから鈍い痛みが走った。
「ッつう!?」
マジで痛い…。確か、俺って犬を助けようとしてリムジンに轢かれたんだったな。てことは、ここは病院か。入学早々ついてねぇな…。待てよ、主席の挨拶が無くなったわけだから、寧ろラッキーじゃね。ラッキーボーイだな
「あ、目が覚めた?」
そんな馬鹿な事を考えていると、不意に掛けられた声に思わずびくっとしてしまい、そのせいでまた鈍い痛みが体を走る
「無理しなくていいよ。右足と肋骨数本骨折、加えて全身打撲。全治1か月なんだから」
声の主はどうやらベッドの横にいるようだ。目線を声の主の方に向けると、そこには10人の男性が見たとしても9人が絶世の美女と答えるであろう女性だった。ちなみに残りの1人はちょっと危ない奴だ。
そんな女性が今俺の目の前にいる。はっきり言って知らない。というか中学の頃から友達も知り合いもいな……これ以上はやめよう。
「ねぇ、大丈夫?目がなんかアレになって来てるけど…」
見ず知らずの人に心配されてしまった
「…すみません、大丈夫です。それでどちら様ですか?」
「私の名前は雪ノ下陽乃。それで、私が何でここに来たかっていうと、今日あった事故の件で取引をしに来たからなの」
「……取引?」
「そう、取引。実は事故の時、あの車の中に私の妹が乗っていたの。それを無かったことにして欲しいの。私たちの家は結構権力がある家でね。このことが公にばれると色々と不味いの。その代わり、入院中の医療費とか学費は負担するってことでいい?」
学費も負担してくれるのか…
「それは正直こちら側にとっても非常に有難いですので、俺はそれで構わないです」
ただ、俺はさっきから妙な感覚にとらわれていた。この目の前にいる女性と会った瞬間から違和感しか感じられない。でも、まだピースが足りない。
「そう、良かった。ありがとう」
その一言でピースが揃い今までの違和感の正体が分かった。美人で人当たりが良く、その振る舞いの1つ1つが完璧に洗練されたような。まるで、男たちの理想をそのまま絵に描いたような美人なのだ。それで、強化外骨格ような分厚い仮面を被っている女性だ。
「比企谷くんは、総武高校に通っているんだよね?」
まぁ、今後関わることがないだろから関係ないか
「今日から入学予定でした。でも、何でわかったんですか?」
「そこに制服が置いてあるじゃない」
雪ノ下さんが指を指した方を見ると、そこには綺麗にたたまれた制服があった。しかし、その制服の至る所に擦り切れた跡や血が滲んだような跡が残っていた。それを見て、改めて事故にあったことを実感した。
「ああ、なるほど」
「私の妹も今春から総武に入学するの」
「妹?」
「うん。それなりに受験勉強頑張ってたからね、主席だったみたいだよ」
「へぇ、主席です…か…」
え、何で?俺は学校から直接主席って言われたんだけどなぁ
「新入生代表で挨拶してたからね。それとも何かおかしなことあったかしら?」
なるほど、そういう事か。俺が入学式でれなくなったから代理で挨拶をしたのか。てことは雪ノ下さんの妹は次席なんだな」
「え?…雪乃ちゃんが次席?」
雪ノ下さんの妹は雪乃っていうのか。ってそうじゃなくて、今の声に出してたのか…
「もしかして、声に出してましたか?」
「う、うん。へぇ…、じゃあ、君が主席なの?」
雪ノ下さんが初めて動揺していた。すぐに立て直したけど…
「まぁ、そうですけど。それで、用件はさっきので全部ですか?」
もうね、雪ノ下さんとの会話は疲れる。言ってることが本音って感じがしないんだよな…。
「面白いね、君って」
え、何が?主語をちゃんと入れてくれませんかね…
「確か、比企谷八幡くんだったよね?」
怖い。何が怖いかっていうと、顔は笑ってるのに目が全然笑ってない…。ホントにコワイ。
「しょう……そうですけど」
怖すぎて噛んでしまった…。
「私の名前は雪ノ下陽乃ね。ちゃんと覚えててよね」
覚えるも何も、印象が強すぎて忘れられないわ!
「それじゃあ、これで。また来るね」
…え、また来るの?
「あ、雪ノ下さん。あの……」
「ん、何かな?」
「本当に来るんだったら、その強化外骨格みたいな仮面を外してくれませんかね?結構疲れるんですよ…」
あ、やべ。……言ってしまった
「……本当に面白いね、君って」
だから主語を言ってくれませんか…
「じゃあ、またね」
と言って、彼女は去っていた。
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