俺のこんな学校生活も悪くない   作:天然水いろはす

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どうも天然水いろはすです。

約二ヶ月ぶりですね。この二ヶ月間に、幼女戦記にハマってしまい、ずっと本を読んでいました。アニメもいいですよね。声優が最高すぎる。

それでは第9話です。
お楽しみ下さい!


第9話

 翌日のことである。チャイムが鳴り日直の号令で現文の授業が終わった。今日の最後の授業が終わったからなのか、一気に弛緩(しかん)とした空気が教室内に流れ始める。友達同士で今日どこに行く?などと言う奴もいれば、ひと狩りいこうぜ!なんて言う奴もいる。最後の奴が言っていたゲームは俺もやっている。

 最近ではそのゲームを3DSでやるのが中高生たちの主流で面白いらしい。まぁ俺から言わせて貰えば、今じゃマイナーと思われるかもしれないがそのゲームはPSPでやった方が断然面白い。……べ、別に最近のゲームはコミュニケーションツール化しすぎてコミュ力が必要で無理とか、3DSを持ってないから羨ましいとか、そんな理由なんかじゃないんだからねっ!

 そんな教室内の雰囲気にも関わらず真面目な生徒もいる。例えば、授業が終わってすぐに授業で分からなかったところを国語教師の平塚先生に質問をしにいく女子生徒とかな。

「平塚先生、この場面の先生とKのことなんですけど……」

「ああ、Kがお嬢さんのことが好きだと先生に打ち明けた場面だな」

「ここって先生とKとの関係というか立ち位置?が変わってきてると思うんですよ」

「そうだな。ここは先生がKに対して…」

「やっぱりここは今まで受けだったKが攻めに変わった瞬間の場面ですよね!それで先生は自分が受けになるのを拒んで再びKを受けにさせるために、さらに鬼畜に攻めて……ぐ腐腐腐、キマシタワー!!」

 前言撤回。真面目な生徒じゃなくて、アレな生徒だった。いや、もう本当にね?かの文豪の名作もその……腐女子の視点で読むとこうも物語が変わるものなんだな。

 感心半分呆れ半分に、俺はその女子生徒(鼻血を出している)を見ていると、近くにいた平塚先生と目が合った。「こっちに来い」という目で見てくる。俺は部室に向かう準備をして平塚先生のところには行かずに教室を出た。

 ただ、そういう目で見てきただけで、実際のところ「こっちに来い」と口に出して言っているわけではない。そのため平塚先生のところに行かなくても問題ないはずだ。

 さて、部室へ行く前にマッ缶でも買ってやる気を出すとするか。

 奉仕部の部室がある特別棟の方の自販機でマッ缶を買おうとした俺はあることを思い出す。それも重大な。

 総武高校の自販機は普通棟と特別棟の二箇所にある。どちらも同じ一階にあり、対角線上に配置されている。そして、マッ缶は普通棟の自販機にしか売られていない。……そう、マッ缶は普通棟のの方にしか売られていないのだ。大事なことだから二回言った。何故かは知らんが特別棟の方には売られていない。千葉なのにだぞ。

 今から引き返してマッ缶を買いに行くとなると、奉仕部の方には遅れて行くことになるだろう。だがしかし、俺のマッ缶愛は止まらない。これも部活にやる気を出すためだ。

 俺は特別棟の方へ向けていた足を止め、(きびす)を返して普通棟の自販機へと、マッ缶を求める冒険に出た。や、冒険ってわけじゃないけど、その方がモチベーションが上がるだろ。

 ちなみに作戦は『ガンガンいこうぜ』だ。

 暫し、歩いていると2年F組の教室から疲れきった顔をした平塚先生が現れた。

「げッ」

「おや比企谷、部活に行ったのではないのかね」

「いえ、ちょっと飲み物を買いに行こうと思いまして……」

「それなら特別棟の方でもいいのではないのか?」

 先生は疑った目で俺を見てくる。もしかして俺が部活をサボろうとでも思ってるのだろうか。

「や、特別棟の方にはマッ缶は売られてませんから」

「ほう……MAXコーヒーか。疲れた時にはあれほど格別な飲み物はないな」

 お、平塚先生よく分かってらっしゃる。まぁ疲れた時もそうだが毎日飲んでもマッ缶は格別だ。

「なら、ちょうどいい。これを職員室まで運ぶのを手伝ってくれ」

 平塚先生は手に持っていた生徒の課題を俺に渡してきた。しかも半分とかじゃなくて全部だ。

「て、なに全部持たせてるんですか……」

「私の授業を最初から最後まで寝ていた君への罰だ。いくら学年1位だからといって授業中に寝るのはよくないだろう」

「うぐッ」

 八幡は80,000のダメージを受けた。八幡だけに。フヒッ。

 っつーか気づいてたのかよ。ちゃんと教科書とノートを開いてシャーペンまで持ってたのに。これがアラs……若手教師だからこそ気づけたんだな、うん。だからそんなに俺を睨まないでください。

「というわけで行くぞ」

「……はい」

 幸いな事に普通棟の自動販売機は職員室に近い。もし遠かったりしたら、てきとうな言い訳をでっち上げて逃げてたな、多分。

 こうして新たに平塚先生が仲間に加わったのだった。

 

 

 ◇

 

 

 職員室へと歩いていると平塚先生は思い出したように口を開く。

「あ、そうだ。君は、小説は好きかね?」

「いきなりなんですか…」

「いや、なに。ちょうど授業で夏目漱石の『こころ』をやってるからな。ただ聞いてみたくなっただけだよ」

「まぁ、嫌いではないですけどね」

「なぜ好きかね?」

「そりゃまぁ……小さい頃から読んでるからってのもありますけど、自分では経験できないような物語をくれるから、ですかね」

「ふむ」

 先生は続きを催促するように俺を見てくる。

「小説ってのは非現実的な物語が殆どです。そのいい例がライトノベルですね。でも、そんな物語でも感情移入できる登場人物や、この場面は共感できるっていう部分が出てくるんですよ」

 そんな経験ありますよね?と俺は視線を送る。

 (しばら)く沈黙した時間が流れた。

「……まぁ、そうだな」

 平塚先生は顎に手を当て、まるで自分の記憶の引き出しを開けるように、そう答えた。

 そんな先生を見て、少し不思議に思いながらも話を続ける。

「だから、その世界……物語の中であたかも自分がその登場人物になったかのように感じられるんです。それに、小説自体の物語が終わっても、その物語の中で登場する人物たちの物語は、まだこれからも続くんだってと思えるんですよね」

 自分の言いたい事を全部言い、スッキリとした気分でいる俺は先生の顔を見やる。

 平塚先生は大きな瞳を瞬きもしないでこっちを見ていた。

「平塚先生、どうかしたんですか?」

「……いや、君がそんな事を言うなんて、意外でな」

 そんな事?なにかおかしな事でも言っただろうか。

「『物語の中で登場する人物たちの物語は、まだこれからも続く』……か。君は、小説家みたいな事を言うもんだな」

 ああ、まったく。自分の好きなものについて聞かれたもんだから、夢中になって余計なことまで話してしまった。これは(まず)い。非常に拙い。これじゃあ平塚先生から見た俺は小説家に憧れてる高校生ではないか。別に俺は小説家を夢見ているわけではない。小説家を夢見る以前に俺は"アイツ"のように物語を創り出すことができないからな。

「もし俺が小説家だったら、俺が書いた小説なんて誰も手に取りませんよ。それと俺の将来の夢は専業主夫です」

 そもそも俺は働きたくない。

「君の場合、専業主夫になりたいのは働きたくないだけではないのかね?」

 平塚先生はため息混じりに言った。

「や、やだなー先生。そ、そんなわけ、ないじゃないですかー」

 ……な、何故分かった。

 そうこうしている内に職員室に着き、両手に持っていた生徒の課題を平塚先生に渡す。

「それじゃあ、これで」

 ようやく平塚先生の俺への罰が終了し、俺は当初の目的であるマッカンを買いに行こうとしたら、先生に呼び止められた。

「……あ、待ちたまえ比企谷。これを渡し忘れるとこだった」

 振り向き様に何かがこっちに飛んできたので反射的に両手でキャッチする。両手の中に納まった何かはごく普通などこにでもある鍵だった。

「これ何ですか?」

「ああ、奉仕部の部室の鍵だ」

「は?」

 思わず聞き返してしまった。

「いや、だから奉仕部の部室の鍵だ」

「部室の鍵ってのは分かりました。でも何で平塚先生がそれを持ってるんですか?」

「……や、そのだな。昨日雪ノ下が私の所に鍵を返しに来たのは良かったんだが、その鍵を胸ポケットに入れてしまってな。それで、元あった場所に返すのを忘れてしまったんだ」

 今俺の手に部室の鍵があるって事は……もしかして。

「それじゃあ部室は鍵が掛かったままって事ですか?」

「まあ、そうなるな」

 だとしたら、雪ノ下は部室に入れず廊下で立たされているか職員室に向かってるかのどっちかだな。

「わかりました。それじゃあ俺は部活の方に行きます」

 そう言い、俺は奉仕部の部室へ急いで向かった。

 マッカンは買おうとしたが諦めた。だって部室の鍵を持ってて、部室へ遅れた理由で「マッ缶を買いに行ってた」なんて言ったら、きっと雪ノ下怒るだろ。それに「比企谷くん。あなた、自分の欲求を満たす為に遅れたのね」って言われそう。しかもイイ笑顔で……怖っ。

 

 

 ◇

 

 

 部室へ向かうと、雪ノ下と由比ヶ浜が扉の前で立ち尽くしていた。やっぱり鍵が掛かってたんだなと思って見ていると、あることに気づいた。

 そのあることとは、鍵が掛かっているはずなのに、雪ノ下と由比ヶ浜は扉をちょっとだけ開けて中を覗いてるのだ。

 もしかして最初から鍵が掛かってなかった?もー。「八幡の勘違い屋さん。てへっ♪」と阿呆な事を脳内で再生した後、雪ノ下達に近づいた。

「お前ら、何してんの?」

「ひゃうっ!」

 可愛(かわい)らしい悲鳴と同時に、びくびくびくぅっ!と二人の身体(からだ)が跳ねる。

「比企谷くん……。び、びっくりした……」

「驚いたのは俺のほうだよ……」

 どんなリアクションだよ。夜中、リビングで出くわしたうちの猫かよ。

「いきなり声をかけないでもらえるかしら?」

 やや不機嫌そうな表情で(にら)み付けてくるのまでうちの猫にそっくりである。そういえば、うちの猫、家族の中で俺にだけ(なつ)かないんだよね。ちなみにうちの猫が一番懐いてるのは小町だ。

「悪かったよ。で、お前ら何で中に入らないの?」

「部室に不審人物がいんの」

 そう答えた由比ヶ浜は先程と同じく、部室の扉を少しばかり開いて中をそうっと覗いている。(はた)から見ると彼女たちのほうが余っ程不審人物だ。

「不審人物はお前らだ」

「いいから。そういうのはいいから。比企谷くん、中に入って様子を見てきてくれないかしら?」

 仮に部室に不審人物がいるとしたら、女子だけで中に入るのは危険だな。

 俺は二人の前に立ち、慎重に扉を開いて中に入る。

 俺たちを待っていたのは一陣の風だった。

 扉を開いた瞬間に、吹き抜ける潮風。

 そしてその潮風の風向きで教室内に何枚ものプリントを()き散らす。

 片付けるの面倒だなと心の中で愚痴り、その原因を作ったであろう人物──もうすぐ初夏だというのにコートを羽織り、指ぬきグローブをはめているその姿には見覚えがあった。

「クククッ、まさかこんなところで出会うとは驚いたな。 ──待ちわびたぞ。比企谷八幡(ひきがやはちまん)

 この学校で俺の数少ない知り合いの一人で、俺に物語をくれた材木座義輝(ざいもくざよしてる)だった。

 

 




前回、材木座を出すと言ったけど登場したのは最後だけになってしまいました。材木座ファンのみなさん、申し訳ありません。
次回は絶対に材木座回です!!ホントだよ!!

話は変わりますが、ここで作者の悩み一つを聞いて下さい。まぁ、聞き流してもいいですけど。読者の皆さんも薄々気がついてるとは思いますが……。
なんかこの作品を読み返してみると、一話一話が全部違った書き方で安定してないんですよね……。これは駄目だな。


どんな感想もお待ちしております。
では、次回もこの作品を読んでくれる人がいたら嬉しい限りです。いつ更新するか分かりませんが、その時はよろしくお願いします。

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