俺のこんな学校生活も悪くない   作:天然水いろはす

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天然水いろはすです!
今回は少し長いです。


第5話

家庭科室の扉を開け、中へ入ると調理実習もあってなのか、バニラエッセンスの甘い匂いがしていた。

 

「今日はよろしくね、雪ノ下さん」

「ええ、よろしく。まずはエプロンを着て手を洗ってちょうだい」

 

俺は何をすればいいのか、わからないので雪ノ下に尋ねる

 

「なぁ、俺は何をすればいいんだ?クッキーを作ればいいのか?」

 

「比企谷くん、料理できるのかしら?」

「えっ、ヒッキーって料理できるの?」

またしても、平塚先生と同じく意外そうに俺を見る雪ノ下と由比ヶ浜。そんなに俺が料理できるのが不思議なの?もしかして、アレか。この目か、この目が悪いのか。眼鏡をかければマシになるんだからね!…気持ち悪いな。おっと、話が逸れた。

 

「まぁな。昔俺の妹が小さい時、まだ刃物を使わせるのが危なかったから、両親がいない時に俺が料理作ってたんだ。そしたら、料理ができるようになった。けど今は妹のためにお菓子作ってるぐらいだけどな。」

 

「ヒッキーって、シスコンなんだね」

 

「シスコンじゃねえよ。ただ、妹が世界一可愛いだけだ。」

 

「はぁ、…それをシスコンと言うのよ」

溜め息まじりに言ってくる雪ノ下

 

「話しが逸れてしまったわね。比企谷くんは味見をお願いできるかしら?」

味見だけでいいのか

 

「まかせておけ」

出来上がるまで、本でも読んでようかな。

 

この時の俺はまだ知らなかった。あんなものを人が作れるのだとは……。

 

 

 

 

数分後、クッキーが出来たらしい。今俺の目の前には2つの料理がある。1つは雪ノ下が作ったクッキーで、もう1つが由比ヶ浜の作ったクッキーだと思われる。雪ノ下のは、いかにも店で売られているようなクッキー。由比ヶ浜のは、真っ黒な物体X…ダークマターとでも呼ぼうか。

 

「比企谷くん、味見お願いできるかしら」

 

「雪ノ下、冗談はきついぞ。これは味見ではなく毒味というんだ。」

 

「どこが毒だし!……やっぱ毒かなぁ…」

バカだな、こいつ…

 

「いったいどうすればこんな結果になるのかしら?取りあえず、どうすればいいか解決策を探しましょう」

 

「由比ヶ浜が二度と料理しないしかないだろう」

 

「比企谷くん、それは最後の手段よ」

 

「それで解決しちゃうんだ!?」

オーバーリアクションで答える由比ヶ浜

 

「……やっぱり、あたしって才能ないのかな」

は?何言ってんだこいつ

 

「由比ヶ浜、才能とか言う前に努力してねぇだろ」

 

「でも、周りのみんなはやってないしさ」

 

「お前さ、自分が努力しない理由に他人を持ち出してんじゃねーよ。そもそも、今日始めたばかりのやつが料理出来ないのは普通だろ」

 

「そうね。由比ヶ浜さん、比企谷くんも言っていたでしょう?昔からやってるって。まず、最低限に努力してから言いなさい」

俺も雪ノ下も言い過ぎたな。由比ヶ浜が帰らなければいいけどと思っていると、由比ヶ浜は、すごいことを言ってきた。

 

「……かっこいい!!」

 

「「は?」」

突然のその言葉に、俺も雪ノ下も驚きのあまり固まってしまう。

 

「は、話しを聞いていなかったのかしら?かなり厳しいことを言ったつもりなのだけれど」

 

「うん。でも、建前とかじゃなくて本音って感じがするの。…あたしもう少し頑張ってみる!雪ノ下さん、よろしく!」

 

「え、ええ」

雪ノ下…アドリブ弱いのな…

 

「正しいやり方、教えてやれよ」

 

「ええ、わかってるわ」

 

その後、雪ノ下に1つ1つ丁寧に教わった由比ヶ浜は最初のクッキーと違い食べられるものになっていた

 

「うぅ…、どうして雪ノ下さんみたいな、おいしいクッキーを作れないのかな…」

 

「どうしたらいいのかしら?」

お前ら…いつの間にか論点ずれてないか?

 

「なぁ由比ヶ浜、何でそんなにおいしいクッキーにこだわってんだ?」

 

「は?」

ゴミを見るような目で俺を見る由比ヶ浜

 

「これを渡す相手って男子だろ?」

 

「え、うん。そうだけど…」

と俺の方をちらちらと見る由比ヶ浜

 

「だったら、おいしくないクッキーでもいいだろ?」

 

「おいしくなくても……って、うっさい!」

 

「どういうことかしら?」

男子ってものを分かってないな

 

「男子ってのは、基本単純なんだよ。女子から手作りクッキーを貰えるだけで嬉しいんだよ」

 

「ヒッキーも…嬉しいの?」

 

「ああ、嬉しいね」

 

「そっか。…ありがとう!雪ノ下さんのおかげでクッキー作れる気がしてきた!もう1回自分で作ってみてそれを渡してみる!」

 

「そ、そう。頑張って」

 

「うん! じゃ!」

 

そう言い、由比ヶ浜は家庭科室から去っていった。今思えば、俺いらなかったくね…

 

 

 

 

翌週の放課後、俺と雪ノ下は部室で本を読んでいた。そんな中、勢い良く部室の扉が開かれ、顔を上げると笑みを浮かべた由比ヶ浜がいた

 

「やっはろー!」

 

「どこの挨拶だよ」

 

奇妙な挨拶をしながら由比ヶ浜はカバンをゴソゴソと探りながら近づいていき、俺たちの目の前にやってくると綺麗にラッピングされたクッキーを俺たちに渡してきた。

 

「はい、ゆきのんとヒッキーに」

 

「誰かのプレゼントではなかったのかしら?」

 

「うん。そんなんだけど、ゆきのんにはいろいろお世話になったからそのお礼。で、ヒッキーはついで…ほ、本当についでで深い意味なんてないから!たまたま作り過ぎちゃっただけだから!」

 

そこは俺にもお世話になったでいいだろ。けど俺は何もやってないしな。まぁ、貰ったものは素直に礼を言わないとな

 

「お、おう。その、なんだ…ありがとな」

 

「ど、どういたしまして///」

頰を赤く染める由比ヶ浜。何故に?

 

「ところでそのゆきのんって言うのは何かしら?」

 

「雪ノ下さんだから、ゆきのん!…ダメ?」

 

「別にダメとは…」

雪ノ下は俺に視線を送ってくる。俺に助けを求められても困るんだけど…

 

「ねぇ、ゆきのんっていつもどこでお昼ご飯食べてるの?一緒に食べよーよ!」

 

「いつもはここで食べているわ。ひとりで静か」

 

「あ、そうだ!最近あたし料理が趣味なんだー!」

 

「話しを聞いてるかしら?」

 

「そうそう!あたし、放課後暇だから部活手伝うよ!」

 

由比ヶ浜の怒涛のマシンガントークに雪ノ下は戸惑いながらも対応していく。これは、百合百合とした空間…に見えなくもない。

 




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