八幡の過去が、明らかに!!
過去の話が終わったら本編に戻ります
「お兄ちゃん、起きてー」
「……」
「お兄ちゃん、入学式に遅刻しちゃうよ」
その一言に、俺は飛び起きた。流石に入学式に遅刻なんて目立ってしまうのは良くない」
「お兄ちゃん、何言ってんの。主席で合格した時点でアウトでしょ…」
そうなのだ。わざと全教科1点ずつ下げたのに主席になってしまったのだ。そのせいで、主席の挨拶をすることになった。
「それで小町、今何時だ?」
「6時30分だけど、それより早くご飯食べてよねー」
確かにやばいな…って6時30分?
「小町…もう一度言ってくれ」
「だ・か・ら!6時30分だってば!」
「小町…騙したな」
「もう、そんなこといいから!」
小町から始まったというのに…解せぬ。
「お兄ちゃんのせいで、ご飯冷めちゃったよ!小町の愛情みたいに」
「え、やだ困る。温め直して?」
◇
「それじゃあ、いただきます!」
「いただきます。やっぱり、あったかいご飯はいいなぁ」
「そうだね、お兄ちゃん。ご飯は温め直せてよかったね」
「お、おう…」
いや、このご飯からはちゃんと心温まる愛情も感じますよ?…やだ、倦怠期かしら。もっと積極的にコミュニケーションを図らなきゃ!
「…お兄ちゃん、変な事考えてない?さっきから顔が気持ち悪いよ」
「そんな変な事なんて考えてないぞ。むしろ、小町の事しか考えてないまである」
「はぁ…そんな目でそんな事言わないでよ。小町、お兄ちゃんの事が心配だよ。その目で入学式の挨拶なんてしたら、周りから悲鳴の嵐だよ……」
「お、おう…」
朝から辛辣過ぎるだろ
「ほら、お兄ちゃん。入学式の挨拶あるんだから早めに学校行った方がいいんじゃないの?」
「そうだな。ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
「それじゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい、お兄ちゃん!」
◇
総武高校。そこが今日から俺が通う学校である。家から歩いて通うと時間が掛かる場所にあるため、自転車で通うことにした。
赤信号で、自転車を止める。
高校生になったからといって、何かが変わるなんてことはない。故に、退屈なのである。まぁ、学生の本分は勉強だ。図書室辺りで独りで勉強するのも悪くないな。
そう考えると案外退屈しないのかもしれない、と思いながら道の反対側を見た。犬を連れた、いや、犬に引きずられた黒髮で童顔の少女が走らされている。飼い主も大変だな、と思いながらぼんやり眺めていると、その犬と目が合った。見るからに単純そうなアホ犬が俺に向かって一目散に駆けてきた。
おいおい、と思うと同時に右からリムジンが来た。このままだと直撃コースだ。そう判断するより先に自転車を放り出し、駆け出していた。柄にもないことを…。
リムジンの運転手は、道路に飛び出して来た犬とそれを目指す人間に目を剥いて急ブレーキを踏んだ。それでも、リムジンは止まらない。間に合えと、思いながらアホ犬に手を伸ばし、腕に抱え込む。
その一瞬後、想像以上の衝撃が俺とアホ犬を襲い、1人と1匹を吹き飛ばした。
そして、アスファルトに倒れた俺は意識を失った。
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