この素晴らしい世界にもっと祝福を!   作:部屋長

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最初のヒロインはアイリスです。よろしければぜひ。


アイリス√
この可愛らしい妹ともう一度王都生活を!(1)


 俺が女の子とイチャイチャしたいと切に思ってから数日が経ったある日。

 普段は昼過ぎまで寝てることが多いのだが、今日はたまたまいつもより早く起きられた。なので今日は街でも散歩しようと思う。

 そう思って外に出たわけだが……。

 

「お、あれは成金冒険者のカズマじゃねぇか」

「ああ、ほんとだ。金が有り余ってるから、最近はほとんどニートしてるって有名な成金冒険者だな」

「今日もあの成金は女に軽く騙されて奢らされるのかね。いい加減気づけばいいのにね」

「成金成金うるせぇよ! それ以上行ったらスティールでお前らの持ち物全部剥ぐぞ! あと俺はもう軽々しく女冒険者には奢らないって決めてるから黙っとけ」

 

 外に出てみたらこのざまである。仮にも魔王軍の幹部を多く倒してきたパーティーのリーダー相手にこんなズケズケと言いやがって……。どんだけこの街の奴らに舐められてるんだ俺は。

 もう今の俺はお前らより強いんだぞ、そう思い周りの連中に向けてスティールの体勢に入っていると。

 

「お兄、……様?」

「え?」

 

 他の奴らと違うその純粋な声に振り返ると、大きな目をぱちぱちと瞬かせるアイリスがいた。

 

「は? アイリス? どうしてここにいるんだ?」

「あ、え、えっと、これは、その……しゃ、社会勉強のためです!」

「へー、そうなのか」

 

 いや、まぁ多分めぐみんの盗賊団の集まりなんだろうけど。あいつ屋敷にいなかったし。

 だとしても、あのアイリス大好きな護衛がいるのに、勝手に王都から抜け出したら黙っていないんじゃないだろうか。それなのにアイリスはこの街にどうやって来たんだ……?

 

「それでアイリ……イリスは今日はどうして一人なんだ?」

「その、他の皆様に勝手を言って、ちょっと散歩したいとお願いしちゃいまして……」

 

 その皆さんってのはクレアやレインのことじゃなく、めぐみんやゆんゆんのことだろう。

 あ、そうか。ゆんゆんのテレポートで来たってことなら話が合うな。……王都は今ごろ大騒ぎだろうけど今回の俺は無関係だ。だから知らん。

 

「それでも一人ってのはさすがに危なくないか?」

「ご、ごめんなさい……」

 

 まぁこの街の治安の良さなら一人でもほとんど平気だと思うけど。

 第一この街の連中じゃ、アイリス相手に何かすることはできないってのはこの目で確認したしな。

 それでもこのまま一人でどこかに行かせるのはお兄ちゃんとしてはとても不安だ。

 だから俺は、しゅんと眉を下げて落ち込んでいるアイリスに笑いかける。

 

「……よし、じゃあ俺も暇だしその社会勉強に連れてってくれないか?」

「え? いいんですか?」

「おう、イリスがいいならだけど」

「も、もちろんです! 一緒に行きましょう!」

「そっか、じゃあ行こうぜ」

 

 アイリスは嬉しそうにぱあっと顔を輝かせて俺の隣に並んだ。こんな笑顔見れるなんて外出したかいがあったな。

 ……周りの連中からの視線がかなりヤバいけど。あ、今ロリコンって言ったやつ覚えとけよ。絶対許さないからな。

 

「でも今日に限って何で一人で行こうとしたんだ? めぐみ……クレア達と一緒の方が話し相手がいて楽しいだろ」

「確かにそうですけど、他の方がいるとちょっとだけ不都合がありまして……」

「何で?」

 

 聞くと、アイリスは恥ずかしそうにぽっと頬を赤らめ。

 

「もし、お、お兄様に会えたときに、二人きりで一緒にいられたらなー……って思いまして……」

「な、なるほど」

 

 え、えぇ……どういうことなの……? 俺が普段と違う行動取るだけでこうもラブが進行しちゃうわけ? ただ外出しただけだよ?

 しかしまぁ、可愛い妹にここまで言われるのはお兄ちゃんとしてとても嬉しいことだ。

 そのうちクレア辺りが迎えに来るんだろうし、短い時間だけど今日はめいっぱい甘やかしてあげよう。

 

「そこまで言ってくれると俺も嬉しいよ。よし、じゃあ今日は何でもお願い聞いてあげるからなー」

「ほ、本当ですか!?」

「お、おう。何かして欲しいことあったのか?」

 

 普段は欲があっても我慢してしまう子なのに、こうも食いついてくるのには驚いた。

 

「あ、あります! え、えっと、その、本当にいいんですか?」

「あ、ああ、俺にできる範囲でな」

「で、では……」

 

 緊張した面持ちのアイリスは、意を決したように俺の手をぎゅっと握ってきて。

 

「きょ、今日は手を繋いで街を歩いてもいいですか?」

「はい、もちろん喜んで」

「お兄様は本当に女性に甘いですね……」

「いやいや、イリス限定だからな?」

「でもゆんゆんさんに、こ、子作りして欲しいと頼まれたときに、お兄様は喜んで了承したと聞いたのですが……」

「え? 何でそれ知ってんの?」

「私はお兄様のことなら何でも知ってますからね」

 

 ドヤ顔混じりでふふっと笑みを浮かべるアイリス。ほんとアイリスといると癒されるなぁ。

 あと数年しても「お兄ちゃんと結婚する!」ってこのまま言い続けてくれないかな。いや、今まで一回も言われたことないけど。完全に俺の妄想です。

 

「で、では、行きましょうか」

「おう」

 

 アイリスは嬉しそうに目を細め、俺の手を引いて歩き出す。

 

「ふ、へ、えへ、えへへへへ……お兄様と手を……」

「……何か俺、また捕まりそうだな」

 

 俺の呟きは聞こえなかったのか、アイリスは頬をだらしなく緩ませながら繋いだ手をにぎにぎしてくる。

 柔らかい手の感触に少しだけドキマギしていると、その手の一部が固いことに気づく。

 

「指輪つけてくれてるんだな」

「はいっ! これはお兄様からもらった大切なものですから。クレアに見つかったら大変ですので普段はあまりつけられないんですけどね」

「そこまで大事にしてもらえると嬉しいけど、それほんと安物なんだよな」

「いえ、値段は関係ないんです。お兄様からもらったということが大事なんですよ」

 

 そう言い、アイリスは指輪にうっとりとした視線を向ける。そのことに何だか気恥ずかしさを感じて、俺は無意識に自分の頬をかいた。

 その後も、俺とアイリスは社会勉強という名目で散歩した。どんな物にも興味を持ち目を輝かせて質問してくるアイリスに、俺はドヤ顔であることないこと説明してやった。

 

「お兄様はやっぱり博識なんですね!」

「おう、もちろんだ。俺のこの賢さで今まで魔王軍の幹部を倒してきたと言っても過言ではない」

「なるほど! だからあのような狡っからいことが思いつくんですね!」

「それ前も言われたけど褒めてるんだよな?」

「ええ、褒めてますよ?」

 

 全然褒められてる気がしないんだが。もはやそれ悪口に近いからな?

 と、俺がアイリスに呆れていたその時──。

 

「アイ……ッ! イ、イリス様、今日もまた勝手に抜け出し……って、あ、あああああああ!」

「え、なに、うるさっ」

「はぁ……今日はもうお迎えの時間ですか……」

「お迎えの時間ですか、ではないですよ! 今日だって外出許可など一切出していません! そ、それよりも……!」

 

 しゅんと落ち込むアイリスを横目に、俺はクレアにぐわんぐわんと肩を揺すられる。

 おっと? これにはさすがの俺もお怒りですよ?

 

「な、何だよ、やめてくれよ。こっちは一人でいたイリスを保護してやった身だぞ? 何か悪いことしたか、ああん?」

「そ、それは助かったが……。し、しかし、その手はどういうことだ! な、ななな、なぜ貴様がイリス様と手を……わ、私も繋ぎたい!」

「本音だだ漏れすぎるだろ。さすがに引くぞ」

「……っ!?」

 

 何だその驚き方は。俺に引かれるのどんだけショックなんだよ。

 声を荒らげたから肩で息をするクレアを見て、アイリスは寂しそうな表情で目を伏せる。

 

「どうかしたか?」

「いえ……、もう帰るしかないと思うと、少し寂しくて。それに、今日はこの街で初めてお兄様に会えたこともあるので……」

 

 うーん、俺も随分この子に懐かれてしまったもんだ。……ていうかお兄ちゃんとしては、これ以上妹の悲しい顔は見たくないんだよな。

 

「……俺は最初に会ったときみたいな、いたずらっ子なイリスのことも見てみたいな」

「はい? それはどういう意味で……あ」

 

 アイリスは何かに気づいたかのように小さく声を漏らす。その目は先ほどとは違い、少しの好奇心と一緒に嬉しさの感情も混じっていて。

 

「い、いいんですか?」

「ん? 何のことだ? まぁ最近の俺は暇してるってことは言えるな」

「……どうなっても知らないですからね?」

「へー、どんないたずらしてくれるか楽しみだな」

 

 俺の挑発的な言葉に、アイリスが口元を綻ばせ、繋いでいた手をぱっと離す。

 あとでダクネス辺りに怒られそうだけど、これはもうしょうがないな、うん。

 

「ふぅ……ではイリス様。今日はもう帰りますよ。すぐそこにテレポート屋もありますし、大至急行きましょう。今もレインがイリス様を探し回って大泣きしているでしょうから」

「分かりました。お兄様、よろしければお見送りしてくれませんか?」

「おお、もちろんいいぞ」

 

 そのくらいならさすがのレインも何も言って来なかったので、俺も二人の後に続いてテレポート屋に入る。

 クレアが手続きをしている間、アイリスは落ち着かない様子でそわそわしていた。

 ……さて、どんないたずらをしてくるんだろうな。

 

「イリス様、テレポートの手続きができましたので魔法陣の中へ。……一応、そこの男にお別れの挨拶を」

「お兄様、今日は楽しかったです。また機会がありましたら色んなお話を聞かせてくださいね」

「おう、もちろんだ」

「もうよろしいですか? では、お願いします」

「分かりました」

 

 詠唱を終えたテレポート屋の店主が、魔法を唱えようとした瞬間──。

 

「ふふっ」

 

 俺の手を握り、魔法陣の中へグイッと引き寄せて、くすりと微笑むアイリスを見て。

 

「『テレポート』!」

 

 俺も一緒に光に包まれた。

 




アイリス可愛いよアイリス。最近では、原作10巻と爆焔シリーズ続で登場してくれてとても嬉しかったですね。

今回のアイリス√のように、他のヒロインとも一人ずつイチャイチャさせていく予定です。次はめぐみん√やダクネス√も書いてみたいですね。もちろんアイリス√はこれからもいっぱい書く予定です。

ではでは読んでいただきありがとうございました!

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