うん、まぁね。お願いするのを忘れてた私が悪いんだけどね。
第一話からの無言の低評価はね、作者の心にぐっさり突き刺さるのだよ………
まぁそれはともかく、今回は一人称です。
姉がいつも通り、というべきなのか案の定というべきなのか、ともかくこれまでの例に逸れることはなく、盛大に私を使った暇潰しを考えたのが、三日前のこと
現在私は、駒王学園の制服に身を包み、その立派な校門を潜るところで、立ち止まっている。
なぜか?そんなのは簡単で
「何時までついてくるのですか、姉様」
「いいじゃない。………私は入れなかったのだから」
「その見た目では当然ですよ、姉様」
先程から、私の後ろにピッタリと姉様がくっついているからだ。どうやら姉様、私と同じく駒王に入るつもりだったらしいのだけど――――
「まったく、今代の魔王は揃って頭でっかちなのだから。いえ、どちらかといえばシスコンかしらね?」
魔王であるルシファーとレヴィアタン。その両名からやめてください、妹がストレスで死んでしまいます(意訳)と説得され、しぶしぶ行くのを諦めていた。そもそも、パッと見ただの小学五年生くらいの姉様が高校に入るのは無理だと思うのだが………。
「ま、良いわ。それに、どちらにしろ私の付き添いはここでおしまいよ」
「…………そうですか。それでは、行ってまいります」
………別に寂しいわけではない。ただ、姉様を一人で帰して大丈夫かと心配になっただけです。ですのでそのニヤニヤするのをやめてください。
「ふふふ………。それでは、ね?」
そういって去っていく姉の後ろ姿を見送り、私も歩き出す。目指すのは、職員室。
………………ちょっとだけ、姉様の暖かみが恋しい。
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「はい。では少しお待ちください」
言われた書類への手続きを済ませた私は、その書類をもって行く事務員の後ろ姿を見送ってから、近くにあったソファーに腰をかける。
特にすることもなくただただ暇な時間ができてしまったので、なんとなく私は昨日になって姉様から聞かされたことを思い返していた。
――――いわく、この世界には天使と悪魔と堕天使の勢力があり、この駒王学園―――というより、この駒王という土地は悪魔が管理しているということらしい。
悪魔云々は、姉の知り合いなどがそうであるし、そもそも自分自身ヒトではないらしいので、特に驚きはない。
だけれど、ここが悪魔の土地、というのには少し驚いた。姉の正体を考えると、別に悪魔の経営する学校の方が色々都合がつくのはわかる。けれど、あの姉が
どこがおかしいのか、といわれると、そもそも私の入学理由からオカシイのでなにも言えないのだが。
まぁ、でも、私は――甚だ不本意だが――姉様いわく『世間知らず、ではないけれどどこか抜けている』ということらしいので、暇潰しついでだろうが、そういうのを治すために融通の効く学校に入れたのかも知れない。
結局、考えても仕方はないので、あまり考えることはしないのだけれど。
なんて考えていると、トントン、と肩を叩かれた。考え込みすぎたな、と思いつつも顔をあげると、そこにはなんとなく真面目そうな青年が立っていた。
「えーっと。アリス・P・アムドゥシアスさん、ですか?」
合っているので頷く。今、私に名前を聞くということは、多分案内係かそれっぽい者だろう。事実、彼は私が頷いたのを見ると、ホッとしたように顔を崩した。
「お………自分は、生徒会の匙 元士郎です。これから、生徒会室へと案内しますので、ついてきて下さい」
頷きながら立ち上がれば、匙と名乗った彼は私を先導し出した。生徒会室へと向かっているのだろう。
そうして歩き続けて数分、私は生徒会とプレートのついた扉を開いた。少しだけ眩しい逆光に目が慣れたとき、そこにいたのは―――二人の女性。眼鏡をかけた見覚えのない女性と同じく眼鏡をかけた見覚えのある女性。
「ようこそおいでくださいました。………お久しぶりです」
とりあえず、頷いておく。ああ、やっぱり驚くなぁ、予想もしていなかった。だってまさか、ねぇ?
こんなところで会うなんて、こんなに変わっているなんて、思わないのだから。
「改めて、名乗りを。駒王学園生徒会会長、支取蒼那。悪魔としてはソーナ・シトリーです」
数年前に出会ったとある魔法使いの妹が、そこには居た。
読んでいただき、ありがとうございました。