ポケットモンスターSPECIAL 新約 ブラック2ホワイト2編 作:ナタタク
バルチャイのシャドーボールによって引き起こされた爆風が消え、そこにはボロボロになったミジュマルとゾロアの姿があった。
「ゾロア!!」
「くそ…ハチクマンめ、悪のパワーでバルチャイを!」
「そう!我が悪のパワーはポケモンに限界を超えた力を与える!!」
悪のパワーを得たことを強調するため、映像ではバルチャイの体には黒いオーラが宿っている状態になっている。
ちなみに、このバルチャイはホワイトのポケモンであり、彼女自身もポケモンリーグ参加者であるためか、その実力はかなりある。
悪のパワーを得たとは言うものの、実際はバルチャイ自身が手加減をしていただけで、ここからは少しだけ本気になるだけ。
悪のパワーに快感を覚えたのか、バルチャイが上空に向けて激しく咆哮する。
「ミジュマル、ゾロア!立てるか!?」
リオルマンの声を聴き、2匹がフラフラになりながらも立ち上がる。
「悪のパワーは偉大だ!簡単に限界を超えた強化を果たすことができる…!貴様らのポケモンも波紋も、悪のパワーの前ではチリに等しい…。お前らの正義など…無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!!」
どこかの悪のカリスマをほうふつとさせるセリフを吐く中、今度はバルチャイの破壊光線が2匹を襲う。
悪のパワーのせいで、破壊光線を使ってもひるまない。
「ゾロア、守ってぇ!!」
リオルガールの叫びを聞き、ゾロアが必死にバリアを張ろうとするが、疲れ果てて発動できずじまいとなる。
守るはフェイントを除くどんな技にも対処できる優秀な技ではあるが、連続で発動すると失敗しやすいというデメリットがある。
特にダメージを受け、疲れ果てていたり、集中力が弱いとそうなりやすい傾向にある。
「く…ミジュマル、冷凍ビーム!!」
守るが発動できないゾロアを守るべく、ミジュマルが前に出て冷凍ビームを放つ。
だが、悪のパワーによって圧倒的な破壊力を誇る破壊光線に対しては無力で、容易にかき消され、勢いも衰えることなく2匹を襲う。
「貴様らの正義の波紋など、我が悪のパワーの前には無力なのだぁ!チリに帰れぇぇぇ!!!」
「そんな…ここで、終わりなのか…」
バルチャイ、そしてハチクマンの圧倒的な力の前に心が折れそうになったリオルマンが弱音を吐く。
「あきらめないで…リオルマン!!」
「リオルガール!?」
リオルガールが2匹の前に立ち、破壊光線を受け止める。
「バカめ!!道具であるポケモンをかばうとは!!」
「ぐぅ…」
「リオルガール!なんで…」
「あきらめちゃダメ…。私たちは、悪のパワーには絶対に負けない!!あなたの正義の思いを力に変えて、リオルマン!!」
破壊光線が収まり、激痛に耐えながらリオルガールが叫ぶ。
すると、彼女の体を青いオーラが包み始める。
「リオルガール…この力は…」
「な…なんだと!?貴様、その力は…!」
「ハチクマン…あなたにはなくて、私たちが持っている力!正義の波動よ!!」
青いオーラ、いや青い波動がボロボロになっているリオルガールの傷をいやしていく。
「すごいよ、リオルガール…。俺も…俺だって、負けてたまるかぁぁぁ!!」
両拳を握り締め、力いっぱい天に向けて叫ぶリオルマンの体を赤い波動が包み込んでいく。
2人の波動の力が遊園地を包み込んでいき、ミジュマルとゾロアの傷をいやすだけでなく、2匹の力を活性化させていく。
そして、バルチャイに宿った悪のパワーが消滅していった。
「馬鹿な!?悪のパワーが…ただの波紋使いのお前たちが…波動だと!?」
すさまじい波動の力を感じたハチクマンは驚愕する。
リオルマンとリオルガールとは何度も戦ってきたが、彼らが使えるのはそれに劣る波紋だけだった。
そんな彼らが波動を使いこなし、さらにリオルガールよりも波紋の力が劣るリオルマンまでも使いこなしている。
「ハチクマン!お前の悪の力を…」
「私たちの波動で消し飛ばしてあげる!」
「調子に乗るな…小僧どもがぁぁぁ!!」
「ミジュマル、冷凍ビーム!!!」
「ゾロア、だまし討ち!!」
2人の波動の力を受け、赤と青の2つのオーラをまとった2匹が技をさく裂させる。
ゾロアが突っ込んでいき、なんとミジュマルはそのゾロアに向けて冷凍ビームを放っている。
「馬鹿めが!!仲間に攻撃しているぞ!!」
「違うわ!」
「ミジュマルの力を…ゾロアに託しているのさ!」
冷凍ビームが波動によって氷のエネルギーに変換され、ゾロアに吸収される。
エネルギーを得たゾロアの力がさらに強大化し、スピードも上がっていく。
「ば、馬鹿な!?そんな…馬鹿な!?」
「俺たちの…波動の、力をぉぉ!!」
「今、ここにぃぃぃ!!」
ゾロアのだまし討ちが直撃したバルチャイが吹き飛び、ハチクマンと激突する。
そして、その場で大爆発が発生し、1人と1匹は空の彼方へ飛んで行ってしまった。
「ハァ、ハァ、ハァ…」
ハチクマンを倒したことを確認したリオルガールは疲れでその場に座り込む。
そんな彼女のもとへ、リオルマンが走っていく。
「リオルガール…」
「やったね、リオルマン…」
にっこり笑いながら、リオルガールは彼にVサインを見せる。
「ああ…君の勇気のおかげだ…」
同じように笑顔を見せたリオルマンもVサインをした。
「こうして、2人のヒーローによって、ハチクマンの脅威は去り、遊園地に平和が戻ったのです。しかし、ハチクマンはこの程度ではあきらめません。より強い悪のパワーを得て再び姿を見せるでしょう。負けるな、リオルマン、リオルガール!!正義の波動を得た君たちならきっとできる!!!」
「カットーーー!!お疲れさまでしたーー!」
撮影終了と同時に、リオルマンとリオルガール、いや、ラクツとファイツがフラフラとその場に座り込み、ミジュマルとゾロアがそれぞれの主人のもとへ向かう。
「お疲れさま、ファイツちゃん…」
仮面を取ったラクツが笑いながらファイツを見る。
だが、いつまで待っても彼女から返事が来ない。
不審に思い、彼女の仮面を取ってみる。
「ああ…」
仮面を取ってすぐに彼女が顔を両手で隠したことで、なぜ返事をしなかったのかようやくわかった。
なお、衣装にはリフレクターや光の壁と同じ力を持っている特殊な繊維が使われているため、先ほどのようなポケモンの技を受けてもダメージはないようになっている。
(彼女、やっぱりこういう演技になるとスイッチが入ってしまうんだな…)
「いい演技だった、2人とも。そして、ゾロアとミジュマルも」
ハチクが2人のもとへやってきて、2匹のポケモンの頭を撫でる。
「いえ…ハチクさんも、その…かなりはりきっていたので…」
演技中のハチクを思い出したラクツはどうしても目の前の人間が先ほどの悪役と同一人物なのかと疑ってしまう。
もしかしたら、うり二つの容姿で真逆の性格の双子がやっていたんじゃないのかとさえ思ってしまった。
それほどまでに、彼の演技がリアルに感じられたのだ。
「これからもポケウッドで俳優業を続けていく自信がついた。機会があったら、また一緒に演技をしたいものだ」
そういいつつ、ハチクは懐から技マシンを出し、2人に差し出す。
「これはお礼だ、受け取ってほしい。秘伝マシン『居合切り』だ。君たちが持っていたほうが役に立つだろう」
「ありがとう、ございます」
秘伝マシンが手元にない2人にとって、これはありがたい道具だ。
薪の調達や人間の手では斬ることのできないものを斬るのに役立つためだ。
「2人とも、ありがとう!今日の撮影は最高だったわ!」
「ホワイトさん…」
当初はなぜ撮影に協力する必要があるのかわからなかったラクツだが、予想以上に面白かったため、これ以上は追及しないことにした。
すると、彼女は1枚のビラを見せる。
「これは…」
ビラを見ると、それは『ザ・ドガース』というバンドチームのコンサートの告知で、開かれるのは明日の午後1時だ。
下には開催場所の地図が書かれており、タチカワジムがそれには示されていた。
「彼女はホミカ。タチカワジムのジムリーダーと『ザ・ドガース』のベースとボーカルを兼任しているの。このコンサートの日だけ、彼女とジム戦ができるってこと」
「ジム戦?まさか…僕が??」
「ええ。これからのことを考えたら、力をつけておく必要があるでしょ?ファイツちゃんのナイトさん?」
「ナ、ナイトって…」
周囲には聞こえないように、耳打ちされたラクツの顔が赤く染まる。
警察官と呼ばれるならまだしも、ナイトと呼ばれるとは思いもよらず、そんな自覚など全くないためだ。
(ジム戦か…。最近までは考えられなかったな…)
何とか赤くなった顔をもとに戻したラクツは変化した日常を実感する。
ヒオウギシティでの飼い殺し生活のころは確かに金銭も生活も安定していたが、同時に自分の復帰への思いをわずかながらに衰えさせ、力を得る機会も与えられなかった。
だが、今は追われることを機にしなければならないものの、いろんな場所へ行けるようになった気がして、このようなジム戦の機会が得られるなど、前は考えられないことだった。
「…やってみるかな、ジム戦を」
ミジュマルの頭を撫でつつ、ボールの中のルカリオに言った。
うなずいたかのように、ボールが上下にわずかに揺れた。
ラクツ
出会ったポケモン(図鑑入手以降) 18匹
入手したポケモン 3匹
バッジ数 1
現在の使用ポケモン
・ミジュマル レベル15
技 水鉄砲 冷凍ビーム 草結び 燕返し
・ルカリオ レベル45(拘束により、能力はレベル15相当に低下)
技 波動弾(?) サイコキネシス インファイト(使用不能) シャドーボール(使用不能)
ファイツ
出会ったポケモン(図鑑入手以降)12匹
入手したポケモン 2匹
タマゲタケ レベル15
技 しびれ粉 キノコの胞子 メガドレイン がまん
ゾロア レベル26(親はN?)
技 だまし討ち 守る ひっかく 追い討ち