ポケットモンスターSPECIAL 新約 ブラック2ホワイト2編   作:ナタタク

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第3話 少女と会った日

「ペンダント…か」

ハンサムから復帰条件を聞いた翌日、登校したラクツは例のペンダントの写真を自分の席で見ていた。

ただ、このペンダントを持っている人間とピンポイントで接触するのは難しいだろうと思った。

ヒオウギシティだけでも、人口は約3万8000人。

そして、トレーナーズスクールでの小等部、中等部、高等部の全校生徒の教師の人数は合計で1000を超える。

更に、これとよく似た形のペンダントが存在するかもしれないという可能性も考えられる。

(といっても、今ここで考えても無駄か…)

しかし、学校内でペンダントを見つけることは不可能に近いと考えていい。

トレーナーズスクールでは、校則としてペンダントなどの装飾品の持ち込みが禁じられている。

校則違反の常習犯なら、そんなことお構いなしだろうが。

そんなことを考えていると、チャイムが鳴って、周りでしゃべっているクラスメートは着席し、同時にチェレンが教卓の前に立つ。

「みんな、おはよう。今日は4組と合同で、ザンギ牧場でフィールドワークを行うよ。そこで、みんなには最低でも1匹、ポケモンをゲットしてもらうのが今日の課題。では、レイル君。ポケモンをゲットする際にはどのようなことに注意をすればいいかな?」

「はい。まずはゲットしたいポケモンを倒さない程度に弱らせるとゲットしやすいです」

「正解。さらに状態異常にするとなおいいよ。その中でも凍らせる、もしくは眠らせると一番捕まえやすい。そうした、状態異常を与える技や特性を持っているポケモンを持っている人、今日が成績を上げるチャンスかもしれないよ?」

そういうと、チェレンは持ってきていたダンボール箱を開け、1人1人にモンスターボールを10個ずつ渡していく。

ボールの上半分はヒオウギトレーナーズスクール、フィールドワーク用と刻まれている。

「今回渡すボールはあくまでもフィールドワーク用。終了後、余ったボールについては返却してもらうことになるから、できれば全部使ってもらえると嬉しいかな」

「ああ…チェレン先生」

「ん?何かな、ラクツ君」

「すみません、少しおなかの調子が変なので、お手洗い言ってもいいでしょうか?」

「ああ、どうぞ」

ボールを机の上に置いて、ラクツは急いで教室を出る。

廊下を西へ50メートル程度進んだところにある男子用トイレの様式便所のある個室に入り、1分程度待機する。

すると、外からドアをノックする音が聞こえ、すかさずラクツはドアをノックし返す。

「フィールドワークがあるので、ヒオウギシティを出る許可が取りたいんです」

これは学校内における監視役の警察官との交渉の手段だ。

授業中にトイレの指定された個室に入り、こうしてドア越しで顔が見えないようにして許可を取る。

これはラクツに監視する警察官の顔が知られないようにするための措置だ。

「フィールドワークである証拠は?」

「これです」

ドアをわずかに開き、フィールドワーク用に配られたモンスターボールのうちの1つを見せる。

ボールを見た警察官はすぐにそれをラクツに返す。

「ボールだけでは足りない。盗み出した可能性も否定できないからな」

「では、これは…?」

今度は胸ポケットからボイスレコーダーを取り出し、録音したチェレンの今日のフィールドワークに関する発言を彼に聞かせる。

「…。わかった、許可しよう」

そういうと、男はすぐに去っていった。

 

その日の昼、給食を食べた後でサンギ牧場へ移動した。

この牧場はイッシュ地方ポケモンリーグ前チャンピオンが住んでいる田舎町であるサンギタウンの北東に位置しており、そこにはメリープをはじめとした多くのポケモンが放牧されており、そのことからフィールドワークに最適な場所となっている。

「くうう、また失敗した!!」

ミジュマルの水鉄砲が命中したマメパトが森へ向けて飛び去ってしまう。

その前にもノコッチやミネズミもダメージを与えすぎたことで逃がしてしまっている。

(ああ…峰内を覚えさせるべきだったー…)

ミジュマルとボールの中にいるルカリオを見ながら、ため息をつく。

峰内があれば、逃げ出さない程度に捕まえたいポケモンを弱らせることができる。

他にも、逃げられないようにプレッシャーを放つ黒いまなざしや強い粘着性のある糸で動けなくする蜘蛛の糸、そして逃げ出そうとする相手の動きを予測して道をふさぐように即座に移動できるようになる通せん坊が逃げ道を奪う点では有効だ。

しかし、今のラクツの手持ちにはそういうことや状態異常を与える技を持つポケモンがいない。

「ああ…どうすればいいか…。うん??」

何か手がないかと考えてながら、池の近くで休んでいると、そこで野生のポケモン同士がバトルを始めていた。

野生のポケモン同士があるときは腕試しに、ある時はなわばりを奪い合うためにバトルをすることはよくある話で、ここではコダックとノコッチがバトルをしている。

数分の間に、コダックがしっぽを振るで注意を引いたうえでのひっかく攻撃をしたことで軍配が上がった。

しかし、ノコッチから受けたダメージが大きいせいか、目を回してふらふらしている。

「ちょっと卑怯な感じが気が引けるけど…!」

軽くモンスターボールを下投げし、コダックの額に命中する。

当たると同時にボールが開き、その中にコダックが赤い光となって入ってしまう。

ボールは3回揺れた後で、カチリという音が鳴り、それと同時にビールの揺れが止まり、池の上にぷかぷかと浮かんだ。

「よし、コダックゲット」

水面が浅いため、そのまま池に入ってボールを手にする。

そして、池から出ると、ボールをタオルでふいた。

「ふうう…まだ集合まで時間があるな…」

ふき終えたボールをしまい、ゆっくりとその場で横になる。

今日の天気は晴れで、青空が広がっている。

そんな空を見ていたら、小さな雲が動き、わずかに太陽を隠しているのが見えた。

(雲か…。自分で自分の行く場所を選べないけれど、僕と違って一つの場所に縛られることはない…)

感傷的になりつつある自分を認識したラクツは空を見るのをやめ、体を起こして視線を真北にある牧場が管理する森林に向ける。

「ん…あれは…」

遠くにあるためよく見えないが、かすかに人影と複数の鳥のようなポケモンの姿が見えた。

それらの動きをみると、人のほうがポケモンの群れに追いかけられていると予測できる。

「やばいだろ、これ…!」

立ち上がったラクツはおいていたリュックサックを背負うと、森へ向けて走っていった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…!!」

森の中で1人の少女が1匹のポケモンを抱えて走っている。

抱えられているポケモンはタマゲタケで、傷を負っているだけでなく、体がしびれていて満足に動けない状態だ。

少女は白いセーラー服と紺色のスカートという、ラクツと同じトレーナーズスクールの制服を着ていて、茶色いロングヘアーをしている。

そんな彼女に向かって、ハトーボーの群れはエアカッターを放つ。

(ダメ…!森の中でも逃げれない…!)

彼女は森の中で彼らをまこうと考えていたが、結局こうして追いかけられ続けている。

マメパトから進化したことにより、視力だけでなく知力も高くなったハトーボーはそれらを駆使することで、どんなに遠くへ離れていてもトレーナーのもとへ帰ることができる。

ということは、それを応用することで、獲物をどこまでも追いかけることができるという意味でもある。

「(ダケちゃんを回復させないと…!どこかに、クラボの実かラムの実があれば…)キャア!!」

何かに躓いた少女は転んでしまい、抱いていた『ダケちゃん』と呼ばれたタマゲタケを落としてしまう。

「これって…!!」

「そう、草結びだ。便利なもんだなぁー」

ワルビルを連れた、黒を基調とした制服姿でベレー帽をかぶった男がダケちゃんを踏む。

「ダメぇ!!」

「ダメ…だって??」

ニヤリと笑いながら、男は少女に目を向ける。

その間にハトーボーも追いつき、さらに彼と同じ制服を着たトレーナー数人もハトーボーの後ろで待機している。

「そんなに踏んでほしくないんならよぉ、出すもん出してくれねーかなー?あんたしか持ってない、だーいじな物をさぁー」

「そ、それは…」

「それがあれば、プラズマ団は復活する…いや、2年前以上の強大な力を手に入れることができる!!ぐぅ…!ブアックション!!」

紫色の胞子を吸ってしまったワルビルが咳き込み、男が大きくくしゃみをする。

胞子を出しているのは先ほど彼が踏んだダケちゃんだ。

「くそ…このザコポケモンめ!!はあはあ…!」

タマゲタケやパラスといった、草タイプのポケモンの一部は天敵となるポケモンに対する自衛として、草タイプ以外のポケモンにとって有害となる胞子を体内に宿しているポケモンがいる。

その胞子を吸ったポケモンは毒や睡眠、麻痺といった状態異常を与える。

なお、人間に関しては、花粉症と同じ症状を引き起こすことが多い。

男は毒消しでワルビルの解毒を済ませる。

「こうなったらただじゃあ置かねえ…。炎の牙だ、ワルビル!!」

おやの命令に従い、ワルビルが自分の牙に炎を宿す。

胞子を放ったことで最期の力を出し切ってしまったのか、ダケちゃんはその場を動かない。

「くたばれぇぇぇ!!」

炎の牙がダケちゃんを襲おうとしたその時、水鉄砲がワルビルの横っ腹に直撃し、それで吹き飛ばされたワルビルは木に激突して気絶する。

「ワルビル!?誰だ、邪魔しやがったのは!!」

水鉄砲が放たれた方向にトレーナー達は目を向ける。

そこにはミジュマルとラクツの姿があった。

「よくも邪魔しやがってぇ!!」

「容赦しないよ!ハトーボー、エアカッター!!」

トレーナー達の中にいる女性がハトーボーに命令すると同時に、エアカッターがラクツとミジュマルを襲う。

ミジュマルと共に走ってエアカッターをかわしながら、ラクツはダケちゃんを抱え、少女のもとへ向かう。

そんな彼をアシストするかのように、ミジュマルは上空のハトーボーに向けて冷凍ビームを放ち、そのうちの1匹に両翼を凍らせて動きを封じ込める。

「大丈夫!?走れるかい…?」

「え、あ、はい…!」

ハサミで少女の足を縛る草を切り、彼女を立たせると、ダケちゃんを彼女に渡す。

「早く逃げよう!こっちだ!」

少女の手を握り、ミジュマルを一度ボールへ戻したラクツは走って逃げ始める。

「くそ!!使えないやつめ…!!」

八つ当たりするかのように、戦闘不能になったハトーボー数匹とワルビルがボールに戻される。

そして、まだ戦闘継続可能なハトーボーたちがラクツを追いかける。

(何としても、あいつから奪還しなければ…。プラズマ団復活のカギを…!!)

 

「くそ…!このまま走ってもらちが明かない…!!」

一方、ハトーボーに追いかけられているラクツ達は逃走ルートを予測されたこともあり、時には待ち伏せされたためにで森の中を不規則に走り回っていた。

既に森の中に作られた道から離れており、足場の悪いところを走らざるを得なくなっていた。

(ハトーボーを倒さない限り、逃げきれない…!考えろ…考えろ!!この場を脱する方法を…!!)




ラクツ
出会ったポケモン(図鑑入手以降) 14匹
入手したポケモン 3匹

現在の使用ポケモン
・ミジュマル レベル12
技 水鉄砲 冷凍ビーム 草結び 燕返し

・ルカリオ レベル45(拘束により、能力はレベル15相当に低下)
技 波動弾(?) サイコキネシス インファイト(使用不能) シャドーボール(使用不能)

・コダック レベル5
技 水遊び 引っ掻く しっぽを振る

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