ポケットモンスターSPECIAL 新約 ブラック2ホワイト2編   作:ナタタク

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第10話 サウンドバトル

「わぁーーーー!!」

「ホミカーーー!」

「俺の理性を吹き飛ばしてくれーーー!!」

不良たちが書いたようなカラフルなスプレーアートが数多く描かれた地下ライブハウスの中で、モヒカンやリーゼントの男や髪を染めた女たちがステージに向けて声援を送る。

ステージ上にはギターとドラム担当の男2人がベースを持つ白い髪の少女を挟む形で配置されており、いつでも演奏開始できる体勢を整えている。

「よぉー、こんな真昼間にぞろぞろと集まってきた暇人ども!!」

前に置かれたマイクに向けて、ホミカが思いっきり声を出し、ステージの左右に設置されたボリュームMAX設定の複数のスピーカーに流れる。

「イエエーーーーイ!!」

「ホミカー!!ザ・ドガース!!」

「しびれるーーー!」

ホミカの言葉に興奮した観客たちは立ち上がって声援を送り、ある人は口笛を吹き、ある人は仲間に肩車してもらい、来ているTシャツを破って感情の高ぶりをアピールし始める。

「な、なんだかすごい…」

観客席で彼らの反応を見せいたファイツがダケちゃんを抱いて、その場に縮こまる。

ラクツのジム戦の応援のため、ついてきたのだが、このような今まで見たことない光景と空気に圧倒されてしまった。

「ああ、すごい。こんなところでどうやってジム戦を…?」

ミックスオレを飲んでいるラクツも今まで見たことのない環境とこの激しい音のせいで、入って早10分で疲れてしまっていた。

ホワイトの話が正しければ、ジム戦が行われるのはザ・ドガースのライブでのみ。

ライブそのものは週に2回以上開催されており、たまにイッシュ地方各地へ遠征することもあるが、その遠征先であってもジム戦は可能となっている異例なジムだ。

本来であれば、正式なジム戦はその施設もしくはそれのある町周辺でしか認められていない。

それが可能なのは、彼女がバンドのボーカルを担当していることと、彼女自身がイッシュ地方ポケモン協会にジムリーダーの義務であるトラブル対応に対する指導を拠点であるタチワキシティだけでなく、遠征先の町でも行うことを同意したためだ。

「D・O・G・A・R・S、ドガース!!!」

ホミカのボーカルを合図に、ギターとドラムの激しい音がジムを包み込んでいく。

そして、同時にステージ側以外の壁がゆっくりと後ろへ下がっていき、しばらくすると最初のころと比較すると倍以上の広さに変わっていった。

「いいか、お前らぁ!あたしはあたしのハートを熱くさせてくれるトレーナーとしかバトルをしねえ…。あたしのハートを熱くさせてくれるトレーナーがいるなら、今ここで証明しな!!各トレーナー、ポケモン1匹のみのバトルロワイヤルで!!」

ホミカの言葉と同時に、トレーナーではない観客たちは壁際へ行き、トレーナー達は全員1匹ずつポケモンを出した。

そして、間近にいる相手と相次いでバトルを開始していく。

ザ・ドガースによる爆音コンサートと共に、ジムリーダーへの挑戦権をかけた熾烈なバトルロワイヤルが始まったのだ。

「バトルロワイヤルって…!?」

「予定外だけど、やるしかないってことか…!」

ジムリーダーにはトレーナーからの挑戦を受けるか受けないかを独自で判断する権利が与えられており、その基準に関してはジムリーダーの自治権確保のためとして、教会も規定していない。

そのため、あるジムではトーナメントを行って優勝者とのみバトルをする、ジム内で行われるペーパーテストにて規定以上の点数を出したトレーナーにのみ挑戦権を与えるなど、ジムそれぞれの個性が生まれることになった。

おそらく、ホワイトは最初からタチワキジムがこういう形だということについて最初から知っていて、わざとラクツに教えなかったのだろう。

ミジュマルがボールから出され、冷凍ビームでピジョンを氷漬けにする。

「ファイツちゃんは壁際へ!ここにいたら、挑戦者と間違われるよ!」

「わ、分かった!ラクツ君、頑張って!ファイト、ファイト、ふぁーいつ!!」

(…?なんで、最後だけふぁーいつ??)

変な掛け声になんだか閉まらない感覚を抱くものの、ヘルガーの火炎放射がこちらに襲い掛かったことで一気に気持ちを切り替える。

「ミジュマル、水鉄砲!!」

真上に飛んで火炎放射を回避したミジュマルがヘルガーの頭上に水鉄砲を叩き込む。

だが、相手は進化ポケモンであり、水鉄砲の威力も水タイプの物では低い分類であることから、効果が抜群であるにもかかわらず、それほどダメージを与えることができない。

「へっ…。そんな進化前のポケモンで何ができるんだよ!?」

「勘違いしないでください。これはシングルバトルじゃない。バトルロワイヤルです」

「何?」

「飛べ、ミジュマル!!」

ミジュマルが地面に向けて水鉄砲を発射し、それによって思いっきり上へ飛ぶ。

それと同時に地面が揺れ始め、足元から発生するオレンジ色のエネルギーがヘルガーに直撃する。

「バカな!?これは大地の力!?」

不意打ちに近い形で直撃してしまったヘルガーがそのまま戦闘不能になる。

ここのどこかで、サンドパンかマグカルゴあたりがそれを発動し、その余波が襲ってきたのだろう。

目の前の相手だけでなく、周囲の状況にも気を配らなければ、このバトルロワイヤルでは敗北していく。

ハンサムから教わったことを思い出す。

(いいか、犯罪者は正攻法でこちらと勝負することはない。こちらを囲んだり、もしくは罠を仕掛けることだってある。周囲に気を配り続けろ。それができなければ、逆に犯人に倒されるのがオチだぞ)

それを実戦でたたきこむべく、ハンサムは10人以上のチームを組んでアグレッサーとなり、ラクツら新人の国際警察官に訓練を施した。

最初は目の前の相手しか集中することができず、背後からの闇討ちに敗れてしまうことが多かったが、毎日このような訓練を受けることで、少しずつ気を配ることができるようになっていった。

「床に向けて冷凍ビーム!!」

ミジュマルがラクツの指示に従い、床に冷凍ビームを放つ。

ビームが着弾した個所から中心に床が凍っていき、ニョロゾやワンリキー、ナックラーらの足が凍り付き身動きを封じていく。

「動けなくなった相手に燕返しだ!」

動けないニョロゾの前へ落下しつつ、ミジュマルは燕返しを叩き込む。

威力抜群な飛行タイプの技の直撃を受けたニョロゾは一撃で戦闘不能となる。

一方、ミジュマルは腹で着地し、そのまま凍った床の上を滑走し始める。

「な、なんだこいつは!?」

「腹のホタテ貝でこんな芸当を!?」

驚きのあまり、ポケモンへの指示を失念した隙をラクツは見逃さなかった。

そのトレーナーのポケモンであるピジョンやオニスズメを冷凍ビームで撃ち落としていく。

ミジュマルの腹についているホタテ貝は着脱可能で、武器にも防具にもなる強固なアイテムだ。

なお、そのホタテ貝がなぜそこまで強固なのか、どこで手に入れたのかはいまだに不明。

一説によると、ホタテ貝そのものは普通の物で、ミジュマルの体内のカルシウムを受けることで、強固になっていったといい、現在ではその説が有力となっている。

凍っている場所から脱出したミジュマルは起き上がると同時に、足元に草が生え、それに両足が縛られる。

「草結び…!どこから!?」

ラクツは周囲を見渡し、草結びの犯人を捜す。

この技は技マシンを使うことで覚えさせることのできる技であるがために、草タイプ以外でも数多くのポケモンが覚えることができる技だ。

だが、タイプ一致であるためか草はかなり頑丈で、中々脱出できない、

そんな彼めがけて、今度はヤドリギの種が飛んでくる。

これが体に刺さると、そこを中心に植物が育ち始め、どんどん体力を奪い取っていく。

ミジュマルは飛んでくるヤドリギの種を水鉄砲で撃ち落としていく。

幸い、ヤドリギの種の質量は大きく、弾速も遅いため、容易に撃ち落とすことができた。

「どうしてお前はここにいるんだ…?」

「その声は…!」

ザ・ドガースによる8ビートの激しい音楽の中で聞こえた聞き覚えのある少年の声に反応したラクツはそれが聞こえた方向に目を向ける。

そこには、ヒオウギシティにいるはずの彼の姿があった。

「ヒュウ…」

「行方不明になった割には、元気そうじゃねーか。こっちはめちゃくちゃ心配して、町を飛び出してきたってのによ」

憎まれ口をたたきつつ、ヒュウは笑いながらラクツを見る。

彼はゆっくりとラクツの目の前に迫る。

「このジム戦の後で聞かせてもらうぞ。なんでお前がファイツちゃんと一緒にここにいるのか、そしてあのプラズマ団の攻撃の後、どうして行方不明になったのかを」

「…わかった」

怒っているのは確かだが、それをこのような場所に持ち込まないというヒュウの主義に感謝しつつ、ラクツはこの状況を打開する術を探る。

ヒュウもポケモン図鑑をクラス内対抗戦で優勝して手に入れたこともあり、中々の実力を持っている。

彼が持つポケモンの中で、草タイプと言えば、ラクツの頭の中で思い浮かぶのはテッシードだけだ。

仮にそれが正解だとしたら、ヤドリギの種はテッシードの卵を産んだポケモン2匹のうちのいずれか1匹から遺伝しなければ覚えられない。

手間のかかる方向をあえて選択し、力を高める能力の高さはトレーナーズスクール講師の間でも一目を置かれている。

(まずは足を縛る草結びを…!)

転ばずに済んだためダメージは受けていないが、それでもこのまま足止めをされたらじり貧になってしまう。

「ミジュマル!ホタテ貝で草を斬るんだ!」

「10万ボルト!!」

逃がすまいとヒュウの命令を受けたテッシードが上空に姿を見せ、電気をため始める。

わずかなタイムラグの後、電撃がミジュマルに襲い掛かる。

その前にホタテ貝で足を縛る草を着ることに成功したため、辛くも回避に成功する。

タイプ不一致の大技であったおかげか、そのタイムラグに救われる形となった。

ちなみに、ミジュマルの冷凍ビームについては、彼のタイプである水が氷タイプと関係が深いこともあり、タイムラグは確かに発生するものの、かなり短めになっている。

(テッシード…どうやって攻略するか…)

テッシードの弱点は炎と格闘。

今のミジュマルにはそれらのタイプの技はなく、おまけに覚えている技の1つである草結びと水鉄砲では大したダメージを与えることができない。

また、燕返しで攻撃するとテッシードの全身を包んでいる鉄の棘によってダメージを受け、それでできた隙をついて反撃される可能性がある。

素早さがなく、守り勝ちを地で行く相手だ。

「一応言っておく。俺はいま、プラズマ団じゃなくて、お前に対して怒っているんだぜ」

「ああ…わかってるよ。ヒュウ」




ラクツ
出会ったポケモン(図鑑入手以降) 23匹
入手したポケモン 3匹
バッジ数 1

現在の使用ポケモン
・ミジュマル レベル18
技 水鉄砲 冷凍ビーム 草結び 燕返し

・ルカリオ レベル45(拘束により、能力はレベル15相当に低下)
技 波動弾(?) サイコキネシス インファイト(使用不能) シャドーボール(使用不能)

ファイツ
出会ったポケモン(図鑑入手以降)18匹
入手したポケモン 2匹

タマゲタケ レベル16
技 しびれ粉 キノコの胞子 メガドレイン がまん

ゾロア レベル26(親はN?)
技 だまし討ち 守る ひっかく 追い討ち

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