ポケットモンスターSPECIAL 新約 ブラック2ホワイト2編 作:ナタタク
イッシュ地方における、ゼクロムとレシラムの戦いから2年の歳月が流れた。
その戦いの敗者であり、プラズマ団の王であるNはゼクロムと共に行方をくらまし、王を失ったプラズマ団は内部分裂を起こした。
そして、勝者である少年、ブラックはゲーチスの罠により、レシラムと共にライトストーンに取り込まれ、いずこかへ姿を消した。
ホワイトら、ブラックを知る者はライトストーンを探し求めたが、今現在も見つかっていない。
そして、これはとある過去、とある地方で起こった出来事…。
「はあ、はあ、はあ…」
「くっそぉ!どこもかしこも敵だらけじゃないか!?」
「しまった!?ウィンディがやられた!!?だれか、カバーを!!」
「こんなに多くて、カバーできるわけが…うわああああ!!!」
落石により、退路をふさがれたトレーナー達が青と白を基調としたフード付きのチェインメイルを身に着けたトレーナーの大軍に3方向から攻撃を受けている。
「先…輩、どうして…?」
そんな中で、傷だらけになった黒いスーツの少年が自分に背を向ける茶色いコートを着た青年に手を伸ばす。
茶色いはねた髪で、とび色の瞳を持つその少年に彼は振り返る。
その手には黒いアタッシュケースが握られていて、その背後には赤い色違いのルカリオがいる。
「悪いな…。お前が先輩と慕う男は存在しないのさ…」
「そ…んな、どうして…僕たちを裏切って…」
「先生によろしくな、ラクツ」
黒いシルクハットをつけた彼はニヤリと笑うと、再び背を向け歩き出す。
そして、青い服の男たちが用意した車に乗って、その場を後にした。
「先輩ーーーー!!」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
飛び起きた、夢の中でラクツと呼ばれた少年は自分の体を濡らす大量の汗をタオルでふき取る。
(また…あの夢を)
最近は見なくなったあの時の夢をまた見始めてしまったことを不快に思う。
「くおーん…」
「大丈夫だ、ルカリオ。もう…大丈夫」
拭き終えたタオルをかけ、自分を心配するルカリオの頭をそっと撫でる。
両腕と両足には腕時計状の拘束具が取り付けられている。
時計を見ながら、締め切ったカーテンを開ける。
ポケモンセンターや学校、住宅が立ち並んだ都会であり、周囲が木々で覆われた、自然で満ちたこの地域では場違いともいえる町、ヒオウギシティ。
あの事件のあと、彼はこの地で生活をしている。
「…。この町は牢獄だ」
ほかの人間から見たら、ただの都会であるものの、ラクツにとってはこの町は苦痛そのものだった。
しかし、それでもこの町を許可なく離れることは許されない。
「お前の拘束具が取れるのも、僕が自由になれるのも…いつになるんだろう。ルカリオ…」
もう、5年近くこの町にいる。
小さくて、何もとりえのない田舎町だったここが開発され、今の形になったのを見ている。
「…。学校へ行かないと」
今の自分にできることは開発された中でできた学校、トレーナーズスクールに通うことだけ。
そんな自分を嘲笑しながら、彼は白いYシャツと青い上下の制服を着る。
制服の左胸には所属しているクラスを示すバッジがある。
トレーナーズスクール中等部3年3組と…。
第1話、いかがでしたでしょうか?
かなり短いですが…。
なお、この小説では登場するキャラの年齢が原作と変更されているキャラが多いです。
その点はどうか、ご理解いただければと思います。