君の名はルパン   作:JALBAS

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いよいよ最終話です。
何故、三葉の父は風魔を率いて、“ティアマトの涙”を狙うのか?
何故、5年後に居る筈のルパンが、三葉を助けに来たのか?
全ての謎が、明らかになります・・・・・・




《 最終話 》

 

『る・・・ルパン?!』

私とお父さんが、同時にそう叫んだ・・・・ど・・・どうして?ルパンがここに?

「三葉、そいつは、お前の父親じゃない!お前の父の双子の弟、溝口としやだ!」

「え?・・ええ~っ?」

いきなり、ルパンが現れたのも驚いたけど・・・この人が、お父さんの双子の弟?お父さんに、双子の弟なんて居たの?

「ふん・・・よく分かったな、ルパン・・・」

「そいつは、昔から“ティアマトの涙”を狙っていた闇の一団、風魔一族の頭領でもある・・・元々、お前の父親も、“ティアマトの涙”を狙って風魔から派遣された間者だった・・・だが、お前の母親、二葉に惹かれ、風魔を裏切った・・・・以降は、宮水家と共に、“ティアマトの涙”を風魔から守っていたんだ!」

「え?・・・そ・・それじゃ、お母さんが亡くなったのも・・・」

「風魔に殺されたんだ!だから、お前の父は家を出た・・・風魔の刺客を分散させるためと、外の守りを固めるために・・・・・」

そ・・そうだったの・・・なのに、私は、お父さんを・・・ご・・ごめんなさい・・・

「そ・・それで、お・・お父さんは?本当の、お父さんは?」

「死んだよ!裏切り者は、俺の手で始末したやった・・・・」

私を捕らえている、偽の父が、そう答える・・・・そんな・・・お父さんまで・・・

涙で、目が霞んでくる・・・・

「お前に、“ティアマトの涙”は渡さない!」

「ふん!できるかな?」

偽の父が、そう言って片手を挙げると、辺りから、何人もの黒装束の一団が飛び出してくる。そいつらは、一斉にルパンに襲い掛かる。

「ちっ!」

ルパンは必死に応戦するが、数が多すぎる。

「お前は、そいつらと遊んでいろ!」

そう言って、偽の父は拳銃を拾い、私を連れて宝物庫に向かう。

「いやっ!離してっ!」

「待てっ!」

追おうとするルパンを、黒装束の一団が遮る・・・・

 

襲い掛かる一団に、防戦一方のルパン。すると、更に背後から、別な一団が飛び出して来る。

「し・・しまった!」

完全に不意をつかれたルパン・・・・しかし、そこに、一閃の如く剣激が走り、襲い掛かった一団は瞬時に一掃される。

「義によって、助太刀いたす・・・・」

羽織袴の侍が、姿を現す。

「五ェ門~!」

更に前方の一団も、横からの銃撃で半数が排除される。

「何やってんだよ、ルパン!」

闇の中から、髭面の男が現れる。

「次元~!」

そして、少し離れた後方から・・・・・

「ルパ~ン!逮捕だあ~っ!」

「ぜ・・銭形・・・あの野郎、とっつあんまで呼びやがった!」

今にもルパンに飛び掛かろうとする銭形を、ルパンは片手を翳して制止する。

「待て!とっつあん!緊急事態だ、空を見ろ!」

「何?そら~?」

銭形は、言われて空を見る。長い尾を引いた彗星が、空に紐のような模様を描いている・・・だが、その紐は2つに分かれ、徐々に広がっている。

「な・・・何だあ?ふ・・ふたつになってる・・・・」

「彗星が割れてるんだ!もう直ぐ、あの破片がここに落ちて来る!」

「な・・・何だと?」

「警官隊を使って、今直ぐ住民を、岡の上の学校まで避難させてくれ!」

「な・・何い~?」

「急げ!人々を助けるのが、警察の本業じゃねえのか?」

「う・・・うう、わ・・分かった!但し、皆を非難させ終えたら、直ちにお前を逮捕するからな!」

「上等だ!」

銭形は、回れ右をして、境内の方へ走って行く。

「ルパン!」

「次元!五ェ門!ここを頼む!」

「お前は?」

「奴を追う!」

ルパンは、宝物庫に向かって走り出す。そうはさせまいと、黒装束の一団が、更に援軍を加えて再び襲い掛かる。

「邪魔すんじゃねえよ!」

次元の、コンバットマグナムが火を噴く。襲い掛かった一団は、次々に倒れていく。

「てやあああああっ!」

五ェ門が、一団の中を疾走する。彼が通り抜けた後、一団はバタバタと倒れていく。

「今宵の斬鉄剣は、一味違うぞ!」

 

「いやっ!離してっ!」

私は、偽の父に強引に連れられ、宝物庫の奥の廊下を進まされる。何度も抵抗を試みたが、後ろ手に縛られている上に、相手が私よりも数段古武術に長けているため、全く歯が立たない・・・・でも、宝物庫の奥にこんな通路があるのを、今迄知らなかった。

「ここだな。」

大きな南京錠が掛けられた扉の前まで来て、偽の父が呟く。そして、手に持った銃で南京錠を撃ち、破壊する。

扉の先は、洞窟のようになっている。何も灯りが無いが、周りに光苔が生えているため、薄暗いが何とか中は見える。しばらく進むと、広い空間に出る・・・・中央に祠が有り、その中に、涙の雫のような形をした、巨大な宝石が祭ってある・・・・・

「はっはっはっ!とうとう見つけたぞ!」

偽の父は浮かれて、私の手を離し、その宝石に近づいて行く・・・・でも、私は、この好機を見逃さなかった。背後から、思い切り偽の父に体当たりをする。

「ぐわっ!」

不意を突かれ、さしもの偽の父も体勢を崩し、蹲る・・・・その隙に、私は一気に宝石に近づき、後ろ手でそれを掴む。そして、一気に駆け出す。

「お・・・おのれ・・・待てっ!」

偽の父は直ぐに起き上がって、拳銃を私に向けて撃つ。洞窟にはまだ先があったので、私はそこに逃げ込む。そして、必死に走る。偽の父も、走って追って来る。

宮水の家が、代々護ってきた宝石・・・・お父さんも、お母さんも、これを護って亡くなった・・・・そんな大事な物を、あんな偽者に絶対渡さない!

洞窟は、少し登り傾斜で、薄暗く足元が良く見えない。でも、止まったら捕まっちゃう・・・・私は必死に走った・・・しばらくすると、また、広い空間に出た・・・・その時・・・・

「痛っ!」

偽父の銃弾が、私の脚を霞めた。焼かれるような痛みで、私はバランスを崩して転んでしまう。その衝撃で、後ろ手に持っていた宝石も落としてしまう。

「し・・・しまった!」

直ぐに起き上がって宝石を拾おうとするが、それより早く、偽父が宝石のところに着いてしまう。偽父は、勝ち誇った笑みを浮かべながら、それを拾い上げる。

「ふん・・・つまらん事をしおって・・・・」

そう言って、拳銃を私に向ける。

「もう、お前も用済みだ・・・死ね!」

も・・もうダメ!殺される・・・た・・・助けて!ルパン!・・・・

諦めて目を閉じた時、銃声と共に、偽父の拳銃が弾き飛ばされる。

「三葉!」

奥から、銃を構えたルパンが現れる・・・・ルパン!来てくれた!ま・・・また、助けに来てくれた!

「おのれっ!」

偽父は、拳銃を弾かれても怯まず、懐からクナイを取り出してルパンに投げ付ける。

「うおっ!」

ルパンは横に飛び込むように転がって、これを交わす。偽父は、立て続けにクナイを投げ付ける。それを巧みに交わしながら、ルパンはまた銃を撃つ。

「ぐわっ!」

それは偽父の右肩に当たり、手に持ったクナイを落としてしまう・・・・その時

凄まじい轟音と共に、洞窟全体が揺れ始める。

「な・・・何だ?」

「きゃああああっ!」

私は立っていられずに、倒れてしまう。すると、洞窟の中が崩れ始める。

「危ない!」

ルパンが私に駆け寄り、覆い被さって来る。揺れは更に酷くなり、洞窟の天井が崩れ落ちて来る。

「うわあああああああっ!」

偽父の居たところは、真っ先に崩れ、偽父は岩の下敷きになってしまう。

「まずい!」

ルパンは私を抱き起し、洞窟の更に先に走り出す。ルパンに支えられながら、私も走る。広い空間を抜け、狭い通路に飛び込んだ時、広間は完全に崩れて岩の下敷きになってしまった。間一髪で、私達は助かった。

「大丈夫か?」

「は・・・はい!」

ようやく、揺れは収まった。しかし、私達が来た道は完全に埋まってしまったので、もう、戻ることはできない。

「い・・・いったい、何が?」

「彗星の破片が、落下したんだ!」

そうか・・・そうだった・・・じゃあ、もう、糸守は・・・・み・・・みんなは、無事なんだろうか?

私が考え込んでていると、ルパンが、私の手を縛り上げている紐を解いてくれた。

「あ・・・ありがとう・・・」

「ここも、いつまで安全かどうか分からない、先に進もう!」

「は・・はい!」

洞窟は、更に上に傾斜していた。私達はそれを進んでいったが、やがて、行き止まりになってしまった。

「そ・・・そんな・・・・」

私が悲観している一方、ルパンは、行き止まりのところの天井を、何やら探っている。そして、ぐっと力を込める。すると・・・・上の岩が動き、うっすらと淡い光が洞窟の中に入って来る・・・

よかった!行き止まりじゃなくて、ここが出口だったんだ!

ルパンは先に上に上がり、手を差し伸べてくれる。その手に引かれ、私も上に上がる。

「こ・・・ここは!」

そこは、御神体の中だった。直ぐ目の前に祠が有り、私達姉妹の、口噛み酒が供えられている。宮水神社と御神体は、地下の洞窟で繋がっていたんだ・・・・・

私達は御神体を出て、山の頂上の縁のところまで上がる。そこで、私が見たものは・・・・

「?!」

糸守湖は、形を瓢箪状に変えていた。宮水神社のあった辺りを中心に、新しい円ができ、円が2つ重なった形になっている。そのため、神社周辺は跡形も無く、元の湖の周りの部分も、瓦礫の山と化している・・・・・

「そ・・・そんな・・・み・・・みんなは?・・・・」

私は、目に涙を溜め、その場に膝をついて項垂れる。

「・・・・見てみな・・・・」

ルパンが、小型の双眼鏡を取り出し、私の顔の前に翳す。私はそれを受け取り、ルパンが指さす方向を見る。そこは、糸守高校の辺りで、うっすら、光が見える。双眼鏡で覗くと・・・・・

そこには、糸守のみんなが避難していた。四葉や、お婆ちゃん、サヤちん、テッシーの姿も確認できた・・・・よかった!みんな、無事だったんだ!

私は顔を上げ、ルパンの方を向いて言う。

「ほ・・・本当に・・・ありがとう、ルパン!・・・私だけや無く・・・み・・・みんなも、助けてくれて・・・・・」

「まあ・・・お宝は、湖の底に沈んじまったけどな・・・・・」

安心したら・・・急に、さっきの疑問が頭に蘇ってきた・・・・そうだ、ルパンは5年後の世界に居た筈・・・・どうして、ここに居るの?

「ね・・ねえ、ルパン・・・どうして、あなたがここに居るの?」

「ん~っ・・・まあ、ややこしい話なんだけどな、正確に言うと、俺は、お前の知ってる俺じゃねえんだ!」

「え?ど・・・どういうこと?」

「俺は、この時代の俺さ!お前の知ってるルパンの、5年前のルパンなんだよ!」

「ええっ?そ・・それじゃ・・・ど・・どうして、私を知らないあなたが、私を助けに?」

「頼まれたんだよ!」

「だ・・誰に?」

「5年後の俺にさ!」

 

―――― 2日前、東京に向かった三葉(ルパン)は、とある港に来ていた。

港に、ひとり佇む三葉・・・そこへ、1台の車が到着する。車からは、ルパン三世が降りて来る。

「来たな・・・」

三葉はルパンの顔を見て、不敵な笑みを浮かべる。

「おほ~っ、随分と、可愛らしい俺だこと。」

「俺だってことは、認めるんだな?」

「そりゃあなあ・・・・絶対に俺自身じゃなきゃ知り得ない事を、あれだけずらずら並べられたらな・・・・俺じゃ無いってんなら、超能力者でもなきゃあり得ねえ!」

「話が早くて助かるぜ!流石、俺だ!」

「で・・・5年後の俺が、俺に何の用だ?」

「俺・・・いや、この三葉って娘と、町をひとつ救って欲しい。」

「はあ?」

ルパンはしばし硬直するが、直ぐに大声で笑い出す。

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!俺の癖に、俺に人助けを頼むってか?ばか言ってんじゃねえよ!」

「その町に・・・“ティアマトの涙”が有るって、言ってもか?」

ルパンはバカ笑いを止め、真顔になって三葉を見る。三葉は、相変わらず不敵な笑みを浮かべている・・・・少しして、ルパンも同じ笑みを浮かべる。

「面白れえじゃねえか・・・乗ったぜ!話、詳しく聞かせな!」

三葉は、ルパンに事の詳細を語り始める・・・・・ ―――― 

 

私は、茫然とルパンを見つめていた・・・・何て、凄い事を考える人なの?・・・・

「さて・・・住民の避難も無事終えたから、銭形が俺を捕まえに来る・・・・お別れだ、三葉!」

そう言って、ルパンは去ろうとする。

「ま・・待って!ルパン!・・・・わ・・・私も連れてって!私を、あなたの仲間にしてっ!」

何度も入れ替わって、何度も助けられて、私は気付いた・・・・私は、ルパンが・・・・

するとルパンは、優しく微笑んでこう言った・・・・

「んほ~、俺のターゲットにゃあ、お前はまだ幼すぎるぜ!」

「え?・・・・」

「俺に狙って欲しけりゃあ・・・・不二子みたいな、ナイスバディになりな!そうしたら、盗みに来てやるよ!」

「る・・・ルパン・・・・」

「それじゃな・・・・」

そう言って、ルパンは去って行った・・・・

結局、ルパンにとって、私はまだまだ子供すぎるんだ・・・・でも・・・いつか、きっと・・・・

 

 

 

5年後の現在、10月5日・・・・・

ルパンと次元が、旧糸守高校の校庭から、瓢箪型の糸守湖と、廃墟になった町を見つめていた・・・・・しばらくして、次元が口を開く。

「結局、歴史は変えられなかったか・・・・・・」

「それはどうかな?」

「どういうことだ?」

「過去に介入して歴史を変えると、別な時間軸ができるんだよ!だから、俺達の世界ではもう三葉はいないが・・・・・三葉が生き残った世界ができてたって、おかしくはねえさ・・・・・」

 

 

 

三葉が生き残った世界の、現在・・・・・・逃げるルパンの車を、パトカーの一団が追いかけている。その、先頭車両の窓から・・・・・

「待てえ!ルパ~ン!逮捕だあ~!」

「ほんとにしつけえなあ!とっつあんは・・・・・」

「ルパン!逮捕よ~!」

「げげっ!三葉まで・・・・」

ルパン・・・あなたは結局、私を盗みには来てくれなかった・・・・あなた好みの、ナイスバディに成長したのに・・・・・だから・・・もう、待たない!捕まえてくれないんなら、私が、あなたを捕まえる!

 






最後まで読んで頂いて、ありがとうございます。
過去のルパンが助けに来て、そこで既に三葉と知り合ってしまいましたので、5年後のルパンと一緒になると記憶がぐちゃぐちゃになってしまいます・・・・ですので、ここで完全に時間軸の違う世界になってしまった事にしました。三葉が生き残った世界のルパンは、三葉との入れ替わりは体験していません。ただ、三葉と入れ替わった、違う時間軸の未来の自分と話し、入れ替わりの事自体は知っていますが・・・・・

ルパンシリーズに必須の、敵の親玉。“君の名は。”の登場人物の中では宮水としきが最適なんですが、三葉のお父さんをそんな悪者にするのは申し訳ないので、強引に“双子の弟”が居ることにしました。書いてみて感じたんですが、“君の名は。”の登場人物ってルパンの話のキャラに使い易いんですよね。キャラデザインが、宮崎アニメを作ってきた人だからかな?

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