ルパンの指示で、避難計画を進める三葉・・・そこに、とうとう風魔の魔の手が・・・・
10月2日、三葉の体で目が覚めた俺は、行動を起こす。
朝食を食べ、四葉と一緒に家を出るが・・・・・・
「私、ちょっと東京に行って来るから。」
「え?今から?・・・何しにいくん?」
「デート!」
「ええっ?お姉ちゃん、東京に彼氏おんの?」
「東京どころか、世界中に居るわよ!」
そう言って、俺は駅を目指す・・・・・・
その日の朝、次元さんに、5年前の10月5日の新聞を見せられ、私は呆然としていた。
「そ・・・そんな・・・・・」
そこには、10月4日、ティアマト彗星の破片が、糸守に墜落したと書かれていた・・・・町は壊滅し、住民の1/3が無くなったと・・・・
「わ・・・私も、死ぬんですか?・・・・」
「待て・・・まず、落ち着け!・・・俺達の時代ではもう過去の事だが、お前の時代ではこれから起こる事だ!まだ、間に合う・・・」
「ほ・・・ほんと・・・ですか?」
「ああ、ほんとだ!・・・ルパンが、避難計画を考えて、お前に手紙を残すって言ってた・・・明日、自分の体に戻ったら、それを読んで準備を進めるんだ!」
「は・・・はい・・・・」
10月3日、自分の体で目覚めると、机の上に封筒が置いてあった。そこには、“宮水三葉 様”と書かれていた。
こ・・・これが、次元さんの言っていた、ルパンからの手紙?・・・・私は手に取って、中の手紙を取り出し、開く・・・・
『三葉、いきなりの事で、びっくりしただろう・・・だが、心配はいらねえよ。彗星の落下前に、糸守高校まで避難させれば、皆助かる。しかし、“未来に行って、見て来た”何て言っちゃあダメだ!そんな言い方じゃ、誰も信じねえ・・・・・』
「うん・・・うん・・・・」
『だから、別な災害をでっちあげるんだ。細かいやり方は後に書いておくが、ひとりでは無理だ。テッシーと早耶香に、協力してもらえ。あいつらには、本当の事を話すんだ。大丈夫、あいつらなら信じてくれるよ!・・・・・・』
「うん・・うん」
『あと、消防団の協力も必要になる。これは、お前の父親に頼むしかない。頭の固そうな男だが、まあ、実の娘の頼みなら、聞いてくれるだろう・・・・・・・』
その後は、細かい手順が書かれてあった。これを、明日になったら、実施すればいい・・・・
大丈夫、これならば、ほんとに皆助かる・・・・ありがとう、ルパン・・・・
その後、私は学校で、テッシーとサヤちんには、今日の内に話をした。最初は中々信じてもらえなかったが、根気強く話して、何とか信じてもらえた・・・・・・
10月4日、朝、自分の体で目覚めた俺は、リビングで煙草を吹かしてる。そこへ、次元が入って来る。
「おや・・・今日もルパンだな?」
「ああ・・・・」
「今日が、彗星落下の当日だろ?大丈夫か、三葉は?」
「昨日、言ったと思うけど、避難計画については、手紙を残しといた・・・・」
「そうか・・・じゃあ、その通り行動すりゃあ、問題ねえのか?」
「ところが・・・そううまくはいかねえ・・・」
「え?・・・何でだ?」
「きな臭いって言っただろ・・・・風魔が動いてんだよ!」
「風魔?・・・何だ、そりゃ?」
「“ティアマトの涙”を、ずっと狙ってた連中さ・・・今夜、宮水神社を襲撃すんだよ!」
「何だと?そ・・・それも、三葉に伝えたのか?」
「いんや・・・言ったって、三葉にゃ、何もできねえよ!」
「何だって、おい!じゃあ、三葉を見捨てるのか?」
「大丈夫、ちゃ~んと、手は打ってあるぜ!」
「え?どんな?」
「聞きたいか?」
「聞きたい!聞きたい!」
「じつはな・・・・・・・・」
彗星落下の当日、自分の体で目覚めた私は、ルパンの手紙の指示通りに行動を始める。
まずは、テッシー達と部室棟で作戦会議。
ルパンからの手紙の指示に従って、テッシーには変電所で爆発を起こし、辺りを停電させ、山火事が起こったように見せかけてもらう。
「爆薬は、オヤジの会社のを拝借すりゃあいい、後でバレる心配せんくていいなら、いくらでも持ち出せるで・・・」
「あと、サヤちんは避難指示をお願い!学校の放送室から、防災無線をジャックできるから!」
「う・・・うん・・・」
サヤちんは、相当不安そうだ・・・でも、“三葉を信じるから”と承諾してくれた。
「避難場所は、糸守高校。ここは、隕石の被害範囲の外やから。」
「うん・・・・・」「
そして私は、お父さんを説得する係。
作戦会議の後、直ぐに町役場に向かう。お父さんの所に行き、今夜彗星の破片が、糸守に墜落する事、変電所の爆発と偽の防災無線を起こすから、それに合わせて消防を動員して欲しい事を説明する。
「そうか・・・分かった?」
かなり苦戦すると思ったが、以外にも、お父さんはすんなり信じてくれた。
「あ・・・ありがとう・・・お父さん!」
やっぱり、実の娘の言う事は信じてくれるのね・・・・お父さん・・・今迄、冷たくあたって、ごめんなさいっ!
三葉が出て行った後・・・・宮水としきは、嘲るような笑みを浮かべる。
「彗星が落下?・・・何をふざけた事を言ってるんだ、あの娘は・・・まあいい、お望み通り派遣してやるよ・・・但し、消防では無く、風魔をな・・・・」
「三葉~!」
町役場を出て走って来た所で、自転車でこちらに向かって来た、テッシーと合流する。
「どうや、首尾は?」
「ばっちり!お父さんに頼んできた!」
「そうか!」
ふと、空を見る。もう陽がかなり低くなっている。
「じゃあ、テッシー、決めた時間に変電所で。」
「おう!任せとけ!」
陽が落ちた頃、私とテッシーは変電所の前で落ち合う。空を見上げると、長く尾を引く彗星が、月よりも明るく輝いている。
「あれが、本当に墜ちて来るんか?」
「うん!未来の新聞で・・・見たの!」
「・・・分かった・・・信じるって決めたんや!やるで!」
変電所の鎖を切り、中に入る。テッシーの作った爆弾をセットし、直ぐにその場を離れる。
その間に、サヤちんに電話をして、放送の事を再度頼む。
しばらくして、轟音が響き渡り、変電所のある山の辺りから、太い黒煙が立ち登る。そして、町の明かりが消えていく・・・・
突然、サイレンが鳴り響き、続いて防災無線のアナウンスが流れ始める。
『こちらは、町役場です。糸守変電所で、爆発事故が発生しました。さらなる爆発と、山火事の危険があります。次の地域の人は、今直ぐ、糸守高校まで避難して下さい・・・・』
その頃、宮水神社境内の裏手、宝物庫のところに、ある人影が現れる。黒装束に身を包んだ、三葉の父、宮水としきであった・・・・ゆっくりと宝物庫に近づいて行く。すると、その手前に、別な人影が現れる・・・こちらは、白装束に身を包んでいる、三葉の祖母、宮水一葉であった。
「・・・ここから先は、宮水の者以外は、立ち入る事を許されん!」
「家を出たとはいえ、私は、宮水の婿だが?」
「お主・・・としきでは無いな・・・」
「ふん・・・・気付いていたか?おいぼれが・・・・」
テッシーと一緒に、神社に来て驚く。防災無線に多少戸惑っているものの、誰も避難しようとはしていなかった。それに、消防の人も来ていない。
「どうなってるんや、三葉?消防が来とらんで!」
「そんな・・・お父さん、確かに消防を動かしてくれるって・・・・・」
私は、テッシーに背を向けて走り出した。
「どこ行くんや?三葉?」
「お父さんのところ!もう一度、頼んで来る!」
境内を突っ切ろうとしたところで、四葉とかち合う。
「お姉ちゃん、血相変えてどうしたん?」
「ちょっと、話は後で!お父さんのところへ、急がんと・・・・」
「お父さんなら、裏の宝物庫の方へ行ったよ。」
「え?ほんと?」
私は、神社の裏手に回り、宝物庫の前まで来て・・・・驚く!・・・そこには2つの人影があり、ひとりは倒れている・・・・それは、お婆ちゃんだった!
「お婆ちゃん!」
私は、お婆ちゃんに駆け寄る。お婆ちゃんは、何やら忍びの者のような白装束で倒れている。
「お婆ちゃん!しっかりして!」
「み・・・みつは・・・にげな・・・・・」
倒れたお婆ちゃんの前には、黒装束の男が立っている。私は、顔を上げてその男の顔を見て、また驚く・・・・・
「お・・・お父さん・・・・」
な・・・何で?お父さんがここに・・・それより、何でお婆ちゃんを?
「ふふ・・・丁度いい・・・三葉、お前が案内しろ・・・“ティアマトの涙”は何処だ?」
「ティアマトの涙?・・・何やの?それ・・・そんな事より、どうしてお婆ちゃんを?」
「に・・・にげるんや・・・みつは・・・・」
私の問いには一切答えず、お父さんは近寄って来る。その顔は、もう、娘を見る顔では無かった・・・殺気を感じた私は、お父さんに飛び掛かる。
「はあっ!」
素早く懐に入り込み、肘で鳩尾を・・・・・
「あうっ!」
突こうとした手を素早く掴まれ、捻り上げられてしまう。すかさずもう一方の手で払おうとするが、その手も防がれ、両手を後ろ手に捻り上げられてしまった。
「い・・・痛いっ!」
容赦なく手を捻り上げられ、激しい痛みが走る・・・・手が、どうにかなってしまいそう・・・どうして?お父さん・・・何で、こんな酷い事するの?
「は・・離して・・・」
お父さんは、何を言っても聞いてくれず、後ろ手で纏めた私の両手を左手で掴むと、私の頭の組紐を解き、その紐で、私の両手首を縛り上げてしまう。
「や・・やめて・・・痛い・・・」
「さあ、大人しく、ティアマトの涙のところに案内しろ!」
「だから・・・何やの?・・それ・・・私・・・知らない・・・・」
「そうか・・・それなら・・・・」
突如、後頭部に冷たい感触が来る・・・・銃口だ・・・・お父さんは拳銃を取り出して、
私の頭に突き付けている。
「一葉・・・お前が答えろ!孫を、殺されたくなかったらな・・・・」
「く・・・ひきょうな・・・・・」
その時、境内に銃声が響き渡る。私が撃たれたのでは無い、私に突き付けられたお父さんの拳銃が、その銃弾に弾き飛ばされたのだ!
「だ・・誰だ!」
お父さんは、奥の林に向かって叫ぶ。すると、林の中から、拳銃を構えながら、1人の男が姿を現す・・・・その姿は・・・・・
『る・・・ルパン?!』
私とお父さんが、同時にそう叫んだ・・・・ど・・・どうして?ルパンがここに?
遂に、風魔の本性を現した、三葉の父・・・・倒れた一葉、捕らえられた三葉の運命は?・・・・
その間にも、彗星は分裂し、破片は糸守に迫る・・・・果たして、糸守の運命は?・・・・・
そこに、突然現れたルパン・・・・このルパンは本物か?そして、ルパンの打った手とは?・・・・次回、最終話です。